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【NBAから見るSEO】なぜプロバスケの試合でミドルシュートが減ったのか、SEOで得点率の高い施策とは?

NBAもSEOも分析革命が起きている。知見やテストに基づかない変更はやめて、勝てるテストや戦略と新しいコンテンツに注力しよう。
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

SEOへの科学的アプローチを、プロバスケットボールの世界を参考に理解してみよう。

バスケットボールの世界では、ここ20年でミドルレンジからのシュートが激減した。これはなぜなのか? そして、その変化の背景にあるものをSEOの世界でもうまく活かすにはどう考えればいいのか?

バスケットボールに詳しくない人でもわかるように解説する。

ホワイトボード・フライデーにようこそ。秋のシーズン幕開けとなる今回は、SEOがNBA(北米プロバスケットボールリーグ)のように、分析においていかに変革を遂げようとしているか、そしてどうすればこれを最大限活用できるかを、ウィル・クリッチロー氏が紹介する。

このトピックの詳細に加えて、デジタルマーケティングのカンファレンスMozCon 2022で講演した素晴らしいスピーカーたちの話を聞きたいという人は、ぜひ映像を購入してほしい。

マネーボールこそSEOの未来
比較の対象となる元のコンテンツ
変更を加えたコンテンツ
SEO
テスト
新しいコンテンツ
勝つためのテスト
ミドルレンジはやめよう
テストしていないオンサイトの変更
1試合あたりのポゼッション
KPI=テストのケイデンス
マネーボールこそSEOの未来 ―― ただ、この図だけ見てもわからないので、筆者の伝えたいことは本文を読んで理解してほしい

Mozファンのみんな、こんにちは。僕はSearchPilotの最高経営責任者(CEO)、ウィル・クリッチローだ。今回はまず、2001年シーズンのNBAについて話したい。

NBAの分析革命でミドルレンジのシュートが減少

下図は、2001年のNBAのシュートチャートだ。シュートを打つ回数が多かった地点を示している。

2001年のNBAでシュートを打つ回数が多かった地点

この図から、プロバスケットボールでは、リム(ゴール)周辺でのシュートが多いことがわかる。リム周辺のシュートはダンクやレイアップだ(バスケットボール用語がわからなくても心配しなくていい、この後のSEOの話題には直接関係ない)。

ダンクやレイアップでのシュート

そして、スリーポイントラインの外側からのシュートも多い。その間のミドルレンジのシュートも多く、これらはすべてジャンプシュートだ。

スリーポイントのシュート
ミドルレンジからのシュート

しかし、その後20年の間に、何かが起こった。なぜなら、2021年のシュートチャートは下図のようになっているからだ。

2021年のNBAのシュートチャート

この図の結果には、かなり驚かされる。ご覧のように、ダンクやレイアップはまだ多く、スリーポイントシュートも多いが、ミドルレンジのシュートはほとんどなくなっているのだ。これはなぜだろうか?

その理由は、NBAのすべてのスタジアムとアリーナに高度なカメラシステムを設置し、高度な機械学習と人工知能(AI)を駆使して、試合ごとに最初から最後まですべての選手とボールを追跡したことだ。

その高度な統計値を利用することで、以前には得られなかったあらゆるデータを追跡できるようになった。たとえば、どれほど近くでガードされながらシュートを打ったか、左にドリブルしたか、右にドリブルしたか、そういった詳細なデータだ。さらに、こうしたデータから、以前は一般的だったミドルレンジのシュートが、皆が想定していたほど効果的でないことが明らかになったのだ。

データ分析の結果、次のことがわかった:

  • ミドルレンジはスリーポイントとほぼ同じくらい入る確率が低かったが、2点しか得られないため、スリーポイントよりも価値がはるかに低い
  • ダンクやレイアップも2点にしかならないが、入りやすいので打つ価値はある
  • スリーポイントの価値はその1.5倍で、打つだけの価値はある

高度な統計学によって初めて、シュートの価値を把握できるようになったのだ。

SEOの分析革命

NBAのシュートのデータ分析のように、SEOでも同じような分析革命が起きていることを指摘したい。すべてのスタジアムに設置されたカメラに相当するのは、僕たちが入力する様子を監視するカメラではない。それはSEOのA/Bテストで、このA/Bテストによって仮説が立てられる。

つまり、オーガニック検索のパフォーマンスに大きな利益をもたらすと思われる特定のオンサイトの変更を科学的な方法でテストし、次のことを把握できるのだ:

  • 予想される影響
  • その影響の信頼区間

このテストの実施方法について、ここでは詳しく説明しない。以前に取り上げたことがあるので、実施方法に関する詳細へのリンクをお伝えしておこう。

※Web担編注 SEOのA/Bテストとは(クリックで説明が開きます)

上記リンク先で解説しているのは、SearchPilotによるSEOのA/Bテスト。SearchPilotは、SEO向けのA/Bテストを行えるサービス(旧名称DistilledODNからブランドが変更された)。CDNとして動作し、特定のセクションのコンテンツ群を使って検索エンジンでの評価をA/Bテストする仕組み。

通常のコンテンツ向けA/Bテストツールとは、テストの原理が次のように異なる:

  • 通常のコンテンツ向けA/Bテスト

    特定のURLに対する訪問者をセグメント分けして、同じURLでもテスト群に割り振られたユーザーにはテストバージョンのコンテンツを表示する。

    そのため、テスト群に割り振られたユーザー(ブラウザ)でアクセスすると、そのコンテンツは常にテスト版で表示される。

  • SearchPilotによる検索エンジン向けA/Bテスト

    サイト内のあるカテゴリ(ブログや製品情報など)内のコンテンツを「通常表示コンテンツ群」と「テスト表示コンテンツ群」にセグメント分けして、テスト表示コンテンツ群のほうはテスト用の修正を行って表示する。

    そのため、だれがアクセスしても各URLは同じ表示だが、各コンテンツが割り振られたセグメントによって表示が変わる。

もちろんコンテンツが異なれば検索評価も変わるため、厳密なテストが行えるわけではないが、季節変動や検索エンジンアルゴリズムの変更なども加味してテストを行える仕組みのようだ。

重要なのは、このようなテストがすぐに実施できるということだ。このテストによって、特に企業のSEO(非常に大規模なウェブサイト)の場合は、プロバスケットボールの試合で得られたのと同じような気づきが得られる。

ミドルレンジのシュートはテストしていないウェブサイトへの変更と同じ

NBAのミドルレンジのシュートは、SEOではウェブサイトへの変更のうちテストしていないものに相当すると思う。

さまざまな種類の小さな変更を、ウェブサイトに取り入れようとすることがあるだろう。その際の理由は、次のようなものであることが多い:

  • ベストプラクティスだから
  • グーグルの従業員から何か聞いたから
  • 専門家から何か聞いたから(たとえば僕のような立場の人間から「これをやるべきだ」と言われたから)

しかし、実際にデータを見ると、プロバスケットボールの試合において成功の確率が低いとわかったミドルレンジのシュートと同様に、ウェブサイトで取り入れた小さな変更がうまくいく確率は一般的な想定よりはるかに低い。

ミドルレンジのシュートでも、ときには盛り上がる場面もある。たとえば、次のような場面だ:

クロスオーバー(ドリブルを左右に切り替えてディフェンスを抜き去る技)からミドルレンジのシュートを決める!

これに相当するのは、SEOならば次のようなことだろう:

キーワード調査から知見を得て、検索ユーザーが君のウェブサイトをどのように探しているかに関し、何らかの新たな視点を持って、サイト内の多くのページでタイトルやメタ情報などに変更を加える!

だが、多くの場合それは大幅なエアボール(どこにも当たらないで外れるシュート)になる。

実際のエンタープライズSEOの現場で僕たちは、そうした失敗を数多く見てきた。変更に対する知見はもっているものの、A/Bテストを経ずにサイト全体に変更を加えた結果、オーガニック検索のパフォーマンスが20%も27%も低下したケースだ。

比較の対象となる元のコンテンツ/変更を加えたコンテンツ→SEOテストの結果14%増加
知見に基づいてテストし、変更すること。

シュートがすべて得点になるわけではないのと同様に、サイトに加える変更がすべて検索トラフィックを増やすとは限らない。だから、データを取得したりA/Bテストしたりしながら、より成果につながる施策を選んでいくべきなのだ。

マネーボールこそSEOの未来

僕の考え方として、マネーボールのような戦略がSEOの未来に必要だと思っている(マネーボールとは、野球の分析手法であるセイバーメトリクスに基づく理論や戦略などの総称)。将来的に大規模なウェブサイトが構築の基盤にすると思われる戦略は、勝つためのテストを組み合わせたものになる。これらはバスケットボールでいうとダンクやレイアップであり、強い確信を持ってこれらのシュートを打てる要素だ。

スリーポイントシュートのような価値を持つのは新しいコンテンツ

SEOにおいて、バスケットボールでいうスリーポイントシュートのように打つ価値のあるシュートに相当するのは、新しいコンテンツだ。つまり、新しいページや新しいサイトセクションであり、これらは非常に貴重なものだと指摘したい。新しいコンテンツを開発しなければ、長い目で見て苦労することになるだろう。

しかし、試合でのスリーポイントシュートと同じように、これは大変難しいことでもある。難しいが、それ以上に価値がある。

もちろん、スリーポイントシュートしか狙わないなんてバスケットボールチームはない。新しいコンテンツを開発しながらも、成功率の高いダンクシュートのような施策も並行して進める。

SEOの世界では、これはA/Bテストや検証を重ね、効果がでる見込みが高いと判断された変更のことだ。実際にサイト全体に反映していくのは、検証を経たものだけにするのだ。

そして、ミドルレンジのジャンプシュートのような、テストしておらず効果も高くない変更などはすべてやめるのだ。

新しいコンテンツ=スリーポイントシュート、勝つためのテスト=ダンクシュート。ミドルレンジのシュート(テストしていないオンサイトの変更)はやめよう
新しいコンテンツを作り、勝つためのテストを導入しよう

ポゼッションを上げるように、テストのケイデンスを上げる

そして、戦略的パズルの最後のピースは、テストのケイデンス(頻度)を上げることだ。

ここでもNBAに例えると、2001年から2021年では1試合あたりのポゼッション(ボールを所有している状態)は9%も増えている。その理由は、競争力があり、相手より優位に立っていることで、積極性があがるからだ。

SEOも同じで、戦略的な変更やテストなど高度な知見によって競争力が上がり、相手より優位に立てば、もっとテストしてみたいと思うようになる。

NBAでは1試合あたりのポゼッションが20年間で9%増加NBAでは1試合あたりのポゼッションが20年間で9%増加。テストのケイデンスに関するKPIを設定して更なる向上を目指す
NBAでは1試合あたりのポゼッションが20年間で9%増加

カジノに行ってルーレットを1回まわせば、そのときは勝つかもしれない。ルーレットを1000回まわせばカジノ側が勝つが、それは相手側が優位にあるからだ。もしテストを行うことで優位に立てるなら、テストの回数を増やして、テストのケイデンスを上げよう。

◇◇◇

このようなマネーボール的SEOのアプローチを採用して非常に高いパフォーマンスをあげているチームは、こうした新しいコンテンツと勝つためのテストから戦略を立てている。そして、テストのケイデンスに関するKPIを設定し、こうしたテストをより多く、よりすばやく実行することで、さらにパフォーマンスを向上させているのだ。

NBAのバスケットボールを通じてSEOのテストを掘り下げる、このささやかな探索を楽しんでもらえただろうか。以上、SearchPilotのCEO、ウィル・クリッチローがお届けした。ではまた。

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