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コンバージョンを増やす「BOFUコンテンツ」の効果をさらに強化する3つのステップ(後編)

BOFUコンテンツを利用してオーガニック成長を促進した「ブランド認知」「コンテンツ監査」「コンテンツ更新プロセス」について解説する
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

BOFUコンテンツを利用してBtoB Saas企業であるPipedriveのオーガニック成長を促進した方法を解説するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。後編となる今回は、残る3つを解説する:

  • TOFUコンテンツを拡充してブランド認知度を高める
  • コンテンツ監査によってさらに改善できる部分を見つける
  • コンテンツ更新プロセスを策定する

まず前編を読んでおく

念のために、「TOFU」「MOFU」「BOFU」について改めて解説しておこう。

「BOFU」とは、潜在顧客のコンバージョンファネル(態度変容・行動の段階)の下部を指す。対して「TOFU」は購買ファネルの上部を、「MOFU」はその間を指す。マーケティング目的のコンテンツは何らかの態度変容や行動がゴールであるはずだ。ただ、対象の潜在顧客が購買ファネルのどの段階にいるかによって「どんなコンテンツ・チャネル・訴求が響くのか」は異なるし、コンテンツに投じた費用や時間の短期・中長期のリターンも、どの層をターゲットとするかによって変わってくる。

(再掲)

また、前編から始まった、筆者の経営するデジタルマーケティングエージェンシーGrizzleが支援したCRMプラットフォーム企業Pipedriveのコンテンツマーケティング全体像も改めて掲載しておく。

■BOFUコンテンツを活用してオーガニック成長を促進する動きをGrizzleはどう進めたか
1. BOFUオーディエンスが何を求めているかを理解する
2. コンテンツ形式をすべての購買段階に合わせる
3. TOFUコンテンツを拡充してブランド認知度を高める
4. コンテンツ監査によってさらに改善できる部分を見つける
5. コンテンツ更新プロセスを策定する
(再掲)

BOFUコンテンツを活用してオーガニック成長を促進する動きをGrizzleはどう進めたか(続き)

3. TOFUコンテンツを拡充してブランド認知度を高める

まずBOFUコンテンツを優先したが、TOFUコンテンツも重要だ。BOFUコンテンツTOFUコンテンツでは、対象とするコンバージョンファネルの段階が異なる。ということは、それぞれコンテンツを通じて得たい成果も異なり、どちらも不可欠だ。

  • BOFUコンテンツは、登録やトライアルを促す

  • TOFUコンテンツは、ブランド認知度の向上、見込み客の獲得、購買ジャーニーへの誘導を行う

SERPに表示される「一般的な記事」とは一線を画す優れたTOFUコンテンツの要素とは、次のようなものだ:

  1. 実例を出す
  2. 製品主導のコンテンツを作成する
  3. コンテンツのデザインを実装する
  4. コンテンツ作成のベストプラクティスを適用する
  5. 正確性とデータハイジーン(データ衛生)を確保する

それぞれについて説明していこう。

3-1. 実例を出す

例を挙げることで、抽象的なアイデアを関連性の高い具体的なものにできる。君の製品やサービスがどのように問題を解決できるのかを理解してもらうのに役立つ。

たとえば、Pipedriveのセールスピッチガイドでは、実例を使って戦術を説明し、ソーシャルプルーフ(社会的証明)を構築し、アドバイスをより実務的なものにしている。

たとえばPipedriveのセールスピッチガイドでは、マットレス会社Casperの事例を紹介している。次のような感じだ:

いくらかユーモアを加える

ユーモアを使うのは難しい場合もあるが、自分の個性を発揮することを恐れてはいけない。ブランドと合致し、バイヤーペルソナに好意的に受け入れられれば、ユーモアは見込み客とつながるための効果的な方法になる。ユーモアによって顧客との関係はより自然で友好的なものになり、ひいては顧客からの信頼をさらに高められる。

たとえば、ミームやダジャレ、文化的な共通認識を盛り込めば、大きな効果をもたらす。Casperはブロードウェイの新店舗を宣伝するため、劇場のポスターに似せてダジャレやジョークを効かせたレビューを盛り込んだポスターを作成して、自社のマットレスの快適さを強調した。これは、宣伝文句やマーケティング戦略をさらにカスタマイズすることにもなった。

3-2. 製品主導のコンテンツを作成する

製品主導のコンテンツは読み手に対し、君の製品を利用してジョブ理論(JTBD)を達成する方法を示すものだ。

たとえば、Pipedriveのセールステクニックガイドでは、同社の機能を利用してアドバイスを実行する方法を説明しており、プラットフォーム内の自動化やワークフローの設定について、ステップごとのガイダンスを提供している。

次のような内容を、実際の製品画面を示しながら解説している。

このソフトウェアは、新規見込み客にパーソナライズしたメールを送信したり、取引の更新時に同僚に通知したりするなど、カスタムアクションをトリガーできます。

テンプレートを使えば、数秒で便利な自動化を設定できるため、プロセスをさらに効率化できます。

3-3. コンテンツのデザインを実装する

カスタムグラフィック、CSSスタイル設定、動画を利用すると、コンテンツをより理解しやすくできる。見出しや小見出しを使ってうまく階層化すれば、ストーリーの流れも改善できる。

Pipedriveのコンテンツでは、次のようなインタラクティブなコンテンツ要素を使うことで、長文コンテンツを区切り、読みやすさを向上させている:

  • 推奨記事のリンク
  • FAQ(よくある質問とその回答)
  • 引用

平均注文額についてのTOFU記事にある表要素の例を次に示す。

3-4. コンテンツ作成のベストプラクティスを適用する

簡潔で明瞭な文章は、読み手を飽きさせない。専門用語や複雑な文章は避けて、読みやすさを保とう。

GrammarlyHemingwayなどのツールは、オーディエンスの読解レベルに合った読みやすさのスコアを維持するのに役立つ。Pipedriveでは、より幅広いオーディエンスに共感してもらえるコンテンツにするために、グレード8~10を目指した。

※Web担編注 残念ながらGrammarlyもHemingwayも、日本語には対応していないようだ。
このHemingwayエディターで設定している「グレード6」は、さらに読みやすい簡潔な文章とすることを目指すものだ

3-5. 正確性とデータハイジーン(データ衛生)を確保する

正確な情報は信頼と信用を高める。Pipedriveのコンテンツガイドラインでは、次のことを義務づけている:

  • 調査は3年以上前のものであってはならない
  • 信頼できるソースを参照すること
  • 正確に引用すること

また、独自のデータも使用して、被リンクの獲得やオーソリティの向上を図りつつ、独自の知見をもたらしている(たとえば年次レポートの「販売とマーケティングの現状」)。

こうした独自データは、もちろんコンテンツから参照し活用している。たとえば、フォローアップメールの書き方とテンプレートを示した記事では、「営業がどんな作業にどれぐらい時間を使っているか」の調査データを示しながら、なぜフォローアップメールが必要かを解説している。

4. コンテンツ監査によってさらに改善できる部分を見つける

コンテンツ監査では、コンテンツジャーニーのあらゆる段階を測定し、トラフィックやコンバージョンを改善または維持するための問題やさらなる可能性を明らかにする。

僕たちのコンテンツ監査プロセスの手順は、次のとおりだ:

  1. パフォーマンスデータを収集する
  2. パフォーマンスデータを整理する
  3. 分析と診断
  4. リソースの優先順位付けと計画

それぞれ解説していこう。

4-1. パフォーマンスデータを収集する

Moz、Googleアナリティクス、Google Search Consoleなどのさまざまなソースからパフォーマンスデータを収集しよう。

このデータで測定できるのは以下のようなものだ:

Mozのようなツールが一連のキーワードや個々の検索順位を追跡するのに役立つのに対し、Googleアナリティクスでは、エンゲージメント、ページビュー、コンバージョン率に関する知見が得られる。

4-2. パフォーマンスデータを整理する

データをスプレッドシートで整理し、形式(ブログ記事やランディングページ)、パフォーマンス指標、公開日ごとに分類しよう。

大量のページに大量のデータが並ぶことになるが、スプレッドシートのセルを「赤・黄・緑」で分類する「RAG(red, amber, green)システム」を適用すれば、要改善点をすぐに見つけられる。「RAGシステム」といっても難しいものではない。各データに基準値を定め、条件付き書式などの機能を使って各セルに次の色が自動的につくようにするだけだ:

  • ―― 大幅な作業が必要なコンテンツ
  • ―― リスクがあるか、更新が必要なコンテンツ
  • ―― 健全でパフォーマンスの高いコンテンツ

平均ページ滞在時間をRAGシステムで色分けしたデータのスプレッドシートの例を次に示しておく(データはダミーだ)。

4-3. 分析と診断

トラフィックとキーワードのパフォーマンスのパターンを分析し、古くなったコンテンツ、パフォーマンスの低いページ、または新しいキーワードを利用すればより多くの見込み客を獲得できそうな領域を特定しよう。

たとえば、Pipedriveは古くなった販売管理ソフトウェアのページを刷新したことで、再び上位に表示されるようになり、より多くの見込み客を獲得できるようになった。

Pipedriveの販売管理ソフトウェアのランディングページ(現在はさらに改善している)

4-4. リソースの優先順位付けと計画

調査結果に基づいて、更新、書き直し、削除するコンテンツの優先順位を決めよう。簡単な編集で済む場合もあれば、現在の検索意図やブランドの目的に合わせて全面的に見直す必要が出てくる場合もある。

たとえば、僕たちはPipedriveの販売カレンダー記事を新しいイベント情報とトーンで更新し、ユーザー体験とSERPの表示順位を改善した。

定期的な更新が必要な販売イベントに関するPipedriveの記事

5. コンテンツ更新プロセスを策定する

コンテンツの更新は、PipedriveのSEO戦略の大部分を占める。

コンテンツを最適化する方法はたくさんあるが、Grizzleで最も効果的だったプロセスは次のようなものだ:

  1. データ主導のツールを使用して関連性を改善し、重要なテーマを盛り込む
  2. コンテンツの質と価値を高めながら情報を得る
  3. 最適化の取り組みの効果を追跡し、測定する

それぞれ解説していこう。

5-1. データ主導のツールを使用して関連性を改善し、重要なテーマを盛り込む

僕は、特定のトピックに対してグーグルがどのテーマを優先しているかがわかるツールを利用している(MozClearscopeなど)。これらのツールは、「何が足りないか」「コンテンツの関連性を維持するにはどのような更新が必要か」を把握するのに役立つ。

たとえば、2017年に作った販売管理システムのリスト記事を2024年に更新するなら、こうしたツールを使えば「人工知能(AI)を使った販売管理システムに検索意図がシフトしていること」がデータからわかるかもしれない。2017年の時点では考えにくかったことだ。そこで新しいセクションを組み込み、現在の状況に合わせて残りのコンテンツを更新できる。

5-2. コンテンツの質と価値を高めながら情報を得る

すべてのコンテンツに同じレベルの注意を向ける必要はないため、僕は次のような体制で優先順位を付けている:

  • 編集 ―― 誤字脱字の修正、リンクの追加、読みやすさの向上などの簡単な修正。
  • 更新 ―― セクションの追加、統計情報の更新、新しいキーワードに合わせた最適化などの大幅な変更。
  • 書き直し ―― SEOのベストプラクティスに合わせた、コンテンツの全面的な見直し。

5-3. 最適化の取り組みの効果を追跡し、測定する

僕は更新のたびに、必ずパフォーマンスを追跡している:

  • トラフィックとエンゲージメント ―― ページビュー、直帰率、セッション継続時間をモニタリングする。

  • キーワードランキング ―― ターゲットキーワードのランキングが改善したかどうかを確認する。

  • コンバージョン率 ―― 更新したコンテンツが、登録やダウンロードなどのコンバージョン増加に寄与しているかどうかを評価する。

まとめ: BOFUコンテンツでSaaSの成長を促進

BOFUコンテンツを最適化して優先順位を付けることで、SEO戦略を単なるトラフィックの獲得から、ビジネスの中心的目標に直接貢献するものに転換できる。

この記事で紹介した方法は機能することが実証されており、それを示すのがPipedriveの目覚ましい成果だ。検索ビジビリティは200%増加し、ユーザー登録は33%増加した。

Pipedriveの成功に続くには、包括的なコンテンツ監査から始め、データ主導の知見を活用して既存のコンテンツを更新し、品質に重点を置いて制作の取り組みを拡張しよう。

用語集
CRM / CSS / Googleアナリティクス / SEO / SERP / SaaS / インバウンドリンク / コンテンツマーケティング / コンバージョン / コンバージョン率 / セッション / ダウンロード / ファネル / ペルソナ / ページビュー / ランディングページ / リンク / 直帰率 / 被リンク
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