コンテンツマーケはBOFUから始める。「BOFU」がわからない人は、まずこの記事を読むべし(前編)
コンテンツマーケティングで、「デモ」「トライアル」「登録」の増加を後押ししたい――それならば、まず「BOFU」コンテンツから始めよう。
「BOFU」とは、潜在顧客のコンバージョンファネル(態度変容・行動の段階)の下部を指す。対して「TOFU」は購買ファネルの上部を、「MOFU」はその間を指す。マーケティング目的のコンテンツは何らかの態度変容や行動がゴールであるはずだ。ただ、対象の潜在顧客が購買ファネルのどの段階にいるかによって「どんなコンテンツ・チャネル・訴求が響くのか」は異なるし、コンテンツに投じた費用や時間の短期・中長期のリターンも、どの層をターゲットとするかによって変わってくる。
ぼくがマーケティングを支援した企業のなかに、CRMプラットフォームを手がけるPipedriveがある。Pipedriveは、ファネルの上部にあたるトップオブファネル(TOFU)コンテンツとファネルの中間にあたるミドルオブファネル(MOFU)コンテンツですでに定評があり、販売の分野で認知度と権威を築いていた。しかし、デジタルマーケティングエージェンシーGrizzle(ぼくの会社だ)の支援を受け、ファネルの底にあたるボトムオブファネル(BOFU)コンテンツに注力して新たな成長機会を開拓するという、よりバランスの取れた戦略を採用した。
その結果、次の成果をたたき出した:
- 検索のビジビリティが200%向上
- 新規登録が33%増加
このケーススタディでは、次のことを解説する:
B2B SaaSで特に重要な「デモ」「トライアル」「登録」の増加を後押しする実証済みのオーガニックな成長手法
コンテンツ制作の規模を拡大してこれらの結果を増幅させる方法
なぜBOFUコンテンツから始めるのか
トラフィックや教育コンテンツは認知度を高めるものであり、長期的な成長に欠かせない。しかし、Pipedriveの差し迫った目的は、もう少し短期的な「デモ」「トライアル」「ユーザー登録」を増やすことだった。
それを達成するために、僕はPipedriveがコンバージョンファネルの底(ボトム)にいる購買意欲の高い買い手に焦点を移して訴求できるよう支援した。BOFUに位置するこれらの買い手は、次のような段階の人たちであるはずだ:
- すでにCRMが必要であることを自覚している
- 自らの選択肢も把握している
- 導入する準備ができている
BOFUコンテンツの目的は、次のとおりだ:
- 信頼を築く
- デモの予約やトライアルへの登録など、市場内の買い手に行動を起こすよう促す
一方、TOFUコンテンツは登録には寄与するが、その効果は漸進的だ。そのため、TOFUコンテンツは一般に直接的な(つまりファーストタッチの)アトリビューション率やコンバージョン率が低い(このトピックについては、このCognismのケーススタディで詳しく説明している)。
僕たちが導入したBOFUで使えるコンテンツ形式の一部を次に挙げる:
比較ページ ―― ツールや製品を比較することで、ユーザーが情報に基づいて判断できるようにする
例「PipedriveとHubSpotの比較」代替製品ページ ―― さまざまな選択肢を検討しているユーザーに、人気のツールの代替製品を提案する
例「Salesforceの代替製品」製品リスト記事 ―― カテゴリ内の最高のツールを強調してユーザーを誘導する
例「ビジネス成長に最適な15のCRMツール」顧客の声 ―― Pipedriveが顧客にどのように役立ったかの実例を紹介する
例「PipedriveがTruescopeのチーム規模を3倍に拡大するのに役立った事例」ジョブ理論(JTBD)に基づくコンテンツ ―― 特定の問題を解決するうえで、君の製品を使用した場合と使用しない場合の方法をユーザーに伝える
例「販売パイプラインの構築」
これらの形式は、否定的な意見に対応し、信頼を確立し、Pipedriveがニーズに最適な選択である理由をユーザーに示すのに役立った。
Pipedriveのブログには、「営業戦略を効率化するためのおすすめセールスプランニングソフト7選」というという記事がある。これは販売計画ソフトウェアの上位製品を比較する内容だ。
計画ツールを探している営業リーダーは、さまざまなプラットフォームの機能や性能をすばやく比較し、Pipedriveが最適な選択肢だとすぐに判断できる。このBOFU記事は、Pipedriveの上位のコンテンツと、オーガニックトラフィックをトライアルユーザーに転換するコンテンツのギャップを埋めるものとなった。
BOFUコンテンツを活用してオーガニック成長を促進する動きをGrizzleはどう進めたか
ぼくたちGrizzleは、Pipedriveのオーガニック成長を促進するのに、どのようにBOFUコンテンツを利用し、どのように施策を進めたのか。ざっとまとめると、次のようなものだ:
この5ステップそれぞれを見ていこう。
1. BOFUオーディエンスが何を求めているかを理解する
コンテンツによって見込み客にコンバージョンさせるには、自分の理想的な顧客像(ICP: Ideal Customer Profile)が何を達成したいと考えているかを理解することが不可欠だ。これにより、次のことが可能になる:
- 関連性が高く、購買意欲の高い検索キーワードに対して結果の上位に表示されるコンテンツを作成する
- そのコンテンツによって、買い手の課題や優先事項に対応し、信頼を築き、行動を促す
このアプローチが、Pipedriveの検索ビジビリティとユーザー登録数を増やすのに役立った。
Pipedriveは、特有のニーズを持つさまざまな業界にサービスを提供しているため、僕たちは異なるオーディエンスごとに細かく対象を絞り込んだコンテンツを作成していった。
たとえば、次のようなセグメントのニーズがある:
CRMを検討している不動産業者は、買い手と売り手のデータを整理するためのソリューションを必要としている。
僕たちは、このニーズに直接訴求する不動産業向けCRMのランディングページを作成した。このページには、「買い手と売り手のデータ入力」に関するセクションを目立つように設置している
同様に、製造業ではサプライチェーンの効率性が優先される。そのため、僕たちは「メーカー向けCRM」のような高い購買意欲を示すキーワードをターゲットとした製造業向けCRMページを作成した。そのページでは、「製造業向けCRMソフトウェアがサプライチェーンの管理にどう役立つか」を説明するセクションを設けている。
こうしたコンテンツは収益性の課題に対応するもので、市場の買い手を引き付ける。
選択肢を調査する場合、人は通常「[活動または業界]向けCRM」や「[競合ツール]の代替」のように、製品に基づくキーワードを使う。
僕たちは他にも、以下のような高い購買意欲を示すキーワード類をターゲットとした:
調査に基づくキーワード ―― 購買決定の指針となるキーワード
例「CRM評価チェックリスト」ジョブ理論(JTBD)に基づくキーワード ―― 特定の問題を解決したり、タスクを完了させる方法を学んだりするためのキーワード
例「メールマーケティングキャンペーンを自動化する方法」
JTBDコンテンツを作成するにあたって、僕たちは、次の2種類のバランスを取ったコンテンツとすることに重点を置いた:
- 有益なDIYソリューションを提示すること(Pipedrive以外の内容)
- Pipedriveの機能によってプロセスを簡素化できる点を示すこと
これによって信頼を築き、潜在顧客にプラットフォームの価値を示した。
2. コンテンツの形式をすべての購買段階に合わせる
僕たちは、コンテンツの形式を検索意図に合わせることで、ファネルの上部、中間、下位の各段階にいるすべての買い手を引き付けようとした。グーグルは特定のクエリに対してユーザーが何を求めているかを把握しているため、類似のコンテンツは1ページ目に表示されることが多い。
その中でひときわ目立つようにするには、競合他社が見落としている新たな洞察をもたらす必要がある。こうした「情報の獲得」によってSEOを改善し、ユーザーにより多くの価値をもたらせる。
異なる段階の買い手に合わせてコンテンツ形式を調整する方法は、次に示すとおりだ。
TOFU向けコンテンツ形式
TOFU向けコンテンツ(コンバージョンファネル上部の人向け)は、より広範なオーディエンスを引き付けて情報を提供するのに役立つ内容とする。この段階では、潜在顧客は自らの問題に気づきつつあるため、買い手の関心を引くことが目標となる。
TOFU向けコンテンツには、以下のようなものがある:
教育的なブログ記事で、戦略的または戦術的な指針を提供する
例「Pipedriveのクリエイティブなコンテンツマーケティングのビギナーズガイド」インフォグラフィックや動画で、複雑な情報をわかりやすく説明する
例「Pipedriveのメール配信のインフォグラフィック: その仕組みと失敗する理由」リスト記事で、わかりやすく、いつでも参照できるようにする
例「Pipedriveの営業チームが追跡すべき最も重要な20のKPI」ストーリーテリングのコンテンツで、ブランドをオピニオンリーダーとして位置付ける
例「Pipedriveの女性の営業: 陳腐な考えを今こそ打ち破る」独自の研究やデータで、よそでは得られない知見をもたらす
例「Pipedriveの販売とマーケティングの現状」
MOFU向けコンテンツ形式
MOFU向けコンテンツ(コンバージョンファネル中間の人向け)は、見込み客が選択肢を評価し、自らの課題について理解を深められるよう促すものだ。
MOFU向けコンテンツの例としては、以下のようなものがある:
記事は、読み手を検討段階に導く
例「PipedriveのCRM評価: 完璧なシステムの選び方」(Mozだとこのセクション)電子書籍は、業界に関する詳細な知見をもたらす
例「Pipedriveのコールセンター管理ガイド」ウェブセミナーは、特定のトピックについてエンゲージメントを促す
例「Pipedriveのセールスエンジンを最大限に活用する」(Mozだとこのセクション)ケーススタディ(事例)は、関連する課題を君の製品がどう解決できるかを説明する
例「PipedriveのCRMの7つの事例とユースケースで、よりよいビジネスを構築する」(Mozだとこのセクション)
BOFU向けコンテンツ形式
BOFU向けコンテンツ(コンバージョンファネル最終段階の人向け)の対象は、意思決定を下す準備ができている見込み客だ。否定的な意見を乗り越え、君のソリューションの価値を示し、見込み客を顧客に転換できるよう支援することを目的としている。
BOFU向けコンテンツの例としては、以下のようなものがある:
製品比較で、競合製品と自社製品を比較する
例「HubSpot、Salesforce、Pipedriveの比較: 3つのCRMソリューションを比較する」成功事例で、企業の目標達成に君の製品がどう役立つかを示す
例「Pipedriveを利用したネットワークで業務を効率化し、効率を50%向上」評価チェックリストで、買い手の意思決定プロセスを導く
例「CRMチェックリストの作成: 包括的ガイド」
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、GrizzleがBOFUコンテンツを利用してPipedriveのオーガニック成長を促進した方法のうち残る3つを解説する:
- TOFUコンテンツを拡充してブランド認知度を高める
- コンテンツ監査によってさらに改善できる部分を見つける
- コンテンツ更新プロセスを策定する
(後編は12/23公開予定)
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