覚えるべきことが山積みで、何から手を付ければいいのかわからない――。新人Web担当者なら、一度は抱く悩みだろう。次から次へと降り注ぐタスクをこなすだけで精一杯。これで合っているのか? 自分は前に進めているのか? 不安になる人も多いのではないだろうか。
Web業界20年以上、サンリオのWeb担当者になって10年以上のキャリアを持つ角谷氏が「Web担当者 Forumミーティング2025 秋」に登壇し、1年目の担当者向けに「Webマーケの基本」を紹介した。
基本1:自社の事業がどうなっているのかを考える
Web担当者にとって最初に必要なのは、「自社を正しく理解すること」だ。
サンリオといえば一般的に「ハローキティ」のイメージが強く、転職したばかりの頃の角谷氏も「サンリオ=ハローキティの会社」という印象を抱いていた。しかし、実際のサンリオには50年以上の歴史の中で生まれた数多くのキャラクターが存在しており、角谷氏が担当するポータルサイトに掲載されている情報だけでも数百におよぶ 。
また、総得票数が6,300万票以上に達した2025年の「サンリオキャラクター大賞」の結果を見ると、1位ポムポムプリン、2位シナモロール、3位ポチャッコ、4位クロミ、5位ハローキティとなっており、もはや“ハローキティ一強”の時代ではないことがわかる 。
「このように、サンリオはハローキティの会社ではなく、多数のアイドルキャラクターがしのぎを削る“タレント事務所”だった」と評する角谷氏。しかも、(同社へ転職した当時の認識としては)キャラクターグッズの販売による売上比率が高いのかと思っていたら、ライセンス事業の売上比率のほうが高かったようだ。
外から見たイメージと事業の実情は、意外とズレていることが多いです。まずはプロパー社員の話を丁寧に聞いたり、会議でのやり取りから泥臭く情報収集したりしながら、自分の中にある先入観と実態のすり合わせから始めることが、Web担当者としての第一歩(角谷氏)
基本2:自社のサイトいくつあるか知ってる?
企業規模やビジネスモデルによっても異なるが、現代において1社で複数のWebサイトを運営しているケースは一般的である。サンリオにおいても、角谷氏が担当するBtoC向けの「ポータルサイト」を核として、多種多様なサイトが共存している 。
具体的には、キャラクターグッズを販売する「サンリオオンラインショップ」、グリーティングカードの専門ショップ、期間限定の「サンリオキャラクター大賞 特設サイト」などが挙げられる。さらに新規事業のサイトもあり、その種類は多岐にわたる。
自分が直接関わらないサイトであっても、自社が運営するサイトの数や種類を把握して、その関係性や立ち位置を理解しておかないと、施策同士がぶつかる危険があります(角谷氏)
すべてのサイトを一人で管理している場合ならまだしも、別の部署が運用していたり、外部パートナーに任せていたりする場合は特に注意が必要だ。これらを理解していないと、「同じ検索ワードに対して自社の複数サイトが広告を出稿し合い、コストを不必要に高騰させてしまう」といった施策の衝突を招く危険がある。
一方で、サイト間の関係性を正しく理解できていれば、強力なシナジーを生み出せる。サンリオにおける象徴的な存在が、会員サイトである「Sanrio+(サンリオプラス)」だ。このプラットフォームが、オンラインショップでの購入やテーマパークへの来場などで共通ポイントを貯められる「横串」として機能し、各サイトをつないでいる。
日頃から視野を広げて複数のサイトの関係性を意識しておくことで、1年目からでも本質的で効果的な施策のアイデアが生まれてくるのです(角谷氏)
基本3:あなたは何をするの?
自社の事業と運営サイトの全体像を把握した次に行うべきは、「自分は結局、何をする人なのか?」という役割の定義だ。
Web担当者になって1年目などは、「セッション数」と「PV数」の違いに戸惑ったり、「GA4」や各種ダッシュボードツールの操作を覚えるだけで手一杯になりがちだ。しかし、目の前の細かな数字やツールに振り回される前に、自社のビジネスの中で自分の担当サイトが果たすべきミッションを明確にする必要がある。
角谷氏の場合、担当するポータルサイトを「サンリオのあらゆるニュースを配信する、いわば『サンリオの扉』」と定義している。月間に配信するニュースは200〜300本にも及び、その膨大な情報をいかに効果的に、かつ多くの方へ届けるかが最大の任務となる。
役割を定義した上で、角谷氏はユーザーの動きを以下の3段階で構造化して捉えることを勧めている。
- 集客:ユーザーはどこから来るのか(Google 検索、X、LINE、メルマガ、各種広告など)。
- コンテンツ:ユーザーはサイト内のどこを見ているのか(ニュースページ、キャラクター詳細ページ、ゲーム・ツールなど)。
- コンバージョン:ユーザーの目的が達成されているか、自社の望む行動をとっているのか(クライアント・自社サービスへの送客、Sanrio+会員登録など)。
特にコンバージョンに関しては、単に「サイトを見て終わり」ではなく、たとえばライセンス先のサイトへ送客して商品を見てもらったり、イベントに参加してもらったりといった「次のアクション」へつなげることが重要だ。
「自分は何のためにこのサイトを運営しているのか」という視点を常に問い続けることで、膨大な業務の中でも迷わずに成果へと向かうことができるようになる。
基本4:毎日見るものだからストレスをなくそう
Web担当者になれば、レポートは毎日見なければならない。「それならば、見やすく作ったほうがいい」というのが角谷氏の考えであり、サンリオ流のかわいいレポートを作ることを心がけているという。
もし私の勤務先が車関係ならスタイリッシュに、食品会社ならシズル感のある色味にします。そのレポートを読む人が、直感的に「心地よい」と感じるデザインにすることが何より大切なのです(角谷氏)
現場で選ばれる「Looker Studio」の活用術
そんな角谷氏が推奨するツールが、ダッシュボードツールの「Looker Studio」だ。デザインの自由度が高いだけでなく、GA4以外のサーチコンソールやスプレッドシートのデータなども組み合わせて使用できる。角谷氏がLooker Studioでレポートを作成する際に工夫している点は、以下の通りだ。
まずは無料テンプレートを活用する
Looker Studioには無料テンプレートが多数存在するため、まずは好みのものを選んで頼ってみるのが近道だ。そのうえで「不要な要素を削る」「見せたいところを大きく、わかりやすくする」といったカスタマイズを加えていく。
サイトのキャプチャーを貼って視認性を上げる
数字とリンクだけでは、Web運用に詳しくない人には状況が伝わらない。サイトのキャプチャーや、どの壁紙が人気だったのかがひと目でわかるサムネイル画像を添えることで、直感的なレポートへと昇華させている。
アノテーション(メモ機能)で施策の歴史を残す
スプレッドシートなどを活用し、「コンテンツのリリース日」や「サーバー負荷の要因」などの年表を記録しておく。数年後のチームメンバーが振り返った際に、数値の変化を即座に理解できる仕組みを整えることが、過去の自分や未来のチームへの貢献となる。
角谷氏はかつてWebディレクターとして、いかに情報を見せるかを追求してきた。現在は、複雑なデータ抽出などはあえて社内の専門家や外部パートナーの力を借りているという。
レポートは単なる結果報告の場ではありません。周囲の理解と協力を得るための「コミュニケーションツール」であり、人を動かすための「武器」なのです。全部一人で頑張ろうとせず、周囲を巻き込むための材料としてレポートを定義し直すことが、成果への近道です(角谷氏)
基本5:毎日レポートを見よう!
せっかく使いやすいレポートを作っても、見なければ意味がない。角谷氏は、「毎日数値を見る」ことをルーティン化することの重要性を説いている。角谷氏のモーニングルーティンは徹底している。PCを起動すると、ブラウザのスタート画面に設定された各種レポートが自動的に立ち上がるようにしているのだ。
- KPIレポート(セッション数、人気のニュースなど)
- 会員増減レポート
- 人気キーワード(Google Search Console)
- サーバーのレポート(AWSなど)
- ネットのニュース(メルマガなど)
単に数字を眺めるだけではない。「この数値、いつもと違うな」と気づいたことをメモに残したり、隣の席の人に「昨日、あのキャラが話題だったけど何かあった?」と10秒でもいいから話してみることを推奨している。この積み重ねが、マーケターとしての「勘」を養うのだ。
まずは、すぐできることからやってみよう
最後に、新人Web担当者が明日から一歩踏み出すための「すぐやれそうなことリスト」を提示した。自分にとってハードルが低いものからやってみてほしい。
すぐやれそうなことリスト
- サイトの数を数える
- 集客の割合を見てみる
- 人気のコンテンツが何か調べる
- 記事・商品の平均PVを出してみる
- レポートを作ってみる
- Looker studioを立ち上げてみる
- ブラウザのスタートページにレポートセットする
- 朝イチでレポートを見る
- 同僚に今日のトピックを10秒話す
- ウェブ解析の本を読む
「あなたの良いところ、同僚の良いところ、外部パートナーの良いところをうまく組み合わせながら、楽しくWebマーケティングに取り組んでほしい」と語り、角谷氏は講演を締めくくった。
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