2025年のSEO最前線 | 専門家3人が語る注目トピック12選(後編)
この記事では、2025年に重要となるSEO関連トピック12個について、専門家3人の知見を詳しく解説している。
前編・中編と、この記事を含めて扱っているトピックは次のとおりだ:
- SERPにおけるRedditとUGCプラットフォームの台頭
- 企業はどのようなUGCを求めるべきか?
- ヘルプフルコンテンツアップデートのねらいは何だったのか?
- 小さなサイトは、どうすればヘルプフルコンテンツアップデートから回復できるか?
- 検索は、グーグルからTikTokやRedditなどのソーシャルプラットフォームに移っているのか?
- 従来の検索エンジン以外からのトラフィックを獲得するには、どのような戦略を用いるべきか?
- AI検索機能がクリックを奪う
- 2025年、マーケターはどうすればトラフィックソースを多様化できるか?
- ChatGPTのようなAIプラットフォームは、グーグルの検索市場シェアに追いつけるか?
- 大手ブランドを優遇するグーグル
- 寄生SEOについて話そう
- コンテンツアトリビューションはなぜこれほど難しいのか?
後編となる今回は、「アルゴリズムの変更」「コンテンツアトリビューション」について、専門家らがどう考えているかを見てみよう。
アルゴリズムの変更
トピック10大手ブランドを優遇するグーグル
大手ブランドを優遇するグーグルの姿勢に対し、2024年にはSEO担当者が大きな不満を抱えていた。トム、君はグーグルが2025年にアルゴリズムを調整し、「トピックとの関連性が高いサイトが表示される機会が増える」と予想していた(リンク先は日本語記事)。なぜ変化すると思うのか?

トム・カッパー:
これは僕にとっていちばん自信のない予測だが、そう予想する理由を説明しよう。
グーグルは長年、「ブランド力」と「トピックとの関連性」の間でバランスを取ってきた。その好例として、Dotdash MeredithはAbout.comをより小規模でニッチに特化したサイトに分割し、トラフィックを増大させた。
しかし2024年には、その逆の現象が見られた。グーグルはニッチなオーソリティを評価するのではなく、ブランドが強力であるという理由で、大手ブランドをまったく関連性のないクエリに送り込むようになった。
これは大きな反発を受けた。グーグルはきまりの悪い思いをすることを嫌うので、何か評判を落とすようなことがあると修正する。Bingに先を越されて、ばつの悪い思いをしたグーグルが急いで「AIによる概要」を導入したのは、それが理由だ。
したがって、僕の予想では、グーグルは2025年に方針を若干後退させるだろう。ブランドオーソリティを放棄することはないが、トピックとの関連性が高いサイトが表示されるようになるだろう。

ドクター・ピート・マイヤーズ:
僕もトムと同じ意見だ。グーグルは、「大手ブランドがそのオーソリティを不当に利用することを許す」という大きな過ちを犯した。ニュースサイトは、「スポーツギャンブル」や「クーポン」など、まったく関連性のないアフィリエイトのサブディレクトリを立ち上げていた。それは純粋に利益追求のためであり、グーグルはあまりに長期にわたってそれを見逃してきた。
しかし、グーグルが軌道修正をやり過ぎると、サイトの主題と少しでも異なるすべてのコンテンツにペナルティを科すようになり、正当なビジネスに悪影響を及ぼすおそれがある。たとえば、「金融サイトがキャリアについてアドバイスする記事を書いたら、突然ペナルティが科された」という事態になれば、それは巻き添え被害になる。
グーグルは、正当なコンテンツの拡大を抑制することなく、悪用を罰する妥協点を見出す必要がある。
トピック11寄生SEOについて話そう
大手メディアサイトは、手っ取り早く検索順位を上げるために自社のドメイン名を第三者に貸し出す動きをしていた。大手企業が莫大な利益を上げる一方で、小さなサイトは苦しむことになった。まるで不正行為のようにも感じられる。グーグルはようやく行動を起こしたが、あまりにも時間がかかりすぎた。
- これらの企業が別の抜け穴を見つけないように、どのような対策が取られているか?
- グーグルは本当に主導権を取り戻したのか、それとも依然として大手企業が力を握っているのか?
参考までに、サイトの評価の不正利用に関する2024年のタイムラインを、次に示す。

ドクター・ピート・マイヤーズ:
はっきり言って、グーグルには取り締まる以外に選択肢はなかった。これらの大手メディア企業は、ルールを曲げるだけでなく、完全にルールを無視していた。ブランド力の高いドメイン名のサイト内にサブディレクトリを作り、第三者がどんなコンテンツでも公開できるようにして、検索順位のためにドメインオーソリティを利用させていたのだから。
これらは7桁、8桁、9桁の規模の取引だった。それほどの利益を上げていたのだ。グーグルが取り締まりを強化したが、彼らは別の抜け穴を見つけるだろう。そうしない選択肢はないほど、莫大な金額が絡んでいる。
とはいえ、グーグルの対応は積極的だった。疑わしいサブディレクトリのインデックス登録を解除するだけでなく、ドメイン名全体に手動でペナルティを科した。これは、「企業がコンテンツをサイトの別の場所に移すだけで検索順位を維持できると思ってはいけない」という強いメッセージを送ることになる。
大手企業は黙ってグーグルの言うとおりにするだろうか? 間違いなく、別の手法で再度トライするだろう。アフィリエイトSEOにはあまりにも多くの金額がかかっているため、そうしないわけにはいかないのだ。
- グーグルによるサイト評価の不正利用に関するアップデートを受けてリスクにさらされているウェブサイトについて、ドクター・ピートが解説
- ヘルプフルコンテンツアップデートまたはコアアップデートの影響を受けた場合の対処法について、リリー・レイ氏が解説(リンク先は日本語記事)
コンテンツアトリビューション
トピック12コンテンツアトリビューションはなぜこれほど難しいのか?
CMIによる2024年のコンテンツマーケティングトレンドによると、アトリビューションはマーケターにとって最大の課題だという。B2Bマーケターの56%が、コンテンツのROI(投資対効果)を証明することに苦労している。コンテンツアトリビューションはなぜこれほど厄介なのか?

アマンダ・ナティビダッド氏:
正直に言わせてもらえば、アトリビューションがこれほど難しい理由の1つは、これを理解していない経営陣がいるからだ。もちろん全員ではないが、一般に、コンテンツの仕組みについて誤解がある。
私は経営陣との会話で、「このブログ記事の価値を示してほしい」と言われて気まずい思いをしたことがある。「は?」と思ってしまう。というのも、常識として次のことが言えるからだ:
すべての部門について、そうするよう求めるわけではない
カスタマーサービスに対して、すべての電話のROIを証明するよう求めることはない
財務チームに対して、すべてのスプレッドシートの収益への影響を示すよう求めることはない
しかし、どういうわけかコンテンツには、このようにすべてのコンテンツが直接的で測定可能な利益をもたらすことが期待されるという非現実的な基準が設けられている。
これは、いくつかの体系的な問題に起因していると思う。
アトリビューションへの執着
まず、デジタルマーケティングのせいで、私たちはクリックに至るまでのすべてを追跡することに執着してしまう。「このブログ記事からこれだけの利益が生み出された」と言える完璧なアトリビューションを求め、それが可能だと思い込んでいるが、それは間違いだ。
社内政治
次に、アトリビューションは社内政治と結び付けられることが多い。「デマンドジェネレーション」「ペイドメディア」などの他のチームも同様の指標を使っているため、コンバージョンが発生すると、「誰の手柄なのか」をめぐって争いが起こる。
デマンドジェネレーションチームは、次のように言うかもしれない。
そのリードは私たちのランディングページから来た
しかし彼らは、顧客が最初にその会社を見つけたのが「ブログ記事」「ソーシャルコンテンツ」だったという事実を無視して、そう主張しているのかもしれない。
バイヤージャーニーにおいてコンテンツは重要な役割を果たしているにもかかわらず、このようにコンテンツが適切に評価されない状況が生じる。
不正確なトラッキング
それから、不正確なトラッキングの問題がある。ダークソーシャルは大きな問題だ。というのも、次のソースから来るトラフィックの多くは、Googleアナリティクスの「直接」トラフィックにまとめられてしまうからだ:
- FacebookのDM
- Instagramのメッセージ
- SlackやWhatsAppなど
そのためコンテンツがコンバージョンを促している場合でも、適切にトラッキングされない可能性がある。
他のやり方で何ができるか?
ROIにこだわるのではなく、話題を投資価値(VOI)にシフトさせなければならない。さまざまなビジネス機能にわたって、コンテンツはどのような価値を提供しているか。「販売」「顧客サービス」「ブランド認知」をどのようにサポートしているだろうか。
たとえば、コンテンツの役割はリードジェネレーションだけではない。次のようなことも可能だ:
顧客が製品からより多くの価値を得られるよう支援し、解約を減らす。
オブジェクション(疑問や反対意見)に回答し、コンバージョン率を高めて、販売をサポートする。
よくある質問にブログ記事やヘルプ文書で対応することで、顧客サービスにかかる負担を軽減する。
このようなコンテンツ評価の枠組みをうまく使うことで、「より広範なビジネス目標にコンテンツがどう貢献できるか」をわかりやすくできる。

ドクター・ピート・マイヤーズ:
今のアマンダのコメントに付け加えたい。数年前、Mozでは、ユーザーに無料トライアルに登録してもらうプロセスの接点は1つではないことを発見した。3つの接点が必要だったのだ。
獲得できたコンバージョンのほとんどは、複数のコンテンツを閲覧したユーザーからだった。これらのユーザーは通常、登録する前にブログ記事を読んだり、ビギナーズガイドを確認したり、ホワイトボード・フライデーを視聴したりしていた可能性がある。
そのことに気づいてからは、コンテンツをワンステップのコンバージョンツールとして扱うことはやめた。自分のビジネスを知っているわけでも信頼しているわけではないユーザーに対して、ランディングページに直接誘導する広告を配信しても効果はない。しかし、コンテンツがマルチタッチジャーニーの一環であれば、信頼を築いてコンバージョンに誘導できる。
問題は、多くのマーケターがファネルの下部におけるコンバージョン(リンク先は日本語記事)にばかり注目してしまっていて、「顧客をファネル下部に導くまでのジャーニー」を無視していることだ。次のようなページにたどり着いたとしても、コンバージョン率ははるかに低くなるだろう:
- それまで見たこともないページ
- ブランドへの信頼がないページ
- 誘導してくれるコンテンツがないページ
アトリビューションでは、こうしたジャーニーを反映させる必要がある。「ブログ記事」や「X」への投稿だけに価値を見出してはならない。代わりに、さまざまなコンテンツがどのように連携することで、エンゲージしている顧客、コンバージョンの用意がある顧客のパイプラインが生み出されているかを認識しよう。
結論
2025年に検索で勝つには、オムニチャネルのコンテンツ戦略が必要となる。次のポイントを押さえておこう。
AI検索はグーグルに代わるものではなく、それを補完するものだ。
もはや、唯一最高のSEO戦術などない。代わりに、ブランドオーソリティと接点が複数あるマルチタッチポイントのコンテンツを優先する施策を組み合わせる必要がある。
今後、コンテンツ戦略はオムニチャネルにするべきだ。AIが概要で表示できないようなコンテンツの作成を優先し、オーディエンスがまた見たいと思ってくり返し戻ってくるような価値の高いコンテンツを作成しよう。
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