はてなが訊く「オウンドメディア成功の法則」

コンテンツの量と質を両立させ、目的を達成するための秘訣とは――オリックスの「MOVE ON!」担当者に聞いた

多くの領域で事業を展開するオリックスグループのオウンドメディア「MOVE ON!」。大塚孝裕氏に運営の秘訣を聞いた。
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本連載では、株式会社はてなの磯和太郎氏をインタビュアーに迎え、さまざまな人にオウンドメディアの運営、コンテンツ制作、継続の秘訣について訊いていく。第6回は、オリックス株式会社のオウンドメディア「MOVE ON!」の運営を担当している大塚孝裕氏にお話をうかがった(所属・役職は取材当時)。

MOVE ON!
オリックスの情報発信サイトとして、「Sustainability」「Work&Life」「Innovation」の3つのカテゴリでコンテンツを発信している。

目的は企業好意向上への貢献

磯和:「MOVE ON!」の設立背景、目的を教えてください。

大塚:オリックスでは、企業好意を上げることを目指して企業コミュニケーション活動を行っており、その一環として「MOVE ON!」をオリックスグループサイト内に開設しました。

「MOVE ON!」立ち上げ前からグループ広報・渉外部では、テレビや新聞などの報道機関に情報を提供して掲載してもらう広報・PR活動のほか、テレビCMなどの広告・宣伝への取り組みも実施していました。

ただ、広報・PR活動では、メディアの名前で情報が配信されるので受け手にとっての信頼性は高いのですが、そのメディアの文脈で編集されてしまう特徴があります。また、テレビCMなどの広告・宣伝では、ある程度企業の自由に表現できますが、使える時間が限られています。

これらを補完するものとしてオウンドメディアに着目しました。オリックスグループサイトそのものをオウンドメディアと捉え、そこにコンテンツを発信するエリアとして「MOVE ON!」を立ち上げたというのが設立のいきさつです。

もちろん、オウンドメディアだからといって100%自由に表現できるわけではありませんが、オリックスが社会の変化をどのように捉えて事業展開をしているのか、自分たちの文脈の中でオリックスグループについて丁寧に表現できるという特長があると思っています。

オリックス株式会社 グループ広報・渉外部 宣伝チーム 課長代理 大塚 孝裕氏
電機メーカーにて、法人営業とデジタルコミュニケーションを担当した後、2018年にオリックス株式会社に入社。デジタルを活用したブランディング、インターナルコミュニケーションを推進している。

磯和:企業好意度向上を目標にしているのはなぜでしょうか?

大塚:内部調査によって、企業好意度が、サービス利用意向、就職意向、株購入意向といった企業価値向上に直結する数値に相関することが明らかになっているからです。

企業好意を高めるためには、まずはオリックスのことをよく知ってもらわないといけません。

そもそも「オリックスってどんな会社?」という質問をしてみると、人によって「野球チーム」「生命保険」「レンタカー」「リース」など答えが違います。全部正解ではあるのですが、どれもオリックスの事業の一部であって、どんな企業姿勢を持って活動しているのか、オリックスの全体像をうまく伝えられていないという課題がありました。

広報・PR活動、広告・宣伝活動に、「MOVE ON!」のようなオウンドメディアを加え、統合メディアコミュニケーションを意識することで、オリックスグループの全体像を伝え、好意を向上させ、その結果として、事業全体に良い波及効果が発生することを目指しています。

データを分析し、企業好意度向上に貢献するKPIを模索

磯和:ステークホルダーが多方面になると思いますが、どういった層をターゲットとしているのでしょうか?

大塚:企業コミュニケーションのターゲットとしてはオールステークホルダーとなってしまいますが、「MOVE ON!」には、オリックスの社会の要請にいち早く応えていく企業姿勢に興味を持っている方に共感してもらいたいという編集方針を持たせています。

記事の内容は、世の中の変化やそれに対する企業の活動に興味ある人にとって有益な情報を発信することを目指して、「Sustainability」「Work&Life」「Innovation」の3つのカテゴリでコンテンツを展開しています。

磯和:KGI、KPIの設計、計測はどうしていますか?

大塚:グループ広報・渉外部全体のKGIは企業好意度です。ただ、それにダイレクトにつながるKPIに正解はないと思っているので、Webサイト訪問者の行動調査を実施し、好意度の高い人の行動データを見て、好意のある人はオリックスグループサイトのどのディレクトリを見てくださっているのかを確認するようにしています。

磯和:好意形成に影響の大きいカテゴリはありますか?

大塚:オリックスグループサイトの場合は「サステナビリティ」と「事業情報」がオリックスに好意を持つ人が比較的見ているディレクトリでした。「サステナビリティ」については、ここ数年で社会の関心や企業として発信する優先順位も一気に変わったなという実感があります。

ライセンスドコンテンツを観測気球的に活用して、オリジナルコンテンツを企画

磯和:コンテンツ制作の方針について教えてください。オリジナルコンテンツとライセンスドコンテンツ(外部メディアと契約しライセンス供給を受けているコンテンツ)を公開していますよね。

大塚:オリジナルコンテンツは毎月1本程度公開するのが目標です。

オリジナルコンテンツでは、変化する世の中に対して前向きな企業姿勢を示したいと思っています。私の思いとしては、一歩を踏み出す勇気を応援するようなコンテンツを目指しています。

磯和:ライセンスドコンテンツの利用方法は?

大塚:ライセンスドコンテンツは月に5回ほど掲載しています。オリックスグループの事業領域に関する世界のニュースをキュレーションしています。

磯和:ライセンスドコンテンツの反応を見て、オリジナルコンテンツを作ることもあるそうですが?

大塚:はい。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、事業継続計画(BCP)に関連するコンテンツにニーズがあるのではないかと仮説を持ったので、まずはライセンスドコンテンツでBCPの立て方を解説するようなコンテンツを掲載しました。

そのコンテンツのPVなどのKPIが良かったので、オリジナルコンテンツとして、コロナ禍以前からBCPに取り組んでいたオリックス・ビジネスセンター沖縄株式会社 第四事業部 部長・上地陽子とBCP/BCM策定・構築支援アドバイザーの昆正和氏のインタビューコンテンツを作成し、改めてBCPの必要性や考え方をお伝えするコンテンツを作りました。

磯和:ライセンスドコンテンツをいわば観測気球的に利用して、反応が良ければオリジナルコンテンツを作成するということですね。オリジナルコンテンツにこだわって、コンテンツ配信が止まってしまうオウンドメディアもありますが、ライセンスドコンテンツで量を稼ぎつつ、狙いを定めて深掘りしたオリジナルコンテンツを作るという方法は良いですね。

大塚:オウンドメディアの担当は2人なので、他の業務もやりながら年間60本をオリジナルで作成するのは不可能です。かけるコストを少なく、それでもデータは取れるようにするには、ライセンスドコンテンツが最適解でした。

社内報で、完全版コンテンツを公開!コンテンツの社内還流で有効利用

磯和:グループ会社が多く、社員数が多いと思いますが、グループ広報・渉外部では社内向けの情報発信も行っているのですか?

大塚:社内報があり別の者が担当していますが、「MOVE ON!」とも連携しています。「MOVE ON!」の外向けコンテンツのうち記事には入り切らなかった要素や、社員には知ってほしい部署を超えた協業などを全部版として社内報に出すこともあります。

磯和:おもしろいですね。同じものを出すのではなく、ディレクターズカット版のような形で社内報に出すのですね。

大塚:いい呼び方ですね!社外向けに作成したコンテンツの内部還流は今後もやっていきたいです。ちなみに、私は社内報のデータ分析、PDCAも担当していて、オウンドメディアの成長で得た知見を生かしています。

オリックスの情報は3割以下に。トレンドを押さえた記事構成で読者をつかむ

磯和:自社コンテンツの編集で、気を配っていることなどはありますか?

大塚:世の中のトレンドとオリックスの特長がリンクするように意識しています。

たとえば、自社の事業・サービスの魅力を維持し価値を提供し続けるために、パートや契約社員の方たちとの友好な関係を作り、長く働いてもらう必要がある業種があります。そういった課題を世の中のトレンドとして捉え、企業年金サービスという各社の企業年金制度構築をお手伝いする事業が、どのように時流に合わせた提案をしているかを、実際に企業年金サービスを導入していただいたお客さまにインタビューさせていただきました。

企業年金サービスの導入先を増やすのは事業部門の仕事ですが、パートや契約社員の方々もいきいきと働ける会社作りが求められているという話は、オウンドメディアで語る内容だと思いました。

磯和:とはいえ、オリックスの事業内容についても知ってもらわないといけませんよね。

大塚:基本的に世の中のトレンドからコンテンツの骨子を作って、オリックスの話は3割以下にしたいと思っています。各サービスの特徴や差別化ポイントなど具体的な解説は事業部門に任せ、オウンドメディアでは、まだオリックスのことをよく知らない方、マーケティングファネルの上部にいるような方に興味を持っていただける内容を目指しています。

コンテンツディスカバリー広告で、受動的な読者を増やす

磯和:オウンドメディアの読者を増やすことに苦労している企業もありますが、どのような施策が有効でしょうか?

大塚:読者を増やす方法に正解はないと思います。「MOVE ON!」の場合は流入元としてコンテンツディスカバリー広告、オーガニック検索が大きいので、そこは指標として見ています。

コンテンツディスカバリー広告については、定期的に配信コンテンツを入れ替えています。1つのコンテンツのタイトルやサムネイルを変えるだけでは限界がありますが、コンテンツを入れ替え続けることでCTR、CPCを改善し続けられます。

磯和:コンテンツの量が確保できているからできる施策ですね。世の中、オウンドメディアでは検索流入は意識していても、広告配信は実施していない企業が多いと思いますが、リーチを増やしてデータを得るために広告にも投資しているのでしょうか。

大塚:能動的にオリックスの情報収集する人は少ないと思っていて、たまたま受け身的にコンテンツに触れて、気がついたらオリックスのことを能動的に調べているというジャーニーを目指しています。接点を多様に持つことが重要だと思います。

オリックスグループサイトでは、投資家情報を閲覧する人が他のディレクトリに比べると多いです。決算情報や株主優待情報を見た流れで、「MOVE ON!」の記事を読んで事業をご理解いただき、成長性や安定性を感じていただく流れを作りたいですね。このようなジャーニーをいくつか設定していて、KPIとして見ています。

磯和:企業コミュニケーションは効果検証が難しいという話をよく聞きますが。

大塚:コンテンツマーケティングにおいてもそれは同様です。ただし、コンテンツマーケティングは、他の部門の課題解決と掛け合わせることで、他の部門を勝たせるために使うことができますし、社内コミュニケーションや、IR、PRなどでも活用できます。企業コミュニケーションやオウンドメディアを担当する者として、少しでもROIを最大化させるために、コンテンツのことだけを考えるのはやめようと心がけているつもりです。そうすると自然に、社内の情報が集まるので、さらに他の部門との掛け合わせのための行動がとりやすくなっています。

自分の2つ上のレイヤーで考え、提案する

磯和:オウンドメディア担当者の課題として予算が少ないということがあると思います。貢献が見えにくい中で、経営陣にアピールするにはどうすれば良いと思いますか?

大塚:これも正解はないと思いますし、予算さえあればいいというものでもありませんが、企業コミュニケーションの基本戦略としてトリプルメディアの活用があること、具体的に組織としてどのように活用していくかの方針を上位職と確認しておく必要があると思います。「オウンドメディアの戦略」とか「企業広告の戦略」とかサイロ化された話ではなく、トリプルメディアを俯瞰して、それぞれの役割をどうつなげるかを議論できる人を増やすことがポイントなのではないかと思っています。

磯和:最後に、オウンドメディアの運営で大事にしていることは?

大塚:担当者として、私が意識していることは、常に自分の立場の2つ上のレイヤーで考えるということです。コミュニケーションを担う組織としての能力向上に対して、オウンドメディアが今担うべき役割は何なのかを示すと前向きな議論ができるようになると思います。コンテンツを作りたい、コンテンツマーケティングがしたいというのは目的ではなく手段なので、そこを勘違いしないようにしたいと思っています。

個人的な気概としては、企業コミュニケーションに関しては社内の誰よりも大きい青写真を描きたいと思っています。そう思って提案していること自体が、上位職の青写真の一部なのかも知れませんけどね(笑)。

聞き手:磯和 太郎(いそわ・たろう)

株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー

大学卒業後、SIerやITベンチャー、フリーランスなどでの開発・Webディレクションを経て、2012年インフォバーン入社。ソリューション担当の執行役員などを歴任し企業のオウンドメディア構築やコンテンツマーケティングを推進。

2017年はてな入社後は「はてなブックマーク」「はてなブログ」のプロデューサーを経て、現在は、オリックス「MOVE ON!」も採用している企業向けオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」およびはてなのブロガーリソースなどを活用したコンテンツ制作支援を含むコンテンツマーケティングサービスの開発を統括している。

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