話題のソーシャルメディア最適化を知る+ソーシャルメディア最適化の16のルール


ソーシャルメディア最適化の16のルール
Web 2.0に関連して「ソーシャルメディア」という言葉が話題に上ることが多くなったが、最近ではその影響力を利用してトラフィックの向上やクチコミの伝播を狙う「ソーシャルメディア最適化」、略して「SMO」という言葉も聞かれるようになってきた。ここでは、ソーシャルメディアとは何か、そしてSMOとは何かについてまとめる。
住 太陽
情報が相互に流れるソーシャルメディア
主導権がユーザーにあるメディア
ソーシャルメディアとは、情報や知識を共有するコミュニティを中心に展開されるメディアの総称で、具体的なサービスの種類としては、ソーシャルブックマーク、ソーシャルニュース、フォトシェアリング、ビデオシェアリング、ブログ、SNS、Wikiなどが代表的だ。従来のマスメディアでは情報の出し手と受け手がはっきりと分かれており、情報の流れが一方通行だったのに対して、ソーシャルメディアでは、コンテンツの制作も流通も主導権はユーザーコミュニティの側にあるのが特徴だ。
ここでのキーワードは、ユーザー間での「共有(シェアリング)」だ。SNSは人脈を共有しようとするものだし、Wikiはコンテンツそのものを共有しようとするものだ。また、コンテンツに対する評価を共有しようとするのがソーシャルブックマークやソーシャルニュースだ。ブログやフォトシェアリング、ビデオシェアリングなどのサービスは、個人がコンテンツを発信して共有するのを容易にするだけでなく、同じような趣味趣向を持つ者どうしてつながっていく仕組みも持っている。このような、さまざまな情報や知識をコミュニティ内で共有していくためのサービスがソーシャルメディアと呼ばれ、Web 2.0の中心的なサービスとして話題を集めている。
さまざまな種類のソーシャルメディア
ソーシャルメディアといってもたくさんの種類があり、それぞれに複数のサービスがひしめき合っている。これらのサービスを使ったことがなければ、ソーシャルメディア最適化が今後いかに大切になるかは理解できないだろう。初めて聞くという人もぜひ試してみてほしい。
●ソーシャルブックマーク
ユーザーが気にいったページをオンラインでブックマークするサービス。ブラウザの「お気に入り」はサイトのトップページを登録することが多いが、ソーシャルブックマークでは「記事」の単位で登録されるのが基本だ。

http://b.hatena.ne.jp/ [1]オンラインで軽快に使える情報整理ツールとしてだけでなく、旬の話題を効率的に得られる情報サイトとしても人気を集めているソーシャルブックマーク。
ブックマークする際には、簡単なコメントを残したり、「タグ付け」と呼ばれる分類を同時に行ったりでき、その情報をユーザー同士で共有できるほか、単位時間あたりのブックマーク登録数を元に自動生成される人気記事ランキングによって旬の話題を知ることもできる。
国内では「はてなブックマーク」が代表的だが(図1)、米国のサービスである「del.icio.us」を利用する日本人も多い。現在はちょっとしたブームになっており、国内では大手ポータルのほとんどすべてが同種のサービスを提供している。
- はてなブックマーク [1]
- Buzzurl(バザール) [2]
- del.icio.us [3]
●ソーシャルニュース
ユーザーが気になるニュースを収集し、そのニュースに対するユーザーの評点を使って「みんなが気になるニュース」を抽出するサービス。評点の際には簡単なコメントを付けられるものが多い。

http://newsing.jp/ [4]米国では「Digg(ディグ)」が代表的なソーシャルニュースだが、日本ではnewsingがソーシャルニュースのさきがけだ。
海外では米国の「Digg」が大ブレイクし、新聞社などを含む数多くのニュースサイトよりも人気があるといわれる。国内では「newsing(ニューシング)」がさきがけ的な存在だ(図2)。この種のサービスは、世の中にあふれる数多くのニュースの中から、注目度の高いニュースだけを効率よく取得できるメリットがある。
- newsing [4]
- gooソーシャルニュース [5]
- Digg [6]
●フォトシェアリング
自分で撮影したデジタル写真をサーバーにアップロードし、不特定多数に公開したり、招待したユーザーによるコミュニティ内だけに公開したりできるサービス。アップロードした写真には分類を表すタグを付けたり、短いコメントを付けたりできることが一般的。このタグやコメントを元に他のユーザーが写真を探して閲覧したり、評点やコメントを付けたりできるものある。
海外のサービスでは米Yahooが昨年買収したFlickrが代表的だ。英語サービスだが日本語によるタグ付けやコメントも可能で、日本人のユーザーも多い。日本では、ポータルが運営するlivedoor PICSやSo-net Photo、OCNフォトフレンドなどのサービスがある。
- Flickr [7]
- livedoor PICS [8]
●ビデオシェアリング
自分で撮影・編集した動画をサーバーにアップロードし、他のユーザーと共有できるサービスで、いわばフォトシェアリングの動画版。タグ付けやコメント、評点などの機能が備わっているほか、評点や再生回数を元にしたランキングもある。また、気に入った動画を自分のウェブサイトやブログに貼り付ける機能も提供している。
最大手は米国のYouTubeで、インターフェイスのほとんどは英語だが、部分的には日本語を含む6カ国語に対応しているため、国内のユーザーも多い。国内のサービスとしては、サイバーエージェントによるアメーバビジョンや、フジテレビラボLLCによるワッチミー!TV、Ask.jpによるAskビデオなどのサービスがある。
●ブログ
基本的にはオンラインで簡単に更新できる時系列の日記のような形式のサイトだが、トラックバックやコメントなどの機能が実装されていることにより、他のブログ著者や読者と議論を交換するようなコミュニケーションが可能になっている。書かれている内容は、著者の身辺雑記から専門性の高い内容までさまざまだ。近年ではブログを中心に議論される話題も多く、ブログ著者らによる社会をブロゴスフィアなどと呼び、1つの言論圏とされることもある。
●SNS
ソーシャルネットワーキングサービス。ユーザーが持っている人間関係の維持や構築を支援するサービスで、人と人とのつながりや関係性をオンラインで展開する会員制のコミュニティサイト。新規にユーザーになるためには、既存のユーザーからの招待が必要になるサービスがほとんど。
日本ではmixiが代表的。その他、GREEやフレパ、Yahoo! Daysなども多くのユーザーを集めているほか、自分専用のSNSを作成できるサービスも増えており、こうしたサービスを用いて作られた小規模でネットワーク密度の高いSNSも多数出現している。
- mixi [13]
- GREE [14]
- フレパ [15]
- Yahoo! Days [16]
●Wiki
ブラウザ上から誰でもコンテンツを作成・編集できるコンテンツサイトの仕組みの総称。多数のユーザーが共同でコンテンツを作り上げていくことができる。代表的なサービスはWikipediaで、フリーな百科事典をみんなで作るという世界的なプロジェクトが進行しており、日本語を含む33カ国語に対応している。
- Wikipedia [17]
だれもが情報の受け手であり出し手
ソーシャルメディアでは、情報の流通の主導権がユーザーやコミュニティの側にあり、情報が伝播していく過程にさまざまなユーザーが関わる点が、従来のマスメディアとは大きく異なる特徴だ。
従来のマスメディアでは、情報の流れは特定少数の情報発信者から消費者へ、という一方通行のものだった(図3)。しかしソーシャルメディアでは、誰もが一次情報の発信者になれるだけでなく、そこに新たな情報を付加した二次情報の発信者にもなりうる(図4)。また情報を受信する経路が多岐にわたるため、より自分好みの情報を効率的に取得することも可能になるうえに、時には役割を変えながらコミュニケーションを行うことがある。たとえばブログでは、一次情報の発信者が、その情報を元に発信された二次情報の受信者となり、それに応える形でさらに情報を生み出すといった循環も頻繁に起こるのだ。また、ソーシャルブックマークやソーシャルニュースは、二次情報や三次情報も大きく伝播させる力を持っている。ソーシャルメディアはこうした再生産性や双方向性を備えているために、流通する情報は密になり、伝播する範囲も広くなるのである。


どんどん拡大する人気と集客力
ソーシャルメディアの中には、ソーシャルブックマークやソーシャルニュースのように、単位時間あたりの注目度を測ることによって、まさにその瞬間に多くの人々が関心を集めている情報を抽出する機能を提供するものがある。これらのサービスは、ウェブの持つ即時性と、多くの人の投稿による網羅性、群衆の英知を同時に活用していて、最近ではその価値が認められ、利用者数を伸ばしている。また、人間関係に根ざした情報交換の場としてのSNSや、表現や討論の場としてのブログなどは、日本でもすでに一般に定着しているといえる。
ソーシャルニュースサービスである「ニューシング」を運営するマイネットジャパン代表の上原氏に話を伺ったところ、「ソーシャルメディアとは、自分自身を軸とした関係性に根ざしたメディア」であるという。つまり、自分と関係のある人々や、自分と同じような属性を持った人々が話題にしている情報をソーシャルメディアを通じて取得することによって、インターネット上にあふれている雑多な情報の中から、自分自身にとって重要な情報だけを効率的に取得できるのだ。こうしたフィルタとしての機能は、確かに便利なもので、ソーシャルメディアが拡がりつつある大きな要因の1つだといえるだろう。
検索エンジンを超える集客力も……
誰もが気軽に情報を発信者にも受信者にも媒介者にもなれるようになっただけでなく、流通する膨大な量の情報を整理し、ユーザーの一人一人が自分にとって有意義な情報を効率的に取得していくことを助けるようなサービスが隆盛してくるにつれて、ソーシャルメディアはまさにメディアとしての成長を遂げてきた。ソーシャルメディアが生み出すトラフィックは、無視できないどころか巨大なものになり、ソーシャルメディアを介したアクセス数が、検索エンジンのそれをも軽々と上回ることも珍しいものではなくなった。つまり、Web担当者の視点から見れば、ソーシャルメディアは検索エンジンと同等か、もしかしたらそれ以上の集客力を持ったメディアへと成長を遂げたと見ることもできるのだ。
個人がそれぞれ自分向けの情報を選び、
みんなが情報の受け手であると同時に発信するメディアが
ネット上での存在を増してきている
ソーシャルメディアを味方につけるSMO
ソーシャルメディアが急成長してきたことを背景に、ウェブサイトへの集客経路としてソーシャルメディアを積極的に活用しようといった動きが広まってきている。そのためのアプローチがソーシャルメディア最適化(SMO)だ。
SMOは見逃せないアクセスアップ手法
SMOとは、ごく簡単にいえば、ここまで説明してきたようなソーシャルメディアの力を借りて、情報をより広く遠くへと到達させようという試みの総称で、新しいタイプのアクセスアップ手法だといえる。従来のようにマス広告のように一方的に情報を押しつけようとするのではなく、ブログやSNSやソーシャルブックマークといったソーシャルメディアの中で、一般のユーザーの話題になり、参照されることによって、ウェブサイトへのトラフィック誘導や知名度の向上などを狙う。従来クチコミマーケティングやBuzzマーケティングと呼ばれてきた手法の、よりウェブとの親和性の高い亜種であるともいえる。
SMOはウェブ上で展開されるため、情報の伝播が早く、瞬発力がある。うまく波に乗れば、情報は猛烈な勢いでユーザーの間を駆けめぐることになる。
また、ソーシャルブックマークやブログなどでは、話題にのぼるたびに参照としての被リンクを集め続けるが、これはSEOにおけるリンク数の増加につながり、結果として検索エンジンでの順位のアップにもつながる。こうしたさまざまな効果によって、SMOはサイトに巨大なトラフィックをもたらすのだ。

もちろん、ソーシャルメディアにおいて多数の露出を果たすためには、当然のことながらコンテンツの質が高いことが求められる。ユーザーは価値があると認めた情報を共有しようとするからだ。しかし、それに加えて露出しやすくするための工夫をちょっと加えるだけで、ソーシャルメディアにおける露出を加速させることができる。その工夫がSMOなのだ。
SEOとの親和性も高い
SMOはSEO(検索エンジン最適化)との親和性が高いことも魅力の1つだ。
自分のコンテンツがソーシャルメディアで伝播していく過程では、二次情報、三次情報として流通しながら、オリジナルの情報として参照され続ける。つまり、SMOが成功すればするほど、ブログから、ソーシャルブックマークサイトからなど、さまざまな形での元記事へのリンク数が増え、検索エンジンにおいても高い評価を得ることができ、検索結果でより高い位置に表示される可能性が増えることを意味する。
ソーシャルブックマークの人気エントリー入りがもたらした
総合的なアクセスアップ

富山県で縫製工場を営むレスターの清水社長は、ソーシャルメディアの威力を体感したサイトオーナーの1人だ。レスターのサイトには、Tシャツやトレーナーの品質を縫製の視点から評価・判断する方法を伝える「縫い目で見分けるTシャツやトレーナーの品質」というページがあった。このコンテンツが、ある日はてなブックマークの「人気エントリー」に登場したのだ。
「人気エントリー」の上位に掲載されれば、1時間あたりおよそ400~500程度、時間帯によっては1000以上もの訪問者がある。しかし、騒ぎはそれだけでは収まらない。さらにその後、いくつかのブログがこのページを参照する記事を書き、さらにそれらの記事を参照する新しい記事が生まれる、といった循環を繰り返したのだ。そうしてリンク数がどんどん増え、レスター内の件のページは、「Tシャツ」というキーワードでGoogle検索で1ページ目に表示されるようになった。
「Tシャツ」というキーワードは、オーバーチュアのキーワードアドバイスツールで調べたデータによると、2006年9月には6万5295回も検索されているビッグキーワードである。清水社長は「はてなからアクセスは、それだけでもかなりの数で、まるで嵐のようでした。そしてその嵐が去った後も、アクセス数は従来よりもいくらか増えたまま推移しています」と話してくれた。
レスターの1件に限らず、このようなソーシャルメディアでの情報の伝播が結果的にはSEOにも好影響を与えるという事例は多数ある。この意味からも、SMOの魅力はより高まるといってもよいだろう。
- 縫い目で見分けるTシャツやトレーナーの品質
http://www.rester.co.jp/info/sewingnui.htm [19] - 上記記事のはてなブックマーク
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.rester.co.jp/info/sewingnui.htm [20]
ソーシャルメディア最適化の16のルール
01リンクのしやすさを向上させよう
SMOの最優先事項として挙げられている基本は、将来にわたって変わらずそのページを指し示す固定のURLでコンテンツを公開することだ。サイト内のページがリンクしにくいものだったら、そもそもSMOも何もない。ブログを公開できれば一番だが、そうでなくとも、固定のURLでページを公開することや、ホワイトペーパーをまとめること、それも難しければ、あちこちにあるコンテンツを使いやすいフォーマットに変換して集めておくだけでもいい。いずれにしても、リンクされやすいようにサイトのシステムやコンテンツを作り上げていくことはSMOの基本となる。
02タグ付けやブックマークをしやすくしよう
「はてなブックマークに登録」や「del.icio.usに追加」のようなリンクを設置しておくこともタグ付けしやすくする一例だが、それだけではなく、関連するタグのリストを作って提案(自動的にそのタグでサイトを追加できるように)したり、ポピュラーなソーシャルブックマークサイトで自分で最初にあらかじめタグ付けしたりしておくのもいいだろう。
03リンクする人も得をするようにしよう
被リンクがどれだけあるか、ということは、ウェブサイトやブログの成功の指標としてよく使われ、ウェブ検索結果をはじめさまざまなランキングを向上させる。自分のサイトへの被リンクをより多く得るために、あなたのサイトにリンクするサイトもまた得をするようにするのもいい。たとえば、最近のリンク元のリストをサイトに表示する、といったことによって、あなたのサイトにリンクする人々は得をし、喜んであなたのサイトにリンクするようになる。
04コンテンツに旅をさせよう
たとえばPDFや動画ファイルや音声ファイルのような、サイトの外でも利用できるコンテンツを持っている場合、関連するサイトにそれらを登録しよう。動画ならYouTubeにアップロード、音声ならポッドキャスト配信、といったように。すると、それらのコンテンツがより遠くまで伝達されることを促進することになり、その結果、あなたのサイトの知名度とトラフィック、および被リンクは高まるだろう。
05マッシュアップを奨励しよう
みんなで創造していく世界では、コンテンツをよりオープンにし、他者にも利用させるおく方が得策だ。YouTubeは、誰でもサイトにビデオを埋め込めるようにするためのコードを提供するというアイデアによって成長を促進させた。また、RSSを通じてコンテンツを提供することで、他者がマッシュアップを作ることが容易になり、トラフィックを増大させるたりコンテンツを増強したりすることを可能にする。
06他人の情報源になろう
ユーザーに役立ちそうなリソースを見つけたら、それがたとえ競合サイトだったとしても、まっ先にそこにリンクし、ユーザーの役に立とう。正しくリンクすれば、それはコミュニティ内での最初の情報発見者として認められ、人々はあなたのサイトにリンクして「役立つ」「おすすめ」などといったタグを付けるだろう。そしてあなたのサイトにもトラフィックが集まる。さらには、こうしたタグ付けの結果、あなたのサイトはウェブ検索結果においても優位に立つだろう。
07役に立つ貴重なユーザーに報いよう
あなたのサイトによい意味での影響を与えたり、擁護したりしてくれる常連ユーザーに報いよう。彼らの尽力を讃えたり、またはシステムによって自動的に評価したりできるようにすることで、彼らのモチベーションを維持しよう。彼らがよい働きをしたら、そのことへの感謝の気持ちを、即時に、内緒のメールやメッセージで伝えることは、彼らを長くモチベートする。こうしたことによって、コミュニティの最も重要なメンバーをあなたのサイトの近くにとどめておくことができるだろう。
08やりとりに参加しよう
会話や議論などのコミュニケーションに参加し、継続しよう。ソーシャルメディアが双方向のものであることを忘れてはいけない。コミュニティと会話し続けることによって、あなたはあなたの認知度を高め続け、話題の広がる期間を延長し続けることになる。そうし続けることによって、しばしば雪だるま式の効果を生む。あなたのメッセージをより広く、速く広めることにとって、会話や議論などのコミュニケーションに参加し続けることはとても重要だ。
09ターゲットユーザーを知ろう
誰もが同じ商品やコンテンツを欲しがるわけではない。あなたと好みが合うユーザーと、そうでないユーザーが存在するのだ。だからこそ、ターゲットユーザーを知っておくべきだ。あなたのメッセージを好むユーザー層を知り、そうしたユーザーやそのコミュニティに対してメッセージを届けるべきだ。
10受けるコンテンツを作ろう
自然に広まっていくようなコンテンツは必ずある。そうしたコンテンツを作るにあたって重要なことは、どんな業界でどんなものを売っているとかいうことではなく、そうしたコンテンツを作れる可能性が常に存在するということだ。方法も問題ではない。ウィジェットを作るのか、人々を笑わせるのか、ホワイトペーパーを書くのか、といったことにかかわらず、自然に広まっていくようなコンテンツを制作することは可能だ。どんな種類のコンテンツを発表するのがあなたのためになるのかを知り、それを作ろう。
11正直でいよう
ソーシャルメディアとの関わりの中では、正直に、誠実に、すべての行動をなすべきだ。なぜなら、コミュニティはペテン師を認めないからだ。嘘や、偽善や、不本意な馴れ合いや、自作自演などは、破綻や崩壊や炎上を招く。そこまででなかったとしても、あなたの主張に耳を貸す人は確実に減るだろう。SMOを成功させるためには、正直に、誠実に、ことを運ぶ必要がある。
12謙虚でいよう
謙虚でいることはとても重要だ。ソーシャルメディアの中で一時的にもてはやされたときなど、まるで自分がアルファブロガーや有名評論家になったかのように思い、調子に乗りたくなることがある。こうした思い上がりや慢心は、よい結果をもたらさない。思い上がりや慢心を抱いてしまったときは、かつて道端であなたに手をさしのべた人々を思い出そう。それらの人々への敬意によって、調子に乗った状態から目覚めることができる。
13新しいことを試そう。新鮮なままでいよう
新しい挑戦を怖れてはいけない。常に新鮮な気持ちを維持しよう。ソーシャルメディアは分単位で変化している。自分の専門分野について、新しい道具や製品、課題に挑戦し続けよう。
14SMO戦略の目的と目標を定めよう
目的を明らかにし、目標を定めよう。SMOに関する戦術によって得たい成果がどんなものなのかをもう一度確認しよう。たとえば、それが評判を向上させることなのか、または販売を拡張させることなのか、影響力を拡大することなのか、信頼性を向上させることなのか、寄付を集めることなのか、トラフィックやページビューを増大させることなのか、または別の何かなのか、といったことを明らかにした上で、SMO戦略の目標を定めよう。
15SMO戦術選びは賢くやろう
どんな行動が、求めている結果に対して、どれだけの衝撃をともなって、どれだけの影響力を持つのか、ということを認識しよう。PlumのHans Peter BrondmoによるSES San Joseでのセッション「Marketing with Social Media」によると、ソーシャルメディアの関係者のうち、1%の人々がコンテンツを作成し、10%がその内容を豊かにし、90%はそれを消費しているという。多くの影響がコンテンツの作成者とそれらの再利用者によって支配されているのだ。コンテンツを制作することで可能になることを考えるのと同様に、そのコンテンツが再利用されることによって可能になる最も生産的な結果についても、何ができるかということを考えるべきだ。
16SMOをプロセスと習慣の一部にしよう
SMO戦術は、サイト運営業務の一部になるべきだ。ドキュメント制作のテンプレート段階や、情報配分の一部分として、SMO戦術を取り込む方法を見つけよう。たとえば、ソーシャルブックマーキングを奨励することや、被リンクに報いるような細かいことであれば、システムに実装するなりしてそれを標準的なものにすることは難しくない。
「SMOの16のルール」自体もソーシャルメディアでまとめられた
SMOでは、ソーシャルブックマークやブログ、ソーシャルニュース、SNS、といったソーシャルメディアからのトラフィック誘導を目指し、そのための手法を探る。SMOという言葉自体はそれほど新しいものではない。しかし、最近になってさまざまな手法が生まれた背景には、やはりメディアとしてのソーシャルメディアの驚異的な成長と、その中で試行錯誤する中でノウハウが蓄積されてきたということがあるだろう。
現在のSMOにまつわる一連の騒ぎもまた、ウェブ上で活発にやりとりされる他のさまざまな話題と同様に、やはりソーシャルメディアを通じて成長したものだ。
発端はOgilvy Public Relations WorldwideというPR会社でインタラクティブマーケティング部長を務めるRohit Bhargava氏で、彼がブログ「Influential Interactive Marketing」に投稿した「5 Rules of Social Media Optimization (SMO)」という記事で、サイトの実装の面からワークフローに組み込むことのできるSMOの手法が5つ紹介された。この記事はソーシャルブックマークや他のブログなどを通じて瞬く間にウェブ上の大きな話題になり、あっという間に175件ものリンクを集めた。
また、この記事に応える形で、さまざまなブロガーから次々に新しい手法が発表され、ルールの数はわずか一週間足らずの間に16に達した。
この記事で紹介した16のルールは、このようにしてソーシャルメディアでまとめられたものをベースにしている。新しく追加されたルールの中には、サイト運営の心構えや指針といった内容のものが多数を占める。そして、先のブログ「Influential Interactive Marketing」では17番目のルールを募集中だ。こうした取り組み自体がソーシャルメディア的なノウハウの「共有(シェアリング)」そのものであり、これ自体がSMOの見本のようになっている。このブログ全体がこうしたSMOの実験場のような様相を呈しているので、気になる方は定期的にチェックするとよいだろう。
ブログサービス利用者の数は868万
SMOによる情報伝達の仕組みは、直感的には理解しにくい部分があるかもしれない。総務省の通信動向調査によると、日本のインターネット利用者数はおよそ8,000万人で、6歳以上人口のおよそ7割に達しており、もはやインターネット自体は一般的なものとなっている。しかし、同じく総務省が発表した報道発表資料によると、2006年3月末時点で登録されているブログサービス利用者の数は868万と、インターネット人口の一割強に過ぎない。日本の総人口を1億2,700万人とすると、総人口の6.8%に相当する数のブログ数だ。
なお、このブログサービス利用者数は、国内の主要ブログサービス事業者53社の登録者数の合計であり、Movable Type や WordPress などのインストール型や、BloggerやBloglinesのような海外のサービス利用者は含まれていない。また、a-BlogやTypePadのように、国内の事業者が提供しているサービスであっても事業者自体が調査に含まれていないものもある。こうした誤差を加味して考える必要はあるものの、インターネット人口の一割強というブログ開設数は、一見すると非常に少ないものに見えるかもしれない。
しかし、これだけの利用者がいれば、十分にSMOは効果を発揮する。なぜなら、情報を流通させるためにすべての人が情報の発信者になる必要はなく、ごく少数の発信者と、それを上回る数の情報の媒介者がいれば、残りのすべてが単なる消費者だったとしても、情報は無限に拡がる可能性を秘めているからだ。この点については、図5のような情報の流通が連続して起きることを想像していただければ、単純に理解できるはずだ。または、「16のルール」の第15で紹介した1%、10%、90%の内容を参考にしてもよい。ブログ人口の少なさは、SMOの効果を低く見積もる理由にはならない。
SMOは万能ではないし、ソーシャルメディアにおける情報発信は時には炎上の危険をともなう。しかし、情報の伝達経路としてのソーシャルメディアは、利用者の急拡大と合わせて、だんだんと洗練の度合いを増し、ますます注目を集めている。この記事で紹介したSMOの手法の1つひとつは、ある意味では当然のことばかりだ。しかし、そうした当然のことが編集されていった背景には、ソーシャルメディアの利用者が急拡大していることを受けて、その恩恵にあずかっているマーケターたちが存在し、彼らがその経験から、共通の教訓を得ているという事実がある。読者の方々には、ぜひとも、ユーザーの知恵の集合であるソーシャルメディアと、そこで活動するマーケターたちの経験の集合であるノウハウを、自分のものとして利用していただきたい。
ブログ及びSNSの登録者数(平成18年3月末現在)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060413_2.html [22]
我が国のインターネットの概観
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/pdf/060130_2_bt2.pdf [23]
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.3 [24]』 掲載の記事です。