なぜSEOに効果があるのか? ウェブアクセシビリティに取り組むべき4つの理由(前編)
「誰にとっても使いやすいウェブサイト」にしていくことで、検索順位やユーザー体験を大幅に改善できる方法を紹介する。リッサ・フェイ・クランプ氏のホワイトボード・フライデーでウェブアクセシビリティの利点を引き出し、SEOを強化しよう。
こんにちは、私の名前はリッサ・フェイ・クランプ。The Agile Communications Agencyでデジタル担当の責任者を務めている。今回は、SEO戦略が劇的に向上する可能性のあるテーマについて解説する。それは「アクセシビリティ」だ。
「アクセシビリティとは、障害のある人のためにウェブをより使いやすくすること」だと考えている人もいるかもしれない。たしかにそのとおりで、それだけでも十分配慮するに値する。しかし、アクセシビリティが検索順位にも驚くような効果をもたらすことを知っているだろうか?
そう、サイトをよりアクセシブルにすることで、検索エンジンにとって理解しやすく、クロールしやすくすることにもなり、上位に表示されやすくなるのだ。それを望まない人なんているだろうか?
この記事では、アクセシビリティがSEOにおいて宝の山である理由や、今すぐ活用するための方法を具体的に説明しよう。
アクセシビリティとは

SEOでの利点を詳しく見ていく前に、アクセシビリティを定義しておこう。簡単に言えば、ウェブアクセシビリティとは「能力に関係なく誰もが利用できるようにサイトを設計して開発すること」だ。
たとえば、次のようなことである:
- スクリーンリーダーへの対応
- キーボードによるナビゲーション
- テキストが背景に埋もれてしまわないようにする色のコントラスト
- など
アクセシブルなサイトは、すべてのユーザーに快適な体験を保証する。人間にとって良いことは、検索エンジンにとっても良いことだ。万歳!
さまざまな障害に対応するアクセシビリティ
ウェブの体験は人によって異なるし、何か所か微調整するだけで、サイトをはるかに居心地のよいものにできる。では、「少し変えるだけで、さまざまなユーザーに大きな違いをもたらす」方法を紹介しよう。
視覚障害者、弱視者、低視力者: 「スクリーンリーダー」は、ウェブページの内容を自動的に音声で読み上げてユーザーがサイトの中身を把握したり移動したりするために欠かせないツールだ。画像に「適切な見出し」と「alt(代替)テキスト」を追加すれば、こういったユーザーにとってはるかに使いやすいサイトになる。
聴覚障害者、難聴者、低聴覚者: 動画はすばらしいコンテンツだが、字幕や文字起こしがなければ利用できない人もいる。これらを追加することで、コンテンツをより多様な人が使えるものにしつつ、多くのキーワードを含む追加のテキストによってSEOを強化することにもなる。
動作に制限のある人や身体に障害のある人: 誰もがマウスを使えるわけではないため、キーボードで操作しやすいナビゲーション(マウスオーバーでメニューを操作するのではなく、タブキーでリンク間を移動するなど)は、大きな違いをもたらす。
また、キーボードで操作できるようにしておけば、スイッチ(体の動きで操作する入力装置)やアイトラッキング(視線追跡)デバイスなどの支援技術を利用している人にも使いやすくなる。
神経多様性、学習障害、または神経疾患のある人: 注意欠如・多動症(ADHD)の人、失読症の人、情報処理に支障のある人にとって、雑然とした予測不能なウェブサイトは過度な負担になることもある。サイトをすっきりとシンプルで一貫性のあるものにしておくと、こうした人たちにも大きな効果がある。
また、要素を点滅させるような視覚的効果は発作を引き起こす可能性があるため、避けたほうがいい。
認知疲労、ブレインフォグ(脳に霧がかかったような感覚)、または精神的疲労を感じている人: 脳が疲弊しているところへ、乱雑で複雑なウェブサイトは最も避けたいものだ。レイアウトをシンプルに保ち、コンテンツを小さなブロックに分割し、「ダークモード」「テキスト読み上げ機能」「アニメーションの停止オプション」といった機能を提供すれば、はるかに集中しやすくなる。
これらの小さな変更は、誰にとっても居心地の良い空間を作るのに役立つだけでなく、サイトのSEOを強化することにもなる。その仕組みを説明しよう。
競争を有利に導くアクセシビリティ
ではなぜ、良識を備えた人間であるだけでは不十分で、それ以上に配慮する必要があるのだろうか? それには主に4つの理由がある。
理由1オーディエンスが広がる
「サイトをアクセシブルにする」ということは、「より多くの人が利用できるようにする」ということだ。自分のすばらしいコンテンツをもっと多くの人に見てもらいたいと思わない人はいないだろう。ユーザーが増えれば、次のような効果が出る:
- エンゲージメントの増加
- 直帰率の低下
- コンバージョンの向上
ちなみに、世界保健機関(WHO)の推計によると、重大な障害を抱えている人は世界人口の16%に相当する13億人にのぼるという。そのため、サイトをアクセシブルにすれば、膨大な数の多様な人々にコンテンツを開放することになる。これには良いことしかない。訪問者が増え、交流が広がり、あらゆる面でより良い成果を生む。
理由2SEOが強化される
検索エンジンは、構造がしっかりしていて使い勝手のよいサイトを優先する。
「代替テキスト」や「明確な見出し構造」といったアクセシビリティ機能を数多く備えていれば、検索エンジンにとってコンテンツをクロールしやすく、インデックスに登録しやすくなる。アクセシビリティが高いほど、検索結果の上位に表示されやすいということだ。
理由3信頼と忠誠心が高まる
使いやすいウェブサイトは、人々にまた利用したいと思わせる。ユーザーが「大切にされている」と感じ、居心地のよさを覚えれば、そのサイトにとどまり、他の人にも勧め、くり返し戻ってくる可能性も高まる。
しかし、アクセシビリティの効果はそれだけではない。英国の消費者を対象にした調査では、アクセシビリティの問題で購入を諦めたと回答した人は全体の55%に達しており、そのために小売業者が失った売上は120億ポンド(約2兆3800億円)にもなる可能性があるという。したがって、ウェブサイトをアクセシブルにすることは善意からだけでなく、金銭的にも賢明な手段でもあり、オーディエンスの信頼と忠誠心を高める助けになる。
理由4競合他社はおそらく後れを取っている
悲しい現実として、競合他社の多くはアクセシビリティに関して十分な取り組みをしていないだろう。実際、WebAIMが上位100万のウェブサイトを対象に実施した調査では、95.9%がウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン(WCAG)に準拠していなかった。これは君にとって大きなチャンスだ!
ウェブサイトをアクセシブルにすることで、競合他社に差をつけ、オーディエンスに良い印象を与え、先進的であることをアピールできる。それに、アクセシビリティ上の問題を抱えているユーザーだけでなく、すべてのユーザーにより良い体験をもたらせる。
まだ確信が持てないだろうか?
自分のウェブサイトを店舗に例えてみよう

こんな状況を想像してみてほしい:
君は、苦労して稼いだお金で買い物をしようと大通りを歩いている。すると、2つの店を見つけた。
1つは入り口が狭く、崩れそうな階段で、看板もなく、暗い路地裏の奥にある。まるで「別に来てもらわなくて結構」と言っているようなものだ。
もう1つはスロープと階段があり、看板はわかりやすく、照明は明るく(ただし明るすぎない)、歓迎してくれそうな雰囲気だ。こちらの店は「どうぞお入りください! どなた様も歓迎します!」という姿勢が見える。
君のウェブサイトもまさにそれと同じだ。アクセシブルなサイトはユーザーと検索エンジンに「ちょっといいですか、あなたにぜひ見てほしいものがあります!」と伝えているが、アクセシブルでないサイトは「ここには来てほしくない」と言っているようなものだ。
この記事は、前中後編の3回に分けてお届けする。「アクセシビリティとは何か」について概要を説明した今回に続いて、中編となる次回は、「アクセシビリティはSEOをどのように強化するか」と「アクセシビリティに関する法的要件」について説明する。
(中編は9/2公開予定)
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