海外SEOの価値を証明する事業計画の立て方 2024年版(前編)
SEOは“無料のトラフィック”が得られる
このように言われることが多い。しかし、他のマーケティングチャネルと同様、これを活用して成長するには「時間」と「献身」、そしてもちろん「予算」が必要だ。
グローバル市場(海外市場)に関しては、特にお金の問題が顕著だ。海外SEO(グローバルSEO)の重要な要素である言語のローカライズなど、いくつか追加のステップを踏む必要がある。
そのため、いきなり大量のウェブサイトの翻訳にかかる前に(新規市場のSEOのパフォーマンスにはほとんど影響を与えないことが多い)、ターゲットとする地域内にポテンシャルがあるかどうかを確認することが不可欠だ:
- 人々は本当に君の製品やサービスを必要としているのか?
- それを実際にオンラインで検索しているか?
- 検索しているなら、どのようなフレーズを使っているか?
- その地域で競合する企業はどこか、またターゲットオーディエンスはそれらの企業をどの程度知っているか?
これらの疑問に戦略的に答え、SEO戦略によってグローバル市場での成長をけん引するためにまず始めるべきは、事業計画を策定することだ。そうすることで、海外SEOの長期的な成功に必要なあらゆる予算を確保できる。
では、この仕組みについて詳しく見ていこう。
なぜ海外SEOに投資する価値があるのか
SEOを実施する前に、まず自問すべきは「なぜ」「どのように」だ。
- 自分のビジネスにとってSEOはなぜ価値があるのか
- 新市場でビジビリティを高め、コンバージョンを促すうえでSEOはどのように役立つのか
海外SEOに価値があると多くの企業が心から賛成するのは、次に挙げる状況が明確なメリットをもたらすからだ:
多様な市場に対応していれば、景気変動に対処しやすくなる: 新型コロナウイルス感染症のパンデミックや景気後退により、各社はこれまで以上に柔軟になることを学んだ。すべての卵を1つのカゴに入れてはいけない。ある市場が苦戦する一方で、別の市場が盛況になることもある。海外SEOは、複数の市場で勢いを得るのに役立つ。
多くの企業は市場の飽和状態に直面しているため、新市場は規模を追求するための最も論理的な方法となる: 膨大な数の競争により、大規模な市場(特に米国と英国)では持続的な成長を遂げることがさらに難しくなる場合が多い。しかし、それ以外のグローバル市場ならば競争が少なく、新たな機会が得られる。
顧客はこれまで以上にパーソナライゼーションを求めている: パーソナライズ化を進める主な方法の1つは、「ターゲット言語で顧客に話しかけ、そのニーズを地域レベルで理解すること」だ。その点を考慮すると海外SEOは、企業が売上・リード・コンバージョンを生み出すために実施できる最も価値ある戦術の1つだ。
海外SEOの価値を証明する事業計画の立て方
「なぜ」がわかったところで、次に「どのように」を考えよう。次の手順に従い、海外SEOの取り組みがもたらす結果と必要な予算を予測して、事業計画を立てる。
全体の手順は次のようなものだ:
ステップ1広範なデータを集める
事業計画を立てるための最初のステップは、可能な限り多くのデータを集めることだ。現状を把握し、そこから目指す状況とのギャップを埋めるにはどうすればいいかを理解する最善の方法として、強力なデータ基盤を構築しよう。
新たに海外SEOを手がける場合、データの収集は特に重要だ。というのも、新しい市場や言語では検索状況がまったく異なるからだ。自国とは何もかも異なることが多いため、その潜在性を確認して、検索行動を理解する必要がある。
たとえば、ドイツに進出する場合、米国市場で採用しているSEOのKPI(重要業績評価指標)をそのまま使うのはやめた方がいい。ドイツでは競合他社や検索ボリュームのレベルが変わってくるし、購買行動もまったく異なるからだ。
ステップ1-1SEOの現状を分析する
特定のドメイン名についてSEOの現状を確認するには、Moz Proなどのツールを使おう。キーワードに対する表示順位やオーガニックトラフィックなど、SEOの基本的なKPIを確認できる。別の言語でトラフィックを増やしたいウェブサイトがある場合は、次のような情報もチェックしてほしい:
- 具体的なサブフォルダ
- 別の言語ドメインのKPI
たとえば、次の2つのサイトがあるとする:
- eventbrite.com(米国のサイト)
- eventbrite.com.au(オーストラリアのサイト)
この2サイトについて、SEOの基本的な状態を確認してみよう。次の画像を見ると、オーストラリアのサイトの方が、検索結果に表示されているキーワードがはるかに少なく、被リンクも少なく、ドメインオーソリティも低いことがわかる。
こういったケースはまったく普通のことであり、気にする必要はない。大切なのは、それぞれの市場に応じてKPIのマイルストーンを設定する必要があることにだ。なぜなら、米国での現状をコピペするだけでは、他の市場が後れを取っているように見えてしまうのだが、そうした認識が必ずしも正しいとは限らない。
ステップ1-2ローカライズされたキーワード調査と競合分析を実施する
自国市場でどのウェブサイトと競合しているかは、すでにわかっているかもしれない。しかし、新市場に参入する場合、それらの既存競合ウェブサイトがオーガニック検索トラフィックの競合にはならないことが多いのを理解する必要がある。
移行に備え、MozBarを使ってローカルキーワードと新たな競合サイトの特定にかかろう。
たとえば、英語のメインキーワード「marketing automation(マーケティングオートメーション)」で検索上位に表示させたい場合は、まずそのキーワードでグーグル検索する。するとMozBarでは、次のように米国における英語のSERPが表示される。
次に、この英語のキーワードに相当するドイツ語をドイツで検索した場合のSERPが次の画像だ。
これを見ると、SERPに表示されるページが異なっており、国によって競合サイトも異なることに気づくだろう。すべての米国企業がドイツで事業を展開しているわけではなく、逆にすべてのドイツ企業が米国で事業を展開しているわけでもないので、これは理解できる。
そのため、キーワード調査と競合分析をさらに深く掘り下げて、自分たちが直面している状況をより正確に理解する必要がある。また、グローバル市場に実際どれほどの可能性があるのかを把握するために、これらのパフォーマンスを比較する必要もある。
キーワード調査を本来の形で実施したいのであれば、往々にしてローカルでの膨大な機会を見落としてしまうことのある翻訳ツールに頼るのではなく、ターゲット言語のネイティブスピーカーと協力して作業するのがベストだ。
ここでの詳細については、Wix SEO Hubでキーワードのローカライズプロセスをさらに詳しく取り上げている。
ステップ1-3成長が見込めるグローバル市場を特定する
競合分析ができたら、次のステップは「ローカル市場」「ローカル言語」での検索ボリュームを確認することだ。ローカル検索ボリュームが十分にあることがわかり、ローカルでの競合サイトのパフォーマンスも把握したら、その新市場に進出する価値があるかどうかを判断できる。
君の製品やサービスに対する検索ボリュームが多ければ、その市場のSEOに取り組む価値はあると思われるので、全速力で進められる。
検索ボリュームが少ないか、まったくない場合は、投資する価値がないかもしれない。代わりの市場を検討するか、PR(広報)やPPC(検索連動型広告)など、まずは製品やブランドの市場でのビジビリティを高める他のチャネルを使う必要があるかもしれない。
これは、たとえば欧州諸国といった地域内での優先順位を考えるうえでも役立つ。欧州全体を対象として一度にローカライズするよりも、特定の市場や言語に絞り込むほうがはるかに効果的だ(欧州には50ほどの国や言語があるため、海外SEOには膨大な労力が要る)。
欧州全体を1つの市場として扱うことは、あまり効果的ではないだろう(よほど有名で簡単に使える製品で、ターゲット市場が大きくない限り)。その場合も、約95%のビジネスが除外されてしまうことが多いため、個別にローカライズするほうがはるかに成功しやすい。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。前編となる今回は、海外SEOの価値を証明する事業計画の立て方で最初のステップである「広範なデータを集める」について述べた。
後編では、これに続く「データをビジネス目標に合わせる」「ROIの予測と併せて戦略計画を立てる」という2つのステップについて説明する。
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