2025年になっても、多くのマーケターはあいも変わらず、進むべき方向を示す指針として「検索順位」と「トラフィック」を追いかけている。しかし、これらの指標は必ずしもビジネスの成果につながるわけではない。
私は、「ブランド」「オーディエンス」「SEO戦略」を組み合わせることで、クリック数が減少していた高級ブランドの売上高を100%近く増やす支援をしたことがある。この記事では、同じようなアプローチでオーガニックでの売上を伸ばし、検索トラフィックからより多くの成果を引き出す方法を紹介する。
検索は進化しているかもしれないが、ユーザーが求めるものは変わらない
現在の検索行動は、1年前とは異なるようになった。Googleはもはや唯一の発見チャネルではない。ユーザーは、ChatGPT、TikTok、Reddit、Geminiなどで答えを見つけている。一方、SEOチームはより多くのトラフィックを増やすよう圧力を受けている。しかし、トラフィックの増加だけが答えではない。
ユーザーは依然として次のことを検索において求めていることを忘れてはならない。
Croudのクライアントである高級ブランドの1社では、インプレッション数は着実に増加していたが、クリック数は横ばいだった。従来のパフォーマンスの視点で見ると、何も改善していなかった。しかし、トラフィックに固執するのをやめ、ユーザーの「意図」に焦点を当てたところ、半年で売上高が98%増加した。
私たちSEO担当者の役割は、「トラフィックを増やすこと」から、たとえクリック数が減少しても「売り上げを生み出す製品体験をもたらす」ことへと進化している。
キーワードを選ぶ前に、オーディエンスを知る
私は、キーワード調査をする前に、オーディエンスのプロファイリングから始める。どうリーチすべきかを決める前に、誰をターゲットにするかを把握しておく必要がある。このステップを飛ばすと、コンテンツは上位に表示されても、コンバージョンにつながらない。
そのためには、次の3つをまずやってみるのがいいだろう:
- Googleアナリティクス4で、オーディエンスの概要を把握する
- オーディエンスがどこでどのように時間を過ごしているかを、SparkToroでマッピングする
- 行動に富むペルソナをGWIで構築する
それぞれ解説していく。
Googleアナリティクス4で、オーディエンスの概要を把握する
Googleアナリティクス4で「ユーザー属性の概要」レポートを開き、過去12か月分のオーガニックデータをエクスポートしよう。
レポートには、検索からあなたのサイトにアクセスしたユーザーが表示される。「年齢」「性別」「インタレストカテゴリ」に注目してほしい。それぞれの詳細レポートを確認していこう。
このデータを使って、必要なオーディエンスを引きつけているかを把握し、エンゲージメントしているユーザーと購入しているユーザーのギャップを明らかにしよう。
オーディエンスがどこでどのように時間を過ごしているかを、SparkToroでマッピングする
次にGoogleアナリティクス4のデータをSparkToroに取り込もう。
※Web担編注 SparkToroは、Moz創業者のランド・フィッシュキン氏が運営しているサービス。
ただし残念ながら、米国・英国・カナダ圏にしか対応しておらず、ここで解説しているデータ取り込みは有料プランの契約が必要なようだ。
ユーザーが使っているプラットフォーム、フォローしているクリエイター、関心のあるトピックを分析しよう。これらのデータから、オーディエンスがどこで時間を過ごし、何に影響されているかが分かる。
意図が可視化されるのはここだ。Redditで検索しているユーザーとPinterestを閲覧しているユーザーの思考は異なる。この違いを認識することで、コンテンツの書き方や、公開する場所、メッセージの伝え方が変わる。
行動に富むペルソナをGWIで構築する
より深く掘り下げるため、私はGWIを利用して市場に特化した調査を行い、ユーザーが購入する理由を分析している。
※Web担編注 GWIは、英語圏向けのオーディエンス分析サービス。
ただし残念ながら、日本語圏のデータはそろっていないようで、さらにほとんどの機能を利用するには有料プランの契約が必要なようだ。
高級ブランドのクライアントの場合は、「高級ブランドを調査するときに最も重視することは何か」といった疑問に重点を置いている。
回答から、「高品質なビジュアル」「職人技」「独自のコンセプト」といったテーマが浮かび上がってきた。
そこから抽出した情報を含む包括的なペルソナを構築する。ペルソナには、性別や収入などの「属性」、自尊心や野心といった「心理的特性」、購買の目的などを含む「行動特性」を組み込む。
これらのプロファイルは、訪問者が発見から意思決定にどう進むかを教えてくれる。
オーディエンスのデータをコンバージョン戦略に変える
オーディエンスのプロファイルを作成したら、次のステップはそれを「コンバージョンを促す戦略」に変えることだ。
SparkToroのおかげで、私の理想の顧客は次の特徴があることが分かった:
- 30~40代の女性
- Reddit、Google、Pinterestを使っているユーザー
ブランドの名声やストーリーテリングを重視し、自分へのご褒美を買うことが大好きな層だ。この情報を使い、以下の方法でターゲティングできる:
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ポイント1ライフイベントに関わるコンテンツを作成する:
結婚式や記念日、季節の贈り物といったイベントを中心にキャンペーンを構成しよう。これらのイベントに合わせて購買意欲も高まることが多い。
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ポイント2オーディエンスが最もよく利用しているチャネルを使う:
あるクライアントの場合、願望を喚起していたのはPinterestだったが、調査クエリでRedditが浮上した。私はこのデータを使い、Pinterest向けにはビジュアルを使ったストーリーテリングを作成し、Redditでの対話用にはより実用的で信頼を築くためのコンテンツを作成した。
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ポイント3行動をヒントに、ロングテール需要を掘り起こす:
ペルソナにより、購買意欲につながるロングテールキーワードが明確になる。「結婚式用のアイボリーのクラッチバッグ」を検索しているユーザーの方が、「クラッチバッグ」を検索しているユーザーよりはるかに価値が高い。こういったヒントによって、サブカテゴリの作成、ページのテキスト更新、新規コンテンツの機会が促進される。
厳密に絞り込んだキーワード戦略で、クリック数の少なさに対応する
クリック数は減少するかもしれないが、適切なキーワードプロセスで成果を上げられる。そのコツは、上位に表示されるページをオーディエンスの検索意図と一致させることだ。
具体的な手順は次のようなものだ:
- ステップ1: キーワードデータをエクスポートする
- ステップ2: キーワードを意図ごとに分類する
- ステップ3: 競合データを使って、機会のある領域を特定する
- ステップ4: ロングテールキーワードを使い、ブランド検索への依存を減らす
これら4ステップの詳細を解説していく。
ステップ1:キーワードデータをエクスポートする
競合分析ツールを使い、自分のサイトが検索結果に表示されるキーワードに加えて、競合他社のサイトも表示されるキーワードのリストをエクスポートする。
Moz Proの「Keyword Gap」機能にアクセスして、自分のURLと競合他社のURLを入力すると、キーワードリストをエクスポートできる。
数千件のキーワードが表示されるが、次のステップでこれを整理していく流れだ。
ステップ2:キーワードを意図ごとに分類する
意図に応じて3つのカテゴリに分けたシートを作成する:
- インフォメーション型: 初期段階の発見キーワード
- コマーシャル型: 商品一覧ページ(PLP)で対応するのが最適なカテゴリ関連キーワード
- トランザクション型: 商品詳細ページ(PDP)で対応するのが最適な特定の商品キーワード
次に、すべてのキーワードにタグを付け、自分のページが想定どおりの検索結果に表示されているかどうかを確認する。
ステップ3:競合データを使って、機会のある領域を特定する
競合他社の検索順位を重ね合わせて分析していく。ここで見つけるべきは、「競合他社が表示されるのに自分が表示されない」領域だ。
これらを、自分のオーディエンス調査に沿ったトピック群にグループ化する。たとえば、婚約や記念日などの「イベント」、あるいは色やカットといった「商品の属性」だ。これらが機会領域となる。
ステップ4:ロングテールキーワードを使い、ブランド検索への依存を減らす
あまりにも多くのサイトが依然として、ブランド検索トラフィックによる成長に依存している。最初は有効でも、いずれインプレッション数は頭打ちになり、売上高は横ばいになる。
成長を引き出すには、オーディエンスの優先事項や商品の独自の強み(USP:Unique Selling Proposition)が反映されているロングテールクエリを狙おう。これらのキーワードは、検索ボリュームはそれほど大きいわけではないが、コンバージョンは最も期待できる。
それに対して、汎用キーワード(たとえば「ハンドバッグ」のようなもの)は、検索ボリュームは多いものの、対応する検索意図の範囲が広すぎて競争が激しい。そうしたキーワードを狙うのではなく、購買意欲の高いキーワードに重点を置こう。この記事で例として取りあげている高級ブランドの場合では、イベント・機会・素材に関連したキーワードがそうしたものだ。具体的なキーワードとしては、たとえば「結婚式用のアイボリーのクラッチバッグ」や「ビーズのイブニングクラッチ」などだ。こういった検索をするのは、より購入する可能性が高い買い手であり、ブランド検索への依存を減らせる。
SEO戦略に、オーディエンスの行動とキーワードのデータを利用する
私はオーディエンスの行動とキーワードのデータを3つの実行プロセスに転換している:
- 商品キーワードで表示されるページの種類を監査
- ロングテールキーワードに対応するカテゴリの作成・表示
- サブカテゴリの見出しへのロングテールキーワードを組み込み
まずは商品キーワードに対して表示されるページの種類を監査しよう。検索意図が広いクエリに対して商品詳細ページが表示される場合は、検索意図を無駄にしている。ターゲットにするページの種類を修正することで直帰率が下がり、ページのオーソリティを構築できる。
次に、これらのロングテールキーワードを中心とした新しいカテゴリを作成し、ナビゲーションに組み込もう。
LK Bennettの場合は、ハンドバッグには「すべて見る」「ボディバッグ」「クラッチバッグ」「トートバッグ」「ショルダーバッグ」などのサブカテゴリを追加した。また、イベントに基づくサブカテゴリとして「花嫁用クラッチバッグ」「競馬観戦用バッグ」「パーティ用バッグ」などを追加した。こうした修正で、ブランドキーワード以外のクエリへの対応を多様化した。
サブカテゴリを追加するだけでなく、ロングテールキーワードをサブカテゴリの見出しに直接組み込もう。こうした修正には、商品チームと連携する必要があるかもしれない。しかし、この修正を進めることで、「ナビゲーション」「検索需要」「ユーザー体験」を一貫したものにできる。これにより、購買目的の検索だけでなく、オンラインでのさまざまな視点にも包括的に対応できるようになる。
商品詳細ページの改善によるコンバージョンの向上
商品詳細ページ(PDP)のテキストを書き直そう。具体的には、オーディエンス調査から得られたテーマを反映させた内容にするのだ。オーディエンスが関心を持っている用途やスタイリングのヒントを追加し、コンテンツを視認性の良いセクション別に構成しよう。
このクライアントの場合は、PDP内に置くテキストコンテンツを「贈り物の機会」や「個人的な節目」といった購買トリガーと連動させたものに書き換えた。すると、次のメリットがあった:
- コンバージョンの増加
- オーディエンスを理解していることを商品によって示すことでターゲティングに役立った
カテゴリを編集コンテンツでサポートする
こうした主要なイベントを中心に、さらにコンテンツを作っていこう。「ブログ記事」「ガイド」「何を着るべきかについてのコンテンツ」など、どんなニーズがあるのかを、あなたはすでに把握しているはずだ。
関連するサブカテゴリに内部リンクを張り、オーソリティを構築するとともに、ユーザーと検索エンジンの意図をさらに一致させよう。
チームを超えて連携し、影響力を拡大する
ロングテールの機会を、CRO(コンバージョン率最適化)、コンテンツ、PRの各担当者と共有しよう。たとえば、CRO担当者がデータを使ってPDPのレイアウトを最適化したのに対し、PRチームとコンテンツチームは同じUSPを軸にキャンペーンやカバレッジを展開した。このようなチームを超えた連携により、すべてのチャネルが一貫して同じコンバージョン目標に向かって取り組めた。
LK Bennettの場合、このアプローチは次のような成果をもたらした:
- 「AIによる概要」での露出が600件増加
- 検索順位のパフォーマンスが97%向上
- サブカテゴリの売上高が前年比160%増加
自分のサイトにとらわれず、検索エコシステムを考える
今や検索ジャーニーの中核を占めているのは、掲示板・コミュニティ・ソーシャルプラットフォームだ。これらの空間を無視すれば、検索結果ページやAIの回答におけるビジビリティを形成する会話を見逃すことになる。
Redditのスレッドは検索結果ページに表示され、LLM(大規模言語モデル)を利用した検索結果にも反映されるため、ブランドにとって高価値のチャネルとなっている。
Redditは調査材料の宝庫でもある。「r/FemaleFashionAdvice」「r/MakeupAddiction」などのサブレディットでは、商品に対するセンチメント(感情)、購買トリガー、商品検索時によく使われるフレーズに関するインサイトが得られた。
これらのインサイトを用いてオーディエンスのペルソナを明確化し、ロングテールキーワードの機会を見いだし、コンテンツのメッセージングをユーザーの話し方や検索方法に合わせた。
SEOの影響を測定可能な成果で示す
最大の誤解の1つは、「検索の断片化とAIによってSEOが測定しにくくなっている」というものだ。この理解は正しくない。適切なシグナルを追跡すれば、明確な価値を示せる。
測定すべき要素は以下の通りだ:
- 検索結果ページと「AIによる概要」でのインデックス登録結果: 表示されるブランドメンションやスレッドを確認する。
- 検索順位の向上: 順位トラッキングツール(たとえばMoz Pro Campaignsなど)の追跡機能を利用して、カテゴリおとロングテールキーワードに対する順位の上昇をモニタリングする。
- Redditからの参照トラフィック: Googleアナリティクス4で、参照トラフィックを送り込んでいる投稿記事を追跡する。
- ブランドメンション: 「AIによる概要」でのビジビリティを測定し、オーソリティを検証する。
結論:見せかけの指標ではなく、コンバージョンを獲得する
検索はプラットフォーム間で断片化されているかもしれないが、オーガニックコンバージョンへの道筋は変わっていない。オーディエンスとその検索方法を理解すれば、トラフィックが増えなくても成果を生み出すSEO戦略を構築できる。
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