民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」は、2025年12月の月間ユーザー数(MUB)が4460万を達成し、過去最高記録を更新した。月間動画再生数も6.5億再生で、3カ月連続で記録を更新。コネクテッドTVにおける月間動画再生数も過去最高となる2.1億再生だった。
広告事業も好調に推移しており、2024年度の広告売上は昨対比で約200%、広告主数は2138社に増加した。「効率よく新規層へリーチできる」として選ばれているというが、どんな成果が出ているのか。TVer広告の強みと成果を取材した。
「無料で民放放送が見られる媒体」として高く認知
ティーバーは、民放公式テレビ配信サービスとして2015年10月に開始した。テレビ放送のコンテンツがリアルタイムで配信、あるいは放送後に一定期間見逃し配信される。毎週800番組以上が配信され、広告付きで完全無料。スマートフォン、PC、タブレット、コネクテッドTVなどで利用できる。
再生数や月間ユーザー数は年々向上し、認知率も73.3%まで上がっている(2024年11月時点、マクロミル調べ)。利用者のボリュームゾーンは、F2・M2と言われる35〜49歳の男女だ。また、テレビの利用者層と比較すると、M1・F1の20〜34歳の男女が圧倒的に多い。52.3%の利用者がスマートフォンで視聴しており、スキマ時間にも多く利用されている。一方で、コネクテッドTVでの視聴も38.6%まで増えており、家族みんなで大画面で見る人も多くなっている。
テレビが好きな方がティーバーも利用するようになった。あるいは、これまでオンタイムでのテレビ視聴が難しかった方が、利便性の高いティーバーを利用するようになったなどの理由で利用者が増え、「無料で民放放送が見られる媒体」としての認知が拡大しました。
再生数の傾向でいうと、地上波に比べて深夜枠の視聴率が高いのは1つ特徴かもしれません。たとえば、「夫が寝たあとに」という深夜帯のバラエティや深夜枠の30分ドラマは非常に視聴率が高く、常にランキング上位に入っています。これは、子育てなどで深夜帯にドラマを視聴できない方が、日中にティーバーで視聴しているのだと思います(廣田氏)
民放放送のコンテンツのみならず、「配信限定コンテンツ」も多数放送され、高い人気を誇る。ドラマの「解説放送版」や人気タレントによる「アニメの実況中継」、放送開始直前の「出演者インタビュー」など、各局が趣向を凝らして番組を制作。これらにコアなファンが注目し、再生数増につながっている。
広告視聴完了率は9割超、ブランドセーフティにも配慮
ティーバーでは、動画広告事業も好調に推移している。広告出稿の方法は、各放送局が販売する「予約型」とティーバー社が販売する「運用型」の2つがある。予約型は広告主が事前に枠を確保して配信。対して、運用型はより柔軟な配信設定を可能とする。ティーバー社が販売する2024年度の広告売上は、昨対比で約200%に伸長した。
本記事では、ティーバー社が販売する「運用型」に焦点を当て、その特徴や事例を紹介する。運用型のティーバー広告には、主に以下の特徴がある。
スキップ不可、広告視聴完了率は9割超
スキップ不可の広告フォーマットを採用し、広告視聴完了率は尺にかかわらず9割を超える。「自分が見たいコンテンツ」を見にいくという能動型専念視聴メディアである点も、高い視聴完了率につながっているという。
広告枠を6〜60秒まで設定可能
テレビCMは15秒・30秒が一般的だが、ティーバー広告では6〜60秒まで自由に尺を設定できる。圧倒的に多いのは15秒・30秒だが、たとえば、テレビCMの素材に5秒のキャンペーン動画を付け足すといったパターンもあるそうだ。
テレビと同様の審査基準
ブランドセーフティに注力しており、広告はテレビ局と同様の基準で審査されるため、地上波放送と同クオリティの広告しか流れない。
データに基づいたターゲティング
ユーザーが登録した性別、年齢、郵便番号のデータのほか、アンケートから取得した17個の「興味関心データ」をターゲティングに活用。より深いニーズに対しては、年収や勤務先の企業規模などの推定値を利用することも可能だ。
特に評価をいただいているのは、「広告視聴完了率の高さ」です。ながら見ではなく、非常に良い視聴態度で広告に触れていただくため、長尺になっても完了率がほぼ変わりません。こうした背景から、多くの広告主は「リーチ獲得」への高い期待を持って、ティーバー広告を利用されています。また、テレビ基準の広告に限定されているという安心感も評価をいただいている理由の1つです(小暮氏)
テレビやYouTubeの「リーチ補完」として効果を発揮
ティーバーの広告主は2138社(2024年度)に拡大し、企業規模や業界にかかわらず全国的に活用されている。これまでの成果として、以下の2例を紹介したい。
【事例1】テレビでもYouTubeでも獲得できなかった「新規層」にリーチできた
こちらは、某メーカーの事例だ。同社では、リーチ獲得を目的にテレビとYouTubeの2媒体に注力して動画広告を配信していた。ティーバーはテレビ放送のコンテンツであるため、テレビの視聴者層との重複が多いと考えていたが、ティーバー広告を配信してみたところ、これまで獲得できていなかった新規層にリーチができた。
この事例では、20〜34歳の男女をターゲットに配信しました。同社のように、「中高年層はテレビ」で、「若年層はYouTube」でリーチしようと考える企業は少なくないと思います。ただ、そこでも獲得できない層があり、伸び悩んでいたところ、ティーバーで新規層にリーチができたという事例です。同様の事例も多く聞かれています(廣田氏)
【事例2】広告が配信された人の来店率が向上した
続いて、某交通系企業の事例だ。同社では、ある場所への来店を促すティーバー広告を地域を限定して配信し、その後、来店計測を実施した。すると、広告が配信された人は、そうでない人よりも来店率が約2〜3%高かったことがわかった。
ティーバー広告はリーチ獲得や認知率向上を目的とした配信が多数を占めますが、同社は直接的な来店につながった事例でした。特に、来店率の向上につながりやすいのは、全国展開しているような飲食店などで、期間限定のキャンペーンや季節的なメニューを動画で魅力的に伝えることで、来店につながるケースが多いと認識しています。(小暮氏)
広告売上目標は昨対比200%、広告価値の証明にも注力
上述したとおり、ティーバー広告はリーチ獲得・認知向上には、効果を発揮しやすい。一方で、購入や問い合わせ、来店といったコンバージョンにつなげるのは、ややハードルが上がる。
たとえば、コネクテッドTVでティーバーを視聴する場合、広告を見て気になったサービスや商品があれば、スマホで調べることができます。しかし、スマホで視聴していると、番組を見ている最中なので中断して該当サイトに飛ぶ行動は起きづらい。とはいえ、広告を通じて記憶に残ったことで、その後にサービスや商品に触れていただくことは大いにあると思います。広告投資がどのくらい売り上げにつながったかは、今後より証明していく必要があると感じています(廣田氏)
ティーバー社では、2025年度の売上目標は昨対比200%と高く設定している。そのための施策の1つとして、広告効果をより精度高く分析することで、ティーバー広告の価値をわかりやすく伝えていきたいという。また、よりコンバージョンにつなげやすい新たな広告フォーマットも検討しているそうだ。
ティーバーは、デジタル企業と放送局の出身者が寄り集まったユニークな組織で、どちらの知見も持ち合わせています。それらを生かしながら、他媒体とは異なる唯一無二の価値をつくっていきたいと考えています(小暮氏)
