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Webサイト外でもできるSEO施策とは ―― マーケティングエコシステムがSEOに与える影響

普段ウェブサイトにばかり注目して考えているデジタル空間から少し離れ、「サードパーティ」「ソーシャル」「現実世界」などの要素を見つめれば、違ったSEOが見えてくる
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

今回は、マーケティングエコシステムと、それがSEOに与える影響について見ていこう。

「マーケティングエコシステム」とは、ウェブサイト、サードパーティ、ソーシャル、そして現実世界のことだ(少なくとも、ここで説明するマーケティングエコシステムはそういうことを指す)。普段ウェブサイトにばかり注目して考えているデジタル空間から、少し離れてみることになる。ウェブサイトのことばかり見るのではなく、こうした他の要素について考えてみよう。

マーケティングエコシステムがSEOに与える影響
■エコシステム
●ウェブサイト
ユーザー体験 コンテンツ 構造化データ
●サードパーティ
パートナーシップ フジツボ式SEO ディレクトリ
●ソーシャル
セマンティックシグナル オーソリティ ユーザー生成コンテンツ
●現実世界
顧客体験 コミュニティ スポンサーシップ
■適応するべき時
検索エンジンが、LLMの利用を進めている
検索ユーザーも、検索にLLMを利用している
LLMが好むもの(情報)をエコシステムに取り込む
ウェブサイトだけではダメ
■真にローカルになる機会を見つける
・コミュニティ
・信頼性
・ブランドストーリー
・コネクション
結果 ナイキのグラフィティキャンペーン
 22%↑ トラフィック
 32%↑ 売り上げ
■ローカルの例
Allagash Brewing
再利用の難しい資材のリサイクルを他のローカルビジネスと共同で推進
「best Maine breweries」の検索結果で上位10件のうち7件を占める

適応するべき時が来た

なぜ私がこれらの要素に焦点を当てるのか、不思議に思われるかもしれない。しかし、検索で非常に多くの変化が起きていることもふまえると、私たちは検索の変化に適応し、やり方をいくつか変えるべき時に来ている。

まず、検索エンジンがLLM(大規模言語モデル)を使っていることはわかっている。また、検索ユーザーも検索ツールとしてLLMや生成人工知能(AI)を使っていることもわかっている(必ずしも検索のためだけではないとしても)。

そのため私たちは、LLMが好むもの、つまりLLMが探しているものを確実に提供することで、「ChatGPT」「Gemini」「Bing」など、どのサービスであれユーザーが入力する質問や話題に対し、最適な結果として選んでもらえるようにする必要がある。

ウェブサイトの枠を超える

とはいえ、ウェブサイトが不要だと言いたいわけではない。ウェブサイトも「LLMが好むもの、LLMが探しているもの」の1つだ。

私たちはすでにウェブサイトについて多くのことを知っている。このホワイトボード・フライデーを見ている人なら、ウェブサイトやSEO、そしてそれらがどのように作用し合っているか、多くの時間をかけて学んでいるはずだが。

しかし、「ソーシャル」「サードパーティ」「現実世界」などについては、それほど時間をかけていないだろう。これらはSEOに影響を与え得るものであり、マーケティングエコシステムの各要素や、それらがLLMやAIとどう関わってくるかにも関連している。

ソーシャル

ソーシャルに関して、「セマンティックシグナル」がある。これはつまり、

  • 君のビジネスについて人々が抱く感情
  • さまざまなエンティティやキーワードの関係

によって、君のビジネスについて、

  • どういうものなのか
  • 何をしているのか
  • 何に関心があるのか
  • 人々にどう思われているか

といった情報を、LLMに要約した情報を提供しているようなものだ。

「オーソリティ」については、君のビジネスがオンライン上でたくさんシェアされていれば、君は一定程度のオーソリティを得ている。なぜなら、それは君のビジネスが正当な事業であり、人々が実際に利用している場所だと言われているようなものだからだ。

その場合、LLMにより多くの情報を提供することになる。これは主に、LLMがデータや情報を得るために多くのソーシャルメディアサイトを参照していること、特にRedditのようなフォーラムは非常に重要であることがわかっているためだ。

そこで最後のポイントとなるのが、ユーザー生成コンテンツ(UGC)だ。

LLMはRedditのようなサイトを使って、より人間らしくなれるように、私たち人間を少しでも深く理解できるように学習している。となると、これらのプラットフォームで、

  • 人々に自分について話してもらうこと
  • 話す内容が肯定的な感情であること
  • 君のサービスに関係する話題を話してもらうこと
  • 問題解決につながることがわかるように話してもらうこと

を進めれば、感情やセマンティクスによってLLMが君のサイトや君がサービスを提供しようとしている人を理解するのに役立つ。

サードパーティ

ローカルSEOに携わる者として、「サードパーティ」は私の好きな要素の1つだ。ローカルSEOではブランドやコミュニティの構築がとても重要なため、私たちは常にクライアントがパートナーシップを結べる機会を探している。同じコミュニティにサービスを提供しているか、同じような製品やサービスを提供している他のビジネスや組織、あるいはそれらに関連するビジネスや組織と多くのパートナーシップを結ぶほど、その業界の一員としてより強力な存在となり、権威が高まったように見える。協業する他社からの信頼も厚くなるように見える。

あるいは、もう1段階上のレベルに引き上げたい場合、たとえばインフルエンサーとやりとりしていたり、ソーシャルを活用していたりするならば、そうした情報を集約するのもいいだろう。君の顧客にとってのインフルエンサーである人たちと新たに提携し、新しいオーディエンスやより多くのオーディエンスにリーチする手助けをしてもらうこともできる。

「フジツボ式SEO」は、誰かが信頼できるサイトにトップ10リストをまとめていて、それが検索結果の1ページ目に表示されている場合に、君もそのリストに載せてもらうようにする動きだ。そのリストに載せてもらって、ユーザーの目に触れるようになれば、検索結果に表示される場所を新たに1つ獲得できるからだ。誰かが君のウェブサイトをクリックせずに他のウェブサイトをクリックしたとして、そのサイトのトップ10リストに君が入っていたとしよう。同様に検索結果に表示されたRedditの投稿でも君のサイトを目にすることになる。

こうしたことが重なって、君の存在が消費者の印象に残る。検索する過程で、君のブランドや名前を何度も目にすることになるからだ。

次に、「ディレクトリ」について少し考えてみよう。ローカルに携わっている人なら、ディレクトリのことはよく知っているだろう。オンライン上で、君の名前、住所、電話番号が掲載されている場所だ。

これはどちらかというと「ユーザーが目にした情報を検証する」ための要素だと考える。グーグルの検索エンジン、生成AI、LLMなどを通じて、オンライン上で君のビジネスについて同じ情報が複数の異なる場所で見つかるなら、それはその情報が有効であることの証明になる。なぜなら、それによってユーザーは次のことを検証できるからだ:

  • 君が正当なビジネスであること
  • それが正しい情報であること

したがって、君がオンライン上で確実に高いビジビリティを確保するための優れた方法は、そこに書かれている君についての情報が正しいと信頼できる場合となる。

現実世界

そして最後に、現実世界の顧客体験について見ていこう。

「顧客体験」がSEOに与える影響は誰もが知っている。誰かが君の店に来て、嫌な経験をし、否定的なレビューを残せば、否定的なレビューが積み重なっていく。現実世界で根本的な問題が解決されていないからだ。そうした現実世界での顧客体験は、君のビジネスの、

  • ビジビリティ
  • 検索順位
  • オンラインでのコンバージョン能力

に影響を与える。そのため、重要なのは顧客体験を素晴らしいものにすることだ。顧客体験は、こうした場合に取るべき対応の一環であり、グーグルが見ている要素の1つであることも、LLMが考慮している要素であることもわかっているからだ。

次に、「コミュニティ」を構築し、ブランド・サービス・製品を取り巻く文化が存在する場所を築こう。そうすれば、競合他社は簡単には真似できないからだ。その場所は君と君の顧客のものとなる。それに、この方法なら簡単に自分の強みを確立できる。

コミュニティを構築するのは大変なので最初は容易ではない。しかし長い目で見れば、オピニオンリーダーのような存在として、または君が手がけているような製品やサービスについての信頼できる情報源として、勢いを持続するのが簡単になる。

それから、「スポンサーシップ」。もし君がローカルビジネスなら、地域で行われている取り組みのスポンサーになって、地域社会のれっきとした一員になろう。これは、現実世界で君のブランドや会社の認知度を高めるためにできる最も強力な取り組みの1つだ。

君のウェブサイトにもすぐにその効果が表れる。つまり、これが直接トラフィックともなり、すでに君のことを知っている人が来てくれるようになるということだ。なぜ君のことをすでに知っているのかといえば、それは現実世界での経験のおかげかもしれない。

実際、結果につながるか

君はこう言うかもしれない。

アマンダ、どれもいい取り組みだ。とてもためになるが、現実の世界で果たしてうまくいくだろうか? 君は実際にそこから結果が得られているのか?

実際、私はこれらの戦略を実践して結果につながった例をいくつか知っている。

ナイキと、グラフィティ(ストリートアート)が大変人気の南米のある国は、地域のグラフィティアーティスト集団と提携し、このアーティストらに依頼した作品が描かれた場所から限定版の商品を購入できるキャンペーンを展開した。これにより、次の成果があった:

  • ローカルトラフィックが22%増加
  • ローカルでの売り上げが32%増加

この取り組みで何が行われたかと言えば、単純化すれば次のようなことだ:

  • 地域社会の一員としての役割を高めた
  • 顧客が関心を持っていることに関心を持った
  • その地域の文化の一部となった

どのビジネスにもできることだ。それほどの規模である必要はない。

もう1つ例を紹介しよう。米メイン州の醸造会社であるAllagash Brewingは、「缶の持ち運び用キャップ」「プラスチック包装」「穀物袋」のような再利用の難しい資材のリサイクルを、他のローカルビジネスと共同で推進する活動を始めた。

その結果はどうなっただろうか。現在、「best Maine breweries」(メイン州で最高の醸造所)と検索すると、このキーワードに対する検索結果の上位10件のうちAllagash Brewing関連が7件を占めるようになった。

順位が上がった背景にあるのは、次のようなことだ:

  • Redditで見た人たちが推薦していること
  • 評判も高いため、トップ10リストに掲載されていてフジツボ式SEOが効いていること

つまり、コミュニティの中でビジビリティが高く、ローカルでもあるために、こうした特別な地位を獲得しているということだ。人々はこの醸造所を推薦し、サポートし、うまくいってほしいと考える。そのことがSEOにも影響を与えている。

ウェブサイトで多くのことをしているわけではない。評判がSEOを構築し、ビジビリティを高めているのだ。

押さえておきたいポイント

では、今回のホワイトボード・フライデーのポイントは何だろうか? それは、コミュニティを構築する必要があるということだ。コミュニティからの信頼を高める必要がある。ブランドストーリーを構築しよう。これは誰にでもできると思う。配管業者だろうが、空調設備会社だろうが、関係ない。ユーザーや顧客が共感できるブランドストーリーを作る方法はある。まずは、これらのことができるよう、真にローカルになる機会を見つける必要がある。

顧客にとって何が重要かを考え、何が原因で眠れない夜を過ごしているのかを考え、どうすれば解決できるかを考えよう。検索結果に表示されるようにしたいボトムオブファネル(BOFU)キーワードのことを考えるよりも、そうしたことを優先するべきだ。SEOを強化するために、それらを結集させて、マーケティングエコシステム全体を活用することを考えてほしい。

コミュニティやブランドを構築する方法について詳しく知りたい人は、LinkedInではAmanda Jordan、Xでは@AmandaTJordanで私を見つけてもらえる。

用語集
SEO / UGC / X / インフルエンサー / キャンペーン / コンバージョン / ソーシャルメディア / ディレクトリ / ファネル / フジツボ式SEO / リーチ / 検索エンジン
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