ユーザーに届くSEO

2026年のジャーナリズム・メディア・テクノロジー:主要トレンドと未来予測

Google検索から人が消える? 2026年、あなたのコンテンツが「ボットにしか読まれない」未来を回避する方法。

四谷志穂(Web担編集長)[編集]

7:05

本記事は、ロイター研究所(Reuters Institute)が毎年発行している著名なレポート『Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2026』を翻訳しています。本調査は、2025年11月から12月にかけて実施され、日本を含む世界51の国と地域から、新聞社や放送局、そしてデジタルメディアを牽引する280名の幹部が回答。業界の「今」と「未来」を最も熟知する戦略家たちのリアルな声が反映されています。

本レポートは、以下の9つの主要トピックと総括によって構成されています。

前編

1. ジャーナリズムへの圧力の増大
2. 検索エンジンとアクセスへの影響
3. コンテンツ戦略は「独自性」へとシフト

中編

4. SNSの「中年期の危機」と全コンテンツの動画化
5. クリエイターの波に、どう向き合うか
6. AIスロップ、ディープフェイク、そして誤情報の拡大

後編

7. ニュースルームにおけるAI活用の最新事例
8. 変わりゆくビジネスモデルと、イノベーションの壁
9. テクノロジーの次に来るもの

本稿では、上記9項目のサマリーを紹介したのち、前編・中編・後編の3記事に分けて9項目を詳しく紹介していきます。オンライン上でコンテンツ作成・配信をしている人にとって示唆に富んだ内容となっているので、ぜひ皆さんにもご一読ください。

生成AIの影響

私たちは今、「生成AI」という、さらに大きなテクノロジーの転換点の初期段階にいます。生成AIは、大量の情報へのアクセスや要約をこれまで以上に効率化することで、ニュース業界そのものを根底から変えようとしています。

従来型メディアの課題: 「誰が語るか」が重要に

クリエイターやインフルエンサーといった個人が、自身の視点や語り口でニュースを解説・発信する動きが広がり、ニュース消費は「誰が語るか」を重視する方向へとシフトしています。その結果、こうした文脈に適応できていない従来型メディアは、読者から「自分との関係性が薄い」「魅力や関連性を感じにくい」と受け取られ、相対的に選ばれにくくなるケースが増えています。こうした2つの流れによって2026年、ニュースメディアはさらに厳しい状況に追い込まれる可能性が高いでしょう。

国や人口によって変化のスピードに差が出るものの、これらのトレンドがもたらす影響を正しく理解し、どのような対抗策を講じるかは、今年のメディア経営陣にとって「最優先の課題」になるでしょう。

従来型メディアの課題:政治家などから批判対象とされる

課題はそれだけではありません。たとえば、多くの政治家や実業家、セレブリティは、新聞やテレビといった従来型メディアを通さなくても、自らのメッセージを直接オーディエンスに届けられるようになりました。とりわけ、従来型のメディアから取材を受けず、自分たちに好意的なポッドキャスターやYouTuberのインタビューを選ぶようになっています。

近年、批判的な報道を行う出版社に対して法的措置を示唆したり、独立系メディアや個々のジャーナリストを「フェイクニュース」と断じて信頼を失墜させようとしたりする動きが広がっています。これらの動きを「トランプ2.0時代の戦術」と呼ぶこともありますが、米国にとどまらず世界各国で見られるようになっています。こうした言説は、SNSや動画プラットフォームを通じて手軽にニュースに触れることに慣れ、どのニュースメディアの記事かをあまり意識せずにニュースを消費している読者、特に若年層の間で広がりやすい傾向があります。

ニュースコンテンツの消費が変化

一方で、検索エンジンはAI駆動の「回答エンジン」へと変貌しつつあり、ニュースコンテンツはウェブサイトではなく、チャットウィンドウ内で消費されるようになっています。その結果、出版社へのリファラル(流入)トラフィックが減少し、現在の、そして将来のビジネスモデルが損なわれるのではないかという懸念が強まっています。

一見すると、課題が山積しているニュース業界ですが、過度に悲観していない側面もあります。今年は、独自性のあるコンテンツや、発信者の顔が見える表現を強化しながら、AI時代に合ったビジネスモデルの再構築を進める年になりそうです。その一環として、記事だけでなく、動画など複数のフォーマットへの投資を拡大し、コンテンツを再利用・再編集しやすくする動きも進んでいます。同時に、取材から配信までの各工程で、生成AIをどう使うのが最適なのかを探る試行錯誤が続いています。

この舵取りには繊細なバランス感覚が求められます。しかし、もし成功すれば、より高い効率性と、より関連性が高く、魅力的なジャーナリズムの実現につながるでしょう。

メディアリーダーが来年を予測する

51の国と地域から選ばれた280名のデジタルリーダーを対象とした戦略的サンプル調査による、業界調査の主な結果は以下の通りです。

自社の報道に自信がある38%

今回の調査で、「今後1年間のジャーナリズムの将来に自信がある」と回答した人は、わずか38%にとどまりました。これは4年前と比べて22ポイントの大幅な低下です。背景には、ジャーナリズムに対する政治的な目的から、批判的な報道を行うメディアや記者を攻撃する動きが強まっていることに加え、これまで世界各地で独立系メディアを支援してきたUSAID(米国国際開発庁)の資金が失われつつあることへの懸念があります。さらに、多くのオンラインニュースサイトでトラフィックが大きく減少していることも、将来への不安を強める要因となっています。

自社の収益化に自信がある53%

一方で、自社ビジネスの見通しについては、約半数にあたる53%が「自信がある」と回答しており、この数字は前年とほぼ変わっていません。なかでも、ダイレクト・トラフィックが強く、高付加価値なサブスクリプションモデルを持つ出版社は、長期的な収益性が見えています。これに対し、依然として広告収入や印刷物に大きく依存している出版社では、収益の急激な落ち込みや、AI搭載型の検索エンジンが将来的に純利益へ与える影響への懸念が強まっています。

検索エンジンからの流入は3年で40%減少

出版社の多くは、検索エンジンからのトラフィックが今後3年間で40%以上減少すると見込んでいます。「Google Zero(Googleからの流入がゼロになる)」とまではいかないものの、事業に大きな影響を与える水準です。リアルタイムコンテンツ分析のChartbeatが提供したデータによると、数百にのぼるニュースサイトで、Google検索からの流入はすでに減少に転じています。なかでも、ライフスタイル系コンテンツへの依存度が高い出版社ほど、Googleが導入した「AI Overviews(AIによる概要)」の影響を強く受けているといいます。こうした動きは、過去3年間でFacebookからのリファラル・トラフィックが43%減、旧Twitter(X)からも46%減と、大幅な落ち込みを記録してきた流れに続くインパクトがあります。

コンテンツ戦略の見直し(取材・独自調査の強化)91ポイント増

検索流入の減少に対抗するため、出版社は今後、コンテンツ戦略の重点を大きく見直そうとしています。調査では、「今後より重視する」と答えた割合から「重視しなくなる」と答えた割合を差し引いた結果、独自調査や現場取材(+91ポイント)が最も重視される分野として挙げられました。続いて、背景分析や解説記事(+82)、人間味のある物語性の高いコンテンツ(+72)が高い評価を受けています。一方で、AIによって情報が一般化しやすいとみられる分野については、縮小する方針が目立ちます。具体的には、サービス・ジャーナリズム(実用情報)(−42)、エバーグリーン・コンテンツ(長期間使い回せる記事)(−32)、一般ニュース(−38)などです。またフォーマット面では、動画コンテンツ(+79)やポッドキャストなどの音声コンテンツ(+71)への投資を強化する意向が強く、テキスト中心のコンテンツへの投資は相対的に減少傾向にあります。

YouTubeの強化74ポイント増

プラットフォーム外での配信戦略について見ると、YouTubeが純スコア+74と前年から大きく評価を伸ばし、今年の出版社・報道機関にとって最も重視すべきチャネルになっています。同様に、TikTok(+56)やInstagram(+41)といった動画中心のプラットフォームも、引き続き重要な優先領域と位置づけられています。これと並行して、ChatGPT(OpenAI)、Gemini(Google)、PerplexityといったAIプラットフォーム(+61)を通じて、コンテンツをどのように届けるかも新たな課題として浮上しています。検索やSNSとは異なる「AI経由の接点」を、今後どう活用するかを模索している段階だと言えます。

一方で、Google Discoverは評価がやや不安定ながらも、依然として重要な流入源(+19)と見なされています。また、一部のパブリッシャーは、Substack(+8)などのニュースレタープラットフォームを活用し、直接読者とつながる形で新規顧客を獲得しようとしています。その反面、従来型のGoogle SEO(-25)や、Facebook(-23)、X(旧Twitter、-52)といったジャンルについては、投資の優先順位を下げる動きが見られます。全体として、検索や旧来SNSへの依存から、動画・AI・直接的な読者接点へと軸足を移しつつあることが読み取れます。

ニュースサイトの訪問者は人間よりボットが上回ると予測

昨年、私たちは「エージェンティックAI(自律的に行動するAI)」の登場を予測しましたが、今年は、そうしたより高度なAI技術が現実の世界に具体的な影響を与え始める年になると見られています。実際に、HuxeやOpenAIのPulseといったツールが、大規模かつ個々のユーザーに最適化されたニュース要約の提供を始めています。こうした流れを受けて、ニュースサイトを訪れる主体が、人間よりもボットの方が多くなる日が近いことを示唆する情報もあります。調査結果でも、回答者の75%が、近い将来エージェンティックAIツールがニュース業界に「大きな」あるいは「非常に大きな」影響を与えると予測しています。このことから、エージェンティックAIはもはや将来の構想ではなく、業界構造を変え始めている現実的な存在になりつつあると言えるでしょう。

ニュースサイトの新しい収入源、AIへのライセンス提供

AIの普及によってニュースサイトへのトラフィックが不安定になるなか、ニュース業界の幹部たちは、チャットボット上でのコンテンツ提供を新たな収益機会として捉え始めています。具体的には、AIサービスへの記事のライセンス提供や、チャットボット内で表示される広告収益の分配などが想定されています。

調査では、パブリッシャーの約2割(20%)が、AI関連の収益は将来的に「かなりの規模になる」と回答しました。こうした期待が高いのは、主に高級志向のニュースメディアです。一方、約半数(49%)は「収益への寄与は限定的だが、一定の効果はある」と見ています。その反面、約2割(20%)は、「AIとの契約から収益を得られる見込みはない」と回答しました。これには、地方メディアや公共放送局、規模の小さい国のニュース組織が多く含まれています。AIを巡る収益機会に対する見方は、メディアの規模やブランド力によって大きく分かれているのが実情です。

ニュースサイトの収入源のサブスク・イベント

全体を見渡すと、パブリッシャーにとって最大の収益源は、引き続き購読(サブスクリプション)やメンバーシップです。調査では76%が、これらを今後の最重要収益分野に挙げています。
これは、ディスプレイ広告(68%)やネイティブ広告(64%)を上回る結果となりました。また、オンラインイベントやリアルイベント(54%)も、収益の柱を増やす手段として存在感を高めています。広告や購読に依存しすぎないための、多角化戦略の一環です。

一方で、慈善団体や財団からの支援(18%)への依存は今年低下しました。米国をはじめとする各国でメディア支援予算が削減されたことが、その背景にあります。

出版社でのAI活用

一方で、ニュース組織におけるAI活用は、ほぼすべての分野で拡大しています。なかでも、バックエンド業務の自動化は、回答したパブリッシャーの97%が「今年、特に重要」と位置づける最重要テーマとなりました。その多くは、昨年のうちに試験的なAIシステムを自社のコンテンツ管理システム(CMS)に組み込んでいます。
次に重視されているのが、取材や情報収集を支援する用途(82%)です。加えて、コーディングやプロダクト開発を効率化・高速化するAI活用(81%)も急速に広がっています。

AI活用に手ごたえあり44%

調査によると、編集局におけるAI活用について「手応えを感じている」と答えたのは、回答者の44%でした。一方で、42%は「効果はまだ限定的」と見ており、評価はほぼ二分されています。
また、AI導入によって業務効率は高まっているものの、人員削減には直結していないのが現状です。回答者の67%が、「これまでAIを理由に削減された職務はない」と答えています。
その一方で、約7人に1人(16%)は人員をわずかに減らしたと回答しました。ただし、約10人に1人(9%)は、新たな役割の新設や追加コストが発生しているとも答えており、AI導入が必ずしも“縮小”ではなく、組織構造の変化を伴って進んでいることがうかがえます。

可処分時間の取り合い激化/人材流出のリスク

ニュースクリエイターやインフルエンサーの台頭は、パブリッシャーにとって主に2つの懸念を生んでいます。
1つ目は、読者の時間と関心を奪われていることです。回答者の7割(70%)が、クリエイターやインフルエンサーが、従来のニュースメディアのコンテンツよりも多くの注意を集めている点を問題視しています。
2つ目は、人材流出のリスクです。4割(39%)の回答者は、より大きな裁量権や高い収益機会を提供できるクリエイター・エコシステムに、優秀な編集人材が流れてしまう可能性を懸念しています。

編集スタッフのインフルエンサー化

競争の激化に加え、ニュースへの信頼が「組織」から「個人(パーソナリティ)」へと移りつつある現状を受けて、多くのパブリッシャーは対応を急いでいます。調査では、回答者の76%が、今年は自社のスタッフに対し、よりクリエイターに近い振る舞いを求めていくと答えました。
具体的な取り組みとしては、クリエイターとの協業を挙げる声が多く、半数の50%がコンテンツ配信を支援してもらうためにクリエイターと提携するとしています。また、31%は、SNSアカウントの運営などを目的にクリエイターを直接雇用する考えです。さらに、28%のパブリッシャーは、クリエイター・スタジオを立ち上げ、ジョイントベンチャーを通じた新たな取り組みを進めたいと回答しています。

2026年予測:AIの現実、デジタルの疲弊、そして個人メディアの巨大化

より大きな視点で見ると、2026年には、AI企業の評価が過度な期待から現実的な見方へとシフトする可能性があります。「巨額の投資が見合う成果を生んでいるのか」という疑念が広がり、株価の調整や下落につながる局面も想定されます。

一方で、AIによって自動生成された低品質なコンテンツは爆発的に増加しています。いわゆる「ピンクスライム(質の低い情報を大量生産するサイト)」を含め、各プラットフォームは、こうしたコンテンツと正当なニュースを見分ける難しい課題に直面することになるでしょう。

さらに、私たちの生活におけるビッグテックの影響力に対する社会的な懸念も一段と高まりそうです。個人レベルでは、「Appstinence(アプリ断ち)」や「デジタルデトックス」、「現実世界(IRL)」でのつながりを重視する動きが広がる可能性があります。

こうした流れを受けて、政府にも変化が求められます。米国を含む各国で、若年層やその他の脆弱な人々をオンライン上で守るため、より強い規制や対策を求める声が高まっていくと考えられます。クリエイターエコノミーは、動画プラットフォームやストリーミングサービスからの投資を追い風に、今後も急成長を続けると見られています。トップ層のクリエイターは、巨額の制作予算や自前のスタジオを持ち、存在感はハリウッドの大手プロダクションに近づいていくでしょう。

こうした動きはニュース分野にも波及しています。高い収益性を確保しながらオーディエンスに価値を届ける、より大規模で組織化された「クリエイター主導の企業」が登場しつつあります。これらは、伝統的なジャーナリズムにとって、これまでにない大きな競争相手となる可能性があります。

2026年によく耳にするようになるかもしれない用語

  • Vibe coding(バイブ・コーディング) :2025年初頭にOpenAIの創設者の一人によって作られた造語。AIプログラムに対して「自分の欲しいもの」を伝えるだけで、コードを書いたり、ウェブページを作成したり、アプリを作ったりする手法を指すようになりました。プロトタイプ制作や個人のプロジェクトに最適です。
  • Digital provenance(デジタル・プロベナンス/デジタル来歴):精巧なディープフェイクが一般的になりつつあるAI浸透社会において、デジタルメディアの出所や履歴を検証する能力のこと。関連用語として、電子透かし(ウォーターマーキング)、認証データベース、C2PA(コンテンツ来歴および真正性のための連合)などがあります。
  • AEO(回答エンジン最適化) :Answer Engine Optimisationの略。コンテンツ提供者が、AIチャットボットやその他のAI駆動型インターフェース内でより高い視認性を得るための手法。GEO(生成エンジン最適化)やSEO(検索エンジン最適化)も参照。
  • Liquid content(リキッド・コンテンツ/流動的コンテンツ) :固定されたものではなく、視聴者の文脈、場所、時間、またはインタラクション(相互作用)に基づいてリアルタイムに適応するコンテンツやストーリーのこと。AIが個人の好みに合わせてコンテンツを調整することでこれを容易にします。伝統的なメディア企業は、これまでの「記事」の執筆から、より柔軟な「アトミック(原子単位の)オブジェクト」の作成へと移行することが求められます。

次回は、前編を公開します。

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