純広告は博打か? 第三者配信による真の広告効果測定 | 第三者配信その2
第1回では、第三者配信アドサーバーについて、基本的な仕組や市場などについて紹介した。第2回では、広告を正しく評価して効果を最大化するための手法を具体的に解説していく。
純広告は博打か
純広告はCPAがあわないので、出稿すること自体が博打のようで怖い、という話を非常に多くの広告主の方から聞く。これは純広告の評価ができていないために博打に見えて怖くなっているのだ。実は第三者配信アドサーバーを使ってみたら、純広告の効率は良かった、ということは我々の実績においてかなりある。そうした広告主の方は、配信結果レポートを見て「うわ、こういう風になっていたのか!」と驚かれる。
たとえば、IT系のニュース媒体への広告出稿を検討するとして、どの媒体がいいのか明確な基準はわかるだろうか。もし、価格とユーザー層だけを選定基準としているのであれば見直していただきたい。アドネットワークへの出稿でも、価格ばかりに目を向けるのは早計だ。アドネットワークは、どこの媒体に出るのか正確にはわからないのが常だが、どのアドネットワークがよいか、価格だけで決めてしまっては機会損失をしている可能性が高い。
また、広告の掲載期間と広告を見るユーザーの購入検討期間は大きく違う。掲載期間の間だけで購入にいたる商材であれば、その期間の直接コンバージョンのみを評価指標としてもかまわないが、特にBtoB系商材の場合では、そんなことはありえないと、多くの広告主が理解していることだろう。
第三者配信アドサーバーを使いこなすための指標
第三者配信アドサーバーを効果的に使いこなすには、まず出稿した媒体の直接コンバージョン数と間接コンバージョン数を評価し、今まで見えていなかったディスプレイ広告の価値を可視化する。これをやらないと、結局ディスプレイ広告は効果が悪い、博打である、怖い、という思考からは一生脱却できず、単にユーザー属性と単価だけでメディアプランニングすることになってしまう。そのような状態では、なんのためにディスプレイ広告を高いお金を出して購入するのか、明確な理由がもてなくなってしまう。
まずは、「間接コンバージョン」とはなにか、というところから理解していこう。間接コンバージョンには、2つの指標がよく用いられる。
クリックスルーコンバージョン
これは、あるユーザーが、広告を見てクリックしたけれども、その時は何もせず、後ほど思い出して検索エンジン経由など、別の手法で広告主サイトへ訪問し、コンバージョンした数だ。第三者配信でなく通常の効果測定ツールでも、広告をクリックした時点ならばクッキーを付与できるため、クリックスルーコンバージョン数は取得できる。ただし、クリックスルーコンバージョンを正しく評価して次の戦略に活かすのは結構大変なものだ。ほとんど日本では活用されていないのではないかと思われる。なぜなら、クリックスルーコンバージョンはクリックした人しか計測できないため、広告全体の間接効果を網羅するものではないからだ。かつ、クリック数をもとに測定するために母数が少なく、母数が少ないということは、異常値が発生しやすいということになる。
だからといって、クリックスルーコンバージョンが間接コンバージョン指標に役立たないわけではない。クリックスルーコンバージョンは、広告をクリックした人がコンバージョンパスのどこで離脱したのかといった、サイト内の改善において重要な役割を持つ。効果測定ツールは、サイト内のユーザー行動分析のほか、A/BテストやLPOなどのサイト改善に強力な機能を備えているため、広告効果の最適化に欠かせないツールであることに変わりはない。
ビュースルーコンバージョン
簡単に言うと、あるユーザーが、広告をインプレッション(見た)して影響を受けたものの、その時は特に行動せず(クリックや購買・資料請求などせず)、後ほど思い出して検索エンジンやブックマーク、直接URLを入力するなどの、間接的な経由で広告主サイトへ訪問し、最終的にはコンバージョンした数のことだ。インプレッションの直後では成果には結びつかず、後から成果に結びつくので「間接コンバージョン」という。クリックスルーコンバージョンと異なるのは、クリックしなかったユーザーの間接効果まで計測できることで、このコンバージョン数は、広告掲載期間が終了しても計測するべきだ。この指標であれば、ディスプレイ広告の流入数やコンバージョン数のすべてを管理できる。この「ビュースルーコンバージョン数」を測れるのが、第三者配信アドサーバーの最も優れた機能だ。これは一般的な効果測定ツールでは計測できない。なぜなら、これらの効果測定ツールはバナー画像自体を配信していないからだ。ブラウザからのリクエストに応じてバナーを配信した時点、つまりユーザーにインプレッションさせた時点でユーザーにクッキー付与できるのは第三者配信アドサーバーのみである。
このように、間接コンバージョンに複数の指標があり、それぞれを分析することが広告効果を把握する上で重要になる。次からは実際の広告枠にあてはめて考えていこう。次の図1を見ながら解説してく。
たとえば、図1のように1,000万インプレッション、1週間掲載のディスプレイ広告枠を購入したとしよう。平均フリークエンシー数(1ユーザーあたりの広告表示回数)が仮に4の媒体だと、「実際に広告を見た人」は1,000万÷4で、250万ユニークユーザー(正確にはユニークブラウザ数だが、便宜上ユニークユーザー数とする)になる。
次に、CTR(クリック率)が0.05%だとすると5,000クリックが発生する。このなかから、掲載期間中にコンバージョンした数は、CVR1%だと5,000×1%で、50となる。この50が直接コンバージョン数だ。ここまでは今までの効果測定ツールでも取得可能な数値だ。
- 広告クリック数=1,000万(インプレッション)×0.05%(CTR)=5,000
- 直接コンバージョン数=5,000(広告クリック数)×1%(CVR)=50
では間接コンバージョンを見ていこう。実際に「広告を見た人」250万ユニークユーザーのうち、その時はコンバージョンせず、後ほどコンバージョンした人の数が、「ビュースルーコンバージョン数」となる。図1の例であれば、「広告をクリックした」5,000クリックのうち、その時はコンバージョンせず、後ほどコンバージョンした人の数が、「クリックスルーコンバージョン数」だ。「広告をクリックした人」は必ず「広告を見た人」のなかに含まれるため、ビュースルーコンバージョンのなかにクリックスルーコンバージョンは含まれる。
先ほどクリックスルーコンバージョンはあまり利用されておらず、かつ母数の課題があると述べた。それはなぜか。そもそも広告(および出稿先の媒体社)の価値とは、興味やニーズを喚起することである。したがって、「実際に広告を見た人(上の図では250万ユニークユーザー)」こそが、「興味やニーズを喚起される可能性のある母数」となる。この母数を起点としてとらえないと、本当の広告(媒体)の価値はわからない。クリックスルーコンバージョンは、母数が少ないから注意が必要だ。図1でいえば、直接コンバージョンした50人を除いた、4950人が対象になる。もちろん、この4950人は考えなくてもいい、と言っているわけではない。4950人は興味を広告主サイトに来てくれるのだから、リターゲティング広告を必ず実施すべきだ。広告をクリックしたその時には買ってくれなくても、いつか買ってくれるかもしれない。
評価指標としてはどうか。来てくれた人にいかに再アプローチするか、を評価するのがクリックスルーコンバージョンであり、広告を見てくれた人全体から評価するのがビュースルーコンバージョンだ。理想的なディスプレイ広告の評価指標は、クリックスルーコンバージョンとビュースルーコンバージョン両方を指標とすることだ。
クリックスルーコンバージョン広告を見てクリックしてくれた人だけを評価
ビュースルーコンバージョン広告を見てくれた人全体を評価
第三者配信アドサーバーがないと、「実際に広告を見た人」の実数を捉えることはできないと先ほど述べた。つまり「ビュースルーコンバージョン数」は取得できない。通常の広告効果測定ツールでは無理なのだ(米国の広告効果測定ツールは第三者配信アドサーバーとのつなぎこみ、または主要媒体とのつなぎこみができている場合もあるのでこの限りではないことを付記しておく)。通常の広告効果測定ツールで把握できるのは、クリック数、直接コンバージョン数、クリックスルーコンバージョン数しかない。これは媒体社アドサーバーと効果測定ツールが、システム的に分離しているからだ。
メディアプランニングはユニークユーザー数とフリークエンシー数で変わる
次に、メディアプランニングのやり方も変えていくことが必要だ。通常エクセルのメディアプラン内には、インプレッション数と想定クリック数、想定直接コンバージョン数くらいしか出てこない。先ほどの図1の例のなかで、普段の出稿ではなかなか聞きなれない言葉が出現してきたと感じた人はいないだろうか。「ユニークユーザー」と「フリークエンシー数」がそうだ。このユニークユーザー数とフリークエンシー数は媒体によって異なるので、この数値も押さえておけば、媒体社や広告代理店が出す媒体属性以外の媒体特性を表す指標が手に入る。この指標も、メディアプランニングの際の重要な意思決定基準となる。
第三者配信アドサーバーは、広告をインプレッションした(見た)瞬間にクッキーを発行する。クッキーが発行できれば、同じブラウザが何回その広告を表示したか判明できるので、フリークエンシー数がわかる。フリークエンシー数がわかると、インプレッション数÷フリークエンシー数で、本当にその広告に触れたユニークユーザー数(正確に言うとユニークブラウザ数)が判明する。
実際に広告に触れたことがあるユニークユーザー数から、どの程度の直接コンバージョンと間接コンバージョンが生まれたのか、その両方のコンバージョンを評価しなければ、広告の価値評価をすることはできない。なぜかというと、同じ1,000万インプレッションでも平均フリークエンシー数が10回のメディアと1回のメディアでは、ユニークユーザー数は100万人と1000万人と大きく異なるからだ。
フリークエンシー数が少ない媒体の方が必ず優秀、ということではない。これは商材によって異なる。特に1回の接触ですぐ購入にいたらないような商材においては、1回だけ広告を見せるよりも5~10回見せた方が全体のコンバージョン数が良くなる場合もある。ここで言いたいのは、ユニークユーザー数やフリークエンシー数などの媒体特性がわからないまま、メディアプランニングするのは危険ということだ。もし、こうした手法をとっているのならば、ユニークユーザー数とフリークエンシー数を把握して、メディアプランニングのやり方をまず変革しなくてはならない。ユーザー属性と単価は大事だが、それだけでメディアプランニングをしてしまっては、博打のままである。もう一歩前進し、この媒体は自分の商品の特性にあっているな、ここは違うな、という媒体特性をつかみ、出稿先を判断できるようにならなくてはいけない。
直接コンバージョンだけで評価することの危険
ディスプレイ広告の評価を直接コンバージョンのみに頼ると、ディスプレイ広告を最初のきっかけに発生した検索エンジン経由のトラフィックの価値を見誤ってしまう。検索エンジンで検索する人というのは、「もう購入一歩手前」まで来ている人だ。つまり、「購入にいたった最後のクリック(ラストクリックという)」だけを評価するのが直接コンバージョンのみを評価手法にするということだ。広告出稿全体を、直接コンバージョンのみで評価している場合、検索エンジン経由が最もコンバージョン数が稼げる手段となる。これが「検索エンジン経由のCPAが良い」と言われる本当の理由だ。ただこの「ラストクリック」のみ評価手法というのは、大いに問題がある手法だと言わざるをえない。
検索エンジンでキーワードを入れて検索するとき、その「興味やニーズ」はどこから来たのだろうか。広告や広告企画記事や、プレスリリースではないだろうか。以前にバナー広告を見たりクリックしたりした人かもしれない。まったく商品名を知らない消費者が、商品名をいきなり検索してくれることはありえないように、バナー広告の価値評価を直接コンバージョンだけで判断する危険性はここにある。バナー広告への出稿と、検索エンジン対策(SEM、SEO)は両方やるべきだ。認知はバナーが得意とするところで、検索エンジンは刈り取りが得意だ。新規のニーズを掘り起こし、新規ユーザーのコンバージョン母数を増やすには、バナー広告出稿の可視化と改善が必須なのだ。
リピート顧客は重要だ。しかし、継続して成長しながら売上を上げていくには新規ユーザーの獲得が何より必要になる。ユーザーのニーズが顕在化している検索エンジンからの獲得効率が高いのは間違いない。そこはうまく刈り取るべきだ。SEOやランディングページの改善も当然やるべきであって、やらなくていいと述べているわけではない。ただし、新規顧客のパイ全体を大きくしたいのであれば、バナー広告やタイアップ広告は必要であり、その間接効果を明らかにした方が、メディアプランニングがやりやすくなるし、少なくとも博打のような状態ではなくなるはずだ。
バナー広告でニーズや興味を喚起する母数を増やし、直接と間接コンバージョン両方を評価する。数字をわかったうえで、検索エンジンで間接コンバージョンをうまく刈り取る、というワンセット改革が必要だ。
広告主の方には、自分の扱っている商材の「購入検討期間」を考えてもらいたい。通常バナー広告の掲載期間は1週間であるが、果たしてすべて1週間以内に購買にいたる商材なのであろうか。1週間以上かかる商材であれば、そこには必ず検索やブックマーク経由などの間接コンバージョンが発生している。この掲載期間外の効果を直接コンバージョンのみで判断すると、すべて検索エンジンがエライ、ということになってしまう。極端にいうと、バナー広告は出さなくてもいい、ということになりかねない。
クリック後に思い出させる、ということの効果についてはリターゲティングやメールマーケティングでその効果が証明されている。リターゲティングは、検索連動型に次いでコンバージョン率が良い広告手法である。特に検討期間が長期にわたる商材では抜群に効く。それは、リターゲティングは長期にわたってニーズや興味を喚起したものをリマインドできるからだ。つまり、1週間では購入にいたらない商材であっても、後になって思い出し購入にいたることはいくらでもあるということだ。このことから、すべて検索エンジン経由のみのコンバージョンである、と評価することの危険性はおわかりいただけると思う。
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