鈴木謙一が選ぶ 検索エンジン関連重要10大トピック(2016年度上半期版)――1位はやはり“あれ”
今週はいつもとは構成を変えて、特別編でお送りする。
まだ少し早いが、2016年度上半期(4月~9月)の間に起こった、検索エンジン関連の重要なトピックを、筆者の独断で振り返る。
「10大ニュース」として選び始めたのだが、番外編をふくめて11個のトピックを選んだ。
- AMPの拡大
- モバイルフレンドリーの継続
- キーワードプランナーのSEO利用に制限
- ウェブマスター向けオフィスアワー日本語版の定期開催
- AMPと同時に起きた、もう1つの検索結果の大変化
- UGCサービスがスパム撲滅で一致団結
- Google Dance Tokyo開催、そしてあの有名人が登場
- もう1つのモバイルフレンドリー、“プログレッシブ・ウェブ・アプリ”
- 音声検索の利用が急上昇中
- グーグルはペンギンアップデートの更新を諦めた?
- TBPRにさようなら
1.AMPの拡大
2016年度上期の最重要トピックはAMPの進化とグーグルの検索結果におけるAMPの拡大(の足音)だ。
グーグルのモバイル検索がAMPを正式にサポートしたのは、2016年2月の後半だった。現時点では、ニュース系コンテンツがトップニュースとして(主に)専用のカルーセルに掲載される。
しかしグーグルは、AMPの扱いをトップニュースに留めておくわけではない。その拡大の動きを2016年度上期に着実に進めている。
具体的には、通常の検索結果枠にもAMP対応したページを表示するモバイル検索を、開発版として8月に公開している。こちらは年内には正式に導入されるかもしれない。
それ以外にも、ECなどさまざまな方面でもAMPの扱いが拡大していく可能性がある。
また、グーグル(を中心としたAMPプロジェクト)は、AMPの機能強化も進めている。当初は制限が強く不満の多かったAMPだが、
- ソーシャルボタン
- サイドバー
- フォーム
など通常のウェブページで当たり前のように使える機能を利用するための改良が続いているのだ。
AMP関連のニュースは、下半期もたくさん取り上げることになるだろう。
2.モバイルフレンドリーの継続
AMPの影に隠れてしまっている感もあるが、“モバイルフレンドリー”の強化もグーグルは続けており、重要なトピックだ。
2016年5月には、スマホ対応していないサイト(ウェブページ)の評価を下げるアルゴリズムの影響力を強化する変更を実施した(3月に事前告知)。
また、UXを悪くするインタースティシャルへの対応を、グーグルはモバイルフレンドリーの枠組みで進めている。
アプリインストールを勧めるインタースティシャルがあるとモバイルフレンドリーではないと判定する動きを昨年から始めていたが、インタースティシャル対策の対象範囲を2017年1月に拡大することを発表した。
わずらわしいインタースティシャルを掲載するページは、(一部の例外を除いて)すべて評価を下げられる可能性がある点には注意してほしい。
3.キーワードプランナーのSEO利用に制限
SEOのキーワード調査に非常に役に立っていたキーワードプランナーに制限がかかった。
具体的には、ある程度以上の広告費を使っているアカウントからでなければ、キーワードプランナーで検索ボリュームの詳細なデータを見られなくなった。
もっとも、キーワードプランナーは広告主のためにグーグルが提供しているツールだ。SEO目的の無理な利用が、広告主の利用を妨害しないようにするための処置である。
サーチコンソールの検索アナリティクスでデータを取得できるようになっているとはいえ、公式なデータソースが1つ減るというのは(SEO特化の一部の人にとっては)、衝撃的なニュースだっただろう。
4.ウェブマスター向けオフィスアワー日本語版の定期開催
サーチクオリティチームの金谷氏と長山氏が中心となって、我々ウェブマスターからのさまざまな質問にグーグルの社員が答えてくれる「オフィスアワー」が上半期も毎月開催された点を、重要なトピックとして挙げておきたい。
7月には2回開かれたし、時間も30分から60分へと伸びている。
数年前なら、グーグル社員に直接質問できる機会は非常に限られていた。しかし今はこうして「知りたいことを直接聞いて、答えてもらう」場があるというのは、非常に価値があることだと考えている。
下半期も有益なQ&Aに期待したい。
なおオフィスアワーの予定はこちらでアナウンスされる。過去のオフィスアワーはこちらから視聴できる。
5.AMPと同時に起きた、もう1つの検索結果の大変化
AMPの導入と時を同じくして、グーグルの検索結果にもう1つ大きな変化が起きたことを、覚えているだろうか。右側の広告枠が廃止され、アドワーズ広告はすべてオーガニック検索の上に掲載されるようになった件だ(2016年2月なので正確には2016年度上半期ではないが)。
広告にクリックを奪われるのではないかとの懸念もあったが、結果として、大きな混乱を引き起こすほどの影響はなかったようだ。変更直後は衝撃が走ったが、ホッと一安心といったところだ。
6.UGCサービスがスパム撲滅で一致団結
アメブロ・はてな・pixivといった、ブログやイラストなどのUGC(ユーザー生成コンテンツ)のサービスを提供している事業者が、検索スパム対策で団結して動くようになったのも、大切なトピックだ。
具体的には、スパム情報の共有やアフィリエイトの悪用抑止を目的とした会合を、グーグル主催で定期的に開いている。
グーグルとUGCサービス事業者たちが情報・意見交換することで、双方のスパム対策がさらに進展することを期待したい。
7.Google Dance Tokyo開催、そしてあの有名人が登場
Google Dance(グーグル・ダンス)という、グーグル主催のイベントがついに日本で開催されたのも、筆者としては大きなトピックだと感じた。これまで海外でしか開催されていなかったイベントだからだ。
さらに、その場には、グーグルのスポークスマンともいうべき存在のゲイリー・イリェーシュ氏が参加してくれていたのも、印象深い。
イベントでは、
- イリェーシュ氏を含めた4人のグーグルのスタッフによる最新情報の提供セッション
- Q&Aセッション
- 参加者を含めた交流会
が行われた。実際に筆者も参加したが、非常に価値のある場だった。
大好物の「つけ麺」を食べる目的も兼ねて、イリェーシュ氏にまた日本を訪問してもらいたいものだ。
8.もう1つのモバイルフレンドリー、“プログレッシブ・ウェブ・アプリ”
ウェブページでもアプリのような体験を提供できる、Progressive Web App(プログレッシブ・ウェブ・アプリ、PWA)が注目を浴びているのも、押さえておきたいトピックだ(もっとも、正確には、グーグルが注目を浴びさせていると言ったほうがいいかもしれないのだが)。
PWAの成功事例が続々と出てきている。
- ページの表示時間を75%減少(SUUMO)
- コンバージョン率が213%(タウンワーク)
- 1セッションあたりの訪問ページ数が2倍(アリエクスプレス)
PWAは、下半期にもさらに注目を浴びそうだ。実装の敷居が比較的高い技術だが、意識だけは向けておきたい。
9.音声検索の利用が急上昇中
音声検索の利用が伸びてきている点も、モバイル化の流れのなかで押さえておきたいトピックだ。全世界では、実に20%が音声検索になっているという。
またSEOとは直接関係しないが、グーグルアプリの音声検索では、文字入力の検索と比べると、アクション系のクエリが30倍多くなっているとのことでもある。
音声検索は特に若い世代が好んで使う傾向にある。若い世代のスマホ利用が増えれば増えるほど、音声検索も増えていくのではないだろうか。
音声検索が増えてきているからといって、何か特別な対策が必要ということにはならない。強いて言えば、今まで以上にユーザーの検索意図をより的確にとらえたコンテンツ作りが重要になってくるということだ。
音声検索は文字入力の検索とは異なり、話し言葉、それも長いクエリが多い。クエリを表現している「言葉(文字)」だけにとらわれるのではなく、そのクエリの背後にあるユーザーの検索意図(言い換えれば「ユーザーが本当に求めているのが何なのか」)を、検索マーケターとしてはよりしっかりと理解していかなければならない。
10.グーグルはペンギンアップデートの更新を諦めた?
10個目のトピックは、2016年上半期の「出来事」ではないが、このタイミングで改めて整理しておきたいものだ。
人工リンクに象徴されるようなウェブスパムに強烈な制裁を与えてきたペンギンアップデートだ。
ペンギンアップデートが最後に更新されてから、ほぼ700日が経過した。
ペンギンアップデートに関しては、「まもなく更新を実施する」という表現をグーグル社員が何度となく繰り返してきたが、いっこうに実施されていない。
ついには、「言ったとおりにならないから、もう更新の予定は表では言わない」とゲイリー・イリェーシュ氏が言い出す始末だ。
もうペンギンは更新しないのではないかと疑いたくなる。
しかしジョン・ミューラー氏は「更新しないなんてだれも言ってない」と、更新を必ず実施すると暗に断言している。
「ペンギンアップデート、ついに更新!」を下半期にはトップ掲載で発表できるだろうか?
番外編TBPRにさようなら
最後は番外編として、2016年上半期ではないトピックだが、ここに含めておきたいものを紹介する。
ツールバーのPageRank(TBPR)の表示をグーグルが完全に終了した。
更新はずっと止まっていたものの数値を見ることはできていたのだが、もはや数値すら見ることもできなくなった。
一般のウェブ担当者にとって、TBPRはもう数年前からその存在価値を失っていた。よって完全に廃止されたとしても影響は完璧にゼロだ。なくても何も困らない。
しかし筆者のように、TBPRの更新に一喜一憂していたころからSEOに取り組んでいた身としては、ノスタルジックなニュースだった。
いつもの海外&国内SEO情報とは少し違う形でお届けした今回だが、お楽しみいただけただろうか。
これからも、常に新しいトピックをお届けするとともに、定期的にこうして振り返るような情報の整理もしていければと思っている。
コメント
ペンギンアップデートは実施確定
ペンギンアップデートに関しては、準備完了と言うメッセージがありましたね。
既に稼働スケジュールにのせたから、何時になるかはわからないけどお楽しみにといった内容だったと思います。既に動いた後かもしれませんが。
発表しないだけで進めてますよね
佐古さん
コメントありがとうございます。私が夏休みを頂いていまして、返信が遅くなりました。
ペンギンは、「いつやる」という予告をしなくなっただけで、動いてはいるんですよね。
まぁ、その背後には、優先度の問題か技術的な問題かはわかりませんが、延び延びになっていた事情があるのですが。
準備完了なら、まもなくかもしれませんね。でも、これまでのこともあるので、のんびりと待つようにしましょう。