SEO予算の承認をもらうデータとROI: 海外SEOの事業計画策定3つのステップ(後編)
海外SEO(グローバルSEO)を成功させるための事業計画を解説するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。 →まず前編を読んでおく
海外SEOの価値を証明する事業計画の立て方(続き)
前編は、海外SEOの価値を証明する事業計画の立て方で最初のステップである「広範なデータを集める」について説明した。
後編では、これに続く「データをビジネス目標に合わせる」「ROIの予測と併せて戦略計画を立てる」という2つのステップについて見ていこう。
ステップ2データをビジネス目標に合わせる
すべてのデータを集めたら、ビジネスの目標と一致させる必要がある。海外SEO戦略を包括的なビジネス目標と一致させることは、結果を最大化し、オンラインでのビジビリティとオーガニックトラフィックを向上させる最善の方法だ。マーケティングチームと営業部門も、共通の目標とビジネスの成長に向けて協力しやすくなる。
ステップ2-1キーワードに対する表示順位とオーガニックトラフィックを改善する
まず、特定したキーワードの機会に基づいて、海外SEOがオーガニックトラフィックの増加をどのように促進できるか示してみよう。そのためのすばらしい方法の1つがSEOmonitorだ。
実装したすべてのキーワードに対して検索結果に表示されている場合は、特定の期間にどれほど潜在的なオーガニックトラフィックを獲得できるかを示してくれる。
ステップ2-2ブランドのビジビリティを高める
グローバル市場でブランドのビジビリティを高めるには、SEOが極めて重要だ。最初のうちは、新しいビジネスとあって信頼してもらえないかもしれない。強力なSEO戦略を実行すれば、ローカライズされたキーワードのSERPでウェブサイトの順位が徐々に上がっていく。これがひいてはブランドの知名度を高め、ターゲット市場における信頼と権威を築くことになる。
その地域にある競合他社と比較すると、自分と比べてどれほどビジビリティがあるかもわかるため、その市場内でのビジビリティを「Xか月以内にX%高める」という目標を立てられる。
ステップ2-3コンバージョンを促進する
ブランドのビジビリティが高まるほど、ウェブサイトを訪問してもらえる可能性は高まる。ウェブサイトを訪れる人が増えれば、コンバージョンも増える。
そこで、前のステップで示したSEOmonitorによる2つの予測画像に記載されている数字に基づいて、目標とするコンバージョン率を決定し、そこに達するには何をすべきかを確認できる。業種にもよるが、ほとんどのウェブサイトでコンバージョン率は平均2%~10%程度なので、あまり野心的な目標にしないほうがいい。
ただし、獲得するオーガニックトラフィックの量に応じてコンバージョンがどれほど増加するかを確認できるため、SEOmonitorがすばらしいツールであることに変わりはない。
ステップ3ROIの予測と併せて戦略計画を立てる
事業計画を完成させるには、次の概要を示す必要がある:
- コスト
- 売上予測
- 完全導入のスケジュール
そうすることで、見込まれる損益を正確に予測できるし、海外SEO投資への支持を取りつけるのに役立つ。
ステップ3-1リソース要件
最初にも言ったように、「SEOは“無料のトラフィック”が得られる」と言われることが多いが、決してそうではない。むしろ、SEOの開始時には一般に運用型広告よりもコストがかかる。しかし、その長期的な持続可能性から、より大きな利益が得られるということだ。運用型広告の場合、結果を出し続けるにはコストをかけ続けなければならないが、SEOは放置していても何年にもわたって成果が得られる。
もちろん、これは最初にSEOの仕組みを作り実装のワークフローを構築した後のことであり、これらの作業にはコストがかかる。そのため、正確なROI(投資利益率)予測を判断するには、事前にこれらのコストの概要を示す必要がある。
SEO会社に依頼するにせよ、社内でやるにせよ、リソースには必ずコストの総額を含めよう。プロジェクトを実施するチームは、コンバージョンから得られる総収入や利益率などと同様に、すべてコスト要因だ。
必ずSEO専任開発者のコストを含めよう。私の経験から言うと、SEOプロジェクトが失敗する1番の理由はこれだ。リソースが足りないためにコンテンツを公開できないのだ。
実際、SEO担当者500人を対象としたAiraのテクニカルSEO調査ではこの点を強調しており、テクニカルSEOの変更は公開まで平均6か月かかると説明している。この6か月は、働き過ぎの開発者が変更をタスクリストにため込む代わりに、本来ならすでに売上を生み出している可能性のある期間だ。
全体として、ROIと比較したこれらの数字は、ステークホルダーが海外SEOに投資するかどうかの大きな要因となるため、時間をかけてこれを理解するために、ここで詳しく説明する。
ステップ3-2スケジュール
リソース要件に関する理解を深めたら、SEOの取り組み計画についてスケジュールを作る必要がある。ここでは段階的なアプローチの重要性に重点を置いてほしい。そうすることで、取り組みの成果を確認するのに十分な時間を確保できるからだ。
理想としては、6か月ごとにマイルストーンを設けよう。これにより、コンテンツを公開し、インデックス化され、コンバージョンを生み出すようになるまでに十分な時間が得られる。また、長期的に拡大できる優れた運用ワークフローを確立するのに十分な時間でもある。
ステップ3-3ROI予測
次の4つがわかったら、ROIを予測できる:
- コスト
- スケジュール
- コンバージョンの予測
- KPIのマイルストーン
このデータを得るには時間がかかるが、ステークホルダーから必要な予算を得るための唯一かつ最も重要な要素であることが多い。次にいくつか例を挙げよう。
例1: eコマース
このeコマース企業は、ドイツに進出したがっているとしよう。既存の検索ボリュームから、さらに月間6000件のオーガニックトラフィックを生み出せると判断した。現在のところドイツでのプレゼンスはないが、今後高めたいと考えている。
この企業では、顧客の平均注文金額が1290ユーロの製品に関して、コンバージョン率を2%と見積もっている。
SEO戦略を実施するための運用コストは月間1万8000ユーロかかるが、コア成長のKPIは、SEOによる毎月の売上120件を見込んでおり、注文1件あたりのコストは150ユーロとなる。
このKPIを達成できれば、毎月の売上によるSEOの売上貢献は15万4800ユーロとなり、SEOの取り組みによるROIは760%となる(売上ベース)。
このように可視化してみると、ステークホルダーがこのための予算を計上する可能性は、君がコンテンツを作ってキーワードに対する表示順位を上げると説明しただけの場合と比べて、どの程度高いと思うだろうか。自分だったら、どちらの説明の方が利益になると感じるだろうか。
例2: 複雑なB2Bとサービス
同じアプローチを、フランスに進出したがっている複雑なB2B企業にも使える。この企業はすでにフランスでかなりのプレゼンスを得ており、独自の調査によると、SEOを推進すれば6か月以内にオーガニックトラフィックを月間30%増やせるという。
オーガニックトラフィックのコンバージョンが2%であることは経験からわかっており、増加後の検索トラフィック月間1万3520訪問から、270件は無料トライアルのコンバージョンを得られることになる。
そのうち5%は営業部門のサポートを受けて有料顧客になることがわかっており、1か月あたりの新規契約数は13件だ。
平均契約額は6万5000ドルなので、1か月あたりの総売上高は84万5000ドルになる。検索トラフィックを30%増やしたSEOの売上貢献は25万3500ドルだと評価できるわけだ。
このようにして、SEOは「成長が遅い」「無料のトラフィック」という認識を、努力に値する真の収入源に転換できる。
海外SEOは、その価値を証明するデータを使えば、それだけの価値がある
海外SEOはコストがかからないわけではないが、戦略的に取り組めば、長期的なメリットは十分投資するに値する。むしろ、ビジネスを拡大して新市場に進出することに関心があるなら、海外SEO戦略を立てずに前進するのは、目隠しをして新しい街を見て回ろうとするようなものだ。
たしかに、A地点からB地点に行くことはできるかもしれないが、先に何があるのかが見え、自分が何を探しているのかがわかれば、はるかに簡単にすばやく目的地に行けるだろう。
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