Google日本法人はメディア向けブリーフィングを2026年2月10日に開催した。代表の奥山真司氏に加え、Google製品の主要プロダクト責任者12名が1名あたり3分間で、AIによって変貌するデジタル体験の未来を語るショートプレゼンをそれぞれ行った。本記事では検索周りの情報を中心にお届けする。
AIは「リサーチ」から「実装と品質」のフェーズへ
冒頭、登壇した日本法人代表の奥山真司氏は、2026年のテーマを「AIの実装と品質」と掲げた。「これまでの数年間はAIのリサーチや開発といった『実装前段階』の議論が中心だった。しかし2026年、AIは日常的に生活に入り込むフェーズへ移り変わった」と述べ、社会の不可欠な存在として、より高い責任と品質が求められていることを強調した。
同社は「AIの力で解き放つ、日本の可能性」というビジョンのもと、再生医療を支援する「AIサイエンティスト」の開発や、最大15日先を予測する「台風予測モデル」、ALS患者の会話を支援するアクセシビリティ技術のオープンソース化など、日本固有の課題解決に向けた取り組みを加速させている。
検索の再定義:LLMが「答えが見つかる成功体験」を最大化
続いて、Google 検索 シニアスタッフソフトウェアエンジニア技術リード兼マネージャーの大倉務氏が、Google検索の最新動向について解説した。大倉氏は、ユーザーがGoogleを利用するのは「答えが見つかりそうだという期待がある時だけである」とし、その期待に応えるためのLLM(大規模言語モデル)の活用事例を紹介した。
「AI Overviews(AI による概要)」と「AIモード」の導入により、従来は回答が困難だった「食前にハイカカオチョコを食べる効果と理由」といった、複数の要素が絡み合う複雑な質問にも、簡潔かつ的確な回答を提示できるようになった。これにより、検索の利用頻度はかつてないスピードで拡大しているという。
生成AIを使い慣れているユーザーであっても、「AIの回答からリンクへ遷移する」という利用行動は、いまだ新しい体験である。単にリンクの数を増やせばクリックが増えるというものではない。AIによる概要の中に示されたリンクをクリックした結果、「まさに求めていた情報があった」という体験を重ねることで、ユーザーはその行動様式に徐々に慣れていく。
このためGoogleでは、ユーザーにとって最も必要とされるページを、その内容や選定理由とともに適切に提示できるよう研究開発を継続してきた。その結果、AIの回答からリンクをクリックするという利用スタイルは着実に定着しつつある。
新機能「プリファードソース」の国内展開
米国で先行導入された、お気に入りのニュースメディアを優先表示できる機能「プリファードソース(Preferred Sources)」が、2026年中に日本でも提供される予定であることが明かされた。
広告とビジネス:AI検索が創出する「新たな意思決定」
マネージングディレクターインサイト&ソリューションの三浦由佳氏は、日本の生活者の75%がGoogleやYouTubeを毎日利用しており、オンラインプラットフォームとして国内で圧倒的な利用率を維持している。特に、生成AIを活用した「AIによる概要(AI Overviews)」の導入は、ユーザーの心理面に大きな変化を及ぼしている。
調査では、国内ユーザーの73%が「意思決定が迅速になった」と回答し、70%が「より自信を持って判断できるようになった」と感じている。AIが膨大な情報を統合し、最適な回答を導き出すことで、従来の「検討」プロセスは瞬時の「確信」へと変貌を遂げつつある。
検索回数は年間5兆回を突破、AIが加速させる「検索の深化」
Googleにおける検索回数は年間5兆回を超え、2025年第4四半期には過去最高を記録した。この成長を牽引しているのが、AI検索の普及である。
- 若年層による牽引: デジタルネイティブな若年層が引き続き検索のヘビーユーザーであり、AI検索の利用拡大をリードしている。
- 検索スタイルの多様化: カメラ、音声、ジェスチャー、会話など、直感的な入力手法が定着。
- クエリの複雑化: AIモードにおける質問文は、従来の検索に比べ2〜3倍長く、文章形式で具体的になっている。
これらの変化は、ユーザーのより深く複雑なニーズを顕在化させており、パブリッシャーや企業にとっては、新たな接点を構築する絶好の機会となっている。
広告とSEOの未来 ―― 「質の高いクリック」への転換
AI検索を経由したリンククリックは、従来よりも満足度が高く、実際の成果(コンバージョン)に直結しやすい「質の高いクリック」となる傾向がある。これを受け、Googleは今後のウェブ戦略の基盤として、以下の「SEO三原則」を改めて提唱した。
- ユニークな価値の提供: 高品質な画像や動画を活用し、人間にとって価値のあるコンテンツを最優先すること。
- アクセシビリティの最適化: インデックス作成やクローリングが容易な、情報の豊富なページ設計を行うこと。
- 最終成果の重視: 単なるクリック数ではなく、ユーザーが目的のタスクをいかにスムーズに完了できたかを評価すること。
日本法人設立25周年の節目に
ブリーフィングの最後には、広報部長の河野氏が登壇。「2026年は、Googleが初の海外拠点として日本法人を設立してから25周年を迎える節目の年。検索だけの会社から始まり、今やAIがあらゆる課題を解決する時代になった」と四半世紀を振り返った。
急速に進化を続けるAIの現場において、正確な情報を伝えるメディアを「不可欠な羅針盤」と称し、今後もパートナーとして共に未来を切り開いていく姿勢を示して会を締めくくった。
