はてなが訊く「オウンドメディア成功の法則」

ベイジ枌谷氏に訊く 成果に繋がるオウンドメディアの戦略や運用のコツとは?

成功しているオウンドメディアには、どのような秘訣があるのか?「knowledge / baigie」を運営するWeb制作会社ベイジ代表の枌谷力氏にお話をうかがった。
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オウンドメディアの成功をどう判断するか、効果測定をどうしていくか、長期的に継続する運用体制をどう作るか? 考えるべきポイントは多いが、成功している企業はどのように運用しているのだろうか。 本連載では、株式会社はてなの磯和太郎氏をインタビュアーに迎え、さまざまな人にオウンドメディアの運営、コンテンツ制作、継続の秘訣について訊いていく。第2回は、Web制作会社ベイジ 代表 枌谷 力(そぎたに・つとむ)氏にお話をうかがった。◎撮影 鹿野宏

knowledge / baigie

2019年10月よりスタートした、Web制作に関するノウハウ、知見をベイジの社員が発信するWebメディア。すでに「はてなブックマーク」の人気記事の常連でもある。

ベイジの日報

ベイジの社員の日々の業務で得られた知見や考えを発信するコンテンツ。社内で共有している日報の一部を外部公開用コンテンツとして発信している。

オウンドメディアの成功・失敗は目的次第で変わる

磯和: 枌谷さんは、オウンドメディアとの関わりが長いと思いますが、オウンドメディアについてはどのように捉えていますか?

枌谷: 会社としてブログを始めたのは2011年からで、それをオウンドメディアと言い始めたのは、言葉が浸透しだした2015年ぐらいからでしょうか。ただ、私自身はフリーランス時代にもブログを書いていましたし、会社員時代にはデザインポータルなんかを運営していました。さらに遡れば、1998年頃には趣味で音楽のサイトを作っていたので、オウンドメディアかどうかはともかく、情報発信という意味では、20年以上前からやっているというか、むしろやってない期間がない感じですね。

オウンドメディアって、本来は「自分で発信のコントロールができるメディア」くらいの意味しかなくて、その定義に従うと扱う範囲がすごく広くなりますが、この連載で扱うのは企業が自社で運営するブログ型のWebメディアのことですよね?

それを前提にすると、オウンドメディアの閉鎖がニュースになったりもしたことで、「オウンドメディアは終わりだ」なんて言う人もいますが、例えオウンドメディアという言葉が使われなくなったとしても、これからも企業は何らかの形で自分でコントローラブルなメディアを使ってネット上で情報発信をしていくはずなので、オウンドメディア的な取り組みはなくならないというか、ますます盛んになると考えていますね。

その前提の上で今回は、自社のオウンドメディア運営で得た自身の知見に加えて、クライアントのオウンドメディアやWeb戦略の策定に関わった経験などから、オウンドメディアの特徴や運用のコツを話せればと思います。

株式会社ベイジ 代表取締役 枌谷力氏

磯和: オウンドメディアの成功、失敗はどういうところで判断できると思いますか?

枌谷: 何を持って成功・失敗と捉えるかは、何を目的としてオウンドメディアを運営してきたかによって大きく変わりますよね。例えば私は、オウンドメディアの目的を次の8つに分けて考えているのですが、

  • 集客
  • 採用
  • ナレッジ化と共有
  • 社内教育
  • 既存顧客のリテンション
  • ブランディング
  • メディア運営経験の蓄積
  • 組織づくり

このどれを目的とするか決めれば、オウンドメディアのゴールが決まり、運用体制が決まり、成功・失敗の基準も決まってくるのではないかと思います。例えば、「ナレッジ化と共有」「教育」「メディア運営経験の蓄積」「組織づくり」を目的とするなら、社内で運用しなければ意味がありませんし、そうすると成功の基準は、オウンドメディアが社内で定着して習慣化した、みたいなところになるかもしれません。

目的を「集客」に特化するのなら、コンバージョンに繋がる数字が取れないと失敗になりますよね。そしてもし私が大手企業でオウンドメディアを推進するマーケティング担当者だったら、社内で実行することにこだわらず、許される限りの予算を使って外部のパートナーも巻き込んで、コンバージョンさせるための良質なコンテンツ作りをしていくと思います。このように、同じオウンドメディアと言っても、目的によって成功の定義もやり方も変わりますよね。

株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー 磯和太郎氏

オウンドメディアの運営体制は2パターンある

磯和: 担当者が目的を決めていざ始めようとしたときに、社内の理解が得られないという話もよく聞きます。社内を説得するコツのようなものはありますか?

枌谷: オウンドメディアに限らず、経営層がマーケティング施策を理解しない、前向きに捉えない場合は、その施策はあまりうまくいかないですよね。説明したときに、経営層が「それいいね」と受け止めてくれるかどうかも、オウンドメディアに取り組むべきかどうかの判断基準になるのではないかと思います。

そもそもオウンドメディアはすぐに定量的な成果が出ないことも多くて、そういう施策を一生懸命説得しないと実施できないのなら、会社が自然に受け入れられる、オウンドメディアじゃない別の施策に切り替えたほうがいいんじゃないかな、と思います。

私自身、「オウンドメディアを始めたいが、社内に理解がない」という相談を受けることもあるのですが、そのことを部外者の私に相談している時点でやらないほうがいいんじゃないかな、と思ったりしますね。

磯和: 継続的にコンテンツを発信し続けるための体制として、理想的には、専属の部署があって編集長、スタッフがいる状態だと思いますが、なかなかこの体制をとれるところは少ないですよね。

枌谷: 私の勝手な分類ですが、オウンドメディアの運営方法は、編集部があってしっかりクオリティチェックを行う「中央集権型」と、社員が自主的にコンテンツを制作して公開する「コミュニティ型」の、2つに分けられると思います。中央集権型は量より質、コミュニティ型は質より量になる傾向があります。

弊社の例でいえば、「knowledge / baigie」は中央集権型。これは私が編集長になり、執筆を担当する社員のスケジューリングから、記事のクオリティ管理まで、しっかり行っています。質にはすごくこだわっていて、記事の品質が低ければ、私の判断で公開日を遅らせてでも書き直しをしています。

一方で、「ベイジの日報」はコミュニティ型のオウンドメディアです。公開前の内容チェックはほとんどゼロで、社員が好きなテーマで自由にアップできます。こちらは検閲を入れない分、記事の本数を増やしやすいことがメリットです。

執筆時間を無理に作ろうとすると破綻する

磯和: 枌谷さんの定義するコミュニティ型の場合、自由にアップできることがメリットですが、まずは社内に浸透しているコンテンツ発信の文化が必要で、それがないと執筆する人がいなくなる傾向がありますよね。

枌谷: コミュニティ型であったとしても、最初はリーダーが引っ張っていく必要があるでしょうね。オウンドメディア運用をうまくやれている企業を見てると、どういう運営形態であれ、必ず熱量高く、みんなを引っ張っていく人がいますよね。

磯和: オウンドメディアでよくあるのが、本業の合間でコンテンツを用意していると続かない、という問題です。私が相談を受けたあるWeb担当者さんは、成果が見えにくいので本業の合間でやらざるを得ず、結局土日に自分の時間を使って書いていると言っていました。それでは、担当者は疲弊して続かないでしょう。「ベイジの日報」の場合は、どのように執筆のモチベーションを高めているのでしょうか。

枌谷: 「ベイジの日報」の場合、モチベーションに頼らず、組織習慣にしていますね。日報を書くこと自体は、社員が2、3人の頃からあった制度でした。今の社員は、日報があることを知って入社してきてるので、モチベーションも何もなく、完全に習慣化しています。オウンドメディアとして公開しだしたのは、2014年からですが、公開用に加筆する時間は、毎日の日報作成の時間を充てるようにしているので、日報を公開するために仕事が増えるようなことがないようにしています。

磯和: なるほど、やはり言語化する文化が元々あって、その延長にあるコミュニティ型のオウンドメディアなんですね。ちなみに、日報を公開していこうと思った理由は?

枌谷: 私たちが現場で得ている知見や日々考えていることが日報として社内に回覧されるわけですが、これは同じ業界の人、クライアント担当者などにとっても情報になるのでは、という気持ちからですね。

磯和: 「Knowledge/baigie」や「ベイジの日報」とは反対に、失敗したオウンドメディアの事例はありますか?

枌谷:ベイジの用語集」というオウンドメディアは、立ち上げて1年もせずに更新が止まりました。記事を書くための時間のコントロールを社員任せにして、本業の合間にがんばるというルールにしたうえに、クオリティに徹底的にこだわってフィードバックをしたので、社員が疲弊して続きませんでした。

オウンドメディアは、表に出ているコンテンツだけを見て、自分たちもできそうと判断してしまうこともあるかもしれませんが、執筆や編集などのコンテンツ制作スキルだけじゃなく、進行管理や人のアサイン、本業との調整など、マネジメントスキルもかなり必要だと思います。

オウンドメディアの成果をどう計測するか

磯和: オウンドメディアによって顧客獲得や採用に繋がったという、具体的な成果はありますか?

枌谷: もちろんあります。ただ、オウンドメディア全般に言えることですが、簡単にこのコンテンツがこの案件に繋がった、とは言えないことも多いですね。例えば、「ベイジの⽇報」は集客より採用に効いている印象があるのですが、かといって、「ベイジの⽇報」を⾒てすぐに応募する⼈はほとんどいません。しかし応募者に話を聞くと、選考フローのどこかの段階で「ベイジの⽇報」を⾒ていたりするんですよね。選考が進む中でより自分事化して読み、会社の理解に繋がり、入社意欲が高まる、という効果はあると思いますが、これがどのくらい発生しているかは、なかなか証明しにくいです。

顧客獲得も同様で、アクセス解析で見れるチャネル別のコンバージョン数では、オウンドメディアの真の成果は測れないし、パッと見ただけだと、あまり効果が出ていないように見えたりします。

例えば、ベイジのオウンドメディアをよく見てくれてて、TwitterのアカウントもフォローしてくれているAさんがいるとします。あるとき、Aさんの会社でサイトリニューアルの話が持ち上がり、Web担当のBさんが社内のチャットで「よい制作会社を知らない?」と尋ねたところ、チャット上でAさんがベイジを強く推薦。Bさんは「ベイジ」と指名検索を行い、ベイジのコーポレートサイトに訪問し、そのまますぐに問い合わせフォームに直行して問い合わせをしました。

このようなシチュエーションの場合、アクセス解析ではオウンドメディアの効果はわかりません。アクセス解析上では、コンバージョンをしたBさんはまったくの新規顧客で、初回訪問でいきなりコンバージョンをした謎の人物としてカウントされます。

ただ、データでは見えにくいといって諦めるのではなくて、オウンドメディア経由のコンバージョン以外に、例えば指名検索数の増加数や指名検索からのクリック数なども、参考指標にはできるかもしれませんね。

磯和: 確かに、オフラインでの社内コミュニケーションが挟まると、アトリビューション分析をしても計測できませんね。しかも、年単位の長期間で比較しなければ、なかなか評価しにくいでしょうね。

枌谷: 弊社の場合だと、お問い合わせや資料請求のフォームの中に「何でベイジを知ったか」という設問を用意しています。ログ解析ではわからないコンバージョンへの影響を可視化するためです。

ただこのように工夫しても、オウンドメディアの真の効果が完全に可視化できるわけではありませんし、可視化できたとしても、成果が出るまでに時間がかかります。当然、長くやった結果、成果が出なかった、ということだって起こりえます。

そういう性質を持っているからこそ、社内の誰かがオウンドメディアがうまくいくと強烈に信じて引っ張っていかないといけないんですよね。中小零細企業であれば、この役割を担うのは経営陣、社長だと思います。あるいは、経営陣から信頼されていて権限委譲されている人が必要ですね。社長が関わらない、現場でやってくれ、でも成果が出るまではお金も時間もかけられない、というスタンスでは、最初から成功しないでしょう。

例えば弊社は、マーケティングも営業も専門の部署はありませんが、年間900件以上のリードを獲得しています。採用に関しても、去年は自社の採用サイトからの応募が70件ありました。20人未満の会社で、転職サイトなどを使わずこれだけの応募があるのは、オウンドメディアとSNSのおかげだと思っています。

同時にSNSアカウントも育てよう

磯和: オウンドメディア運用にあたって、他に考えるべきことはありますか?

枌谷: デリバリー手段は考えるべきですね。コンテンツを作っても、ただネットにアップしているだけでは、読み手に届きません。どうすれば読んでほしい人に効果的に届けられるかという視点を持つことは非常に重要ですが、その1つはSEOですね。しかし、狙うキーワードや商材によっては、SEOで効果を出すのが難しいケースも多いです。そこで並行して考えたいのがSNS、特にTwitterですね。オウンドメディアをやるなら、発信力の強いTwitterアカウントも同時に育てていった方がいいと思います。

磯和: それは公式アカウントではなく、編集長や社員の個人アカウントの方ですよね?

枌谷: そうですね。個人アカウントの方がシェアされやすい傾向がありますからね。単に宣伝目的でオウンドメディアの記事をシェアするだけでなく、熱量が高い思いと一緒に個人が発信することで、感情を持った人間対人間の関係性の中で、情報が拡がっていきます。そういうデリバリー手段の構築ということ以外に、Twitterを運用すると、世の中の人が何に反応するのか、どういう話題がバズるのかが感覚としてわかるようになります。ツイートの反応を見てオウンドメディア用の記事を作ったっていいわけです。

磯和: 最後に、これからオウンドメディアを始めたいと考えているWeb担当者に向けてのアドバイスをお願いします。

枌谷: オウンドメディアを始めたいが何から始めるべきかという質問をよくいただきますが、文章を書くのが好き、愛社精神に溢れている、自己顕示欲の強い、といった要素を兼ね備えた人は、外部に向けての情報発信に向いているので、こういう人を社内で見つけたら、その人をリーダーとしてオウンドメディアをやってみるといいかもしれません。

そういう人がいないのなら、中小企業なら社長が自らやるべきですね。社長が文章力に自信がないのなら、言葉で伝えて文章が得意な社員に代筆してもらってもいいと思います。まずはいきなり高い成果を求めず、楽しむくらいの気持ちで、気軽に始めるのがいいのではないでしょうか。

磯和 太郎(いそわ・たろう)

株式会社はてな サービス・システム開発本部 プロデューサー

大学卒業後、SIerやITベンチャー、フリーランスなどでの開発・Webディレクションを経て、2012年インフォバーン入社。ソリューション担当の執行役員などを歴任し企業のオウンドメディア構築やコンテンツマーケティングを推進。

2017年はてな入社後は「はてなブックマーク」「はてなブログ」のプロデューサーを経て、 現在は企業向けオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」およびはてなのブロガーリソースなどを活用したコンテンツ制作支援を含むコンテンツマーケティングサービスの開発を統括している。

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