入社者の認知率100%を達成! DeNA採用オウンドメディア担当者が明かした、意外なアナログPR施策とは?
[Sponsored:株式会社はてな]
オウンドメディアの中でも採用オウンドメディアに取り組む企業が増えている。採用につながるコンテンツの作り方、採用見込みの候補者への届け方など、採用ならではの運用ポイントがある。
本連載では、株式会社はてなの磯和太郎氏をインタビュアーに迎え、さまざまな人にオウンドメディアの運営、コンテンツ制作、継続の秘訣について訊いていく。第3回は、株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部 人材開発部部長 風早亮氏、ヒューマンリソース本部 人材開発部 フルスイングプロデューサー 榮田佳織氏にお話をうかがった(両氏とも所属・役職は取材当時)。 ◎撮影: 永友ヒロミ
2017年10月に開設し、ヒューマンリソース本部にて運営。DeNAで働く社員のインタビューや対談、DeNAのカルチャーや人事制度、環境などを発信するオウンドメディア。
自分の意志で異動できる制度を使って編集部に
磯和: 榮田さんは、編集者未経験で「フルスイング」のプロデューサーになったと聞いています。抜擢されたのはどんな経緯があったのですか?
風早: 榮田は以前ゲームプラットフォームの事業部にいて、私が上司でした。DeNAには、働きたい事業部に直接熱意を伝えて異動する「シェイクハンズ」という人事制度があります。当時榮田が人や組織に関わる情報を発信したいと言っていて、そこに「フルスイング」の募集があったので、私が背中を押して送り出しました。その2年後に私も異動でHR本部に。再び同じ部署になりました。
磯和: 榮田さんがメディア運営をやりたいと思った理由は?
榮田: 前職でクライアントのメディアづくりの支援をしていたのですが、それがとても楽しくて。その経験を活かした仕事をしたいなと。また、当時違う事業部だったのですが、もっと人や組織に関わる仕事がしたいと思っていたときに、ちょうど「フルスイング」が立ち上がり、風早経由で担当者との面談の機会をもらい、お互いに思いがマッチしたので異動することになりました。
磯和: 「フルスイング」は、採用ブランディングを目的に運営されています。当初ターゲットにしていた「DeNAで働く価値に気づいていない潜在層」から、最近では「DeNAに応募を検討している顕在層」までターゲットを広げているということですが、なぜでしょうか?
榮田: 実際にDeNAで働くことを検討されている方にも、DeNAの魅力を候補者に伝えきれていないという課題があったからです。入社者から「DeNAは、スマートに計算して動いている、ロジカルでドライな人が多いと思っていたけれど、入社してみると泥臭いことを地道にやっていたり、サービス好きな人が熱量高く働いているとわかった」と聞くことがよくありました。そこで、今後事業が変わったとしても変わらないであろう、DeNAの核である人とカルチャーを発信すれば、よりマッチした人材の採用につながると考えました。
SEOでPVを集めても意味がない。候補者に届けるための施策に注力
磯和: 2018年度は、入社者の認知率をKPIにして、それがほぼ100%になったと聞いています。どういった工夫をされたのでしょうか?
榮田: 運営当初はメディアのPVを意識して、広く潜在層に届けるためにはてなブックマーク(はてブ)やTwitterなどで話題になりやすいかを意識したビジネスノウハウなどを記事にしていました。PVは伸びるのですが、独りよがりになっていたところがありました。事業部に「こんな記事を作りたい」と企画を持っていっても、「そういうファクトはない」とばっさり切られてしまったことも。
当時の入社者の認知率は30%どまり。こうした「話題になりやすい記事作り」は入社者というもっとも近いターゲットの認知獲得には遠い施策だとわかり、入社者や採用担当者にヒアリングして、候補者が知りたい情報という視点から企画を見直しました。また、採用担当者にどういうタイミングで候補者とコミュニケーションするのかを聞き、彼らが候補者に情報を手渡しできるようにしました。
磯和: 情報の手渡しとは?
榮田: 採用オウンドメディアは、マス狙いではなく、これから仲間になる人、面接などで実際に合う人に向けたものなので、温度が伝わる距離で手渡ししていくイメージです。例えば採用担当者から「スカウトメールを送るときにこういう情報を載せたら候補者に響く」と聞けばすぐに記事化したり、メールの署名に「フルスイング」のURLを入れてもらったりしました。また、名刺サイズの「フルスイング」の紹介カードやチラシを作成し、面接に来た人に文字どおり手渡ししました。
磯和: SEOのキーワード選定などをがんばる人が多い中で、物理的なモノを使って認知を広げたのはめずらしいですね。広義の意味でのWeb以外のオウンドメディアも活用して、採用の打率を上げているのですね。
榮田: 創業間もない企業などで知名度が低ければSEOで認知を上げるのは効果的ですが、DeNAの場合、社名はある程度認知はされているので、採用の導線上にいる人をターゲットに届け方を工夫しました。
2019年度のKPIは決め手率。採用ページへの遷移率、応募率は参考程度
磯和: 2019年度からは「応募や入社の決め手の一つになった率」にKPIを変更したとのことですが、数値はどうやって調べていますか?
榮田: 社内の調査チームの協力のもと、入社者へのアンケート調査を入社日に行っています。設問を工夫しないと「決め手になった」に誘導してしまうので、他の項目を混ぜながら調査しています。2019年度は約50%になりました。
磯和: メディアの効果測定に悩んでいる企業も多いのですが、決め手率をKPIにした理由は?
榮田: 「フルスイング」が応募や入社にどれだけ貢献しているか知りたかったからです。アンケートは定量的な設問だけでなく、何が参考になったのかを自由記入で書いてもらうなど、定性的なデータも収集しています。
磯和: 記事からの採用ページへの遷移、応募の完了率などの数値は検証していますか?
榮田: 参考指標としては見ていますが、重視はしていません。就職、転職は大きな決断なので、記事を見てすぐ応募にするものではないですし、「フルスイング」以外の情報も含めて検討されるからです。
採用への実績ができて社内の評価が上がる
磯和: 認知率などが上がって、社内、経営層の評価や期待も上がりましたか?
風早: 昨年ごろから経営層を巻き込んだ企画もつくっていますが、協力してくれています。候補者にメッセージを伝えられるツールとして、経営層も企画には厳しい目で関わってくれます。
榮田: 社内の評価は、何度か変化のタイミングがありました。最初は「フルスイング」は社内報と何が違うのか、という声があったので、まずは社内に存在意義を伝えようと、資料を作って各事業部の部長などに説明に回りました。そのときに、「技術力の高い人材が多いのにそれを打ち出せていない」という課題を聞き、その事業部と「フルスイング」で記事企画を数回連続で行うことで、採用に効果があると認めてもらえました。その成果が社内各所に伝わってからは、やりやすくなりました。
磯和: 「DeNA Engineers' Blog」もありますよね。こちらでは技術力のアピールはできなかったのでしょうか?
榮田: 「DeNA Engineers' Blog」では、技術力のアピールはできても、エンジニアの熱量やDeNAのカルチャーを伝えにくいという課題がありました。その課題に「フルスイング」がマッチして自然に棲み分けができました。
大規模なオンプレミス環境をクラウド化するプロジェクトを紹介した記事は、はてブで話題になりましたし、技術系の候補者にも響いたと思います。
オウンドメディア運営に大切なのは社内リレーション
磯和: 「DeNA Engineers' Blog」「社内報」「採用サイト」など複数のメディアがありますが、それぞれの役割分担やメッセージの統一など、横の連携はどうしていますか?
風早: 棲み分けはそれぞれが意識していますね。社外に人材をアピールするなら「フルスイング」、ディープな技術を解説するなら「DeNA Engineers' Blog」、社員に有益な情報を伝えるなら「社内報」というように決まっています。
榮田: DeNAに転職していいなと思ったことの1つが、現場にオーナーシップがあることです。プロジェクトを推進する中で、他と重なることがあればシナジーを生み出すためにその部署と連携したり、走りながら担当者同士で個別にチューニングしたりしてきました。
磯和: 記事のアイデアはどのように考えていますか?
風早: 事業部から「こういう記事を書いてほしい」「採用を強化したいのでフィーチャーしてほしい」というような依頼があります。また採用計画で、新卒採用に力を入れる時期、中途採用を増やす時期があるので、それに合わせて編集部でコントロールしながら考えています。
磯和: 事業部からの依頼はけっこう来るものですか?
榮田: 直接依頼があることが多いですね。最近は依頼が増えましたが、当初は直接お願いに行ったり、社内メールで募集したりすることもありました。積極的な依頼が来るようになったのは、開始して1年ほど経ってからです。社内で「相談しやすい」「フルスイングは良い」と思われることが大事。でないと、情報が集まらなくなるので、横のつながりはしっかり作りました。
実は兼務の編集長。外部ライター、カメラマンと協力して運営
磯和: 編集チームは何名でやられているのですか?
風早: 現在はプロデューサーとして榮田、もう1人専任の企画編集がいて、外部ライターやカメラマンと連携し運営しています。榮田はヘルスケア領域の事業開発部との兼任※です。
※2020年4月からは、当時兼務であったヘルスケア領域専任となり、DeSCヘルスケア株式会社に出向中。
磯和: まったく別の事業との兼務というのは珍しいですね。
風早: 再び新しいチャレンジの話がきて、やってもらうことになりました。
榮田: 自分のキャリアを広げたいと思ったときに、ちょうど募集があったので応募して兼務になりました。編集部としては、外部のライター、カメラマン、時には他部署のメンバーにも協力してもらっており、企画とチェックはチーム内でやっています。
磯和: ライターはどうやって探していますか?
榮田: フルスイングが目指している方向性と近い執筆をされている方をSNSや知人経由で探しています。こちらから募集をかけたこともあります。当初は、私達が完全に企画から取材内容までを決めていましたが、今は企画を渡してライターに質問項目などを考えてもらうこともあります。信頼関係ができているのでそのほうがお互いにうまくいくようになりました。
社員個人の生の声をもっと届けていきたい
磯和: 今後、新しい取り組みなどはありますか?
風早: 「フルスイング」を継続しながら、これからはSNSなどで社員個人の発信にも力を入れていきます。社員の生の声は、人間味、熱量が伝わりますし、候補者にとってもより距離が近く感じられると思うからです。
まずは採用に関わるメンバーでnoteやTwitter(@kazahaya0127)を始めています。「フルスイング」のかっちりした発信とは別に、カジュアルな社員個人の声という異なる球を加えていくようなイメージです。
私も、新卒採用ブランディングコンセプトである「『面白がり』、求む。」に込めた思いを中の人として、noteで発信しました。一度書いたあとに榮田にレビューしてもらったのですが「学生が対象なんだからこの表現は違う」という厳しいフィードバックをもらい、書き直しました。DeNAに関心がある人、内定者、入社1年目で後輩とのつながりのある人というように、ターゲットを明確に考えて、伝えるメッセージを地道に考えなければいけませんね。
磯和: 採用オウンドメディアの立ち上げ、運用に悩んでいる人へのメッセージをお願いします。
風早: 他社のノウハウやナレッジは勉強にはなりますが、企業文化はそれぞれ違うのでそのまま真似することはできません。まずは、自社で働く人を知ることです。実態と違うことが発信されると社員がとまどうので、社内の実態を把握して飾らない生の声を伝えることが大事だと思います。
榮田: なぜ採用オウンドメディアをやるのか、なぜ担当することになったのか、その目的や意義を納得できないならやらないという選択肢もあります。始めたら運営工数もかかりますし、体力もいります。「フルスイング」は立ち上げたときに、DeNAの核である人とカルチャーを発信するという存在意義を明確にし、迷ったときはそこに立ち返るようにしています。私がDeNA以外の会社で採用メディアをやることになったら、また別のやり方を考えると思います。
なお、存在意義は担当者1人で考えるのではなく、採用担当、広報などいろいろな人とディスカッションしてみることも重要です。あとは、やはり社内で働く人たちが核になるので、彼らを知らなければいけないですし、ターゲットである候補者を知る努力もしてみてください。
磯和 太郎(いそわ・たろう)
株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー
大学卒業後、SIerやITベンチャー、フリーランスなどでの開発・Webディレクションを経て、2012年インフォバーン入社。ソリューション担当の執行役員などを歴任し企業のオウンドメディア構築やコンテンツマーケティングを推進。
2017年はてな入社後は「はてなブックマーク」「はてなブログ」のプロデューサーを経て、 現在は企業向けオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」およびはてなのブロガーリソースなどを活用したコンテンツ制作支援を含むコンテンツマーケティングサービスの開発を統括している。
[Sponsored:株式会社はてな]
ソーシャルもやってます!