上層部に響くSEO施策の伝え方、2ステップで“理解される説明”に変える方法(前編)
SEOの提案がうまく伝わらないことはないだろうか? 今回のホワイトボード・フライデーでは、
- なぜSEOに関する説明が上層部に十分理解されにくいのか
- どうすればSEO業務の価値をより効果的に伝えられるか
について、ヘレン・ポリット氏が解説する。上層部の人にとって真に重要な指標や成果を用いれば、必要な賛同を得られやすいことを知っておこう。
「相手が理解できるように」説明すること
Mozファンのみんな、こんにちは。私の名前はヘレン。今回は「SEOに詳しくない上層部の人と同じ言葉で話す方法」を取り上げたい。
相手は指揮命令系統の頂点にいる人たちで、最高経営責任者や最高マーケティング責任者など、実際に予算を握っている人たちだ。君の話に割ける時間はおそらく5分、いや、もっと現実的に考えれば、5秒しかないだろう。
その短い時間で、相手は次のことをしている:
- 君が伝えようとしている内容を理解し、
- 自分にとって重要なことかどうかを判断し、
- 君の提案を支持するか、あるいはそっと立ち去るよう促すかを一瞬で決める
相手はとても忙しい。そのため、相手の注意を引き、SEO施策を成功させるために必要なことを正確に伝える時間は、ほんの一瞬しかないだろう。それなのに、どういうわけか君が話をしようとすると、いつも決まって十分に伝えきれないことがある。「君の言っている内容」と「相手に聞こえている内容」が、うまくかみ合っていないように思える。
君が次のように言ったとする:
次のPR施策のために、もう少し追加予算が必要です。
すると、相手には次のように聞こえる:
もっと資金をください。メリットはまだ分かりませんが。
あるいは、君は次のように言うかもしれない:
このスプリントで開発者の時間をもう少し増やしていただけませんか。hreflangタグで片付けるべき問題がいくつかありますので。
専門用語のオンパレードを相手は次のように理解するかもしれない:
この●★▼▲■で開発者の時間をもう少し増やしていただけませんか。◆◇☆▼△で片付けるべき問題がいくつかありますので。
続けて君が次のように言ったとする:
Webサイトのランディングページに全体に関わる問題があるので、ぜひ修正を検討すべきだと思います。
しかし、相手にはもう、何も聞こえていない。もはや聞いておらず、自分のメールに注意を戻している。君はその場から立ち去るほうがいいだろう。持ち時間の5分は終わったのだ。
要するに、私たちが身を置くこの変化の速い業界や、多くの人が属している企業の世界では、「自分の考えを素早く簡潔に伝えること」が何よりも重要なのだ。しかも相手はSEOに詳しくない。ということは、君は次の点を真剣に考える必要があるということだ:
「報告」「コミュニケーション」「提案」で、どうした点に焦点を当てれば、上層部の人も理解できるのか
この場合、君は「相手にSEOの専門用語を習得してもらうことを期待する」のではなく、「君が相手に合わせる」必要がある。君が何を提案しようとしているのか、相手がよく理解するための時間はほんの一瞬しかないからだ。
では、どうすればいいのか。とてもシンプルなフレームワークを紹介しよう。本当にシンプルで、2ステップしかない:
- ステップ1: ステークホルダーにとって重要な成果を明らかにする
- ステップ2: ステークホルダーと話すときに使う言葉や指標を変える
もっと複雑なTikTokのダンスを覚えたこともあるだろう。君ならできるはずだ。前編ではステップ1について、後編ではステップ2について解説する。
[ステップ1] 「上層部の人にとって重要な成果」を明らかにする

SEOに関して上層部の人と効果的にコミュニケーションを取るためのステップ1は、「相手にとって重要な成果が何なのか」を明らかにすることだ。言い換えれば、次のようなことだ:
- 相手に課せられている課題は何なのか?
- 相手がさらに上位のステークホルダーに日々話さなければならない事柄は何なのか?
具体的な取り組みの内容や目標については、君も全社会議やチーム合宿で耳にしたことがあるだろう。しかし、相手が繰り返し強調していることであっても、君は完全には理解していないかもしれない。あるいは理解しているつもりでも、詳しく掘り下げると、自分とは違う指標や用語を使っているかもしれない。
例1投資利益率(ROI)の向上
君はこう思うかもしれない:
SEOのトラフィックに費用はかからないから、それは経営者にとっても好都合なはずだ。
となると、やりたいことを伝えれば、相手は承認するはずだ。すべて利益になるのだから。
だが、それも実際に相手と話をして、相手が投資利益率をどう計算するかを認識するまでのことだ。そこで君は、SEOが利益を生むかどうかを判断するには、実はかなり多くの計算がかかわってくることに気づく。
たとえば、次のようなものを考慮することになる:
使用しているソフトウェアには費用がかかっている。
多くの開発者の時間を使う必要がある。ということは、人件費がかかる。
獲得に費用がかからないオーガニックトラフィックだとしても、ウェブサイトをホストしてトラフィックを受け入れるには、サーバーなどさまざまなものが必要になるため、会社として費用が発生する。
大切なのは、上層部は「お金や人件費を、どこに使えば効率良く収益を増やせるか」を判断するのが仕事で、その振り分け先は君の部署に限らないという点だ(つまり、他の部署のプランに予算や工数を振り分けるほうが良いと判断することがある)。
こうした背景がわかってくると、必要な計算を自分の投資利益率の算出に組み込めるようになる。
そうすると、最高マーケティング責任者(CMO)のところに行って、相手がまたメールに目を移してしまう前に計画を聞いてもらえる3秒間で、伝えようとしている提案の非常にリアルな投資利益率について直接話ができるようになる。なぜなら、君は「相手の言葉で話し」「相手が今年の目標として設定している目標と一致する内容を提示する」ことで、相手にとってはるかに強い説得力を持つものになるからだ。
例2技術的負債の削減
君が最高技術責任者(CTO)と話していると、相手は次のように言ったとする:
ウェブサイト全体の技術的負債を削減する仕事を任された。
そこで君はこう思うだろう:
テクニカルSEOの本質はウェブサイトを効率化することにある。サイトの技術的負債を削減する目標に寄与するのだから、もちろん相手は理解してくれるだろう。
ところが、その後、相手は「技術的負債の削減」を「システム全体の再構築」という意味で話していたことがわかる。長年パッチを当てたりバグを修正したりしてきたシステムを修正するために、ウェブサイトのコアコンポーネントを書き直すということだ。
そのため、実際には、正規化タグの価値や翌四半期に向けて提案している仕事について話すのではなく、次のような会話を始めることになる。
その作業は「ウェブサイトの移行」に近いかもしれません。私のSEOチームなら適切なサポートができます。その過程で、正規化タグやhreflangタグなど、修正したいと思っていたすべてのテクニカルSEOを組み込むつもりです。
ここで大切なポイントは、「分かりました。“技術的負債”というものがあるのですね。“技術的負債”に関する私のプロジェクトを見てください」と言うことではない。そうではなく、相手が「CTOとしての役割のなかで何を達成しようとしているのか」を十分に理解することにある。つまり「技術的負債の削減」が何を指しているのかを具体的に把握し、それを直接サポートする方法を見つけて提案しつつ、そのなかに君が実現したいと思っている取り組みやアイデアも取り入れていくのだ。
そうすることで、「CTOの達成したいこと」と「自分がやりたいこと」の2つについて話すのではなく、「CTOの達成したいことを実現する方法」について話すことになる。その伝え方ならば、「君が何について話しているのか」「それがCTOとそのチームにどのような恩恵をもたらすか」を、CTOがはるかに簡単に理解できるようになるのだ。
これがステップ1だ。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、今回紹介したステップ1に続いて、ステップ2「ステークホルダーと話すときに使う言葉や指標を変える」について説明し、さらに「なぜ相手に伝わる言葉を使うことが重要なのか」も考える。
(後編は11/17公開予定)
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