デジタルネイティブ世代に刺さるコンテンツはどう作る? 三井住友海上のオウンドメディア「くるまも」担当者に聞いた
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「大人になった息子たちとドライブして、ドローンで家族写真を撮ってみた」「車中泊の楽しさってなに?愛車で寝泊まり&漫画を描きながら全国を旅する小田原ドラゴンさんに聞いてみた」など、ネットで話題になった記事を読んだ方も多いのでは?これらの記事が掲載されている「くるまも」は、三井住友海上のオウンドメディアだ。損害保険会社がなぜカーライフを打ち出すオウンドメディアを運営しているのか?運用目的や運用体制などについて、三井住友海上CXデザイン部CXアドクリエーションチーム チーム長・足立信吾氏、課長代理・粟田裕一氏、課長代理・野村美紗季氏にお話をうかがった。
長い歴史を持つ大手損害保険会社が立ち向かう急速な環境の変化
――2023年にCXデザイン部が新設されたとのことですが、三井住友海上でマーケティングやCXを強化するに至った背景について教えてください。
足立: そもそもの「損害保険」というビジネスの特徴から説明させていただきます。損害保険は、お茶の間から宇宙まで、鉛筆からロケットまでと言われるように、B2CもB2Bも含めて幅広い分野の挑戦を支える公共性の高い仕組みです。最初は海上保険からスタートし、時代の変化に合わせて自動車事故やサイバーテロなど新しいリスクにも対応して発展していきました。保険は目に見えない無形のサービスです。挑戦に伴うリスクの移転、もしものときの円満な解決のためのサービスをご購入いただいています。
損害保険の歴史を紐解いてみますと、1998年に自動車保険等の主要商品について保険料率が自由化されるまでは、どの会社でも同じ補償内容、同じ保険料率で販売していたという非常に規制が強い業界です。自由化以降、各社が商品内容に違いを出して販売するようになりました。こうした商品特性と歴史から、100年以上全国の地域密着型の代理店をパートナーとして、プッシュ戦略で保険を販売してきました。
しかし、3C(Customer〔市場・顧客〕、Competitor〔競合〕、Company〔自社〕)がそれぞれ変わっています。顧客は、インターネットとスマホの普及により全世代のデジタルリテラシーが高まっています。競合は、代理店を通さないダイレクト型保険会社のシェアが年々増加し、現在は17%となっています。そして自社も、お客様、競合の変化に合わせて変わらなければなりません。特にこれから保険を検討する若年層の認知獲得をする必要があり、マーケティングミックスで保険の便益を訴求していくことが重要です。損害保険という商品は差別化しにくくコモディティ化しているため、体験価値で勝負する方向にかじを切るために、CXデザイン部が創設されたのです。
――その流れの中で「くるまも」というオウンドメディアを選択した理由を教えてください。
足立: CXデザイン部長CMOである木田はもともとデータサイエンティストですし、保険料率の算定をするアクチュアリーの経験があるメンバーやデータサイエンティストもチームにいます。データに強い人材がいるので、データ戦略を強めたいということから、PESO(Paidメディア〔広告〕、Earnedメディア〔パブリシティ〕、Sharedメディア〔SNSなど〕、Ownedメディア〔企業サイトや公式サイト〕)を活用したプロモーションに関してもデータドリブンで進めたいと考えました。
特にオウンドメディアは、これまで当社や代理店がアプローチしづらかった若年層、デジタルネイティブ世代の接点を作れるという期待がありました。その中でも、車を持っていない層に、カーライフという切り口でタッチポイントを用意し、好意度形成、認知拡大を目指すことにしました。
ターゲットは車を持たないデジタルネイティブ世代
――「くるまも」の運営目的やKGI、KPIは何を設定していますか?
野村: 目的は、将来的に自動車保険を検討する潜在顧客のうち、特にインターネットと親和性の高いデジタルネイティブ世代をターゲットに、メディア運営を通して接点を作り、好感を醸成することです。また、コンテンツを通してオフィシャルサイトへの送客やSEOへの貢献も目指しています。
そこで全体指標として、当社の認知度、好意度を設定しています。さらにコンテンツ指標としてカーライフの理解や意識向上を計測するために、集客、閲覧、エンゲージメント、送客などを指標としています。定性評価としては、SNSを中心としたコメント分析をしています。
――オウンドメディアの立ち上げ時に、ターゲットを設定するにあたって、どのような調査をおこないましたか?
粟田: CXデザイン部では各種市場調査を行っており、保険の未加入者はどのような方が多いのかをデータで分析していました。オウンドメディアの立ち上げは新しいチャレンジなので、パートナーである「はてな」の協力のもと、競合のカーライフのメディアを把握しながら、どういうアプローチが差別化につながり、運営目的を達成できるかを検討しました。
その上で、これから車の購入や自動車保険を検討するデジタルネイティブ層をコアターゲットとして、30代前半のペルソナを策定しました。ペルソナは車がある快適な暮らしに漠然とした憧れはあるものの、車の購入までの道のりがはっきりしないので、購入に踏み切れないというインサイトを持っています。そこで、「くるまも」では自動車のある暮らしの具体的なイメージを提示することをキーポイントとしました。
メディアを通して、自動車利用意欲の喚起、ブランド想起、親近感を醸成し、保険の検討のときに選択肢になることを目指しています。
パートナー企業の支援を受けて、チームはミニマムで運営
――「くるまも」は、どのような運営体制をとっていますか?
野村: チーム内で主担当は2名、コンテンツの企画や確認などのサポートで4、5名という体制です。メディアの構築、記事制作、分析は、パートナーの「はてな」と協力しながら運営をしています。
粟田: メディア運営に関わる工数は大きいので、悩む企業は多いと思いますが、くるまもの場合、人数はミニマムにして、パートナーと一緒に、運営目的、クオリティを担保しています。
――パートナーに「はてな」を選んだ理由を教えてください。
粟田: 制作会社はたくさんありますが、「はてな」の場合は個人ユーザー向けのブログサービス運営に加えて、企業向けのオウンドメディア支援をしているので、どのような企画で、どのように編集すれば話題になるのかというノウハウがあるという点を心強く感じました。
保守や運用の工数は抑えたかったので、制作面のサポートだけでなく、 SEOに配慮して開発されたSaaSのCMSである「はてなブログMedia」が活用できるという点も評価しました。決め手になったことは、損害保険会社なのでWebサイトのセキュリティ要件が厳しいのですが、その点も対応できるということです。厳しいセキュリティチェックをクリアしてローンチできたのでよかったですし、親身に相談にのってもらい、運営していく中で信頼関係ができています。
おもしろいだけでなく、真に有益な情報にしたい
――記事の企画はどのように考えていますか?
粟田: 企画検討は「はてな」と一緒に行っています。企画案から、読後感はどうなるのかを考えたり、著者の実績調査、企画対象のアクティビティや施設などの評判などを調査したりすることもあります。
そして、当社が発信する意義も重要です。ありふれた記事では意味がなく、すでに似た内容がある場合は、どこが差別化ポイントになるのかを企画段階で考えています。参考として、ツールを使って検索キーワードの分析などもしながら、ニーズの調査をして企画を検討しています。
同時に、損害保険会社ではあるので、おもしろいだけではなく、「安心して楽しいカーライフを送る」というコンセプトが伝わることを目指しています。おもしろそうな企画であっても、安全性の観点から断念したものもあります。
――コンテンツづくりや編集で気を配っていることはありますか?
野村: 問いかけ型の表現で興味を引いて共感を生むようにするなど、読者が興味を持つ有益なコンテンツづくりを目指しています。たとえば、お子さんがいるファミリー向けの記事で取り上げる施設がお子さま連れの配慮をしているかどうかをチェックするなど、読者にとって有益な情報になるようにしています。表現については、読者に不快なイメージを与えないように、気をつけています。
コメントで読者の反応をチェック。反応がよい記事は検索にも表示されやすくなる
――記事公開後のデリバリー、集客はどのように行っていますか?
粟田: 記事公開直後が注目されるので、親和性が高い媒体に広告を出稿しています。当社のX(旧Twitter)、Instagramからの誘導もしています。
2023年1月にローンチをしてこれまでに20本強の記事を公開してきましたが、検索エンジンからの流入が多い記事もあり、中長期的に読んでもらえる記事があることがわかりました。そのためには、有益な記事であることがもっとも重要で、その上でタイトルや見出しの設定などで、検索されやすいようにしています。
――新規の読者を獲得するために行っている施策はありますか?
野村: Xは拡散力があるので、当社のアカウントだけでなく、記事にご協力をいただいたライターやブロガーの方のアカウントからも、関係性を明示したうえでのシェアをお願いしています。はてなブックマークではホットエントリーに入ると、Xではリーチできない層にも広がることがあります。最近は、YouTubeで記事の内容を短尺で紹介する動画を制作して、誘導する取り組みも計画しています。
――ローンチしてから約1年になりますが、これまでの成果を振り返るといかがですか?
野村: 記事によって反応は様々ですが、想定したターゲットに届いていると感じます。集客面では、検索からの流入も増えるなど伸びてきています。定性的な評価としてコメントを見ていて、企画時に期待した反応が得られていると感じています。
知ってもらうこと、好感を持ってもらうことを目的にしているので、読んで終わりだけでは目的を達成できません。時には、議論を巻き起こすようなトピックもあり、その議論を通して好感を持ってもらいたいです。今後はアンケート調査なども活用して、評価していきたいです。
粟田: ローンチ時に、「東京で車は必要ないと思っていたけれど、心の底から買ってよかった。エンジニアお父さんが車購入を決めた理由」という記事を公開しました。はてなブックマークは600件、コメントが300件以上ついて、反応が多い記事となりました。コメントでも議論が行われていて、カーライフについて考えるきっかけになったのではないかと思います。
コメントがない場合でも、はてなブックマークされていれば後から読まれたり、有益な記事だと検索エンジンに判断されて検索結果に表示されていれば中長期的に記事への流入があったりと数値への効果があります。読者からの反応を次の企画にも活かしていきたいです。
――伸びなかった記事について、改善などはしていますか?
野村: SNSでの記事の横展開はしていますが、この部分はまだ不十分です。それでも一部のキーワードで検索結果の上位を獲得できているものもあるので、中長期的に読まれることを期待しています。もっと多くの人に記事を見てもらい、当社を知ってもらいたいので、継続的な改善に取り組んでいきたいです。
「読者のために」を一番に。そして自分たちが楽しむことも重要
――では最後に、今後の目標と展望、Web担当者へのアドバイスなどがありましたらお願いします。
粟田: 「くるまも」は公開して1年未満で、まだ課題はありますが、安心して楽しいカーライフというコンセプトは、企画段階からぶれないように貫いています。コンテンツを通して「『くるまも』はおもしろいよね」「三井住友海上が運営しているのだな」というポジティブな印象や認知を持っていただけるように取り組んでいます。
特に、「車のある生活はいいね」というポジティブなコメントが多いと、定量的な数値も増える傾向にあります。ただ定量的な数値の向上を求めるのではなく、SNSの反応などを踏まえて定性面での評価も大事にしていきたいです。
野村: 私たちは、読者が何に興味を持つのか、何が読者のためになるのかを想像してコンテンツを届け続けて、ファンづくりを目指しています。マーケティング活用に悩んでいる方は、まずは読者のことを一番に考えたコンテンツ制作を目指してみてはいかがでしょうか。
足立: マーケティング戦略として経営にコミットする必要があり、4P戦略のなかでオウンドメディアの位置づけやコンセプトについて、経営陣をはじめ、担当部署で意識合わせをすることが重要です。「くるまも」は、認知獲得と接点を増やすことを目的にしていることがぶれなければ、成約数などを求められていません。その認識は一致させるべきです。
その上で、何に貢献しているかは経営にも見られるので、グロースモデルのフレームワークで説明しています。「くるまも」は認知獲得と接点、そして次の戦略として検討中の人に向けたオウンドメディアを別に用意し、さらにその先にWebサイトでクロージングできるようにしています。同じオウンドメディアでもステージを変えて用意しているのです。若年層には、自転車や海外旅行の保険など気軽に入れる商品も用意しているので、いざ車を買う、家を買うといったときの、認知や想起という役割を「くるまも」が担っているので、定性面を重視しています。
そして、メディアを作っている我々が楽しくないと読者も楽しめないと思っています。「1万軒以上巡ったラーメン評論家・山本剛志が選ぶ『車で行きたい』おすすめラーメン店」の記事は、損害保険会社らしくない記事ですが、読んでいる私たちもワクワクしました。私自身も記事をチェックしながら、楽しめていますので、そうした視点も大切にしたいですね。
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