高度なデジタルマーケ実現のために超進化したAdobeの新タグマネ「Launch」を調べていたら「データ活用の未来」が見えてきた

「タグマネージャー」と聞くと、「JavaScriptをいじらなくても、いろんなタグを画面から設定してサイトに反映できるツール」と思う人が多いだろう。しかし今後は、そうした認識のままでいると時代に乗り遅れてしまうかもしれないぐらい、超進化したタグ管理システムが登場してきた
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「タグ管理システム」「タグマネージャー」と聞くと、「HTMLを直接修正したりCMSの設定を変えたりしなくても、広告や解析のJavaScriptタグを管理画面から自由に設定できるようにするツール」のことだと考える人が多いだろう。

筆者もそういう認識だった。しかし今後は、そうした認識のままでいると時代に乗り遅れてしまうかもしれない。

というのも、「タグ管理」に加えて、

  • 各種システムをつなぐデータ連携支援
  • 高度なデータ取得や処理の設定支援
  • システムとして信頼性を確保した開発と運用の支援

などの機能によって、デジタルマーケティングの推進を加速させる新たなプラットフォームが生まれてきたのだ。

そのプラットフォームとは、アドビ システムズが次世代のタグ管理システムとしてリリースした「Adobe Experience Platform Launch」だ。この記事では、Launchがどのように進化したのか、そして、その進化が必要とされた企業のデジタルマーケティングの変化と未来を解説する。

※以下の本文では「アドビ システムズ」を「アドビ」、「Adobe Experience Platform Launch」を「Launch」と省略して表記する。

デジタルマーケティングの進化とともに変わり続けるタグ管理システム

初期は保守運用のためだったタグ管理システム

企業のマーケティング活動において、顧客行動などのデータを取得する動きはどんどん加速している。そのために、

  • 広告の計測用タグ
  • アクセス解析タグ

など、役割の違う複数のマーケティングソリューションの計測タグを自社サイトのコンテンツに設置することは、いまや普通となった。

各マーケティングソリューションの計測タグは、当初はWebサイトのソースコード(HTML)に直接記述(ベタ張り)していた。

しかし、記述するタグが増えるにともない、計測タグをCMSのように一元管理するツールとして「タグ管理システム(タグマネージャー)」が誕生した。これは、HTMLファイルやテンプレートファイルを編集するのではなく、タグ管理システムのUI上でさまざまなタグを追加したり更新したりできるツールで、

  • どのページにどの計測タグを使っているのかの管理
  • 制作会社や情シスに依頼せずマーケターがタグを自由に変更

といったことを実現でき、保守運用面に役立つものだった。

デジタルマーケの現場はさらに複雑化

しかし、デジタルマーケターの役割は、単に「データを取得する」ではない。

本当に実現したいのは、「データを使ってビジネスを改善する」ことだ。具体的には、それぞれのマーケティングソリューションで得たデータをつなげて「個」のデータを拡張し、

  • パーソナライズ施策の成功率を上げる
  • チャネルを横断した施策の成果を判断する
  • よりLTVの高い施策を見いだす

といったデータ活用である。

そのため一部の先進的なタグ管理システムは、データを収集・結合・加工して各種ツールに受け渡すという重要な役割を担うように進化していった。

とは言うものの、タグ管理システム内での処理はおもにJavaScriptによって行われるのだが、そのデータ処理は単純なものではない。開発においては、サイトやAPIの機能と密接に連携する必要があるうえに、次に示すようなことも考慮する必要がある。

  • エラー処理
  • パフォーマンス
  • セキュリティ
  • ブラウザ互換性

となると、結局はシステム開発と同様に慎重に扱う必要があり、運用は社内情報システム部門のエンジニアが担当し、マーケッターが直接触れることは少ないというのが実情だろう。

次世代のタグ管理システムはデータ連携の困難性を解決し、デジタルマーケティングをさらに加速させる役割へ

デジタルマーケティングの全体像が巨大かつ複雑になり、ソリューションが進化し、収集するデータの種類も量も膨大に増えるなかで、タグ管理システムが果たせる「次の進化」は何か。

そのタイミングでアドビが出した回答の1つが、この記事で紹介しているLaunch(ローンチ、正式名称は「Adobe Experience Platform Launch」)だ。

Launchは、Adobe Experience Platformにおいて、複数のテクノロジーを連携させて顧客体験を改善してくための製品として提供されているもの。これまでも「計測タグの保守・運用」のためのツールとして提供されていたのだが、2019年のアップデートで「迅速かつ簡易にデータ連携を支援する機能」が追加されたことにより、タグ管理システムの果たす役割を劇的に変えた。

データ連携といえば、これまではJavaScriptやサーバー側のシステムによって処理するケースが多かっただろう。しかし、新しいLaunchを使えば、プログラミングやシステムに明るくないマーケッターでもある程度触れられるレベルとなっている。

思い出してみてほしい。昔のタグ管理システムは、「ページに計測タグを埋め込む・更新する・管理する」ことの自由度を、制作会社やシステム部門の手からマーケッターの手に渡した。それと同様に、Launchは「複数のシステム間でデータを連携させる」ことの自由度をマーケッターの手に渡すのだ。

いずれも、社内の情報システム部門や外部のシステム会社に依頼する時間やコミュニケーションコストを短縮し、企業がマーケティング活動を進化させるスピードをアップさせる効果があることがわかるだろう。

では、Launchはタグ管理システムの何を進化させたのか? Launchの主な新機能として、「エクステンション」と「ワークフロー」の2つを解説する。

Launchの注目機能① アドビ以外のマーケティングソリューションとも自由に連携できる「エクステンション」機能

最も注目すべきは、さまざまなソリューションのタグ管理やデータ連携を支援する「エクステンション」機能だ。使い方も簡単で、エクステンション機能のカタログ画面からデータ収集に利用したいソリューションを選び、Launchにインストールして使うだけだ。

アドビはこれまでもDTM(Dynamic Tag Manager)というタグ管理システムを提供しており、DMP時代からさまざまなソリューションのタグを管理できるようにしていた。とはいえDTMがサポートしていたのはAdobe AnalyticsやAdobe Audience Managerなど、アドビ製品が中心だった。GoogleアナリティクスとNielsenのツールもサポートはされていたが、実質的にはアドビ製品を管理するためのタグ管理システムだった。

しかしLaunchのエクステンションは、アドビ製品以外とも自由に連携できるようになっている。

Salesforceで他社サービスとデータ連携するための「コネクター」をご存じならば、同様のものだとイメージするとわかりやすいだろう。要はデータの収集や加工に必要な機能とUIを、利用者やベンダーが「拡張できる」のだ。エクステンション開発も社外に開放されており、自社やサードパーティ企業が開発したエクステンションをアドビ製品と連携し使うことが可能となった。

つまりLaunchは、エクステンションによってオープンな環境と自由度を獲得したのだ。これはほぼクローズドだったDTMから考えると画期的なことだ。

すでに、

  • Facebook
  • Googleアナリティクス
  • Salesforceソリューション

など、各社の多様なエクステンションが利用可能になっているほか、自社の独自システムからデータを取得して連携させたいのであれば、エクステンションを自社で作ることもできる。

さらにエクステンションはデータ計測やソリューション連携だけではなく、実装支援を目的としているものもあり、活用の幅が大きい。

実装支援系のエクステンションの例としては、たとえばAdobe Analyticsでカスタムデータを取得する設定を簡単に行えるようにするものが挙げられる。

後ほど例にあげるECサイト実装支援のエクステンションを使えば、「ECサイトの商品詳細ページで、商品名や金額などの属性をプロダクト変数としてデータに含める」といったことを、Launchの管理画面でデータ要素などを設定するだけで実現できるようになる。

こうしたことは、DTM時代はJavaScriptで処理を記述する必要があった。しかし、それをマーケターがブラウザだけで実現できるになるのであれば、エンジニアにとってもマーケッターにとっても助かる機能だといえる。

サードパーティが提供しているLaunchエクステンションの例

Launchで利用できるエクステンションのなかから、アドビ以外のサードパーティ製品とのデータ連携を支援するものや、実装を支援するものを、いくつか紹介する。

AA+SFDC

Stoke Data社が開発した、Adobe Analytics(AA)とSalesforce(SFDC)のデータをつなげられるエクステンション。

Salesforce上で管理する店舗売上やMQLなどの顧客データをAdobe AnalyticsへeVareventとして取り込み、Adobe Analyticの通常の行動データとあわせて分析したりセグメント作成したりできるようになる。

実装支援系のエクステンションの例

AA Product String Builder

DTMの前身であるSatelliteを開発したSearch Discovery社が開発した便利エクステンション。EC計測に必要な設定をUI上で行えるようになる。

Data Element Assistant

Evolytics社が開発したエクステンション。カスタムコードを書かずに、データの簡単な計算の実行やデータの結合、データの抽出などが可能となる。

たとえば、複数のデータを結合してページネームを設定したり、データを配列から指定してAdobe AnalyticsやAdobe Audience Managerなどの分析ツールへ送信したりするように設定できるようになる。

Launchの注目機能② 開発→テスト→公開をスムーズに管理する「ワークフロー」機能

LaunchがDTMの時代から大きく変わった機能が、ワークフローだ。この機能によって、タグやデータ連携の機能をLaunch内に実装し、テストしてから公開するという流れを確実かつスムーズにできる。

具体的には、Launchの計測タグが

  • 開発環境
  • ステージング環境
  • 本番環境

の3段階で分けられており、各ステップを経ないと本番環境でタグをリリースできないフローになっている。

タグのバージョン管理をプレビュー機能だけでなく別環境にすることで実現する、データの汚染防止

グーグルが提供しているタグ管理システムのGoogleタグ マネージャー(GTM)でも、公開前にプレビューする機能がある。

しかし、GTMの計測タグは開発や本番などの環境にかかわらず共通で、機能として提供しているのは「プレビュー」だけだ。つまり流れとしては、プレビュー機能を使い、読み込むGTM設定(コンテナ)のバージョンを切り替えて検証し、問題がなければタグを本番としてリリースするというものだ。

Launchのワークフローに比べてシンプルだが、ステージング環境をもたないような小規模なサイトの場合、運用フローがわかりやすいのがメリットだ。

しかし、このフローでは「テストデータの混入」という問題が発生する可能性がある。というのも、開発環境やステージング環境にもGTMを実装しプレビュー機能を使わずにアクセスしてしまうと、テスト用の計測データが各種ツールに送信されてしまうリスクがあるのだ。これを放置していると、開発環境などのデータが本番データに混ざり、マーケティング活動に支障がでる場合もある。

しかも、そうした問題が発生しないようにするには、GTMを利用するエンジニアやマーケッターがそれぞれ「注意する」しかない。可能ならば、個人スキルやモラルに依存するという属人的な運用ではなく、仕組み側で対策したいところだ。

そういったリスクを防止するのがLaunchの3段階のワークフローだ。

GTMのようにブラウザ上で環境を切り替える機能も提供されているが、「開発環境」「ステージング環境」「本番環境」のような環境ごとに専用の計測タグを埋め込むのが基本となる(環境の数や種類はカスタマイズ可能)。

そして、環境ごとに、データの格納先であるレポートスイート(Googleアナリティクスでのプロファイルに相当)を別のものに指定しておけるのだ。

テスト環境や本番環境など、それぞれ異なるタグを埋め込める
環境ごとに別のデータとして分けて管理できる

少しの問題も発生させないための、タグ管理の開発→ビルド→検証→承認といった流れの管理

Launchのワークフロー機能は、前述のような環境の分離に加え、開発→ビルド→検証→承認といった全体の流れの管理まで含んでいる。

  1. 開発やステージングなどの環境を分ける
  2. それぞれデータを送る先のレポートスイートを決める
  3. サイト計測に必要なデータ要素、エクステンション、ルールなどを設定してライブラリを作成する

といった準備が終わった段階で、このライブラリにはさまざまなデータ取得や連携などの処理が含まれている。それをサイトで利用しやすくするのが、「ビルド」という処理だ。

システム内でタグをビルドすると、管理画面上の設定が反映されて、結合・圧縮されたJavaScriptファイルが生成される。これが、実際にサイトで配信されるタグになる。

承認ワークフローでは、まず開発環境(次図でいうと一番左のDevelopmentのライブラリ)でタグがビルドされる。

開発環境でタグの動作を検証し、問題がなければ、次にステージング環境へワークフローを進める。ステージング環境(前出の図で左から2番目の枠)でも同様にライブラリを再度ビルドして検証できるようになる。

つまり、「ライブラリをビルド」「検証」「承認」というステップを繰り返しながらフローが右に進んでいくのだ。そして本番環境用のライブラリ(左から3つ目の枠)をビルドしてPublishすることで、本番環境に新しい設定が反映される(右端の枠は、本番環境に現在適用されているバージョンを示している)。

こうした「ビルド」という概念は、GTMやDTMに比べると複雑で面倒にみえるかもしれない。

しかし、Launchの特徴であるエクステンションを活用して、さまざまなマーケティングソリューションをつなげていけばいくほど、タグの構成は複雑になっていく。しかもエクステンションはアドビ以外にもさまざまな企業が提供している。となると、単体ではそれぞれ問題なく動作するタグでも、組み合わせることで思わぬ相性問題が発生することもある。

Launchが想定しているのは、昔のシンプルな「タグ」管理ではなく、さまざまなベンダーの提供するマーケティングソリューションを連携させ高度な処理を行う「システム」なのだ。となれば、システム開発と同様に慎重に扱うために慎重なワークフローを採用するのも納得できるところだ。

これが、グローバル大企業のニーズを受けたアドビとしての推奨アプローチなのだ。

既存のDTMユーザーは段階的にLaunchへの移行を

この第三世代のタグ管理システムLaunchをアドビがベータ版としてリリースしたのは2017年だった。アドビが提供してきた第二世代のタグ管理システムDTMは、そこから段階的なサービス終了がアナウンスされている。

  • 2019年7月9日 DTMでの新規プロパティの作成不可(実施済み)
  • 2020年7月 DTMでの既存プロパティの編集不可
  • 2021年1月 DTMサービス終了

現在DTMを使っているサイトは、Launchへの切り替え期限が迫ってきている。

DTMからLaunchへの切り替え作業は、切り替えボタンをクリック後に再度ルールや要素の設定が必要となるため、ある程度余裕をもって計画してほしい。

また、この記事を参考に、単に切り替えるだけでなく、エクステンションを活用したり、ワークフローを改善したりするなどして、Launchを最大限に活用できるように全体を見なしてみることをおススメしたい。

Launchから見る「データ活用の未来」

そして、現在どのようなタグ管理を行っているかにかかわらず、今回のアドビがタグ管理を進化させている方向に目を向け、先進企業の状況や課題とその解決アプローチ、少し先の自社の将来を想像することができれば、「データ活用の未来」が見えてくるだろう。

  • 属性データだけでなく行動データをもとに顧客を理解し、リアルタイムに近いタイミングで最適なコミュニケーションをしていく
  • そのために、各社のマーケティングソリューションを連携させるシステムにしていく

こうしたことをよりうまく実現していくには、よりブラウザやアプリなどユーザーに近い部分でデータを扱っていくことになるだろう。それを企業活動として信頼できるレベルで実現していくには、これまでシステム開発で行っていたのと同様の開発と運用が、タグのレベルで必要になってくる。

タグ管理システムで扱うのが「タグ管理」だけでなく、

  • 顧客データ管理
  • システム開発
  • ソースコードの管理
  • セキュリティ管理

といったことにまで広がっている背景にあるのは、こうした変化なのだ。

マーケターも、アドビが目指している未来を垣間見ることで、視野を広げ、マーケティングのデータ活用を進めていくためのヒントを得ることが可能になるだろう。

それが、Launchから見る「データ活用の未来」なのだ。

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