Indeedに聞く! 狙う人材を集めるオウンドメディアリクルーティングの始め方
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本連載では、株式会社はてなの磯和太郎氏をインタビュアーに迎え、さまざまな人にオウンドメディアの運営、コンテンツ制作、継続の秘訣について訊いていく。
第9回は、2022年6月に『オウンドメディアリクルーティングの教科書』を出版したIndeed Japan オウンドメディアリクルーティングプロジェクトのメンバーでもあるマーケティングディレクターの水島剛氏に、オウンドメディアを採用にどう活かすのか、どう運用していくべきなのかお話をうかがった(所属・役職は取材当時)。
オウンドメディアリクルーティングとは
磯和:『オウンドメディアリクルーティングの教科書』は、採用を考える上で大いに参考になりました。書籍では、オウンドメディアリクルーティングに活用できるオウンドメディアとして、次のようなものを挙げていました。
- 自社の採用サイト
- 自社の採用ブログ
- SNS
- 説明会
- 自社の社員やオフィス
水島:はい、企業みずからが所有し、情報発信できるメディアは、自分たちで情報のコントロールができ、追加費用がかからず利用できます。我々は、社員やオフィスもメディアと捉えています。社員やオフィスは、企業を企業たらしめているものなので、うまく活用してその魅力を発信することが重要です。
磯和:多くの企業が主に求人情報サイトや人材紹介サービスを使って採用をしています。それに加えて、なぜオウンドメディアが必要なのでしょうか?
水島:求人情報サイトも人材紹介サービスもB2Bの事業ですから、提供事業者はどちらかというと採用を行っている企業の方を向いて仕事をしていることが多いでしょう。つまり求職者ファーストではないんです。
そのため、場合によっては求職者が知りたい情報を得られないまま応募して採用されることもあります。結果、入社してから不満を抱える人も少なくありません。企業側としても、マッチングミスですぐに退職されては困ります。
以前は、求職者は有名な企業であれば安泰だと考え、業務内容や給与だけで就職先を探していました。
しかし、最近はそれだけではなく、会社のミッション、ビジョン、バリューと自分の価値観は合うのか、例えば「営業」といっても誰に対してどんな営業をするのか、リモートワークはできるのか、男女比はどうか、などより詳細な情報や条件にこだわる人が増えてきています。
自社で自由に情報発信できるオウンドメディアで主体的、かつ多角的に情報発信をすることで、こだわりを持って就職先を探す求職者は求めている情報を得られやすくなり、結果としてミスマッチが起こりにくく適切な人材採用につながります。
実際オウンドメディアリクルーティングを行っていると、会社のことをある程度理解してから応募する方が増えるので、内定を断る人が減るという効果もあります。コンテンツを通して会社と応募者のマッチングができていれば、採用面接回数が少なくて済むこともあります。
発信すべき2種類のコンテンツ
磯和:人材採用を目的としたオウンドメディアではどのような情報を発信するべきでしょうか?
水島:発信するべき情報は、「ジョブディスクリプション」と「シェアードバリューコンテンツ」の2つです。
ジョブディスクリプションは、職務記述書のことで、仕事の役割と必要な能力を詳細に言語化したものです。
求人情報サイトでは、「募集要項」という形で仕事内容、勤務時間、待遇などを書くことが多いですが、ジョブディスクリプションではより詳細に、
- 職務の目的
- 目標
- 責任
- 権限の範囲
- 必要とされる技術
- 知識
- 経験
- パーソナリティ
などを書きます。ジョブディスクリプションについては、人事部が書くと現実の仕事に即した具体性が乏しくなって、本当に欲しい人材にアピールできなくなってしまうことも多いので、募集する部門のトップが書くのが望ましいですね。
さらに、採用にあたっては、ジョブディスクリプションごとにペルソナを作成します。これにより、採用するべき人のイメージを採用面談に関わる人全員の間で共有でき、人によって判断が異なるということがなくなるからです。
ペルソナではなく、「社員のAさん」のように、実際の人をモデルにしてもよいです。実在の複数人を掛け合わせて、「Aさんの経験、スキル」「Bさんのパーソナリティ」というような形でも、具体的に想像でき共通認識を持ちやすいでしょう。
磯和:書籍でジョブディスクリプションに、社員の声を載せるという事例が紹介されていました。はてなでも一部職種でさっそく実践したようです。
水島:参考にしていただいているのですね。もう一つの「シェアードバリューコンテンツ」では、
- 企業理念
- 社風
- 就業環境
- 職場の雰囲気
など、自社の価値や魅力を求職者に共有するための情報を用意します。価値観やカルチャーでのミスマッチを軽減するためのコンテンツです。
KGI、KPIは採用の課題から設計する
磯和:オウンドメディアリクルーティングのKPIの設計はどうすればよいでしょうか? マッチング率などは、なかなか定量的に判断しにくい部分もあります。
水島:採用の課題はどこにあるかというところから考えると良いと思います。
採用人数を増やしたいのか、1人の採用にかかる単価を下げたいのか、採用後の定着率を上げたいのか。これらをKGIとしたときに、中間指標となるKPIをどこに設定するのか、というプランニングが必要です。
採用単価の削減、定着率などは中長期的な指標になるので、短期的な指標として、例えばペイドメディア経由とオウンドメディア経由の採用比率などをKPIにしても良いと思います。
磯和:オウンドメディアに全切り替えするというよりも、ペイドメディアも使いながら長期的な判断をするということですね。
水島:そうですね。切り替えというよりも、目的による使い分けと考えるとよいですね。加えて、オウンドメディアリクルーティングは、採用のチャネルとしてだけでなく、採用活動のベースとなる情報発信としての効果もあるので、採用時期以外でも継続するべき活動です。
オウンドメディアリクルーティングを通して、自社の魅力や特徴をコンテンツ化することで、社員が第三者に自社のことを的確に説明できるようになります。その結果、社員の紹介で採用するリファラル採用においても効果を発揮することが期待できます。
同時にインナーブランディング(社員に会社のビジョンや理念を理解してもらう活動)にもなるので、会社への理解が深まって定着率が高まり、新たな採用の必要がなくなるかもしれません。採用だけでなく、視点を広げてROIを見ていくと、副次的な効果が複数あります。
磯和:オウンドメディアリクルーティングの取り組みが、KPI、KGIといった数値に効果が出るまでには時間がかかると思いますが、おおよそどれくらいかかるのか、目安はありますか?
水島:採用の課題によるため、ケースバイケースで一概には言いにくいですが、ペイドメディアの採用単価相当でオウンドメディアからも採用ができるようになる、という観点で言えば、半年から1年くらいでしょうか。それくらいの期間を想定して、じっくりと腰を据えて取り組むべきです。
採用サイトはストック、採用ブログはフロー
磯和:オウンドメディアリクルーティングにおいて、採用サイトと採用ブログはとくに重要になると思いますが、どのように使い分けるとよいでしょうか?
水島:採用サイトはストック、採用ブログはフローと考えるとよいでしょう。
例えば、ミッション・ビジョン・バリュー、福利厚生などは、短期的に変わらない情報なので、採用サイトに掲載します。今仕事を探している人にとっても、将来的に探す人にも有益な情報なので、コンテンツとしてしっかりストックしておく必要があります。
一方で、ブログはタイムリーな話題を載せるのに適しています。「会社説明会を開催します」「募集中の職種の社員と話せるミートアップを開きます」「新しいコンテンツができました」といった最新情報の発信ですね。
他にも、「プロダクト開発の想い」「社長の経歴」「社内制度導入の裏話」などを、少しカジュアルに紹介するのも良いと思います。ブログでは、格好つけた情報を見せるよりも、会社の実情を率直に伝えられるような、社員の日常を切り取った情報を発信するアプローチがよいと思います。
継続的にコンテンツを制作するには、キャンディデイドジャーニーマップを使う
磯和:オウンドメディアの共通の課題として、コンテンツを作り続ける苦労がありますが、どういう体制で作成すればよいでしょうか?
水島:担当者だけでコンテンツを作れない場合はインハウスエディターというポジションを設けて、社員にインタビューをしてコンテンツを作成するとよいのではないでしょうか。動画などを作成する場合は、社外の制作会社にお願いしてもよいと思います。
磯和:継続的なコンテンツの企画と制作を円滑にするための方法はありますか?
水島:「ジョブディスクリプションごとにペルソナを作る」と話しましたが、同時に応募者のジャーニーである「キャンディデイド(採用候補者)ジャーニーマップ」も必要です。
採用候補者の視点から見たときの求職活動は、「会社を知る」「応募する」「面接を受ける」「オファーレター(内定通知書、労働条件通知書)をもらう」「内定を承諾する」という流れになります。
ジャーニーの中でどこに課題があるのか、どのステップの歩留まりが悪いのかということを知り、それを解決するのに必要なコンテンツを用意していく、という方法が良いと思います。
認知はあっても応募に至らないのであれば、シェアードバリューコンテンツを強化して、会社の魅力を伝える。面接に来る人が応募基準を満たしていないようであれば、ジョブディスクリプションを見直すと同時に、シェアードバリューコンテンツで厳しい面も打ち出していくといった施策が有効です。
先程KPIの話をしましたが、ジャーニーマップのプロセスにKPIを置いて改善していくことも必要です。
オウンドメディアリクルーティングの新しい取り組み
磯和:オウンドメディアリクルーティングのコンテンツとして、ポッドキャストなど音声形式はどうでしょうか? はてなでは、エンジニアのポッドキャストを始めています。
水島:そうなんですね。音声は新しい領域かもしれませんね。Indeedでは、毎年オウンドメディアリクルーティングアワードを開催していて、ジョブディスクリプション、シェアードバリューコンテンツの取り組みを募集し、その中から表彰をしています。今のところ音声でのコンテンツでの応募はありませんが、動画と同様にこれから可能性がありそうですね。
磯和:社員のインタビューをコンテンツにする場合、その社員が退職した場合の取り扱いはどうするべきでしょうか?
水島:まずはその制作物の権利関係の確認が必要ですね。取材のタイミングで肖像権、コンテンツの権利を会社に譲渡しているのか。譲渡されていれば、掲載を続けるか、やめるかは会社の判断です。
その人のその後のキャリアにつながる経験を積んでもらえたとポジティブに受け止められるようであれば、掲載を続けるのも良いと思います。あえて、退職した人に会社での経験がどうであったか、インタビューしてコンテンツにするというのもありですね。
磯和:実は、はてなでは、退職したエンジニアのその後を追うコンテンツを技術ブログで掲載する予定です。退職後活躍している人に、いま現在のお話や、はてな時代を振り返ってもらうというものなのですが、水島さんからも「あり」というお話が聞けたことを担当者に伝えておきます。
採用に携わる人の条件は会社が好きであること
磯和:オウンドメディアリクルーティングの責任の所在をどこにおくのか、というのは組織が大きくなるほど、課題になると思います。人事なのか、広報なのか、採用広報なのか、あるいは新しく部門を作るのか、どこが主導すると推進しやすいでしょうか?
水島:最近は、CHRO(最高人事責任者)にマーケティング出身者が増えていて、全体の戦略設計、ペルソナやジャーニーマップの作成、KPIとPDCAなど、マーケティングでの経験を活かして採用人事をリードしています。
人事部とは別に、ハイヤリングマネージャー(採用決裁者)が存在する場合でも、コミュニケーションを密にして、ペルソナや前提となる企業の魅力の認識がずれないようにする必要があります。
会社によってどこが主導権を取るべきなのかは異なると思いますが、バイネームで「Aさんがプロジェクトをリードするのが良い」と決めて、その上でステークホルダー全員が共通認識を持って推進していくことが大事だと思います。
磯和:最後に企業の採用担当者へ向けて、オウンドメディアを活用したリクルーティング活動を成功させるためにいちばん大事なことは何でしょうか?
水島:まずは、自分の会社が好きであることです。採用や採用広報に関わる人は、会社のことが好きな人が多いです。会社のことが好きでないと、他の人に「ここで一緒に働こう!」と自信を持って言えないですから。採用に携わる人が、「自分が大好きなこの会社で働くことで、すばらしい人生になる」と信じているからこそ、「一緒に働いてください」と求職者に言えるんです。
マーケティングの観点でオウンドメディアリクルーティングを捉えてしまうと、数字で判断して血が通っていないように見えるかもしれませんが、採用で扱うのは人。人の心を動かすのは熱量です。自社を愛する熱意があること。これが一番重要です。
【申し込みは9/16まで】書籍 『オウンドメディアリクルーティングの教科書』を5名様にプレゼントします。募集開始は9/9(金)からとなります。
聞き手:磯和 太郎(いそわ・たろう)
株式会社はてな コンテンツ本部 プロデューサー
大学卒業後、SIerやITベンチャー、フリーランスなどでの開発・Webディレクションを経て、2012年インフォバーン入社。ソリューション担当の執行役員などを歴任し企業のオウンドメディア構築やコンテンツマーケティングを推進。
2017年はてな入社後は「はてなブックマーク」「はてなブログ」のプロデューサーを経て、現在は、オウンドメディアCMS「はてなブログMedia」をはじめとした「はてなブログ」の法人向けプランを統括している。
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