SEO逆転の発想: リンクギャップを埋めるだけでなく生み出す。これが重要なワケとその方法とは
今回のテーマは「リンクギャップ」だ。
「リンクギャップ」とは、「競合相手にはリンクしているが君のサイトにはリンクしていない」リンクがあることを示す用語だ。
SERP(検索結果ページ)の上位に表示されるように競争力を高めるには、リンクギャップを埋める必要がある ―― つまり、競合に負けないようにするべきである。この点をめぐり、SEOやデジタルPRの分野では、その方法や理由について多くの議論が交わされている。
だが、あえてリンクギャップを生み出すことで、競争力のあるSEOに逆の方向から取り組んでみるのはどうだろうか?
この記事では、私が勤務するデジタルPRエージェンシーJBHで利用しているフレームワークを紹介しよう。私たちはこのフレームワークにより、クライアントの競合相手にリンクを張っていないサイトからリンクを獲得するという、超ニッチで関連性の高いデジタルPRキャンペーンを展開している。さらに、こうしたギャップを生み出すことでSEOを成功させることの戦略的重要性を明らかにする。
次の順に、詳しく見ていこう:
- リンクギャップの分析方法
- リンクギャップを生み出す方法
- ニッチなリンクターゲットを特定したケーススタディ
- 適切なサイトとリンクターゲットの見つけ方
- ニッチなリンクターゲットのためのコンテンツのアイデア
リンクギャップは、どのようにして見つけるのか?
リンクギャップ分析をするには、MozのLink Intersectなどのツールを利用すると簡単だ。次のようなことを簡単にできる:
- 自分の被リンクと競合相手の被リンクを比較できる
- リンクを獲得するべきウェブサイトのリストが手に入る
- 競合相手がリンク構築に力を入れている部分も確認できる
これこそが「リンクギャップを埋める作業」であり、ほとんどのSEO戦略で一般的に行われている。
リンクギャップを埋める作業は、大いに理にかなっている。
たとえば、特定の業界や業種のサイトにリンクしている人は、同じようなサイトにリンクしようとする可能性が高い。競合他社が上位に表示されていれば、そうしたリンクが寄与していると予想される。
しかし、この発想を逆転させてみる。被リンクのギャップを埋めるのではなく生み出すことを考えてみると、単に競合相手の動きに反応するのではなく、リンク構築により主体的なアプローチが可能になる。
リンクギャップを生み出すには?
「リンクギャップを生み出す」というのは、リンクギャップを埋めるのと逆の動きだ。つまり、「自社にはリンクしているが競合相手のサイトはにリンクしていない」状態を作り出すのだ。
一般的にリンクを「獲得」または「構築」しようとしている場合、競合相手にならい、そのリンク戦略を模倣するだけで終わりがちだ。
ここでは別のアプローチを紹介したい。それは「被リンクファースト」ではなく、「オーディエンスファースト」の考え方によるアプローチだ。
このテクニックの狙いは、次のようなサイトからのリンクを生成することにある:
- 君のブランドや業界に関連のあるトピックを扱っている
- 高品質で、スパム的でない
- どの競合相手にもリンクしていない
このテクニックを活かすためにも、競合相手のリンク状況はよく把握しておく必要がある。今回の戦略では、そうした情報に注意しつつ、まったく異なる処理をする。
ほとんどの業界やセクターでは、PRチームがカバレッジやリンクの生成に使う可能性のある「お決まり」のトピックがある。たとえば、次のようなものだ:
パーソナルファイナンスのブランドなら、「旅行資金を最適な為替レートで両替できる方法」を話題にしているかもしれない。
アルコール飲料のブランドなら、「庭で楽しむ夏のカクテルのレシピ」を公開しているかもしれない。
自動車保険のブランドなら、猛暑の日に運転するときはビーチサンダルを履かないようドライバーに注意を促しているかもしれない。
こういったトピックはいずれも興味深く、関連性のあるテーマだが、君と競合相手の間にリンクギャップを生み出すことを目的とした固有のリンクを獲得することはできない。
ケーススタディ
競争の激しいブランドのニッチなリンクターゲットを特定
ここでケーススタディを紹介しよう。
旅行業界で著名な英国のあるブランドは、まったく新しい参照元ドメイン名からのリンクを獲得するとともに、競合他社との間にリンクギャップを生み出そうとしていた。
当初のリンクギャップ分析では、主要なブランド間でそれほど差がないことが明らかになった。いずれの企業も業界内で確立されたブランドであり、どのブランドも普通の予想されるサイトから被リンクを獲得していた。そのため、新たなリンクギャップを生み出せる絶好の機会を見出すことができた。
上述したように、私たちは「リンクファースト」ではなく、一歩引いて「オーディエンスファースト」を心がけている。オーディエンスの立場になってみる必要があり、それには、思考を組み立てるのに役立つ質問のチェックリストを作成する。
英国の旅行ブランドの場合は、次のようなことが知りたかった:
何が誘因になっているか ―― 対象オーディエンスは何に情熱や関心を持っているか。
なぜコンバージョンしたのか、その背景にあるのは何か ―― 君の製品やサービスを使う前と後で、オーディエンスはどのような行動をとっているか。
心から気にかけていることは何か ―― 身近な家族や友人のことか、それとも、お金のことやペットのことか。
問題は解決したか ―― オーディエンスは何を必要としていて、君の製品やサービスはどのような問題を解決するか。
オーディエンスの疑問にすべて答えたら、これが確かな出発点となって、ニッチなオーディエンスを特定できる。MindNodeなどのマインドマップツールを利用すれば、次のような「プライマリオーディエンス」や「セカンダリオーディエンス」に展開できる:
これらのオーディエンスは業界によって異なるように見えるだろうが、特定した各オーディエンスが英国で休暇を予約することに興味を持つであろうことは容易に想像できる。
まず、プライマリオーディエンスとして「どこでも仕事ができる人」を考えてみよう。主にオンラインで仕事をするフリーランサーの場合は、安定したインターネット接続が利用できれば、どこからでも仕事ができる可能性が高い。したがって、英国で休暇を取りながら仕事をすることも選択肢の1つとなるため、このオーディエンスに適している。
しかし、どこでも仕事ができるのは、フリーランサー以外にどんな職種の人がいるだろうか。ここで、私たちのコンテンツがターゲットとする可能性のある4つのセカンダリオーディエンスも特定できる。
オーディエンス主導型アプローチの結果
このアプローチを採用したところ、次の成果を得られた(本記事の執筆時点):
- JBHが獲得したリンクの3分の1以上(35%)はまったく新しい参照ドメイン名からのものとなった
- このブランドの競合相手のうち、これらのドメイン名からリンクが張られていたところもなかった
これは、デジタルPRに対するオーディエンス主導型のアプローチにより、競合他社と差別化できることを示している。
適切なサイトとリンクターゲットの見つけ方
「どこでも仕事ができる」オーディエンスグループがターゲットに適していることがわかったところで、次のステップとして、被リンク獲得のターゲットにしたいサイトを特定する。
この作業はコンテンツの作成に着手する前に行う必要がある。というのも、次を評価することになるからだ:
サイトの量 ―― ターゲットにするサイトは十分にあるか。
サイトの質 ―― サイトの質は十分か。
関心のあるトピック ―― どのような会話が話題になっているか、そうした会話に付加価値をもたらせるか。
競合企業のターゲットになっているか ―― すでに競合相手がそのサイトからリンクを張ってもらっていないか。
こちらのコンテンツをシェアしてもらえるか ―― コンテンツを取り上げてもらえる可能性はあるか。
こうしたサイトをみつけるには、次の2つのステップで進めるといい:
- 手作業でグーグル検索する
- 類似のサイトを見つける
ステップ①手作業でグーグル検索する
このテクニックは以前からあるが、非常に有効だ。コンテンツを売り込む新たなサイトを見つけるには、最も効果的な方法だろう。私たちは、次のようにしてサイトを見つけている:
- ターゲットにしたいオーディエンスに関連するキーワードを検索し、
- 表示されたサイトのリストを作成し、
- ジャーナリストや執筆者の名前、サイトのドメインオーソリティ、類似のコンテンツを記録し、
- 私たちのコンテンツを取り上げてくれる可能性がどのくらいありそうかを検討する
ステップ②類似のサイトを見つける
Chromeブラウザの拡張機能にSimilarSitesという無料のツールをインストールしてみよう。
ターゲットにするニッチなオーディエンスに最適と思われるサイトを見つけたら、この拡張機能をクリックすると、似たサイトのリストが表示される。つまり同様にうまくいきそうなサイトの候補であり、アウトリーチの対象リストに追加できる。
リンクターゲットを見つけるために使えるプロスペクティングのテクニックは他にもたくさんあるが、この時点で、君のコンテンツに関心がありそうな関連サイトのリストは得られているはずだ。
そこで次に、共有できるコンテンツの種類について考えてみる必要がある。
ニッチなリンクターゲットのためのコンテンツのアイデア
アイデア①境界線が有効
ブレインストーミングに境界線を設けると、プロセスの部分がはるかに簡単になることを、ここで指摘しておきたい。
2006年、ある建築家チームが、遊び場の周囲にフェンスを設置したら子どもたちとその遊び方にどのような影響があるかを調査した。これは、次の2種類の子どもたちを観察して比較したものだ:
- フェンスに囲まれた遊び場で遊ぶ子どもたち
- フェンスという物理的な境界を設けていない遊び場で遊ぶ子どもたち
その結果、そうした空間に対する子どもたちの反応に大きな違いがあることがわかった。
- フェンスのない遊び場①では、子どもたちは教師の周りに集まり、辺りを探索しようとはしなかった。
- フェンスのある遊び場②では、遊び場全体を探索し、より解放感を抱いていた。
このことから、境界線(この場合はフェンス)があれば、子どもたちはより安心して探索したり遊んだりできると調査では結論付けている。
私たちも、これと同じように考えることができる:
響くコンテンツを作るためにブレインストーミングを行う場合、何らかの「境界線」や「解決すべき特定の問題」を提示することで、創造的なプロセスを改善できる。
アイデア②3つの「R」
コンテンツのアイデアを生み出すにあたっては、ニッチなオーディエンスの共感を得る必要がある。そのため、そうしたオーディエンスが気にかけているトピックに入り込む必要がある。そして、これには独自の、おそらくは意外に思われるかもしれない方法がある。
なお創造的なコンテンツについて考える前に、必ず次の「3つのR」を守ってほしい:
①Research(調査)
Reddit ―― ターゲットにしたいオーディエンスに関連するサブレディットに参加する。Redditはインターネットのトップページに位置付けられるため、自分のオーディエンスを発見できる可能性が高い。
Quora ―― 自分のオーディエンスが答えを知りたがっている質問を発見できる。
Facebookグループ ―― オーディエンスごとに細分化されたグループに参加することで、コミュニティ内で実際に交わされている会話を確認できる。
BuzzSumo ―― 話題のトピックを見つけることで、ソーシャルメディア上で多くのエンゲージメントやクリックを獲得できる。
②React(反応)
Googleアラート ―― 特定したトピック(「どこでも仕事ができる」など)に関するキーワードやフレーズに対してアラートを設定できる。
Googleトレンド ―― 検索順位が急上昇しているトピックがあるかどうかを確認することで、何が話題になっているかを浮き彫りにできる。
#JournoRequest / Response Source / HARO ―― ジャーナリストがどのようなリクエストをしているか注意して見ておくことで、自分が計画しているコンテンツのスタイルと合っているかどうかを確認できる。
③Relevance(関連性)
オーディエンス ―― クライアントやブランドのオーディエンスは、このコンテンツに興味を持つだろうか。
オーソリティ ―― クライアントやブランドはこのテーマのオーソリティか。これについてインタビューを受ける可能性があるか。
キーワード ―― 上位に表示させたいキーワードが含まれているか。また、リンクする意味のあるページがサイト上にあるか。
ニュースとしての価値 ―― ジャーナリストは私たちの主張に関心を持つだろうか。私たちは特定の話題にどのような付加価値をもたらそうとしているのか。
戦略的なアプローチで競争力を高めることはできるが、準備が重要
普通なら競合相手の背中を追いかけることに夢中になってしまいがちだが、このアプローチなら、ニッチなオーディエンス向けに特化して設計されたコンテンツを作成し、競合相手との間に有益なギャップを生み出せる。
競合相手がまだ獲得していないリンクほど、構築に適しているリンクはないことを忘れないでほしい。
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