次回広告配信は配信実績レポートを使って変更、改善する
次回広告配信は配信実績レポートを使って変更、改善する
第三者配信アドサーバーでできることは、ビュースルーコンバージョンを明らかにすることだけではない。第三者配信アドサーバーには、効果管理機能の他に強力なレポート機能があり、実際に広告配信した後に、最適化や改善をすることで新規顧客の獲得効率を高めることができる。ここで取得できる数値を使い、媒体ごとの獲得効率を上げていこう。
同一ユーザーに見せる広告の最適な配信回数は
第三者配信アドサーバーで配信した場合、媒体ごとのフリークエンシー数と、フリークエンシー数ごとのコンバージョン数(直接/間接)が取得できる。つまり、同一ユーザーに何回同じ広告を見せ続けると、効果が切れるのかがわかるようになる。これは、フリークエンシー数が少なければよい、という単純なものではなく、プロモーション対象の商材や媒体によって異なる。何回も同じ広告を見せ続けた方が、刷り込み効果が高くなって最終的なコンバージョン数(直接コンバージョンだけではなく、間接コンバージョンも含む)が高くなる場合もあれば、まったく逆のケースで、フリークエンシー数の1回目にコンバージョン数が多くなることもある。
我々の計測結果では、通常は5回以上まったく同一の広告を見続けると、CTRもCV数も下がっていく場合が多い。「飽きが来る」ということだろう。CVRはフリークエンシー数に比例して上がる場合もあるが、1000万~5000万程度のインプレッションのボリュームゾーンにある広告枠であれば、フリークエンシー数の高いユーザーのユニークユーザー数は少なくなる。なぜなら、1~5回目にしか表示されないユーザーで何割かのインプレッションを消化するし、何十回も同じ広告を見続けるユニークユーザーというのは、少なくなっていくからだ。したがって、CVRがいくら高くても、コンバージョン数自体は下がっていく。大事なのはコンバージョン数の絶対値であって、CVRではない。フリークエンシーが高いユニークユーザーは少ないので、コンバージョン数の絶対数を多くすることは大変だということを覚えておこう。ただし、これが数億インプレッションになると、高いフリークエンシー数にもユニークユーザーは多く存在してくるので、話は変わることに注意したい。
では次に、次回の改善はどうするかを考える。フリークエンシー数5回以上からCTR、CV数が大幅に下がっていく、というデータが得られたのなら、次回配信では、6回目以降にもコンバージョンしてもらうために、6回目以降のユーザーに対しては違うデザインや違うマーケティングメッセージのバナーに切り替えるべきだ。インテリジェントなあれでもかこれでもか作戦だ。これで配信の効率化を図ることができる。広告主の商材や媒体によっても、バナーの効果が切れるタイミングは異なるので、媒体ごとに数字を見ながら、次回配信の際には設定を最適化していく。
また、第三者配信アドサーバーは、1媒体だけのフリークエンシー数を最適化するだけにとどまらない。通常広告主の方は1媒体のみの広告枠ではなく、複数媒体で購入するはずだ。第三者配信アドサーバーは、配信を一括管理するため、あるユーザーが複数の媒体を通して累積何回の広告接触があったのかを管理できる。
たとえばAとB、2つの媒体に同時に出稿した場合を考えてみよう。同一ユーザーが、先にA媒体で3回、次にB媒体で5回バナーを閲覧したとする。総フリークエンシー数は8回となる。第三者配信アドサーバーは、この「総フリークエンシー数」をきちんと管理できる。つまり、フリークエンシー数3回に達した場合は別バナーを見せる、という設定をしていた場合は、A媒体で3回の掲載が終了した時点で、B媒体では別のバナーを掲載できる。媒体それぞれのフリークエンシー数を可視化し、最適化することも重要だ。ユーザーは複数のサイトを回遊するものだが、「媒体を横断して1ユーザーあたりのフリークエンシー数を可視化し、最適化する」ことで、ユーザーが広告に飽きるのを防ぐことができる。
既存顧客と新規顧客で広告を出し分ける
第三者配信を使わない今までの配信方法では、サイトにすでに訪問してくれたユーザーにも、新規のユーザーにも、まったく同じ広告を配信してしまう。第三者配信アドサーバーでは、広告主のサイトに効果測定タグを設置するが、これは効果測定だけに使えるものではない。このタグは、広告掲載期間以外にも、広告主サイトに訪れるユーザーを計測し続け、広告を掲載する際にこのデータを用いることができる。つまり、すでに訪問してくれている既存ユーザーには、「もう一度訪問してくれませんか? こんな特典があります」という広告を掲載できるのだ。
米国では2012年11月に大統領選が予定されている。まだ1年以上先になるが、オバマ大統領は2008年の選挙キャンペーンでは、オンライン広告にマケイン陣営の4.4倍の16億円を費やし、大成功をおさめている。再選を目指すオバマ大統領は、キャンペーンサイトBarackObama.comを通じて、再選準備をすでに開始している。なぜなら、このキャンペーンサイトには、2つの第三者配信アドサーバーのタグがすでに設置されているからだ。グーグルに買収されたDoubleClickと、マイクロソフトに買収されたAtlasのタグだ。つまり、1年以上先から再選準備を周到に行っているのだ。
第三者配信アドサーバーのタグを事前にキャンペーンサイト内に設置することで何ができるのか。再選キャンペーンが本格化した時点で、このタグのデータを利用して、ニューヨーク・タイムズやCNNなどのディスプレイ広告を大量出稿する際に、すでにオバマに興味を持ってくれている人には「○○週でイベントがあるから集まってね!」というメッセージを掲載し、まだオバマのキャンペーンサイトに来てくれていない人≒他の候補者を応援しそうな有権者には、「共和党候補でいいの?オバマを応援しよう!」といったメッセージを掲載しようとしているに違いない。
つまり、第三者配信アドサーバーというものは、単なる広告配信のために使うだけにとどまらず、見込み顧客、新規顧客をより多く獲得するためのデータベースにも成り得るのだ。見込み顧客をしっかり取り扱うことが、成功の鍵であることに間違いはない。単に毎回同じ広告を配信するのはもうやめにしよう。せっかく広告を見てくれる、もしくは訪問してくれるユーザーがいるのだから、もっと大事にしてもいいのではないだろうか。
フリークエンシーグループ別のクリエイティブA/Bテストと改善
第三者配信アドサーバーでは、高度なクリエイティブのA/Bテストが可能となる。フリークエンシー数1回目でコンバージョンするユーザーに効くバナーと、それ以上のフリークエンシー数でコンバージョンするユーザーに効くバナーは多くの場合で異なり、かつ媒体によっても異なる。フリークエンシー別に効くバナーを次々と第三者配信アドサーバーで見つけていくことが重要だ。
クリエイティブ最適化で広告効果はもっと上がる
第1回では、広告クリエイティブによる広告効果の最適化の考えとして、「クリエイティブオプティマイズ」を紹介したが、私が所属するFringe81でも、バナークリエイティブの最適化ソリューション「iogous」を提供している。具体的には、通常数種類のバナーのデザインにおいて、背景色、キャッチコピーを自在に入れ替え、数百種類~数千種類のバナーを生成する。これを、多変量解析技術を用いて、最も効果が高いデザインで配信することが可能となっている。これも第三者配信アドサーバーの一種だ。実際に次のような事例もある。
- クライアント名
株式会社リンク
http://www.at-link.ad.jp/ - 事業内容
サーバホスティング事業 - プロモーション内容
ソーシャルゲーム用の専用ホスティングサービス『at+link アプリプラットフォーム』の資料問い合わせ件数増のため
http://www.at-link.ad.jp/appli_platform/ - プロモーションの与件
ソーシャルゲーム用のホスティングサービスは競合が多いため、比較検討を必ずされる。
かつ、インフラであるので購入検討期間が長い。したがって、掲載期間中の直接コンバージョンだけではなく、掲載終了後の間接コンバージョンも管理しないと、プロモーション全体の次回投資判断が難しくなってしまう。
特にインプレッション単価の高いIT系の専門媒体での投資対効果を判断する材料が欲しかった。そのため、第三者配信エンジンを活用した。
- 結果
ある1つのIT系専門媒体の間接コンバージョン数が非常に多いことが判明した。IT系専門媒体に継続して出稿する明確な理由が見つかった。次は、間接効果に影響度が強いIT系専門媒体を探して出稿していきたい。
フリークエンシー数(同一ユーザーへの広告表示回数)が低い方が、直接コンバージョン、間接コンバージョンともに発生していることがわかった。今後も第三者配信エンジンを活用して、低いフリークエンシー数に一番確実なバナーを見せ、高いフリークエンシー数にはまったく別のメッセージを訴求するバナーを配信したい。
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