はてなが訊く「オウンドメディア成功の法則」

オウンドメディアのCMS、選び方のポイントは何か?はてなの磯和太郎氏に訊いてみた

オウンドメディアのCMSには何を使えば良いのか? そもそもどういうポイントを考慮して選べば良いのか?はてなの磯和氏に、編集部が訊いてみた。

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オウンドメディアのCMSには何を使えば良いのか? そもそもどういうポイントを考慮して選べば良いのか?

オウンドメディアの運用についていろいろな企業に取材する本連載。今回は、はてなに相談に来るWeb担当者や情シス担当者が何を気にしているのか。企業向けCMSである「はてなブログMedia」を提供するはてなの磯和氏に、編集部が訊いてみた。◎撮影: 永友ヒロミ

まずは目的を達成できるかどうか

――はてなにオウンドメディアについて相談に来る方は、これからオウンドメディアを始めようとする方、すでに始めていて乗り換える方とどちらが多いですか?

磯和: 新規で始める方が約8割、他CMSからの乗り換えが約2割ですね。相談に来る方の検討の対立候補としてはほとんどがWordPressです。

――オウンドメディアで実現したいことは、CMSの選定にあたってどの程度影響しますか?

磯和: かなり影響しますよ。「オウンドメディアで何を実現したいか」がCMS選定ではもっとも重要なので、まずは目的を確認しています。そのうえで、その目的を果たすにあたって、はてなブログMediaが最適なのか、必要な機能を実現できるかどうかをお答えしています。

たとえば、ECサイト内のオウンドメディアで商品紹介から売り上げにつなげるという目的があるとします。ECサイトと連携して記事に関連する商品を表示して購入できるようにしたいのであれば、どうすればそれを実現できるのか。緊密な連携が必要であればフルスクラッチやそれに近い開発が可能なCMSが必要になるでしょう。会員コミュニティを作ってエンゲージメントを深めたい、という目的ならば、独自の会員管理機能、ログイン機能などがあるほうが望ましいと考えますが、その場合は、はてなブログMediaではなく、そうしたニーズに特化したシステムのほうがおすすめなので、そのようにお伝えしています。

株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー 磯和太郎氏

――はてなブログMediaを始めたい、という方にどんなことを確認しますか?

磯和: やはり達成したいゴールとKPIですね。そのために必要なことが、はてなブログMediaで設計できそうかを確認します。そしてもう一つ、経営陣も含めてそのゴールに対して合意ができているか、を聞いています。オウンドメディアは長期的な取り組みなので、現場の熱意、チームでの合意も大切ですが、経営レベルでのサポートがあることが非常に重要なのです。その上で、はてなブログMediaがそのゴールやKPIの達成に貢献できるか、設計に落とせるのか、という点も確認させてもらっています。

運用においても、経営陣が関与するか、経営陣に近い現場の担当者がメンバーに入っていると進めやすくなります。予算獲得にもつながりますし、手厚い体制を作れるかどうかにも影響します。反対に、担当者1人に丸投げという状況は、続かなくなってしまうことが多いので、経営陣が関与するように説得することもあります。

システム要件、カスタマイズなどは導入時にチェック

――導入企業からのシステム面での要件としては、どのようなことがありますか?

磯和: 近年はWebサービスでの大規模なセキュリティ事故なども増えて社会全体で懸念も増していることから、セキュリティ的な要件の達成を求められることが多いですね。情報システム部門から膨大なセキュリティチェックシートを用意されることもあります。その要件に対応できるCMSでないと、導入できないということですね。

他のシステムとの連携、カスタマイズ、拡張性も要件にあげられますね。具体的なツール名をあげて連携可能かどうか確認されることがあります。またそのときは必要なくても、将来的な拡張性を相談されることがあります。はてなブログMediaは、拡張性はあるものの、どんなシステムでも連携できるというわけではないので、制約があることを説明しています。

別のシステムからの移行の場合は、集客力を確認されることもあります。はてなブログMediaのベースになっている「はてなブログ」は、SEOの専門家の辻正浩氏の協力の上、SEOを考慮した設計があらかじめ組み込まれていることを伝えています。

――はてなブログMediaは投稿を作成しやすいというお話を聞きますが、ユーザービリティなどは要件にならないのでしょうか?

磯和: CMS選定時にユーザービリティをそこまで重視される方は多くないですね。最近のCMSは比較的どれも使いやすいからかもしれません。ただ、はてなブログMediaを導入された方にお話をうかがうと、「書くことに集中できるUIなので、楽に記事が書ける」という感想をいただくことがあります。これは、はてなブログMediaの編集機能が、多くの一般ユーザーさんに利用いただいている「はてなブログ」をベースにして作られているからかもしれません。

ただ、SEOを考慮した設計や書きやすいUIがあるからといって、導入すれば必ずよい記事ができるというわけではありません。仕組みとして集客に貢献できますし、書きやすさにも配慮していますが、1記事の質を担保するわけではないので、幻想を持たれすぎないようにお伝えしています。CMSが優れていることはビジネスゴール達成に大きく貢献はしますが、それ以上に大事なのはコンテンツの中身だと思います。

無料のCMSを使っていたのに、数年後に運用コストが逼迫することも

――コスト面はどうでしょうか?

磯和: はてなブログMediaの場合は、初期費用に加えて月額費用がかかります。WordPressは基本的に無料で使えるCMSですが、レンタルサーバーやクラウド環境を用意するなど、サーバーコストが別にかかりますので、メディアの規模が大きくなると、想定以上に負担になることがあります。はてなブログMediaは、SaaSなのでメディアが成長してもインフラに関わるコストを気にしなくていいのはメリットだと思います。

――CMSのプランニングとして、導入当初に見落としがちなことはありますか?

磯和: 先ほどのお話にもつながりますが、運用コストが想定できていない場合があります。サーバーなどのインフラコストもありますし、もっと大きいのは人のコストですね。長く続いているオウンドメディアの場合、担当者が変わっても継続できるような仕組みや業務フローが成立していると思います。引き継げる体制ができているか、引き継ぎのためのコストをかけられるかは、意識しておきたいところです。

引き継ぎにあたっては、オウンドメディアの存在意義、何を⽬指して運⽤しているのかという思いや温度感が⾔語化できていること、社内でそれが認知されていることが重要です。オウンドメディアをスタートした担当者が異動することになって、引き継ぎ事項をドキュメント化したものの、次の担当者にメディアの温度感や運用ルールが伝わらず、引き継ぎ完了まで半年以上かかっているという事例も聞いています。

引き継ぎでなくても、少人数で運営しているときは、なんとなく共有されているものが、チームのメンバーが増えたときに伝わらなくなることがあります。きちんと言語化しているかどうかで、チーム運営も変わります。言語化するのは、難しいことではないのですが、見落とす人が多いので、気をつけて欲しい点です。

――組織内での認識の共有が大事なのですね。冒頭で、乗り換えの相談が2割というお話がありましたが、なぜ乗り換えを検討されているのか、よくある乗り換えの理由にどんなものがありますか?

磯和: それも運用コストが多いですね。ページデザインを少し変えるだけでもコストがかかる、ソーシャルボタンを加えるのにコストがかかるといったお話はよく聞きます。先程の話にも通じますが、操作マニュアルがあるものの、メンテナンスされていなくて、担当者が退職してしまって入稿方法がわからなくなった、ということもありました。他にも権限の管理がわからない、URLの設定変更がわからないなど、運用にあたっての不便が積み重なると、刷新したくなることも多いようです。

乗り換えの方からは、直感的に操作できることに加えて、基本操作を確認するための「はてなブログ」のヘルプがあることや「はてなブログMedia」に特化したヘルプセンターが存在していることなど、使う際の学習コストがかからないことを評価いただくこともあるのですが、以前そこに苦労されたのだなと思います。新規で始める方には抜けている視点でもありますね。

コスト増、負担増加で継続できなくなるケースも

――古いCMSでページデザインの変更ができないという話は時々聞きますね。

磯和: 5、6年前に始めたときに、WordPressを使わず、一から構築しているケースでも苦労されていることがありますね。その時は最新だったけれど、時代に合わせた改修が複雑でできない、というケースです。

あと、WordPressやほかのCMSを使っているものの、導入時の最新版で最適化してしまったからアップデートできないというご相談をいただくこともあります。コストの安い制作会社に導入してもらって、そのあとの保守がないので、アップデートできていないという例もあります。

その状態で別のシステムに移行しようとすると、現状のシステムの構造の解析だけでも工数がかかりますし、解析できたとしても確実に移行できるわけではありません。ある事例では、二重運用期間を3、4ヵ月用意して、それでも移行できないところはあきらめて、部分だけ移行したそうです。

――増築を繰り返した家のように、少しずつシステムが複雑になってしまうのかもしれないですね。

磯和: 担当者が変わって引き継ぎができなかった、できなかったからCMSを変えた、そうしたら業務フローが変わって、新たな破綻につながった、という例もあります。システム管理については、どこまで自社で担保するのか、システム系の専任の人をつけるか、などを最初に決めておくといいですね。

なお、継続するうちにコストがかかるようになると、担当が変わったときに「なぜコストをかけてメディアを続けているか」をきちんと説明できないと、予算が下りずにオウンドメディアが続かなくなることもあります。

はてなが残っているのは時代のニーズをとらえてきたから

――17年間、ブログの時代からCMSを提供し続けているはてなから見て、CMSはどのように移り変わってきましたか? 今はほとんど使われないCMSや閉鎖してしまったブログサービスもたくさんありますよね。

磯和: その時代ごとに求められる機能や設計を追いかけて、刷新し続けられるCMSが残っているのだと思いますし、今後もそうでしょう。

クライアントとなる企業が使い勝手として求める機能や、できあがったコンテンツの書き手・読み手となるエンドユーザーの変化に対して敏感に対応していくのは大前提ですが、その一環でSEOを考えるならGoogleのアルゴリズムの変化に対応する必要があります。書かれたコンテンツがその情報を求める読み手に届けられるよう、Googleの目指すところについていくのは、ブログメディアやCMSにとって重要ですし、SEOが弱ければユーザーに選ばれなくなります。

新しいSNSの拡散力が強いなら、それに対応した機能を用意する、スマートニュースを始めとしたニュースプラットフォームなど、外部への記事配信にも対応できるようにするなど、時代のニーズを理解して機能改善し続けることですね。

オウンドメディアの情報は資産。はてながプラットフォーマーとして貫く思い

――新興のブログプラットフォームなども登場してきています。

磯和: プラットフォームごとに信念が異なるので、オウンドメディアの目的に対してマッチするのか考えるといいと思います。

はてなでは、ブログサービスはその人の書いた人生の物語や宝物を保管するようなものととらえています。

はてなブログMediaでも、利用するクライアントの世界観を活かして、読まれやすく発信でき、そして永続的にストックできることを目指して設計されています。

永続的にストックするためには、事業を安定させて利益を出し、ブログサービスを守るための投資ができないといけません。17年間、個人向けのブログサービスをやってきたはてなが、企業向けのサービスを展開するときも、その魂は共通していますし、インターネットをより良くしたいというミッションにもつながっています。

オウンドメディアを継続して運用し、成果をあげられるようになるということは、コンテンツが企業の資産として蓄積されていくことでもあります。長く続けている企業ほど、コンテンツが資産である、資産が活きるようになってきたと実感されていますね。これはスタート時点ではイメージしにくいかもしれません。

資産というのは、オーガニックな検索に対する費用対効果のようなものだけではなく、人材が資産というときと同じように、コンテンツそのものが財であるという考え方です。

はてなでは、コンテンツは資産であるから、他のシステムに移行することも持ち主の自由だと考えています。そのため、記事データのインポート/エクスポート機能を用意しています。また、企業サイトなど本サイトの直下にディレクトリとして配置できるようにもしています。企業によっては、Webサイトを主役として運営したいという方針があるからです。

備わっている機能には、そのプラットフォームの思想が色濃く反映されます。機能比較をするときに、そのプラットフォームがどんな思想でやっているのか、という視点で見てみるとおもしろいかもしれません。

――コンテンツが資産になるまで、長くオウンドメディアを運用できている企業は強いですね。

磯和: オウンドメディアは熱量を保ったまま自走できないと、簡単に破綻してしまいます。個人、部署だけでなく、なぜオウンドメディアをやるのか、経営陣の強い信念として組織で共有されているところは長く続きますね。

長く続けるためには、時代が変わってスマホすらなくなるかもしれない大きな変化があっても、つなぎ続けられるCMSを選ぶようにしてほしいですね。ただ、どんなに時代は変わってもテキストが消えることはないと思っています。画像が動画になる、動画がVRになるなどの変化があっても、テキストがすべてなくなるということはないのではないでしょうか。

――最後に、オウンドメディア運営を応援するために、どのような取り組みをしていますか?

磯和: オウンドメディアの成功を社内にアピールするのも大事ですが、社外にアピールするのも同じくらい重要だと考えています。イベントなどに登壇することで、社外の人から評価されて、その評判が社内に逆輸入されることもあるからです。

はてなでは、クライアントの事例を多く公開していますし、クライアントが登壇するイベントも開催しています。パートナーとして、メディアの箱を用意するだけでなく、成功するためのアドバイス、刺激を受けられるリアルな場を作っています。その理由は、クライアントの担当者を「えらくしたい」からです。クライアントの成功が我々の成功だと考えており、一緒に成功していくための取り組みは今後も続けていきたいです。

磯和 太郎(いそわ・たろう)

株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー

大学卒業後、SIerやITベンチャー、フリーランスなどでの開発・Webディレクションを経て、2012年インフォバーン入社。ソリューション担当の執行役員などを歴任し企業のオウンドメディア構築やコンテンツマーケティングを推進。

2017年はてな入社後は「はてなブックマーク」「はてなブログ」のプロデューサーを経て、 現在は企業向けオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」およびはてなのブロガーリソースなどを活用したコンテンツ制作支援を含むコンテンツマーケティングサービスの開発を統括している。

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