チケットは即日完売の若手マーケターが集まる人気イベント、「20代マーケピザ」って何してるの?

菅原健一氏が不定期に開催している「20代マーケピザ」。3月に行われた回ではNianticの足立氏、コメ兵の藤原氏が登壇し、若手マーケターたちの質問に答えた。

Moonshotの菅原健一氏が不定期に開催している「20代マーケピザ」というものをご存じだろうか? 20代のマーケターを少人数集めて、ピザを食べながら、20代の仕事の悩みを共有したり、学びあったりしているものだ。参加者の多くは「#20代マーケピザ」のハッシュタグをつけて投稿しているので、興味がわいたらそのハッシュタグを検索してみるといいだろう。

今回参加した「20代マーケピザ」は、普段の少人数制とは異なり、Twitter Japanによる会場協力のもと200人という規模で行われた。先輩マーケターとして、Nianticの足立光氏、コメ兵の藤原義昭氏が会場に駆けつけ、参加者から事前に募集した質問に答えていく形で「20代マーケピザ」は開催された。質問と回答を抜粋してお伝えする。◎撮影:須沢友裕

(左から)司会兼20代マーケピザの発起人 Moonshot Inc. 菅原健一氏、パネリスト Niantic, Inc 足立光氏、パネリスト 株式会社コメ兵 藤原義昭氏

マーケティングは「商売」

参加者: マーケティングを日本語で表現できないのでしょうか?

足立: 「マーケティング」を日本で表すと「商売」です。セールスは和訳で「営業」ですが、マーケティングには和訳がありません。当てはまる日本語がないから和訳がないからですが……。どんなお客さんに、どんな価値を提供して、どんな風に儲けようか、というのは、まるごと「商売」なので、マーケティングは商売そのものです。にゃ。

会場: ……(静まり返る会場)

足立: ウケないな。

菅原: すみません、みんなツイートに夢中なんですよ!

足立: ツイートしてね「にゃ」を!

会場に響くタイピング音

菅原: 私もメモをしておきたいので、皆さん足立さんの発言をちゃんとツイートしておいてくださいね。では、藤原さんは、マーケティングを日本語で表現するどういう言葉になると思いますか?

藤原: 足立さんと私も同じですね。多分レイヤーによって変わりますが、経営に携わるようになってから「マーケティング=経営」だなとすごく思うようになりました。

マーケティングは広く浅く、深く狭く

参加者: これからのマーケティング業界では広く浅くか、狭く深く専門的知識を身につけるべきでしょうか?

藤原・足立: (パネリスト2人が口をそろえて)両方必要です。

菅原: 両方必要だと私も思いますが、仮に最初にやるとしたらどっちからがいいですか?

足立: まずは、一人前になるためにある程度専門的な知識を身につける必要はあると思います。いろんなものを経験していくうちに、知識が広がっていく(広げていく)という流れになるでしょうか。つまり両方必要ですね!

菅原: 知識を身につける方法としては?

足立: 私自身は、流行りものは一通りやってみることにしてます。流行った場所にも一回行く。広く興味をもって「とりあえずやってみる」というのが大事です。「流行ってる=人が心を動かされている」という事実は存在するので、なぜ流行っているのか自分で体験して、その理由を考えるようにしています。

インプットしたことを覚えるためのアウトプット

参加者: 本を読んでも1週間経つと内容を忘れてしまうのですが、読書するときの工夫はありますか?

足立: 本は、人の体験をそのまま追体験できる有益なインプットツールです。ですからインプットしたら、アウトプットすることが大事です。Twitterでも良いので「書く、記録に残す」ことを意識してみてください。

ちなみに、私は20代のころ1週間に1冊くらいのペースで読んでいました。Amazonのレビュー機能が搭載されると、読んだ本のレビューをよく書いていました。

藤原: 全部を読むから忘れちゃうんだと思うんです。だから私は、「必要な部分だけを読む」ことにしています。私は30歳のときに1年間で100冊、大事なところだけ読んでいましたが、量を読むとビジネス書はだいたい共通のことが書いてあるだけだと気づきます。大抵のビジネス書は130~180ページですが、必要なのは1割もないんじゃないかなと思っています。だから「量が大切」です。

あとは足立さんと同じですが、How to本ならば、読んだ内容を実践してみてください。行動に移して体に染み付かせることで良質なアウトプットにつながり、知識として定着すると思いますよ。

和やかな雰囲気で行われるセッションの様子

足立: 本を読んで自分の仕事に活かせるものを探してると思うんですが、活かせないものは忘れていいんじゃないでしょうか。

菅原: そのくらいの気持ちでサクサク読んだ方が量が読めるかもしれませんね。アウトプット癖がついている人はとにかく書いたり、ツイートしたり何か行動をしますよね。

足立: そうですね。それにしても……思ったより真面目な会ですね。みんな静かで。

菅原: 私もこれ最初やったときはすごい心がくじけそうになるほどみんなが下向いて関心がなさそうに見えるんですけど、違うんですよ! みんなツイートしてるんですよ!

足立: なるほど(笑)。

黙々とツイートする参加者たち

色んな人と会い、足を運び、生の情報を幅広く仕入れる

参加者: マーケティング業界の情報は日々溢れていますが、どういうふうにキャッチアップして取捨選択しているんでしょうか?

藤原: 一次情報が大事だと思います。どこかに行ってみるとか、先輩に話を聞くとか、学びの場に出かけてみるとか。生で体験している人の会話から情報を得るのは大事です。

菅原: こういうところで会話して情報を得るっていうのはすごく大事ですよね。

足立: そうですね。記事などからのインプットも大事だけど、色んな人から話を聞いて、その人の話の裏になにがあるのか、どうなっているのかを考えることが大事。一生懸命人と会って話を聞かないと色んなものが手に入らないので、私は一生懸命人と会ってます。

あと、メディアとしては原始的だけど「新聞」をおすすめしています。なぜなら自分の興味がない情報も目に入るので世の中の一般の事件、事例を見られるからです。自分が接しないだろうという情報を仕入れるのも大事です。

菅原: 取捨選択はどうしてます?

足立: まずは真偽を考えます。

藤原: 定点観測を行います。決まった日に決まった場所にいく、ドル円の為替相場をみるとか。そうすると何となく社会の傾向がわかる。

キーワードはみんなが言い始めた時点で終わっている

参加者: 「2019年このキーワードは要チェック」というものはなんですか?

藤原: ハリーポッターじゃないですか(笑)。

足立: おっしゃる通り(笑)。実は、キーワードって全然チェックしていません。「キーワード」と思っている時点で終わっていると思う。みんなが言い始めた時点で終わっているので、キーワードを追うよりも何がトレンドになっていくのかをずっと見ている方が良いと思っています。

藤原: 「キーワード」という考え方よりも「先々を見据えておく」ことが大事です。たとえば「会社を5年後にどう成長させるか」といったことです。今だと「5G」ですね。5G時代が到来したときにちゃんと波に乗れるように、勉強や準備をしておけばバーンと大きく飛躍するかもしれませんからね。

スペシャリストになるべきか、ゼネラリスト になるべきか

参加者: 専門性が高いことをやろうと思うと「スキルの壁」にぶつかります。スキルレベルをあげて挑むべきですか? スキルのある人をディレクションする能力を高めるべきですか?

足立: ライフスタイル次第かな。広く浅く知識を身に付けるべきかという話にも通じていまして、先ほどは両方と言いました。でも、実はその人の「ライフスタイルや大事にしていること」ものによります。その人の人生でどういう時期かによってもキャリア設計は変わります。スペシャリストになれば、そのジャンルで一生食っていけるかもしれませんが、ディレクションをするにはゼネラリスト になる必要があります。

藤原: 質問者さんに逆にお伺いしますが、自分で専門性を突き詰めるのと、周りを巻き込むのどっちが楽しいですか?

参加者: 今のところはぐっと集中して突き詰めているほうが楽しいし、なりたいビジョンに近いです。

藤原: だったら最初はスペシャリストでいいと思います。その中で色んな人を見てジェネラルの方が楽しそうだなと思ったらやればいい。ただ、同僚がゼネラリスト になったから「うらやましいな」と思って目指すのは駄目です。自分が楽しくてスペシャリストとしてやっていけるならその方が良いです。

スペシャリストはある程度まで行くと、本当に年収をあげていけるのは一握り。最終的にお金を稼ぎたいと思っているのだったら、どこかでゼネラリスト のような動き方も必要になってくると思います。

菅原: スペシャリストって兼業できるようになってますもんね。世の中の流れ的に。

足立: スペシャリストの1つのリスクは、その技術がいらなくなれば食っていけなくなるというリスクがあります。スペシャリストで食っていくならスキルを選ぶ必要があります。20年前と大きく違うのは、時間の感覚です。60歳で定年したら85歳で年金が尽きる。そうすると80歳くらいまで仕事しなければならないので、常に新しいスキルを身につける必要があります。

藤原: 日本人は大学出た途端に勉強しなくなります。会社に入って経験だけで食っていこうと思っても無理なので社会人ほど勉強しなければならない。自分で何かをやってみようとか、新しいことをするのは大事です。

脳みそは今のうちに鍛えておかないと、30代40代になると本当に物を覚えてられなくなります。今は無理してでもインプットとアウトプットをしていくべきだと思います。ストレス耐性も20代のうちに身に付けておくといいと思います。

菅原: 精神的なものも「筋トレ」だと思ってやってみるといいかもしれませんね。

自分の評価や価値は「自分をマーケティングする」ところから始まる

参加者: 自社のやっていることや自分のマーケティングスキルのレベルが掴めていません。自分の市場価値を計る指標になるものがあれば教えてください。

足立: あんまり考えたことないなあ……。これは会社のレベルにもよるので、人に会って会話してみて、自分のレベルを測るしかないですね。私が20代のときは「4歳くらい上の先輩と同じようなことが、できるようになりなさい」と教えられていました。

藤原: 私は、現在執行役員ですが、社会一般的にいう課長クラスのとき「部長だったら何をするかな」と考えて仕事をしていました。レベルを上げたかったら、体系的にマーケティングを勉強してみるのも手です。

私は新卒入社した当時は「マーケティング部」は存在しませんでしたので「本から学び、実践する」ということをしていました。でもある時限界を感じて、MBAを日本で取りました。体系的にマーケティングを勉強すればレベルがポーンと上がります。

足立: マーケティングは答えがないし、教える人によって違うので、どこで誰に教えてもらうかの選択は大事かもしれません。

藤原: あとは、転職せずとも、転職活動してみるのもいいと思います。

菅原: 私はお声がけいただいて、転職することが多かったのですが、「違うジャンル、やったことのない仕事にチャレンジする」という基準で転職していました。あるとき転職エージェントに登録してみたら「こんなガチャガチャな経歴見たことない! どこも紹介できません」って言われました(笑)。

足立: 職歴や、やってきたことは評価してもらえますが「その人」自体は評価してもらえませんからね。

菅原: 転職活動は、メルカリに自分を出品するような感覚に近いかもしれません。面接に行ってみれば、自分の市場価値かわかります。

参加者: マーケターの評価はどのように行っていますか?

藤原: 皆さん好きですね、評価(笑)。たとえば、「他社のこの人を評価して」と言われてもできないです。メディアで文章を書いて、評価していただいてもそれは、メディアが作った幻想でしかありません。評価は周りが作り上げるものなので、あまり気にしない方がいいと思います。

足立: マーケターに関係なく納得性がある評価をできるとすれば、良いときは良い、悪いときは悪いとその場でフィードバックしてもらうことです。ですが、結局納得性のある評価なんてできません。昇進は、周りの人が「この人昇進したほうがいい」と思ったら昇進するので、そう思ってもらうことが大事です。

あとマーケターの人は、自分をマーケティングしたほうがいいです。いつも自分ができることより少し上のことをして価値を上げていかないといけないし、マーケターは個性が大事。差別化していかないとマーケターとしてオンリーワンになれないと思います。

さらに給料の話もしておきますが、給料のための転職はあまりオススメしません。私は6回転職して3回給料が下がっています。でも、おもしろそうだからお金とか気にしていません。興味がないことをやってお金をもらうより、おもしろい仕事をしてお金をもらう方が良いという価値観で動いています。

遊びも仕事に活かして自分を磨く

参加者:おすすめの遊び方はありますか?

足立: まずは流行り物は試してみる、それから人に会うのがいいです。人に会うには、おもしろそうな人が溜まるところに遊びに行くんです。そうするとおもしろい人に偶然会うことができます。もう1つの手段としては、偶然を装うことです。お店に通って、「こういう人が来たら教えて」とスパイを作っておく、そして偶然を装って遊ぶと縁を感じてくれます(笑)。スパイを作るのにも時間とお金がかかりますけどね。

菅原: この方法だとバレても相手はうれしく感じてくれるかもしれませんね。会いたいって言ってそれだけやってくれるわけですから。

藤原: 私の場合、レガシーなものに触れることをおすすめします。クリエイティブ判断を磨くためには、良い音楽や芸術に触れる必要がある。美術館に行って、なんでこの絵が描かれたのか、何故評価されているのかを考える。そういうものに触れていくことで業務でクリエイティブ判断を磨いていく。

足立: 昔のCMとかね。昔流行ったものって必ず何かエッセンスがある。こういう歴史に残るものっていうのは必ず理由があるので触れてみないといけない。

菅原: じゃあお時間なので締めますね。お二人ともありがとうございました。

まとめ

会場は、華やかな風船で飾られ、Twitterクッキーやおしゃれなアラカルトが並び、まさに「映える会場」だった。

会場に着いた参加者の多くは早速写真を撮ってハッシュタグでツイートをしており、積極的に会場の様子シェアしていた。

イベント中は常にTwitterのハッシュタグが活発に動き、登壇者の方々の話から感じたこと、学んだことを各々が発信していた。中にはグラフィックレコードでまとめてる方もおり、参加者たちが意欲的に学ぼう、話を聞こうという熱意にあふれたイベントだった。

20代マーケピザは若手マーケターが集まり、マーケティングだけではなくキャリア設計や仕事について先輩方に聞くことのできる。今回参加してみて、若手マーケターたちにとって貴重な交流と学びを得られる場であることがわかった。

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