アクセシビリティがSEOにいいのはわかった、じゃあ何から始める? 初心者向け改善ツール9選(後編)
この記事では、SEOにおいて重要な役割を担うアクセシビリティについて解説している。これまで、次の3つについて解説してきた:
- アクセシビリティとは何か(前編)
- アクセシビリティはSEOをどのように強化するか(中編)
- アクセシビリティに関する法的要件(中編)
後編となる今回は、次の3つを見ていこう:
- アクセシビリティ改善で避けるべきよくある間違い
- 初心者にも使いやすい人気のアクセシビリティ関連ツール
- 今後の動向
アクセシビリティの改善はどこから手を付けたらいいか
「アクセシビリティを改善して、SEOにも役立てよう」と思っても、「どこから手を付けたらいいのかわからない」と途方に暮れていないだろうか? 心配は無用だ。一度にすべてをやる必要はない。次のようにして始めよう:
まず、要素(代替テキストや色のコントラストなど)を1つ選び、サイト全体で確認し、修正しよう。それが終わったら、リストの次の項目に進んでほしい。
あるいは、1ページずつ取り組み、最も重要なコンテンツから始めて、順番にすべてのアクセシビリティの問題を確認していこう。
覚えておくべきポイントは、次の2つだ:
- 小さな変更でも大きな違いを生むこと
- 完璧であることよりも着実に進歩することのほうが、はるかに重要であるということ
始めるのは簡単だが、途中で陥りやすい注意すべき落とし穴がいくつかある。
避けるべきよくある間違い
サイトをよりアクセシブルにすることで誰にとってもスムーズかつシンプルで使いやすいものにしていく……その際に避けるべき、よくある落とし穴を見ていこう。
落とし穴1乱雑なフォーム
フォームの各入力フィールドには明確なラベルがついていて、ラベルはそれぞれ対応するフィールドとひも付けられている必要がある。
混乱を招くフォームはユーザー体験を損ないかねないため、できるだけ入力しやすいものにしよう。少し明確にするだけで大きな違いになる。
落とし穴2モバイルアクセシビリティの無視
モバイルデザインの目的は、小さな画面にすべてを収めることだけではない。ボタンのサイズやテキストの読みやすさなどをテストし、あらゆるデバイスでアクセシビリティを確保しよう。モバイルユーザーに感謝されるだろう。
落とし穴3一貫性のないキーボードナビゲーション
ユーザーはキーボードの[Tab]キーを使ってサイトを問題なくナビゲーションできなければならない。要素によって機能するものと機能しないものがあると、ユーザーにとってこの上なく苛立たしいものともなる。一貫性が鍵だ。
落とし穴4明確なフォーカスインジケーターの欠如
キーボードでページ内のリンクやフォーム要素をナビゲートしていく際に、フォーカスインジケーター(いまフォーカスがどこにあるのかを示す表示)は不可欠だ。フォーカスインジケーターがなければ、暗闇の中を手探りで進むようなものとなる。
フォーカスインジケーターを明確に表示して、たどりやすくすることで、ユーザーが常に現在地を把握できるようにしよう。
落とし穴5色だけに依存
「エラー(赤)」や「成功(緑)」などの情報を色だけで伝えようとしている場合は、誰もが色を同じように認識するわけではないことを忘れてはならない。色覚障害のあるユーザーのために、アイコンやテキストを使って色以外でも意味の情報を追加することで、メッセージが明確に伝わるようにしよう。
落とし穴6動画や音声に代わるテキストの欠如
動画や音声のコンテンツがある場合、それらを視聴できないユーザーのことを忘れてはならない。必ず字幕や文字起こしを盛り込もう。コンテンツのアクセシビリティが向上するだけでなく、SEOも強化できる。良いことずくめだ!
落とし穴7見出し構造の混乱
見出しは、「ユーザー」や「検索エンジン」がコンテンツをナビゲートするのに役立つ。h1、h2、h3の見出しが整理されていなければ、道順のない地図を渡すようなものだ。見出し構造を明確にすることで、すべての人を簡単に目的の場所に導ける。
見出しのHTMLの例:
<h1>SEOにおけるアクセシビリティの利点</h1>
<h2>アクセシビリティとは</h2>
<h3>さまざまな障害に対応するアクセシビリティ</h3>
落とし穴8曖昧または見つけにくいエラーメッセージ
誰もが経験したことがあるだろう。フォームで何かがうまくいかなかったときに表示される、あの「問題が発生しました」という曖昧なメッセージのことだ。これは本当に苛々させられる。
エラーメッセージは具体的かつ有益な内容にして、見つけやすくしよう。明確な指示を示せば、ユーザーが問題をすばやく解決する助けになる。
落とし穴9アクセシビリティのテスト未実施
何も問題はないと決めつけるのは簡単だが、テストは必須だ! 次のツールを使って、定期的にサイトをチェックし、問題がないか確認しよう:
- スクリーンリーダー
- キーボードナビゲーション
- その他の支援技術
見た感じは問題ないからといって完全にアクセシブルとは限らないため、時間をかけて何度もテストしてほしい。
サイトのテストに使うべきツールがわからない人も、心配は要らない。この次のセクションで紹介する。
初心者にも使いやすい人気のアクセシビリティ関連ツール
サイトのアクセシビリティテストを始める準備ができたら、必要な作業を簡単に実行できるようにしてくれるツールがたくさんある。ここからは、アクセシビリティ関連のテスト用ツールをいくつか紹介する。
WebAIM: ユタ州立大学が運営しているWebAIMにはアクセシビリティツールとガイドラインが用意されていて、参考になる。
WAVE: 個々のページを精査してアクセシビリティの問題を見つけるのにとても便利だ。このツールは使いやすく、ブラウザ拡張機能としてもウェブベースのツールとしても利用できる。代替テキストの欠如から、コントラストの低さや見出し構造のわかりにくさまで、ページ上に直接アクセシビリティの問題が表示される。手軽にチェックするには最適だ(このツールもWebAIMが提供している)。
Axe: 開発者はAxeが大好きだ! Axeは、サイトのコードを詳しく調べて、ARIA属性の欠落や見出しの誤りといった問題を見つけるのに役立つ便利なブラウザ拡張機能だ。開発プロセスにシームレスに統合される。
Lighthouse: サイト全体の監査を実施しようとしている場合、Lighthouseは、アクセシビリティを徹底的に精査できるだけでなく、パフォーマンスやSEOに関するインサイトも得られる。Chromeさえあれば、これ1つで、すぐに実行可能な改善点を把握できる。
Chrome DevToolsに組み込まれているので、Chromeでページを表示している状態で[F12]キーでDevToolsを表示し、上部の[Lighthouse]タブを選べばすぐに実行できる([モード]は「ナビゲーション」または「スナップショット」で、[カテゴリ]で「ユーザー補助」をチェックしておく)。
Silktide: Silktideを使うと、サイトのアクセシビリティを詳細に分析でき、色のコントラスト、リンク、フォームなどの問題を改善するためのヒントが得られる。サイトの現状を詳しく評価する上で頼りになるツールだ。
Web Design Group: 基本からステップアップしたい人であれば、Web Design Groupを使うと、アクセシビリティ基準を満たし、よりインクルーシブなウェブを構築するためのツールやリソース一式を利用できる。
Free Accessibility Checker(Skynet Technologies) : 特に代替テキストの欠如や不適切な見出しタグといったよくある問題については、これもサイトを気軽にテストするのに便利なツールだ。速くて効率がいい!
Accessibility Checker: このシンプルなツールは、アクセシビリティ違反を見つけるのに適しており、応急処置の簡単なリストを作ってくれる。非常に使いやすく、サイトのアクセシビリティを手軽に把握できる。
Colour contrast checker: 色のコントラストは読みやすさに不可欠であり、この便利なツールはテキストと背景の色がWCAGガイドラインに準拠しているか確認するのに役立つ。サイトの読みやすさを向上させるには必須のツールだ!
これらのツールをワークフローに組み込むことで、アクセシビリティの問題を早期に見つけ、サイトを使いやすく、SEOに最適化された状態にしておける。さらに、これらのツールの多くは無料か試用版が用意されているため、定期的にテストしない理由はない!
今後の動向
アクセシビリティの未来はかなり明るいように見える。新しいテクノロジーや規格が次々と登場しているからだ。
特に大きなトレンドの1つが機械学習である。ミラクル・アイナメティ=アーチボング氏がMozConで取り上げていたように、機械学習はウェブサイトをよりアクセシブルにするうえで極めて大きな役割を果たすようになりつつある。代替テキストの自動生成や言語のリアルタイム翻訳などに利用すれば、あまり手作業をせずにサイトをよりインクルーシブにできる。
注目すべきもう1つのトレンドは、AIを活用したアクセシビリティツールだ。これらのツールはますますスマートになっており、精度が向上した監査や提案により、アクセシビリティの問題をよりすばやく簡単に修正できる。
さらに、WCAG 3.0(ウェブコンテンツアクセシビリティガイドラインのバージョン3)の導入も広がっており、インクルーシブなデザインのための基準がさらに明確になることで、確実に順守しやすくなる。
アクセシビリティの未来はテクノロジーが引っ張っていくのかもしれないが、ウェブを人間にとってより良い、よりインクルーシブな場所にするというその目的に変わりはない。
結論: アクセシビリティを確保すれば、SEOで有利になる
アクセシビリティは正しい行為というだけではない。SEOを大幅に強化し、驚くほど高いROI(投資利益率)を実現できるスマートな戦略だ。
しかも、英国や米国など多くの国では法的義務となっている。
ただし、さらに重要な点はその先にある(競合他社はこれを見落としている可能性がある) ―― 検索エンジンは使いやすいサイトを好む。そしてアクセシビリティの改善は、サイト構造の改善、読み込みの高速化、コンテンツの明確化を意味することが多い。いずれも検索順位の向上に役立つ。競合他社が取り組んでいない一方で君が取り組めば、優位に立てる(やったね!)。
アクセシブルなデザインに注力すると、次のようなことが可能になる:
- SEOのベストプラクティスに適合する
- サイトをより広範なオーディエンスに開放する
- 主要なパフォーマンス指標を改善する
- 競争力を高める
小さな変化が大きな効果につながる。ウェブサイトを少し改善するたびに、ユーザー体験を高められるだけでなく、SEOも大幅に強化できる。壁を作るのはやめて、すべての人を心から受け入れるウェブの構築に取りかかろう。
さあ、ぐずぐずしている暇はない。最初の一歩を踏み出そう。今すぐ1つ変更し、改善し続ければ、サイトの検索順位と関連性は向上する。その差は非常に大きく、今すぐ行動を起こすべきだ。
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