ネタコンテンツが大ヒットしても、サイト内の他のコンテンツの検索順位には何の影響もない!?
この記事では、検索エンジンにおける順位決定において、バイラルコンテンツの効果は、ドメイン名全体の検索順位にはほとんど、あるいはまったく波及しない(少なくともある種の状況においては)という仮説を、3つの事例のデータとともに証明したい。
オーガニック検索で上位に表示されるためには、リンクは今でも非常に重要だ。
しかし、そうしたリンクを獲得する方法は変わった。
(中略)
今、重要なのはコンテンツマーケティングだ
こんな話を、ここ数年の間にSEO関連のカンファレンスに参加したことがある人なら、聞いたことがあるだろう。
よく言われているのは、こういうことだ。
「検索で上位に表示される価値のある」素晴らしいコンテンツはリンクを獲得することができ、それによってサイトのオーソリティが高められ、ひいてはそのコンテンツ自体のみならずドメイン名全体の検索順位が引き上げられることに。
同じ論理で考えると、リンクの獲得に特に秀でたコンテンツは、長期にわたってSEOに目覚ましい成果をもたらすはずだ。
理論上は素晴らしく聞こえるし、論理的に考えても理にかなっている。読者が楽しめる優れたコンテンツを構築することで、サイトの品質は向上し、進歩を続けるサイトに対してグーグルは検索順位を上げることで報いてくれるというわけだ。
ただし、それは僕が目にしている現実とは違う。はるかに異なる。
この記事では、検索エンジンにおける順位決定において、バイラルコンテンツの効果は、ドメイン名全体の検索順位にはほとんど、あるいはまったく波及しない(少なくともある種の状況においては)という仮説を証明したい。
具体的には、バイラルコンテンツで大きな成果を上げた以下のウェブサイトを見ていく。
- Amplifon
- Simply Business
- Concert Hotels
- JustPark
222サイトからのリンクは、SEOにとってどんな効果があるか?
Amplifonの事例
最初のケーススタディは、補聴器メーカーのAmplifonだ。
Amplifonは、「Sounds of Street View」というインタラクティブコンテンツを作成した。2014年8月、著名なデジタルマーケティングエージェンシーであるEpiphanyの協力のもと作ったコンテンツだ。
当初はamplifon.co.ukドメイン名でホスティングしていた(以後はamplifon.comにリダイレクトされている)このしゃれたコンテンツマーケティング作品は、Googleストリートビューに実験的な3Dサウンド体験を提供しようとするものだった。これがインターネット上で大好評を博した。
Majesticによると、このコンテンツは222の参照元ドメイン名から685件の被リンクを獲得したという。では、オーガニック検索での順位獲得はどうなったのかを見てみよう。
一見すると、「Sounds of Street View」のリリース以降、Amplifonの検索ビジビリティは、SearchmetricsでもSEMrushでも確かに全体として急増したように見える。
しかし、Searchmetricsによるキーワードレベルのデータ(ここで確認できる)をさらに深く観察してみると、この急増分はほとんどすべてが「Sounds of Street View」のコンテンツに直接関連する新しいキーワードによるものであることがわかる。「street view(ストリートビュー)」や「make your own google(独自のグーグルを作る)」などのキーワードで検索順位の上昇やトラフィックの増加が見込めるとしても、大規模なコンテンツマーケティングプロジェクトの契約時に企業が切望するような成果からはほど遠い。
「利益につながる(Money Making)」キーワードだけを見ると、AmplifonのSERPについて調査したSearchmetricsのTraffic Index(トラフィック指標)の増加幅は10%ほどにすぎない。しかも、その増加分はすべて、ごく一般的な1つのキーワード(「hearing aids(補聴器)」)によるものであり、これで順位が1つ上がっている。Amplifonの他のすべての「利益につながる」キーワードについてTraffic Indexを見ると、2014年7月31日~2014年8月28日の期間にむしろ減少(-76)している。
長期にわたるコンテンツマーケティング
Simply Businessの事例
2例目のケーススタディとして、英国の大手事業保険ブローカーであるSimply Businessを見てみよう。
同社は2016年、コンテンツマーケティングに関するあらゆる講演やブログ記事で取り上げられた。そのため、実際にグーグルで「"Simply Business"+"link building"」を検索すると、16万8000件もの結果が返ってくる。
Simply Businessにおけるバイラルコンテンツの成果は、2014年2月にリリースしたインタラクティブガイド「Hungry Tech Giants(貪欲なテクノロジ大手企業)」で結実した。このガイドは、テクノロジ業界の「ビッグファイブ」にあげられる大手5社が過去15年間で買収した中小企業を図表化したものだ。Majesticによると、同コンテンツは167のリンク元ルートドメイン名から588件のリンクを獲得したという。
Simply Businessはまた、一連のビジネステクノロジ関連ガイドでも(リンク獲得という観点から)非常に大きな成功を収めている。全部で20あるガイドのうち、特に注目を集めたのは、2012年8月に公開した「WordPress for Small Businesses(中小企業のためのWordPress)」と、2013年1月に公開した「The Small Business Guide to Google Analytics(中小企業のためのGoogleアナリティクスガイド)」だ。前者は169のリンク元ルートドメイン名から1897件のリンクを獲得し、後者は243のサイトから3463件のリンクを獲得した。
すごい数のリンクだ!
しかし、Searchmetricsの統計では、これら3つのコンテンツを公開後、一定の期間内にSimply Businessのビジビリティが急上昇した様子は一度も見られない。
SEMrushでは、2013年1月頃に検索順位が10~15%上昇したことを確認したが、それに付随した変化はオーガニック検索トラフィックには見られなかった。それ以外にも、コンテンツマーケティングの成果に伴って増加を示したような明確な兆候はない。
2015年8月以降、Simply Businessのガイドセクションに新しいガイドは追加されていない。
とはいえ、3倍ものきわめて大きな成果を上げたとしたら?
Concert Hotelsの事例
ケーススタディの最後は、ホテル予約サイトのConcert Hotelsだ。
同社は2013年11月に「100 Years of Rock(ロック100年史)」を公開した。大成功を収めたコンテンツの第一弾だ。Majesticによると、このコンテンツは521のリンク元ルートドメイン名から8358件という大量のリンクをもたらしたという。
Concert Hotelsは2014年5月、2つ目のコンテンツ「The Vocal Ranges of the World's Greatest Singers(世界の偉大なシンガーたちの声域)」を公開し、これも大好評を博した。Majesticによると、このコンテンツは590ものリンク元ルートドメイン名から2839件の被リンクを獲得したという。なかなかの成果だ!
Concert Hotelsは続いて、2015年6月に「Got Rhythm?(リズム感をチェック)」というコンテンツを公開した。前の2つほど成功したわけではないが、それでもMajesticによると、236のリンク元ルートドメイン名から899件の被リンクを獲得したという。まだ悪くない。
そのため、全体では、1347超のリンク元ルートドメイン名から1万2096件を超える被リンクを獲得したことになる。では、これがオーガニック検索のトラフィックに与えた効果についてはどうだろうか?
効果はゼロだ。まったく何もない。
アクセス数500万も、結局は期待外れ
JustParkの事例
情報開示 JustParkがコンテンツマーケティング活動に着手した当時、僕は同社のデジタルマーケティングを担当していたので、その過程で僕たちが目にしたこと(あるいは、もっと正確に言えば、目にしなかったこと)について、内部からの視点をいくらかお伝えできればと思う。
2015年春、英国最大の駐車場マーケットプレイスJustParkがSEOで明確に優先すべき問題は、ドメインオーソリティだった。競合するトップ企業各社が有するリンク元ルートドメイン名は僕たちの3~6倍に達しており、オーガニック検索のビジビリティとも非常に高い相関性があった。
オーソリティの構築という大きな課題に直面した僕たちは、リスクが高くて後ろ暗い活動には一切関わりたくないと考え、コンテンツマーケティングを中心とするリンクビルディングに予算を投ずることにした。心の奥では誰もが、このコンテンツマーケティングが功を奏し、コンテンツのどれかがバイラルで広まることを願っていた。
僕たちはDistilledをパートナーに選び、5つの「ビッグコンテンツ」の作成にとりかかるとともに、社内で開発する小規模なインタラクティブプロジェクトもいくつか計画していった。
5つのコンテンツマーケティングプロジェクトをリリースし、9月~10月にかけてそこそこの成果をあげていったあと、1つのコンテンツがあらゆる面で期待を上回る成功を収めた。「Emergency Stop Game(緊急停止ゲーム)」だ。
経過報告
ひっそりとリリースして、何度かトラフィックの微増を経験したのち、11月初めになって僕たちはこのコンテンツをRedditで広めることにした。
すると突然、雪だるま式に人気が上がり始め、トラフィック(そして、リファラーも!)1時間単位で増え続けた。世界中の大手ニュースサイトで取り上げられるようになり、科学関連ニュースサイトのIFLScienceで紹介された(そしてそのせいでサーバーがダウンした)ときには、大成功に向かっていると確信を持った。
こういった熱狂がすべて収まった頃には、Facebookでのシェアが40万件以上、アクセス数は500万以上にのぼっていた。だが、それにどんな価値があっただろうか?
SEOへの効果
最終目標がドメインオーソリティだったので、僕たちはリンク元ルートドメイン(その多くはきわめて高品質だった)が増えていくのを、大きな興奮を持って見ていた。
全体として、Emergency Stop Gameは600を超えるサイトからリンクを獲得し(Majesticの最新の指標によると、本記事の執筆時点でもまだ389のリンク元ルートドメインから1141件のリンクを確保している)、JustParkサイト全体のリンクプロファイル総数の2倍に達した。もちろん僕たちは、SEOのパフォーマンスに大幅な変化が起こることを期待した。
しかし、まったく驚いたことに、ウェブサイトの(バイラルコンテンツそのものを除く)中核製品側へのSEOトラフィックは、何週間経ってもまったく増加しなかった。
SEMrushとSearchmetricsのグラフを紹介しよう。トラフィックやビジビリティの上昇は、どちらも時間の経過とともに下っていくが、両社の統計で見られた改善効果は、中核サイトへのトラフィックを促す「利益につながる」キーワードよりも、(驚くほど人気の高い)「reaction time testing(反応速度を測るテスト)」で検索した結果から得られたビジビリティとの関連性の方が高いと思われる。
まとめ
すぐに気づくことだが、他の点では成功を収めているマーケティングプロジェクトが、SEOの面ではそれほど貢献していない実情は、どうやら秘密にされているらしい。誰も、お祭り気分に水を差す役はしたくない。ビジビリティが向上したり、コミュニティ全体から称賛を受けたりしたプロジェクトの場合は特にそうだ。
これに反する(あるいはこれを裏付ける)ケーススタディがあれば、ぜひ体験をオープンにして、この業界に正しい情報を伝える手助けをしてほしい。
とりあえずここでは、これらのケーススタディが示唆していると思われることについて、大胆に一般化してみたい。
こういうことだ。
特定の1ページ(トップページは除いたほうがいいだろう)にリンクが大量に張られていても、サイトの他のページにSEOの効果が行き渡ることはあまりない可能性がある。とりわけ次のような場合には。
そのページは本筋のトピックとの関連性がさほど高いわけではない
リンクの多くが短期間に作成された
リンクのほとんどが、自社の製品やサービス、業界に重点を置いたサイトではなく、ニュースサイトから張られている
サイトが国内向けなのに対し、多くのリンクが外国のソースから張られている
そのページでは、サイトの他のページとは異なるページ構造(ヘッダー、フッター、メニューなど)を採用している
そのページとサイトの他のページとの相互リンクが少ない
この記事を書いた主な目的は、コンテンツマーケティングをめぐって現在の業界全体に広がっている思い込みについて、議論や批判的評価を始めるきっかけにしてもらうことだ。記事の主張に同意してもらえるなら、それはそれで嬉しい。同意できないという人がいたら、もっと嬉しい! あなたの見解を教えてほしい。そこからどういったことが学べるか、一緒に考えてみよう。
記事の作成を手伝ってくれた、元同僚で、今はフリーランスのSEOおよびPPCコンサルタントとして活動しているベン・ジョンソンに謝意を表したい。
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