ユーザーに届くSEO

2026年に注力すべきはYouTube、TikTok、そしてLinkedIn。プラットフォーム戦略の「再設定」

SNSのリファラル流入が激減するなか、メディアはYouTubeやTikTokでの動画戦略へ転換。クリエイターエコノミーの台頭やAIスロップ(粗悪コンテンツ)の蔓延に対する対策など2026年メディア予測:中編。

四谷志穂(Web担編集長)[編集]

7:05

本記事は、ロイター研究所(Reuters Institute)が毎年発行している著名なレポート『Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2026』を翻訳しています。今回は中編です。下記9項目の内容をサッと理解したい方は、最初に公開したサマリーをご覧ください。

前編:検索流入40%減の衝撃

1. ジャーナリズムへの圧力の増大
2. 検索エンジンとアクセスへの影響
3. コンテンツ戦略は「独自性」へとシフト

中編:クリエイター主導メディアの台頭★本記事

4. SNSの「中年期の危機」と全コンテンツの動画化
5. クリエイターの波に、どう向き合うか
6. AIスロップ、ディープフェイク、そして誤情報の拡大

後編

7. ニュースルームにおけるAI活用の最新事例
8. 変わりゆくビジネスモデルと、イノベーションの壁
9. テクノロジーの次に来るもの

4. SNSの「中年期の危機」と全コンテンツの動画化

FacebookやX(旧Twitter)といった従来型のソーシャルネットワークは、「オープンにつながる場」としての役割を失いつつあり、アイデンティティの危機に直面しています。Metaが最近、裁判所に提出した資料によると、Facebookで使われる時間のうち、「友人や家族の投稿に費やされている」のはわずか17%。Instagramではさらに少なく7%にとどまっています。利用時間の大半は、個人の興味関心に基づいて表示されるエンドレスなフィードの中で、「見知らぬ人」が投稿した動画やコンテンツを眺めることに費やされています

こうした変化の背景にあるのが、TikTokによって完成・普及した「AIによるレコメンドエンジン」です。人々の関心を引きつける主要な手段は、もはや友人同士の共有ではなく、アルゴリズムが選んだコンテンツになりました。オーガニックな共有が消えたわけではありませんが、その多くはWhatsAppやTelegram、Signal、Discordといった、非公開のグループやクローズドな空間へと移っています。

この構造変化は、『フィナンシャル・タイムズ』紙がGlobal Web Indexのデータを分析してまとめた図表にも明確に表れています。

SNSはもはや「ソーシャル(社交的)」ではなくなった

フィードに「ニュースが入りにくく」なった理由

SNS上でコンテンツの消費内容が変化するにつれて、ニュースコンテンツはSNS上で居場所を失いつつあります。代わりに注目を集めているのは、視聴者を楽しませ続けられる、「明るく、親しみやすい」クリエイターです。フォーマット面でも、動画が主役となったことで、外部のウェブサイトやアプリへリンクを飛ばす機会は大きく減りました。

その結果、Chartbeatのデータによれば、過去2年半でニュースサイトへのリファラルはFacebookで43%、Xでは46%減少しています。ある大手国際メディアのCEOは、「プラットフォーム戦略を根本から見直す必要があるのは明らかだ。この1年で状況は劇的に変わった」と語っています。

パブリッシャーはどこに注力しているのか

こうした環境変化を受け、私たちは毎年、メディア幹部に対して「今後、注力するプラットフォームと縮小するプラットフォーム」を尋ねています。

2026年に向けて、最も注目を集めているのが動画プラットフォームです。YouTubeは「強化する」と「縮小する」の差が+74ポイント、TikTokも+56と高い数字を示しました。また、AIチャットボットを通じたコンテンツ配信の理解と最適化(+61)にも引き続き関心が集まっています。

一方で、X(-52)やFacebook(-23)、BlueSky(-11)への投資は減らす方針が目立ち、従来型の検索エンジン最適化(SEO)も優先度が下がっています(-25)。こうした流れの中で例外的に存在感を保っているのがLinkedIn(+40)です。特に専門メディアやビジネス系メディアにとって、重要なトラフィック源となっています。

2026年にパブリッシャーが、注力する分野と注力を減らす分野

「直接関係」だけでは届かない若年層

多くのパブリッシャーは、自社サイトやアプリ、ニュースレターを通じて、読者と直接つながることを最優先戦略としています。しかし、それだけでは若年層に十分リーチできないことも明らかになってきました。たとえば、ノルウェーの公共放送NRKは、若者にとってTikTokが主要なニュース接点になった現状を受け、かつて自社サイトへの集中を理由に撤退していたTikTokでのニュース配信を再開しています。

このほか、Android端末の普及率が高い地域を中心に、スマートフォンのホーム画面やGoogleアプリ内に表示される「Google Discover」からの流入を強化する動きも見られます。さらに、WhatsAppやInstagramの「チャンネル」機能を活用し、これまでニュースが届きにくかった場所で存在感を高めているパブリッシャーも出てきました。

今年、ソーシャルと動画で起こりうること
パブリッシャーによるSubstack活用が広がる

かつては「個人クリエイターの避難所」と見られていたSubstackですが、最近ではニュースブランドが実験的に活用するケースが増えています。新しい切り口の提案や、コンテンツのアンバンドル(切り離し)を素早く試せる場として注目されているためです。

※Substack(サブスタック):ライターやクリエイターがニュースレター(メールマガジン)を簡単に配信し、有料サブスクリプション(定期購読)によって直接収益化できる米国のプラットフォーム。

フィナンシャル・タイムズ(FT)は、人気コラム『Alphaville』の無料ニュースレターをSubstackで開始しました。既存ブログの代替ではなく、配信チャネルを広げ、より多くの読者にリーチするための戦略的判断です。デイリー・メール、プレス・ガゼット、ピアーズ・モーガンなども、相次いでSubstackでの展開を始めています。Substack自身も機能強化を進めています。昨年以降、動画機能やデスクトップからのライブ配信を拡充し、今年はYouTubeやLinkedInといった大手プラットフォームとの競合を視野に入れています。柔軟な支払いオプションや、将来的な広告導入を含む新機能の発表も予想されます。

縦型動画がさらに主流に

縦型動画は以前から試されてきましたが、今年はいよいよ主流フォーマットになる可能性があります。理由は大きく2つあります。

  1. 若年層の多くがYouTubeやTikTokをニュースの情報源として利用するようになり、誤情報への対抗やブランド認知のためにも、パブリッシャーが強い存在感を示す必要に迫られていることです。
  2. これまで横動画中心だった中高年層も、縦型動画をスワイプして視聴する行動に慣れてきた点です。

こうした流れを受け、『エコノミスト』やBBCは、自社サイト内に動画を組み込む動きを強めています。これらの動画は、TikTokやYouTubeショート、Instagramリールにも展開され、複数チャネルでの活用を前提としています。2025年10月には、ニューヨーク・タイムズがアプリ内に「Watch(視聴)」タブを新設し、ニュースや論評、ライフスタイルを含む縦型動画フィードを導入しました。短尺動画への再注力は広告収益の可能性にも後押しされており、2026年初頭にはブランドコンテンツの追加が予定されています。ワシントン・ポストも追随を表明しており、同様の動きは今後さらに広がりそうです。

ニューヨーク・タイムズが、自社の動画コンテンツの幅広さを見せるためのエンゲージメント・ツールとして活用している「Watch(ウォッチ)」タブ

オンラインがテレビになる:ラップトップからリビングルームへ

短尺動画以上に注目されるのが、動画プラットフォームによる「テレビ領域」への進出です。英国・放送通信庁(Ofcom)の調査によると、スマートテレビを利用する若年層にとって、YouTubeは最も重要な視聴先となっています。2023年以降、高年齢層においてもYouTubeの視聴時間は倍増しています。

YouTubeの人気コンテンツは、トーク番組やエンタメ番組が中心となり、見た目も中身も従来のテレビ番組に近づいています。2029年以降のアカデミー賞授賞式の放映権をYouTubeが獲得したことや、スポーツ中継への注力は、主導権が放送局からプラットフォームへ移りつつあることを象徴しています。

さらに、ストリーミングサービス各社は、クリエイターやポッドキャスターの存在感を重視しています。Netflixは、ワールドカップを見据えて、ゲーリー・リネカーの人気ポッドキャスト『The Rest is Football』と契約しました。競争が激化する中、こうした有力クリエイターとの提携は今後も増えるでしょう。今年は、公共放送や民間放送局も、ニュースを含む自社コンテンツの存在感をYouTubeなどのオンラインプラットフォーム内で高めるため、より積極的な発信を求められる年になりそうです。

5. クリエイターの波に、どう向き合うか

SNS上で消費されるコンテンツは、いまや「友人や家族の投稿」から、「誰が作ったかに関係なく、拡散力のあるヒットコンテンツ」へと移りました。これにより、クリエイターエコノミーは一段と加速しています。

背景にあるのは、誰でも使える高性能な制作ツールの普及です。ここ数年で、個人でも自宅からプロ並みのコンテンツを制作できる環境が整いました。さらに、GoogleのGemini 2.5/3を基盤とした画像・動画生成AI「Nano Banana」や、OpenAIの「Sora」といった新しいAI製品が、アニメーションや動画による高度なストーリーテリングを可能にしています。加えて、プラットフォーム側も優秀なクリエイターを囲い込む動きを強めています。広告収益に加え、購読モデル、直接的な委託、ライセンス契約など、多様な収益手段を用意し、クリエイターを優遇する仕組みを整えつつあります。

競争の激化と、曖昧になる境界線

こうした変化は、ユーザーにとってはコンテンツの選択肢が広がる一方で、伝統的なパブリッシャーにとっては、かつてない競争環境を生み出しています。クリエイターとジャーナリスト、あるいは個人とメディア企業の境界線も、急速に曖昧になっています。

人材面の課題も無視できません。影響力のあるスター人材が独立したり、引き留めのために高額な報酬を求めたりするケースが増えています。現時点では、パブリッシャーは「人材流出(39%)」よりも「新たな競合の出現(70%)」をより大きな懸念として捉えていますが、クリエイターエコノミーが特に成熟している米国では、人材流出はすでに深刻な問題になっています。

クリエイターが出版・メディア業に与えるさまざまな影響について、懸念を抱いている人の割合

「競合」ではなく「学ぶ存在」としてのクリエイター

一方で、クリエイターの台頭を前向きに捉える声もあります。AFP通信のラテンアメリカ局長、マリア・ロレンテ・エストラーダ氏は次のように語っています。

クリエイターの存在によって、私たちは「声(トーン)」や信憑性、オーディエンスとの直接的なつながりについて、改めて考えさせられました。彼らを単なる競合と見るのではなく、その敏捷性から学び、より個性を打ち出したフォーマットや舞台裏のストーリーテリング、明確な価値提案を試しています。クリエイターは、オーディエンスが「人間味があり」「専門的で」「信頼できる」と感じるコンテンツに惹かれることを思い出させてくれる存在です。

それでも残る「ニュース」との距離

ただし、注意すべき点もあります。24カ国を対象にした調査レポート『Mapping News Creators and Influencers(ニュースクリエイターとインフルエンサーの勢力図)』では、多くのクリエイターコンテンツが「ニュース」よりも「意見」に偏っている実態が明らかになりました。

人気クリエイターの多くは党派的な論評を発信しており、公正さや正確さを意識しているケースも少なくありません。しかし、ジャーナリズム機関とは異なり、彼らにはニュースを公正かつ正確に報じる義務はありません。この違いをどう受け止め、どう共存していくのかが、今後の大きな論点になりそうです。

今年、クリエイター分野で起こりうること
ジャーナリストの「クリエイター化」とその代償

パブリッシャー回答者の約4分の3(76%)が、「今年はジャーナリストをより“クリエイター的”に振る舞わせる」と答えています。実際、各社は記者や執筆者を“個人の顔が立つ存在”として前面に出し始めています。

たとえば『WIRED』は、著名な書き手をTikTokやInstagramの縦型動画、さらにはライブイベントまで活躍する「プラットフォーム・パーソナリティ」として育成。ニューヨーク・タイムズは、ホームページの最前列に特派員の顔を並べるようになりました。長年、署名記事を避けてきた『エコノミスト』も、ポッドキャストやニュースレターを通じて主要人材を前に出す方針へと一部転換しています。

2026年、クリエイターの波に対するパブリッシャーの主な対応策
(左)WIREDによるとパーソナリティベースの戦略に切り替えて以来、Instagramからの流入が800%増加したとのこと
(右)ニューヨークタイムズのホワイトハウス特派員タイラー・ペイジャー氏は、ニューヨークタイムズのアプリでクリエイター風の動画を配信している

一方で、この動きは「組織としての客観性」や「一貫した編集方針」を重視してきたメディア企業に、新たな課題を突きつけています。ブルガリアの『Capital』編集長イヴァイロ・スタンチェフ氏は、「個人クリエイターとして活動したいジャーナリストのためのガイドラインを策定しています」と述べ「利益相反やレピュテーションリスクを避けるための境界線を明確にし、個人の活動が編集基準を損なわないようにすることが目的です」とも語っています。

さらに見逃せないのが、人材流出のリスクです。

ワシントン・ポストで「TikTokの人」として知られたデイブ・ジョルゲンソン氏は、8年間の在籍と数々の受賞を経て、2025年7月に独立。Rival IQのデータによると、彼が出演していた同紙のYouTubeチャンネルのリーチは急落し、ヨルゲンソンが立ち上げた新会社の方が、短期間で影響力を上回りました。

YouTube再生回数の推移

クリエイター主導の「パブリッシャーブランド」が増殖

第二のアプローチは、SNS向けコンテンツの文脈を熟知した若手クリエイターを採用し、最初から“プラットフォーム前提”でブランドを構築する方法です。

DMG New Media

DMGニューメディア(DMG New Media)は、『デイリー・メール』が設立した新部門で、約60名の若手クリエイター、デザイナー、ビデオエディターで構成されています。この部門の任務は、グループのSNSアカウントを通じてオーディエンスを構築することですが、それだけでなく、エンターテインメント、ゲーム、マネー(金融)といったジャンルの特化型チャンネルも立ち上げています。

これは単なるマーケティング目的ではありません。その狙いは、スポンサーシップやブランドコンテンツ(記事広告)を通じて、グローバルに収益を上げることにあります。インタラクティブ広告協会(IAB)の推計によれば、米国におけるクリエイター広告への支出額は2025年に370億ドルに達し、広告業界全体の4倍の速さで成長すると予測されています。

英国での成長予測も同様であり、ブランド企業はクリエイターマーケティングを、デジタルの「付け足し」ではなく「中核となる広告チャネル」として扱うようになっています。一方で、企業側は依然としてブランドセーフティ(ブランドの安全性)に対する懸念を抱いています。こうした背景から、『デイリー・メール』をはじめとするパブリッシャーは、伝統的な報道機関としての信頼性を背景に、「クリエイターの手法」をパッケージ化して提供することで、ブランド企業を安心させられる大きなチャンスがあると考えています。

CNN Creators 

「CNNクリエイターズ(CNN Creators)」は、2026年に本格始動する新ブランドです。テレビだけでなくソーシャルメディアにおいても、若年層に響く「形式にとらわれないスタイル」や「トーン」を取り込もうとする試みです。

このプロジェクトのために、カタールのドーハには、専用スタジオが多額の投資によって建設されました。コラボレーションや自発的なコンテンツ制作を促進するように設計されています。コンテンツの焦点は、テクノロジー、アート、スポーツ、カルチャー、社会トレンドといった、若年層が関心を寄せるテーマに置かれる予定です。

ドーハから配信される「CNN Creators」のデビュー番組、『デイリー・メール』のソーシャルゲーム専門チャンネル、そして『ディス・イズ・マネー』のスポンサード・コンテンツ

SPIL

「SPIL」は、若年層の習慣の変化に関する詳細な調査に基づき、オランダのメディアハウス(Mediahuis)が立ち上げた新しい取り組みです。この調査では、多くの若者が「自分たちを明確なターゲットにした、信頼できるニュース」に関心を持っていることが明らかになりました。

「SPIL News」は、20代の数人のジャーナリストが顔となり、TikTok、Instagram、YouTubeにコンテンツを投稿しています。さらに、SPILはオランダ全土の若手ジャーナリスティック・クリエイターたちと提携し、提供するコンテンツのさらなる充実を図っています。

ABC News Loop

オーストラリアの公共放送による「ABCニュース・ループ(ABC News Loop)」も、2026年初頭に開始される予定です。この新サービスは「SNS専用」に制作された解説ジャーナリズム(エクスプレイナー・ジャーナリズム)であり、意見の対立や誤情報の喧騒を切り裂き、主要な問題に関する背景情報をユーザーに提供することを目指しています。

こうした新しいサービスが次々と生まれている背景には、パブリッシャー(メディア運営者)が若年層を惹きつけるためには、ジャーナリズムのスタイルやフォーマットを変える必要があるという認識があります。高齢層向けに最適化されたウェブサイトやアプリに、若年層を直接呼び込もうとしても、成果を上げるのは難しいでしょう。

クリエイター・スタジオと、新しい才能の囲い込み

第三の流れは、パブリッシャー自らが「クリエイター・スタジオ」となり、新しい才能を育成・支援する動きです。

The Independent

英国を拠点とするデジタルニュース・パブリッシャーの『インディペンデント(The Independent)』は、最近、人気YouTuberのアダム・クレリー(Adam Clery)氏をクリエイティブ・ディレクターとして迎え入れました。彼は自身のサッカーチャンネル(ACFC)を運営しており、現在は『インディペンデント』との共同ブランドとなっていますが、今後は他の特定の専門ジャンルで成功している外部クリエイターとも連携していく計画です。

Vox Media

米国のヴォックス・メディア(Vox Media)は、以前から「ストリーマーやポッドキャスト出身」のクリエイターと契約を進めてきました。同社は彼らに対し、制作サポートやライブイベントの開催だけでなく、広告販売、マーケティング、そして配信網も提供しています。

最近の契約事例には、デヴィッド・アクセルロッド、マイク・マーフィー、ジョン・ハイルマンによる『Hacks on Tap』があります。また2025年には、カラ・スウィッシャーとスコット・ギャロウェイによる『Pivot』および関連ポッドキャストにおいて、数百万ドル規模のレベニューシェア(収益分配)契約を締結しました。

こうした契約の多くは、クリエイター(タレント)側に手厚い条件で構成されていると報じられています。メディア企業側は、大規模なクリエイター・ネットワークを構築することが、将来的に強力な収益源になると見込んでいるのです。

アダム・クレリー・フットボール・チャンネルとカラ・スウィッシャーとスコット・ギャロウェイによるピボット

ワシントン・ポストの「リップル(Ripple)」プロジェクト

もう一つの異なる形態のパートナーシップ(これもレベニューシェアに基づいたもの)が、2026年を通じてさらなる展開が予定されているワシントン・ポストの「リップル(Ripple)」プロジェクトです。

ワシントン・ポストは、ニュースレター配信サービス「Substack(サブスタック)」などで活動する独立系の執筆者を含むライターに対し、自社のウェブサイトやアプリ上でコラムを掲載する機会を提供しています。これらは既存の同紙オピニオン部門とは切り離された形で運営されます。

今後、ワシントン・ポストはこの構想を専門外の一般層にも広げる計画です。その際、書きかけの粗削りな原稿をジャーナリスティックで魅力的な記事へと仕上げるための「AIツール」によるサポートも活用される予定です。

「良いクリエイター」と「悪いクリエイター」をどう見分けるか

誰もがプロ並みのコンテンツを作れる時代に、「何がジャーナリズムなのか」を定義することは、これまで以上に難しくなっています。この課題は、メディア企業だけでなく、真剣に信頼を得たいと考えるクリエイター自身にとっても重要です。

FTストラテジーズ(FT Strategies)の「ニュース・クリエイターズ(News Creators)」プロジェクトは、コンテンツの正確性に強い個人的責任を感じつつも、伝統的な編集部のような公的な枠組みを持たない人々に向けた「情報信頼性ガイドライン(Information Credibility Guidelines)」を提案しています。また、リズ・ケリー・ネルソン氏の「プロジェクトC(Project C)」も、倫理基準の維持、信頼の構築、そして持続可能なビジネスモデルを見出すことの重要性を強調しています。

一部の伝統的なメディア規制当局も、独自の倫理規定(コード)を遵守する意志のある個人クリエイターからの申請を受け付けることを検討すると表明しています。プラットフォーム側も、選挙やウクライナ戦争といった重要なテーマにおいて、公共の利益に資する価値あるコンテンツを制作するクリエイターをアルゴリズムで特定し、一方で信頼性の低いコンテンツを制作する者を格下げするための「シグナル(指標)」を活用することに関心を寄せています。各国政府も、政治や公共政策の分野で影響力を持つクリエイターのリストを作成し、彼らをコミュニケーション計画に含めたり、記者会見に招待したりするようになっています。

今年はこうした動きがさらに活発化することが予想されます。しかし、クリエイターの数が膨大であることや、「質の高いコンテンツ」とは何かについての解釈が人によって大きく異なることを踏まえれば、その道のりは決して容易ではないでしょう。

6. AIスロップ、ディープフェイク、そして誤情報の拡大

ある推計によれば、インターネット上で生成されるコンテンツの大部分は、すでに人工知能(AI)によって作成されています。自動生成されたニュース記事から、超現実的な画像、お気に入りのアーティストにそっくりなキャッチーな楽曲、あるいは偽の動画にいたるまで、AI生成コンテンツはウェブの姿を根底から変えようとしています。

特にソーシャルメディアのフィードはその影響を強く受けており、英ガーディアン紙の最近の調査では、世界で最も急成長しているYouTubeチャンネルの約10分の1が、AI生成動画のみを公開していることが示唆されています。またTikTokは、同プラットフォーム上にすでに10億本以上のAI動画が存在することを明らかにしました。その中には、トランポリンで跳ねるウサギの動画のように、2,500万回もの再生数を稼ぎ出したものも含まれています。

こうした状況の中で懸念されているのが、人間が取材し、検証し、責任をもって作ったコンテンツが、機械によって大量生産された「AIスロップ(AI製の粗悪コンテンツ)」に埋もれてしまうのではないか、という点です。

「遊び」から「危険」へ──ニュース分野で深刻化する影響

こうした(AI生成コンテンツの)多くは、誰かを騙そうとしているわけではありません。むしろ、インターネット文化にある「遊び心」や「超現実主義(シュルレアリスム)」、そして「風刺」の精神に則ったものです。

しかし一方で、極めてリアルな画像や動画を生成できる強力なAIツールが、より広範な影響を及ぼすこと、とりわけ「ニュース(報道)」の領域に波及することに対して、多くの人々が懸念を抱いています。

AIによって加工された画像や動画は、2025年を通じてアジア、ラテンアメリカ、および欧州の多くの選挙キャンペーンにおける特徴の一つとなりました。

10月に行われたオランダの選挙では、右翼指導者のヘルト・ウィルデルス(Geert Wilders)氏が、将来のオランダがイスラム法(シャリア)の下で生活している様子を描いたAI生成動画を公開し、自身のキャンペーンを開始しました。

アイルランド大統領選挙の投開票の数日前、最終的な当選者となったキャサリン・コノリー(Catherine Connolly)氏が立候補の辞退を表明したかのように見える偽動画がSNS上で拡散されました。また、親ロシア派のグループがモルドバやドイツの選挙において、AIを広範囲にわたって利用したという証拠も明らかになりつつあります。こうした動画の大部分は大きな注目を集めることなく、すぐに事実誤認が証明(デバンク)されますが、中には時折、爆発的に拡散してしまうものも存在します。

同時に、各プラットフォームは人的な投稿監視員やファクトチェッカーを削減する動きを見せています。これは、彼らを「言論の自由を抑圧しようとする検閲官」と見なすドナルド・トランプ氏からの圧力によるものです。こうした米国の動きは、テックプラットフォームに対して自社ルールの取り締まり義務を強化しようとしている他国の政府との間で、大きな乖離(ねじれ)を生じさせています。

監視の弱体化と、民主主義への影響

こうした状況はまだ初期段階であり、民主主義やニュースへの信頼に及ぼす影響は依然として不透明です。しかし、大規模な欺瞞や世論操作が行われる可能性がある以上、少なくとも新たな防護策(セーフガード)が必要になるのは間違いありません。

「AIが世界を席巻するにつれ、人間がチェックした高品質なジャーナリズムへの需要は高まるだろう」と、『タイムズ』および『サンデー・タイムズ』のデジタル責任者エドワード・ルーセル氏は主張しています。事実、パブリッシャーを対象とした調査回答者の約半数(52%)が、こうした(AIスロップや誤情報の拡大といった)トレンドは、ニュースメディアの立場を強化する可能性があると同意しています。

誤情報の拡大とAI生成コンテンツの急増は、ニュースメディアを「強化」するか、それとも「弱化」させるか(パブリッシャーの認識)

こうした見方のなかには、ある種の「希望的観測」が含まれているかもしれません。たとえユーザーがネット上の情報の真偽に確信を持てなくなったとしても、それが必ずしも「ニュースメディアへの回帰」につながるとは限らないからです。

各種調査によれば、ほとんどの国においてかなりの割合の人々がニュースメディア全体を深く不信しており、事実確認のためにユーザーコメントやAIチャットボットを頼ることに満足している層も存在します。

一方で、プラットフォーム側にとっても、誤情報や「AIスロップ」がユーザー体験を劣化させ、自社のビジネスモデルを損なうことは避けたいという利害関係があります。

今年起こりうること
デジタル・プロベナンス(情報の出自証明)が重要に

業界は今年、2つの主要なアプローチに注力することになるでしょう。

第一のアプローチ

プロが制作したコンテンツ(およびその他のコンテンツ)に対し、「どこで制作され、どのように編集されたか」を示すメタデータの付与を強化することです。これには、C2PA(Content Provenance and Authenticity:コンテンツの出自および真正性のための連合)などの標準規格が活用されます。

現時点では、BBCなどの放送局や通信社において試験的な導入は広がっているものの、現在、世界中で公開されているニュース画像や動画のうち、C2PAのメタデータが含まれているものは1%にも満たない状況です。

こうしたアプローチ(情報の出自証明)を定着させるには、エコシステム全体での導入と合意が不可欠ですが、メタデータはどの段階でも簡単に削除できてしまうという課題もあります。しかし、AIがもたらす創造性やエンゲージメントを損なうことなく、検証済みの高品質なコンテンツを際立たせるための手法を普及させることについては、業界全体で共通の利害が一致しています。

第二のアプローチ

各プラットフォームによる「合成コンテンツや改ざんされたコンテンツ」の検知に向けた取り組みの強化が予想されます。

これまでのところ、こうした検知システムの有効性は限定的なものでした。専門家の中には、TikTokが自動的に検知できているAI生成コンテンツは全体の半分にも満たないと指摘する声もあります。将来的にあらゆるコンテンツ制作に何らかの形でAIが関与する可能性があることを踏まえると、これらのシステムは、AIがどのように使われているか、そしてその「使用意図」までを考慮できるほど、はるかに洗練されたものである必要があります。

ラベリングの改善とメディアリテラシー向上への取り組み

技術的な標準規格の整備と並行して、コンテンツ制作者やクリエイターに対し、「何を、なぜラベリング(表示)すべきか」を教育する取り組みが強化されるでしょう。

たとえば、現在YouTubeに動画をアップロードする際は、実在の人物、場所、出来事と見間違われる可能性のある「加工されたコンテンツ」や「合成コンテンツ」を開示する必要があります。こうした開示情報に基づき、最終的に「AI生成ラベル」を表示するかどうかが判断されます。特に選挙や健康被害といったデリケートな話題については、今年はより目立つ形でのラベル表示が行われることが予想されます。

しかし総じて見れば、各プラットフォームは難しい舵取りを迫られています。Metaの「Vibes」やOpenAIの「Sora」などのツールを通じてクリエイターにAI活用を推奨する一方で、特定の使用方法を検知し、制限しなければならないという矛盾した立場にあるからです。

AIコンテンツ・ファーム

ジャーナリズムのような外観を持ちながら、詳しく調べるとその実態は自動生成された「スロップ(低品質なゴミコンテンツ)」に過ぎない偽ニュースサイトが、今後ますます増加するでしょう。

フランスでは、ジャーナリストのジャン=マルク・マナック(Jean-Marc Manach)氏が、Googleのアルゴリズムを欺くために構築された、生成AIによる4,000以上の偽ニュースサイトを特定しました。

一方、英国では『プレス・ガゼット(Press Gazette)』誌の調査により、既存の正規サイトからコンテンツを無断転載・再構成(リガジテート)している多数のサイトの一つとして『ノース・ロンドン・ニュース(North London News)』が挙げられています。このサイトは、事実関係の誤りを含んでいるだけでなく、英国の媒体でありながら米国式のスペル(綴り)を使用しており、これもAI生成コンテンツ特有の「隠しきれない兆候」となっています。

また米国では、実態のない「ゾンビ・ローカルサイト(地域ニュースサイトの偽物)」が数年前から活動していますが、ニュースガード(NewsGuard)の報告によれば、現在ではそれらの数が本物の地域ニュースサイトの数を上回る事態となっています。

正規サイトからコンテンツを無断転載・再構成しているサイト『ノース・ロンドン・ニュース(North London News)』

ワークスロップ(Workslop)の蔓延

今年さらに直面する課題は、職場におけるAI生成コンテンツの無差別な利用です。『ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)』の最近の調査によると、回答者の10人中4人が、過去1ヶ月間に「ワークスロップ」にさらされたと回答しています。HBRはワークスロップを「AIツールによって作成された低品質な文書やプレゼンテーション」と定義し、それが「特定のタスクを有意義に進めるための実体を欠いている」ため、生産性を破壊していると主張しています。

また、2024年末の別の研究では、ビジネスSNS「LinkedIn(リンクトイン)」上のコンテンツの54%がAI生成、あるいはAI支援によるものであることが示唆されました。プラットフォームに新しいツールが統合されるにつれ、この数字はさらに増加している可能性が高いでしょう。

メールや業務文書には、「delve(深く掘り下げる)」「leverage(活用する)」「pivotal(極めて重要な)」といった単語が散りばめられ、ダッシュ(—)が多用されています。これらはAIが裏で関与していることを示す典型的な兆候です。今後1年間、こうした振る舞いに対する反発(バックラッシュ)が強まることが予想されます。

 

次回は、後編を公開します。

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