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グローバルSEO展開をうまく進める15の手順(後編:技術的な検討事項とオフページ)

後編では、サイトのグローバル展開での技術的な検討事項とオフページのベストプラクティスについて解説。見逃しがちなオフページについてもしっかりチェックしてグローバル展開に備えよう。
Moz, Éléonore Frère[執筆] 2022/11/7 7:00 |

3回に分けてサイトのグローバルSEO手順をお届けしてきたこの記事も、いよいよ最終回だ。後編となる今回は、「技術的な検討事項」「オフページのベストプラクティス」「さまざまな検索エンジン」について説明しよう。

まず「前編:KW調査と競合分析」を読んでおく
次に「中編:ドメインの選択とコンテンツの適応」を読んでおく

グローバルSEO展開をうまく進める15の手順(再掲)
  1. グローバル展開の決定と事前調査(前編記事)
    1. キーワード調査
    2. 競合分析
  2. ドメイン名のベストプラクティスを探る(中編記事)
    1. ウェブサイトの構成を適合させる
    2. ドメイン名はブランド名を使うかローカライズするか
    3. 優先順位を決めてURL構造を選択する
    4. Google Search Consoleのインターナショナルターゲティングを利用する
  3. コンテンツのトランスクリエーション(中編記事)
    1. コンテンツの翻訳はalt属性やURLも忘れずに
    2. 文化、カレンダー、特殊文字、規制などへの適応
    3. 外部リンクの追加
  4. 技術的な検討事項(この記事)
    1. hreflang属性の実装でどこの国の言語か示す
    2. html要素のlang属性と、metaタグのcontent-languageで言語と国を指定
    3. IPベースのリダイレクトはデメリットも
    4. サーバーの場所はサイト訪問者に近い方が良い
  5. オフページのベストプラクティス(この記事)
    1. 国ごとに戦略を立ててリンクビルディングする
    2. ローカルサイテーションとNAPの一貫性を保つ
  6. さまざまな検索エンジン(この記事)

④ 技術的な検討事項

グローバルSEO成功の手順10
hreflang属性の実装でどこの国の言語か示す

グローバルサイトでは、特定の地域からアクセスするユーザーや特定の言語を話すユーザーに、サイトのどのバージョンのURLを表示するべきかを検索エンジン(グーグル、Yandex、Seznamなど)が判断するうえで、hreflang属性が役立つ。

hreflang属性は、同じコンテンツを同じ言語で異なる地域に提供する場合、重複コンテンツに起因するインデックス化の問題を防ぐ助けになる。検索エンジンはこれを「ヒント」にして、必要に応じてコンテンツを無視できる。

hreflang属性を実装する方法は3つある。具体的には、次のいずれかに追加できる:

  • HTTPヘッダー
  • HTMLファイルの<head>要素内
  • サイトマップのXMLファイル内
※Web担編注 hreflang属性について(クリックで説明が開きます)

hreflang属性(<link rel="alternate" hreflang="~" href="~" />)は、そのページと同じ内容の各国語版がそれぞれどのURLにあるかをGoogleに伝え、その言語で検索するユーザーに対して適切なURLを提供できるようにするためのもの。

たとえば、ある商品情報ページを英語版として作っている場合に、ほかにフランス語版・スペイン語版・中国語版のページを用意しているならば、ページに次のようなhreflangを指定する(HTMLのhead内、現在のページを含んで対応言語すべてを記載):

<!-- 英語版 -->
<link rel     ="alternate"
      hreflang="en"
      href    ="https://example.com/product-A" />
<!-- フランス語版 -->
<link rel     ="alternate"
      hreflang="fr"
      href    ="https://example.com/product-A?lang=fr" />
<!-- スペイン語版 -->
<link rel     ="alternate"
      hreflang="es"
      href    ="https://example.com/product-A?lang=es" />
<!-- 中国語版 -->
<link rel     ="alternate"
      hreflang="zh"
      href    ="https://example.com/product-A?lang=zh" />
言語と国を表しているhreflangタグの例

グローバルSEO成功の手順11
html要素のlang属性と、metaタグのcontent-languageで言語と国を指定

検索ユーザーに合った言語版のページを選ぶ情報としては、次の3種類がある:

  • hreflang
  • html要素のlang属性
  • metaタグのcontent-language

グーグルとYandexが参照するのはhreflangによる指示だけだが、他の一部の検索エンジン(百度、ネイバー、Bing)は、ローカライズされたコンテンツを識別するのにあと2種類のタグを使う。

  • html要素のlang属性は、ウェブページで使われている言語を指定する属性だ。

  • metaタグのcontent-languageは、ページのコンテンツが対象にしている言語と国を指定するものだ(正確にはhttp-equiv="content-language"としてHTTPヘッダーのContent-LanguageをHTML内で指定する記法)。

新たに進出する地域の検索エンジンで必要な要素を確認しておこう。

米国英語を使うオーディエンスを対象にしているウェブサイトのhreflang属性、metaタグのcontent-language、html要素のlang属性の例
米国英語を使うオーディエンスを対象にしているウェブサイトであることを認識するのに、どの検索エンジンがどの指定を利用しているかの区分(hreflang属性・metaタグのcontent-language・html要素のlang属性の具体例付き)

グローバルSEO成功の手順12
IPベースのリダイレクトはデメリットも

「IPベースのリダイレクト」とは、IPアドレスをもとにユーザーの位置情報を判断し、ユーザーを正しい各国語版サイト(ページ)にリダイレクトする手法だ。

IPアドレスに基づいて自動的にリダイレクトする場合の注意点は、検索エンジンのボット(クローラー)がウェブサイトの各国語版をクロールしたりインデックスしたりできないということだ。

というのも、ほとんどの場合Googlebotは米国にあるIPアドレスで動いている。そのためIPアドレスベースの自動リダイレクトでGooglebotは常に英語版ページに飛ばされる。そうなるとサイトの他のバージョンにはたどり着けず、クロールもインデックス化もされなくなる可能性があるわけだ。

Googlebotは主に米国からクロールしている。米国にいるユーザーを別のサイト(米国版)にリダイレクトすると、それ以外のサイトをインデックス化できなくなる。
グーグルのサーチ・アドボケート ジョン・ミュラー氏の2017年6月のツイート
「Googlebotは主に米国からクロールしている。米国にいるユーザーを別のサイト(米国版)にリダイレクトすると、それ以外のサイトをインデックス化できなくなる。」

しかも、IPアドレスベースのリダイレクトは、ユーザー体験にマイナスの影響を与える可能性がある。次のような状況を考えてみてほしい:

君は、出張で日本に来ているフランス人だとしよう(日本語はほとんどわからない)。

君はフランス語の記事を読もうとして、あるサイトを訪れた。

しかし、滞在している日本のホテルのネットワークを使っているため、IPアドレスベースの自動リダイレクトで日本語版のサイトに飛ばされた。

このような状況は絶対に避けたい。

IPアドレスベースのリダイレクトの代替策として考えられるのは、次の手法だ:

  • 邪魔にならないジオベースのポップアップやバナー
  • 手動で位置情報を選択するロケーションピッカー

こうした手法を使えば、ユーザーが選んだ地域のバージョンにリダイレクトするよう誘導できる。

marksandspencer.comで使われている、邪魔にならないジオベースのバナーの例
marksandspencer.comで使われている、邪魔にならないジオベースのバナーの例。ページ上部で「フランスからの訪問のようです、フランス語版に行きますか?」とさりげなく誘導している

グローバルSEO成功の手順13
サーバーの場所はサイト訪問者に近い方が良い

グーグルは以前、物理的なサーバーの場所をローカルシグナルとして使っていたが、現在はやめている。

グーグルは、ジオターゲティングでは主に次の情報を使用する:

  • ccTLD(国別トップレベルドメイン)
  • Google Search Consoleの設定

だから、サーバーの配置場所としては、言語とは関係なくシステム的に最適な場所を選んでいい。

とはいえ、サーバーの設置場所はサイトの速度に影響を及ぼす。データは物理的なネットワークを介して移動しなければならないからだ。ウェブサイトのサーバーの場所が訪問者に近ければ近いほど、読み込みは速くなる。

サイトのサーバーが訪問者とは異なる地域にある場合は、コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)を利用できる。

CDNは、地理的に世界中に分散しているサーバーのネットワークであり、ウェブサイトの静的アセット(画像ファイル、JS、CSS)をホスティングしてキャッシングしている。リソースの一部をCDNでホスティングすることの利点として、これらのリソースをユーザーのいる地域に近い場所から提供することにより、ページの読み込み時間を短縮できる点が挙げられる。

加えて、一部のCDNはファイアウォール機能を実装してウェブサイトのセキュリティを強化してくれる。

※Web担編注 CDN(Content Delivery Network)について(クリックで説明が開きます)

CDNとは、企業のWebサイトの内容をコピーして一時的に保持し、ユーザーがそのサイトにアクセスしようとした時に、アクセスを肩代わりして受けてくれるキャッシュサーバー群のこと。

Web担当者Forumが出しているCDNについての記事を読む↓↓
CDNって何? 訪問者のストレスを軽減しよう! ―Web担当者が知っておくべきITインフラ基礎知識
CDNはSEOに有利なのか? | 海外&国内SEO情報ウォッチ

オフページのベストプラクティス

オフページSEOとは、ユーザーや検索エンジンから見た関連性、人気、信頼性、オーソリティを高めるために、サイトの外側で行うあらゆる活動のことだ。グローバル環境で成功するには、オフページSEOの戦略が非常に重要となる。

グローバルSEO成功の手順14
国ごとに戦略を立ててリンクビルディングする

リンクは依然として、主な検索順位決定要因の1つだ。新市場に参入する場合は、リンクによって、検索エンジンとユーザーの両方にサイトを発見してもらいやすくなる。SEO担当者はまず、広報など他の部門と協力し、トップページへのリンクを構築してブランドの認知度を高める必要がある。

サイトの技術的な基盤を整備して、ユーザーに質の高いコンテンツを提供できるようになったら、関連性が高いローカルの被リンクの獲得にかかろう。ターゲットとする国ごとに信頼性の高いソースから被リンクを獲得することで、現地での競争力と存在感を高められる。

国によって状況は異なるため、国ごとにアウトリーチ戦略を立てよう。ある国ではうまくいく戦術も、別の国ではそれほど効果的ではないかもしれない。価値あるパートナーシップを構築するには、個々の市場の慣習に合わせて常にアプローチを調整することが重要だ。

グローバルでの被リンク獲得プロセスでは、以下4つの方法を推奨する:

  • 同じ言語を使っているページからの被リンク

  • 現地の国のドメイン名からの被リンク

  • 同じニッチ分野を扱うドメイン名からの被リンク

  • 現地の国で信頼性の高いドメイン名からの被リンク

グローバルSEO成功の手順15
ローカルサイテーションとNAPの一貫性を保つ

「ローカルサイテーション」とは、ネット上で君のビジネスに関する情報について言及されることだ(リンクではなく情報として言及する点が被リンクと違う)。複数の国で事業を展開しており、それぞれに物理的な住所がある場合は、現地での存在感を高めることになるようなローカルサイテーションが重要となる。

ウェブサイトのNAP(名称、住所、電話番号)は、ウェブサイトだけでなく、Googleビジネスプロフィール(旧称:Googleマイビジネス)やその他のソーシャルメディアページ、ローカルディレクトリにも掲載されている。

※Web担編注 NAPについて(クリックで説明が開きます)

「NAP」とは、Name(店舗や会社の名前)、Address(所在地)、Phone(電話番号)の頭文字を取ったもののこと。

ウェブ上でNAPが言及(サイテーション)されるときはどこでも同じ正しい情報になるようにしておくのが、Googleマップ検索など地域情報の検索クエリに対して適切な結果を表示されるようにするのに好ましいとされている。

ほとんどの場合は多少の表記揺れならばグーグルが吸収して同一のものだとみなしてくれるはずだが、それでも統一しておくほうがいいとされている。

検索エンジンがNAPと異なる住所を発見した場合は、検索エンジンだけでなく、ユーザーも混乱する可能性がある。また、進出している各国のローカルサイテーションでは、必ずNAPの一貫性を保とう。Mozは、米国、英国、カナダにおけるサイテーションの一貫性を確認できる無料のツールを提供している。

おまけ:さまざまな検索エンジン

検索エンジンの最適化といえば、普通は世界で最もよく使われている検索エンジンのグーグルを考える。しかし、国によっては、グーグルが最大の検索エンジンでないこともある。

たとえば、中国ではほとんどの人が百度(バイドゥ)を使っており、ロシアではYandexを使っている。その他のエンジンとして、韓国ではネイバー、チェコではSeznam、日本ではヤフーがよく使われている。

こうした市場への参入を計画している場合は、必ず時間をかけてこれらの検索エンジンに関する特異性を調査し、把握する必要がある。

たとえば、バイドゥに関してはグローバルSEOに重要な要素として、以下の点を考慮しよう:

  • 中国でホストされているウェブサイトが優先される。

  • ccTLDのURL構造が優先される。

  • 中国語の簡体字のみ使用できる。

  • html要素のlang属性を使用する。

  • 中国語で書かれた質の高い被リンクを含むウェブサイトが優先される。

サイトのグローバル展開とSEOまとめ

ビジネスやウェブサイトを新市場に拡大する方針は、性急に決めるべきことではない。SEOの面から見て正しく行うには、よく考えて慎重に検討し、十分な時間をかけよう。

新市場に参入する場合のグローバルSEO戦略は、以下のような内容で構成する必要がある。

  • 市場のポテンシャルを調査する。

  • 適切なドメイン名とURL構造を選択する。

  • ジオターゲティングを行い、コンテンツを現地のユーザーに合わせる。

  • 現地でのオーソリティとトラフィックを獲得する。

適切な構造やジオターゲティングの選択から、現地のユーザーに合わせた魅力的なコンテンツの作成まで、グローバル展開の効果を高めて成功を収めるには、企業のリソースや市場の潜在性を考慮した効果的な計画を策定する必要がある。

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