SEOコンテンツ戦略を生成AIで効率化、競合調査に活用する6つの方法(前編)
君のコンテンツ戦略がうまくいっていないのは、それが「データ」ではなく、「推測」に基づいているからだ。「キーワードを調査して、Redditのスレッドをいくつか見るだけ」で、オーディエンスを理解できたと思う人がいるかもしれない。
しかし包括的なオーディエンス調査をしなければ全体像はわからない。オーディエンス調査を手作業でやろうとすると、膨大な時間がかかり、チーム総出で作業しても重要な機会を見落としやすくなる。
そこで役に立つのが、生成AI(大規模言語モデル、LLM)だ。これを利用すれば、より深いオーディエンスインサイトを発見し、君が見落としたオーディエンスのニーズに競合他社がどう応えているのかを明らかにできる。
この記事では、次の方法を紹介しよう:
- 生成AIを活用してオーディエンスのインサイトを発見し、
- コンテンツを監査し、
- 影響が大きなコンテンツの機会を明らかにする
競合調査に生成AIを活用する6つの方法
あらゆるコンテンツ戦略の基盤となるのは、「オーディエンスが何に関心を持っているかを理解すること」だ。人工知能(AI)を利用すれば、オーディエンスが使っているプラットフォームから情報を引き出し、散在しているデータを活用可能なインサイトに変換できる。
ここでは、「Pooch & Mutt」のサイトを例に、私のやり方を紹介する。
この記事で紹介するメソッドは次の6つだ:
- 自分と競合他社のウェブサイトを分析して、オーディエンスのインサイトを得る
- Redditでコミュニティのインサイトを見つける
- ニュース速報や話題のトピックを発見する
- Google Discoverのトレンドを追跡して、コンテンツの機会を明らかにする
- コンテンツ監査とテーマのタグ付けをする(後編、6/23公開予定)
- コンテンツのギャップ分析にAIを使う(後編、6/23公開予定)
それぞれについて詳しくみていこう。
方法1自分と競合他社のウェブサイトを分析して、オーディエンスのインサイトを得る
競合他社のウェブサイトを見れば、自分のオーディエンスがどのように行動しているか、どのようなコンテンツに関心を持っているかがわかる。
次の生成AIサービスを利用すれば、競合調査を簡素化できる:
- Microsoft Copilot
- Google Gemini
- など
ステップ1サイト概要から始める
自分が選んだ生成AIサービスを開き、次のような基本的なプロンプトから始めよう。
poochandmutt.co.ukについて教えて
AIの回答によると、このサイトは健康問題を抱える犬向けの機能性ドッグフードに特化しているという。商品は天然素材を使い、獣医師の承認を受けているとのことで、こうした情報は独自の強み(USP)を理解するのに役立つ。
そのうえで、次のような、より構造化された質問ができる:
ウェブサイトの内容から考えて、poochandmutt.co.ukのターゲットオーディエンスはどういった人たちか?
そのターゲットオーディエンスから考えて、国内でpoochandmutt.co.ukの主な競合他社はどこか?
poochandmutt.co.ukは、どのようなトーンやメッセージを使ってオーディエンスとつながろうとしているか?
主流のドッグフードに対して、poochandmutt.co.ukは商品をどのように位置付けているか?
poochandmutt.co.ukは商品ページでは、顧客のどのような課題に対応しているか?
ステップ2顧客センチメント分析
次に、サイトの基本的な消費者センチメント(心理)を理解することで、さらなるインサイトを得られる。私はこのステップで、Google Chromeの拡張機能「Instant Data Scraper」を好んで使っている。
Trustpilotなど、サイトについての投稿が多いレビュープラットフォームにアクセスし、「Instant Data Scraper」を使って大量のレビューを収集しよう。その後、Googleスプレッドシートを新規作成し、収集したレビューやコメントを入力する。
そのシートを任意の生成AIに取り込めば、的を絞った質問でレビューやコメントを分析できる。たとえば、次のような質問だ:
poochandmutt.co.ukのレビューで顧客が最も言及している問題は何か?
poochandmutt.co.ukのレビューで最も頻繁に言及されている商品はどれか?
poochandmutt.co.ukのレビューで顧客が最も頻繁に言及している商品の具体的なメリットは?
顧客がpoochandmutt.co.ukから購入する前に言及しているためらいの声や反対の理由はどういうものか?
これらの手順を競合他社のサイトにもくり返すことで、競合他社に関する独自の知見を収集できる。生成AIはハルシネーション(AIが事実と異なる情報を生成する現象)を起こすこともあるため、出力が正確かどうかはしっかり確認してほしい。
方法2Redditでコミュニティのインサイトを見つける
Redditでは、「オーディエンスが何に関心を持っているか」に関するフィルタのかかっていないインサイトを得られる。生成AIを利用すれば、活発に議論が交わされているサブレディット(掲示板セクション)を特定し、人気のディスカッションを把握できる。
「Pooch & Mutt」の事例ではGoogle Geminiを利用した。ターゲットオーディエンスを明確に理解したうえで、次のように質問した:
英国で犬を飼っている人が、犬の栄養を話題にしていそうなサブレディットはどれ? 調査して、実際にあるサブレディット数件とコミュニティの規模を教えて
出力には、サブレディットが大・中・小のコミュニティに分類され、各コミュニティの説明とともに表示された。メンバー数は間違っているが、大まかな推定値としては有益だ。エンゲージメントを高めるには、中小規模のコミュニティに焦点を当てればいい。それから、実際にアクセスしてみて、サブレディットが存在することを確認しよう。
簡単なフォローアップとして、Geminiでは次のように指示することもできる:
これをスプレッドシートにエクスポートして
「Googleスプレッドシートにエクスポート」ボタンを押すとテーブルが生成されるので、Google Workspaceを使っている場合はとても便利だ。
エクスポートで問題が生じることもあるかもしれないが(私の場合、シートのタイトルが「これをスプレッドシートにエクスポートして」になってしまった)、データベースを構築するには簡単な方法だ。シート名を変更し、新しい情報を追加すれば、包括的なリストをすばやく作成できる。

次に、収集したサブレディットからキーワードを抽出する。アミン・フォルタン氏がMozの記事で紹介している方法を使えば、PythonとChatGPTを使ってカスタムキーワードツールを構築できる。
すると、次が表示される:
- キーワードの出現頻度
- よくある質問
- ディスカッションのパターン
ここから得られたインサイトをコンテンツの作成に利用しよう。
専門的なアドバイス: 生成AIでは、ときにアクティブでないコミュニティや無関係なコミュニティが表示されることがあるため、必ず手作業でサブレディットの存在を確認しよう。
方法3ニュース速報や話題のトピックを発見する
Google Geminiを使うとニュース速報や話題のトピックを抽出できるが、その効果は業界によって異なる。テクノロジーや金融のような動きの速い業界には効果的だ。だがペットケアのような動きの遅い業界の場合は、古い結果が表示されることもある。
「Pooch & Mutt」では、「犬の栄養に関する最新のニュースは?」という簡単なプロンプトを使った。Geminiには、アメリカンブリーXLの飼育禁止について表示された。その時点では正確な情報だったが、古いニュースが表示された。あまり動きのない業界ではよくあることなので、必ずGoogleニュースなどの信頼できる情報源で確認しよう。
Geminiにソースリンクが含まれる場合もあるが、正確とは限らない。この機能は有用だが、グーグルがGeminiにリアルタイムニュースを完全に統合するまでは不完全なままだ。結果に基づいて行動を起こす前に、必ず情報を確認してほしい。
方法4Google Discoverのトレンドを追跡して、コンテンツの機会を明らかにする
Google Discoverでは、オーディエンスの関心が高い話題のトピックやコンテンツ形式を把握できる。Google Search ConsoleのDiscoverデータを分析して、コンテンツ戦略に役立つパターンを見つけよう。
まず、Google Search Consoleから12か月分のDiscoverデータをエクスポートする。Discoverでビジビリティが向上したページが表示され、次のようなコンテンツの種類を特定するのに役立つ:
- 季節的なピーク
- くり返し登場するトピック
- 一貫してパフォーマンが高いコンテンツ
Sitebulbなどのクローラを使ってDiscoverのURLからコンテンツを抽出し、さらに詳しく分析する。具体的には、次の要素などだ:
- title要素
- 記事コンテンツ
- 公開日
- メタデータなど
このデータセットが得られたら、次のステップだ。
次は、Googleスプレッドシートで以下のVLOOKUP関数を使い、Google Search Consoleからエクスポートしたデータに追加する。
=VLOOKUP(A2, 'GSC Export'!A:B, 2, FALSE)
上記の式では、「GSC Export」はSearch Consoleからエクスポートしたデータを入れてあるシート名だ。データはA列とB列にあることを前提としている。
これにより統一されたデータセットが作成でき、Discoverの各URLとそのパフォーマンス指標を突き合わせられる。
ステップ1Google Discover GPTでデータを結合する
データセットが得られたら、Google Discover GPTに取り込もう。このGPTでは、次の情報を抽出できる:
- 個々のGoogle Discoverデータから重要なテーマ
- コンテンツの特徴
- パフォーマンスインサイト
抽出したデータから、次のような重要な質問への回答が得られる:
- コンテンツの公開日に基づく季節的なコンテンツのトレンドはあるか?
- Google Discoverでのパフォーマンスが高い特定のコンテンツ形式(ガイド、ハウツー、個人的な話)はあるか?
- クリック率(CTR)の高い記事に基づいて、title要素やh1要素に利用できる知見はあるか?
- パフォーマンスの高いコンテンツの心理やトーンはどのようなものか? エンゲージメントにどう関連しているか?
- エンゲージメントが特に高い記事のフォーマットの特徴は?
- パフォーマンスが高い記事の平均的な長さは?
- パフォーマンスが高い記事について、平均的なh1要素の長さとの相関関係は?
「Pooch & Mutt」の場合は、この分析から、次の形式の記事がリスティクル(箇条書きでまとめられた形式の記事)のパフォーマンスを上回ることがわかった:
- ハウツーガイド
- ステップバイステップのチュートリアル(特に1500ワード以下で、簡潔かつベネフィットドリブンのh1要素と組み合わせた場合に)
専門的なアドバイス: Discoverのインサイトと併せてUser Persona Generatorを使おう。
次の2つを組み合わせる:
- Discoverのインサイト
- AIを利用したUser Persona Generatorのオーディエンスデータ
「URL」または「Googleアナリティクスデータ」を入力して、ユーザーエンゲージメントのパターンに基づいた詳細なペルソナを作成する。そうすれば、実際のオーディエンスの関心に沿ったコンテンツ戦略ができる。
ステップ2エンゲージメントのためにタイトルと見出しを最適化する
AIを使ったSEOツールなら、Discoverで特にパフォーマンスの高いコンテンツに基づいて、「title要素」と「h1要素」を最適化できる。
私が使ったプロンプトは、次のものだ:
Discoverで特にパフォーマンスの高いコンテンツに基づいて、CTRの高い犬の栄養ガイドに使えるtitle要素のバリエーションを10個提案して
提案してくれたタイトル案の中には、次のようなものがあった:
犬の栄養を今日から簡単に改善できる10の方法
(10 Easy Ways to Improve Your Dog’s Nutrition Today)健康意識の高い飼い主のための究極の犬の栄養ガイド
(The Ultimate Dog Nutrition Guide for Health-Conscious Owners)
h1要素は、60字以下で実践的な言葉(「How to」「Best」「Guide to」)が含まれている場合に、一貫してパフォーマンスが高かった。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、「コンテンツ監査とテーマのタグ付け」「コンテンツのギャップ分析」にAIを活用する方法について解説する。(後編は6/23公開予定)
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