Moz - SEOとインバウンドマーケティングの実践情報

“指標の言い換え”で成果を示す、ステークホルダーに通じるSEOの話し方(後編)

上層部が知りたい“成果”に合わせて説明を変えるコツを紹介。

「なぜSEOに関する説明が上層部に理解されにくいのか」「どうすればSEO業務の価値をより効果的に伝えられるか」について解説するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。

後編となる今回は、前回紹介したステップ1「ステークホルダーにとって重要な成果を明らかにするに続いて、ステップ2「ステークホルダーと話すときに使う言葉や指標を変える」について説明し、さらに「なぜ相手に伝わる言葉を使うことが重要なのか」も考えてみよう。

前編から再掲

[ステップ2] ステークホルダーと話すときに使う言葉や指標を変える

ホワイトボードのステップ2を抜き出した画像で、内容の解説がこのあとの本文にある。

ステップ2は、「言語」に関するもの、より具体的には「君が使っている指標や言葉」に関するものだ。上層部の人とSEOについて話すときは、相手がよく知っている言葉を使わなければならない

新しい言語を学ぶのは、本当に難しい。私はあるアプリを使って何度もフランス語を勉強しようとした経験があるので、身をもって実感できる。だからこそ、相手のよく知っている言葉で話しさえすれば、相手にとって理解することがはるかに簡単になるのだ。

では、「相手のよく知っている言葉」とは何か。シンプルに言うと、「上層部の人が、そのステークホルダー(さらに上の経営層や他の上層部の人)との会議や会話で使っている言葉」のことだ。

その具体的な例を見ていこう。

例1
❌「クロール問題を減らす」
⭕「クロールコストを減らす」

たとえば「クロール問題の削減」について最高技術責任者(CTO)と話したいと思っても、相手はGooglebot関連のことには精通していない。正直、Google側のクロールバジェットにあまり関心はない。本当に関心があるのは、実際の予算(バジェット)の方だ。

そのため、代わりに「クロールコストの削減」について話せば、「クロールバジェット対策の作業」が「実際の予算」に与える影響を途端に理解する。そして、相手からすると、君が達成しようとしていることを自分の最終目標にはるかにうまく合わせられるようになる。それが自分のチームのコストを削減することになるからだ。

例2
❌「テクニカルSEOの問題を修正する」
⭕「技術的負債を削減する」

テクニカルSEOに関する問題の修正について話す場合は、それによって相手の「技術的負債」がどのように削減されるかを説明しよう。

繰り返しになるが、私たちが考える“技術的負債”と相手の指す“技術的負債”は必ずしも同じものとは限らない。その点を十分に理解し、相手の言葉やプロセスに合わせて話すように変える必要がある。

例3
❌「検索順位データ」
⭕「市場浸透率」

最高マーケティング責任者(CMO)に対して最近のSEO施策の成果を説明しようとして、君は「検索順位の上昇」を例に挙げるかもしれない。しかし相手は、「検索順位が自分にとってどんな意味があるか」を十分に理解しているとは限らない。単に「露出が増える」といっても、それがビジネス成果にどうつながるのか、相手が正しく理解しているとは限らない。

代わりに、「検索順位は、市場浸透率に直結するものである」ことを伝えよう。たとえば、最近の新しい海外SEO施策が新しい国での検索順位上昇につながっているのであれば、そのことを伝えつつ、それがその国での市場浸透率の向上を示していることを必ず説明しよう。相手にとっては単なる検索順位より、そちらの方に関心がある可能性が高いからだ。

例4
❌「マイクロ コンバージョン」
⭕「有望見込み顧客の獲得」

Googleアナリティクス4でかなりの時間を費やして目標を設定したのに、CMOはそれらの目標を通じて君が何を示そうとしているのか十分に理解していない。「マイクロトランザクション」や「クリックの数」といった、アクセス解析におけるKPI的なマイクロコンバージョンにあまり関心がないからだ。

CMOが重視するのは、彼らが理解でき、ビジネス上の成果に直結する指標だ。たとえば、次のような言葉はCMOと営業責任者のあいだでよく話題になっているだろう:

  • Marketing Qualified Lead(MQL:マーケティング段階での有望見込み客)
  • Sales Qualified Lead(SQL:営業段階での有望見込み客)

そのため、Webサイト上での「マイクロコンバージョン」や「GA4上の目標」について話すのではなく、それが「見込み客獲得・育成のプロセス」にどう直結するかについて伝えよう。あるいはSEO施策がこれらのリードを通じて直接生み出したと判断できる収益額について伝えよう。

相手が本当に理解でき、おそらく日々使っているであろう指標で会話するのだ。

例5
❌「新規とリピーター」
⭕「解約率」

「新規とリピーター」も、Googleアナリティクスのレポートに表示される指標だ。しかし、これは上層部の人にとって何か意味があるだろうか?

代わりにチャーンレート(解約率)について話すべきだろう。あるいは、まず君がチャーンレートとは何かを理解したうえで、それについて相手と話すのがいいだろう。

例6
❌「ブランドキーワード」
⭕「ブランドセンチメントとシェアオブボイス」

ブランドキーワード。キーワードという切り口は指標として有益なのは確かだが、役員クラスの上層部の人にはあまり響かないだろう。これらの人々がはるかに重視するのは、ブランドセンチメントシェアオブボイス(SoV)などだ。

これらの用語がどんな意味なのかわからない? だとすれば、CMOが気にしているポイントに対する理解が足りないということだ。

検索や生成AIを駆使してマーケティング用語の意味を理解し、そこに自分の指標をどう組み合わられるか考えてみよう。そうすれば、もっとスムーズに会話できるようになるはずだ。

「相手にSEOの視点で話してもらうことを期待する」のではなく、「君が相手の言葉で話し、それがSEOにどう関連するのかを示す」のだ。

これらがなぜ重要になのか

ホワイトボードの一部を抜き出した画像で、このフレームワークが重要である理由が書かれている。内容の解説がこのあとの本文にある。

「要は、相手にとってなじみのある切り口や言葉を使う」ということなので、簡単そうに思えるだろう。だが実際は、やるべきことがたくさんある。

「SEOの知識がない相手のために、わざわざ伝え方を調節する」ことに、果たしてそれだけの価値があるだろうか? 私はあると思う。

次のようなメリットがあるからだ。

メリット1目標を一致させる

これらを正しく行うことができれば、目標の整合性を図ることができる。目標を一致させることで、「君の行っている作業が相手の作業に直接影響を与え、全体として相手に恩恵をもたらす」ことを示せる。

つまり、相手からすれば、「その作業をすることの利点を理解して受け入れ、サポートし、場合によってはリソースを投じることがはるかに容易になる」ということだ。

メリット2成果を確かなものにする

こうしたメソッドを使えば、成果に確実性をもたらすことができる。相手のことを理解したうえで君が「この作業はXを生み出す」と伝えた場合、次の状況になる:

  • 相手は「X」が何であるかを完全に理解している
  • 「X」は相手が自ら測定している指標である

そして、その「X」は、相手が目を向けている目標やKPI(重要業績評価指標)に直接つながるものになるように、君は調整したはずだ。

君はそれを実行する。

年度末になると、相手は報告書を読み、これまでの状況を完全に理解して、想定どおりの結果になっていることを理解する。「想定どおりの結果」とは、相手のKPIに良い影響を与えたということだ。

次の査定で君が有利になる可能性は非常に高いだろう。

しかし、このメソッドを使っていなければ、次のような結果を引き起こしてしまうかもしれない:

  1. 君は膨大な作業をする
  2. 年度末に、報告書を作る
  3. 報告書に記載する内容は、相手のKPIと関係がない指標
  4. 実際にはSEO的な成果があった(つまりビジネスにも良い影響があるはず)にもかかわらず、相手からみると成果がなかったように見える

君の査定はどうなるだろうか?

メリット3賛同してもらえるよう働きかける

このメソッドは、「相手が理解しやすいようにする」ことで、結果として「相手の賛同を得る」ことにもつながる。

君の仕事が「相手の目標や実施しようとしていること」にどう直結しているかを示し、予算の一部を充てることで実質的に相手に利益があることを示せれば、予算案やリソース案をはるかに簡単に承認してもらえることが分かるだろう。

メリット4関与を継続させる

それから、関与が継続されることになる。毎月のレポートでこうした言葉を使い続ければ、ステークホルダーも理解し続けることができる。相手からすれば、使い慣れている指標であるため、その善し悪しを完全に理解できるからだ。

いずれもスムーズな会話につながり、本当に役立つ。はるかに簡単にやり取りできるようになる。

相手は、君が使っているSEOの指標や専門用語に頭を悩ませることなく、「どうすれば君を昇進させて、昇給させてあげられるか」に集中できる。

◇◇◇

見てくれてどうもありがとう。

用語集
CMO / CTO / Googlebot / Googleアナリティクス / KPI / SEO / SQL / X / アクセス解析 / クロール / コンバージョン / ステークホルダー / チャーン
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