リターゲティング広告を強みに、グローバルでデジタル広告ソリューションを展開するCriteoの福島幸紀氏と梅田日南氏、そして、Criteoの活用で大きな成果を出した、カカクコム「求人ボックス」のマーケティングを担当する小塚優季氏が、「Web担当者Forumミーティング 2025 秋」に登壇。マーケターが抱える課題をCriteoでどう解決したのか。運営の裏側を紹介した。
Criteoが高いパフォーマンスを発揮するための2つの強み
Criteoは2005年にフランス・パリで創業。現在はAIをベースとしたデジタル広告ソリューションを世界100か国以上で提供している。従業員約3500人のうち1200人がプロダクトおよび開発部門に所属するテクノロジーカンパニーでもある。
日本に参入したのは2011年。当時Criteoがメインで販売していたのはリターゲティングのソリューションだったが、現在のCriteoはリターゲティングだけではなく、フルファネルでクライアントのニーズに応じた幅広いサービスの提供を行っている。「コマースオーディエンス」は、リターゲティング以外の認知拡大、新規獲得、コンバージョンまで対応するソリューション。広告主の課題に合わせて、ターゲットのユーザー層に広告を配信できるシステムだ。
Criteoの強み① 膨大なコマースデータ
Criteoの強みは膨大なコマースデータを持っていることだ。「コマースデータに関しては、Amazonの2倍以上を保有している」と福島氏は話す。大量のコマースデータをAIが学習することで、高いパフォーマンスが発揮できる。
Criteoの強み② 世界トップクラスのAI
もう1つの強みは世界トップクラスのAIを有していることだ。Criteoは20年前の創業時からAIへの投資を行い、AIの活用や開発に積極的に取り組んできた。
CriteoのAIは、マーケターのどんな課題に応えることができるのか。多くのマーケターはキャンペーンの設計や運用時に「どのユーザーに配信すべきか」「どの広告枠に配信すべきか」「どんな商品をレコメンドすべきか」「どういったデザインでバナーを流すべきか」いうことに頭を悩ませ、調整に多くの時間を費やしている。CriteoのAIは、これらデジタル広告の主要な変数のすべてを解析し、リアルタイムで最適化する。
これこそが、CriteoのAIがマーケターの皆さんを助けるもう1人の運用者と言われる所以です(福島氏)
CV件数6.5倍を達成した求人ボックスの施策とは
Criteoを活用し、CV件数6.5倍に伸ばすという大きな成果を出したのが求人ボックスだ。求人ボックスは価格.com、食べログに続く、カカクコムの第3の中核事業として2015年にローンチしたサービスである。現在、求人情報集約数は月間2000万件を超え、月間1200万人のユーザー数を抱える大きなサービスに成長した。
成長の背景にあるのが、豊富な求人情報と使い勝手の良さ。給与など希望の条件をフリーワードで入力して検索できるだけでなく、職種ごとの人気求人検索ランキングや人気職種や地域別の給料情報をランキング形式で掲載する「給料ナビ」など、求人に関するさまざまな情報を提供しているのも特徴です(小塚氏)
求人ボックスでは高い事業成長目標に合わせ、売上金額を最大化するというゴールを設定していた。そのために採用したのがCriteoだった。
これまで主要な獲得系の媒体は一通り実施してきました。ROAS(広告費用対効果)の目標の中で配信のボリュームを拡大できるチャンネルをテストして選定し、その上で拡大させる形で着々と増やしてきましたが、その中でCriteoはGoogleに次ぐ予算を持たせており、運用媒体の柱になっています(小塚氏)
運用業務については「やることはほぼない」と語る。Criteoは管理コストや運用の負荷が非常に少なく、予算内で成果を最大化してくれるエンジンをキャンペーンに設定するだけで一定の成果をあげられるところも気に入っている点だという。
タグの見直しがCV数アップの起爆剤に
求人ボックスでは「AIファーストなアカウント作り」をテーマにCriteoに注力してきた。AIの学習が進むフィードにするべく、フィードの件数を従来の数十万件から10倍の数百万件に増やしたり、フィードの内容についてもCriteoの担当者である梅田氏と相談しながらテストをしたりしてきた。Criteoが用意するさまざまなオーディエンスをテストし、うまく働くオーディエンスを発掘するという作業も続けた。
2025年に入ってからAI学習の要であるタグの設計を見直したところ、効果が爆発的に伸び、コンバージョン数が昨対比の6.5倍をマークした。
数多くのオーディエンスのテストや、タグやフィードの見直しも実施していただいて、Criteoが推奨としている設計に近付けていただけました。さまざまなそういったお取り組みの積み重ねがAIの学習にすごくいい影響を与え、求人ボックスの成長に貢献できたことを嬉しく思っております(梅田氏)
梅田日南氏
今後の課題はROASとクリエイティブの最適化
小塚氏が売上最大化のポイントになると考えているのが求人閲覧数だ。なるべく多くのユーザーに求人情報を見てもらうだけでなく、いろいろな求人を見てくれるユーザーが応募につながる割合が高い傾向にあるため、その点を中心に試行錯誤を重ね、ROASの最適化を目指す。
またクリエイティブの最適化にも取り組んでいきたいという。これまでも数々のフォーマットやクリエイティブを試してきたが、現状はランディングページを複数の求人情報が一覧で並ぶ検索結果に設定しているため、イメージ画像を作りにくい。
また給与などの条件を見て探すユーザーが多いが、条件は求人情報ごとにバラバラなため、シンプルなクリエイティブにならざるを得ない。こういったところについても、より最適なクリエイティブが作れないか、Criteoに相談中だ。
カカクコムではAIで卓越した成果を出すという「AI EXCELLENCE」というバリューを設けています。CriteoのAIもフル活用をしながら、AIを使うことで空いた工数はどこに振り分けるのか、工数をかけるべきところと、そうでないところをきちんと分解して、注力すべきところに全力投球するというところを、マーケター全員で意識しています(小塚氏)
カカクコムを支えるCriteoの最新機能
Criteoではさらなる可能性を追求すべく、AIの開発に取り組んでいる。その成果の1つが、テキストからブランドイメージ広告画像を生成する機能である。指示通りの画像を生成するだけではなく、よりエンゲージメントを高められるよう、配信される季節、天候、時間帯に合わせて自動的に背景を生成する機能も持っている。
また複数の画像を組み合わせて、ストーリー性のある動画を生成する機能も提供しており、画像を3点用意するだけで、短いビデオ広告を作成することができる。
その他にも、Criteoでは今、AIエージェントを活用したソリューションの開発も進めている。その1つが会話型広告バナーだ。これは消費者向けのサービスで、ユーザーがバナーに要望を伝えると、その要望に合った商品をAIが提案してくれるという機能だ。
また運用担当者の負荷を減らすべく、AIエージェントを活用した相談窓口のようなサービスも構築中だ。効果的なオーディエンスをAIが提案してくれるだけではなく、そのまま配信につなげる機能も用意されている。
CriteoのAIは日進月歩で進化し続けています。ぜひ、もう1人の運用者として頼ってほしいと思います(福島氏)
もう1人の運用者として課題解決をサポートした3つの事例
Criteoの機能は具体的にどう活用できるのか。ここからは事例を紹介する。
旅行代理店の事例
ある大手旅行代理店では、新規購入者を獲得して、売上をアップしたいという課題を抱えていた。そこでCriteoの「コマースオーディエンス」を活用し、ターゲット顧客のペルソナに合わせたターゲティング配信を強化した。すると新規ユーザーの増分比率が+200%、全体に対する新規ユーザーの割合も63%まで引き上げることに成功し、全体の売上も20%増やすことができた。
アパレルショップの事例
ある大手アパレルセレクトショップでは、リピーターを増やしたいという課題を解決するため、Criteoの「リターゲティング」広告の配信を強化した。リピート購入につながると思われるユーザーに対する広告配信を3倍以上増やすことができ、売上総額も+105%と2倍以上に増加。配信前までは10%未満だったリピーターの比率を23%まで伸ばすことができた。
中古自動車販売会社の事例
ある中古自動車会社では、中長期的に購買を検討してくれる新規ユーザーを自社Webサイトに呼び込みたいという課題を持っていた。そのため、目標はサイトへの新規流入数を増やすこと。さらにそれを低単価で実現したいという要望から、Criteoの「動画広告」サービスを適用。低単価で効率良く新規ユーザーの流入を促すことができた。
Criteoの「コマースオーディエンス」とは
Criteoの「コマースオーディエンス」は導入時にタグと商品カタログ(フィード)を設定し、AIに学習するためのデータを揃えてAIに学習させる。その後の運用は、「クリエイティブ」「オーディエンス」「最適化エンジン」という3つの運用レバーを設定するだけで、あとはAIが自動で最適化してくれるという。
①クリエイティブ
1つ目の運用レバー「クリエイティブ」は、認知、検討、獲得、リテンションというファネルの各段階に応じて多種多様なクリエイティブフォーマットを用意している。マーケターが自身で選択することはもちろん、AIエンジンに任せることもできる。
バナーの生成に関して、ブランディングの方針に合わせる柔軟性がある。素材を入稿しておくと、CriteoのAIがその中からユーザーに最適なものを判断してバナーを配信する仕組みになっている。
②オーディエンス
2つ目の「オーディエンス」は、認知拡大、新規獲得、コンバージョンからリテンションまで、幅広くユーザーのターゲティングを担当する。マーケター自身で目標に合わせてオーディエンスを選択することもできれば、AIに任せることもできる。
③最適化エンジン
3つ目の「最適化エンジン」は、キャンペーンのゴールに合わせて入札戦略の最適化を実施する。AIが自動的に最適な入札戦略をサポートすることはもちろん、複雑なKPIの場合は人が手を加えて初期設定を行い、それに沿ってAIが運用の中で最適化を実施していくこともできる
さらに最近、3つの選択をしなくても、キャンペーン作成をAIにすべて任せるソリューション「Go!」が登場した。「Go!」は「ゴールの設定」「予算の設定」「クリエイティブ作成」という3つのステップだけでキャンペーンをローンチでき、運用と計測、キャンペーンの拡大までもAIが自動で運用してくれるというソリューションだ。まさにAIはもう1人の運用者である。
CriteoのAIエンジンはさまざまな種類のAIを組み合わせることで、ありとあらゆるニーズに対して最適解を出せるような仕組みになっている。さらに膨大な購買データを継続的に学習し続けることで、進化を続けている。