生成AIトラフィック、実は低CVR? LLMによる購入決定の効果測定はまだ厳しいか【SEO情報まとめ】
「生成AIからのトラフィックは質が良い」と言われていたが、実は正反対――973のECサイト12か月調査で、「LLMトラフィックはCVRも収益も良くない」実態が見えてきた。
一方、「購買の意思決定段階でAIが多く携わっていれば、ユーザーはその後に公式サイトやアマゾンを訪問して購買を完了している」というデータも、1600人を対象にした調査から見えてきている。
生成AIはサイトのトラフィックやコンバージョンにどういった影響を与えるのか。ユーザー行動の「今」を知り、あなたのオンライン戦略を調整していこう。
最近は生成AIネタが多いこの界隈だが、今回はまっすぐなSEOネタも多めだ。Search Consoleの「検索意図でグループ化」レポート機能、テクニカルSEOが必要な場合、海外SEO専門家が登壇したSEOイベントレポートなどの情報をチェックしてほしい。
2ページ目冒頭の「Googleマップでの低評価恐喝に対する公式対応」も、良い情報だが恐ろしい。世界で同じようなことが実際に発生していることを示しているからだ。
ほかにも、小川卓氏によるGA4+SC連携のテクニックや、グーグル・アルファベットのAI戦略など、今回のまとめ情報をチェックして、あなたのビジネスに役立ててほしい。
- ChatGPTは“Googleキラー”になれない!? LLMからの流入は期待ほど売上につながらない
- “購入決定”はAIチャットの中で起きている、AIが築く新たなカスタマージャーニー
- Search Consoleに「クエリグループ」レポートが登場、クエリ単位ではなく検索意図単位での分析が可能に
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今週のピックアップ
ChatGPTは“Googleキラー”になれない!? LLMからの流入は期待ほど売上につながらない
ECサイト973件を対象とした大規模調査より (SSRN) 海外情報
ChatGPTからのオーガニックLLM(oLLM)トラフィックは、従来のチャネルのパフォーマンスを下回っている
これは、973のEコマースサイトを対象とした調査から判明したものだ。調査はハンブルグ大学のマクシミリアン・カイザー氏らが12か月間にわたって行ったもの。oLLMは、一般に広く期待されていた内容に反し、コンバージョン率とセッションあたりの収益において、オーガニック検索および有料検索よりも低い数値を示した。
調査結果の主要ポイントは次のとおりだ:
チャネル別パフォーマンス ―― oLLMは、有料・オーガニック検索、メール、参照トラフィック、アフィリエイトよりもコンバージョン率(CVR)とセッションあたり収益(RPS)で劣った。ただし有料ソーシャルよりは上回った。
チャネル セッション数
(百万)売上
(百万ドル)oLLM 4.1 6.1 有料検索 1,530.0 3,190.4 オーガニック検索 1,427.3 2,595.4 ダイレクト 1,269.6 2,695.3 その他 830.5 1,581.5 参照トラフィック 353.5 605.2 有料ソーシャル 337.5 145.5 メール 215.9 513.5 アフィリエイト 42.5 152.6 トラフィック規模は極めて小さい ―― oLLMの全体トラフィック占有率は0.2%未満で、グーグルオーガニック検索の約200分の1にとどまる。
ChatGPTが圧倒的多数 ―― oLLMセッションの90%超がChatGPT経由であり、他プラットフォームはごくわずかである(Perplexity 4.1%、Gemini 2.6%、Copilot 2.1%など)。
CVRは検索のほうが13%高い ―― データの希薄性を統制した結果、グーグルオーガニック検索はoLLMより約13%高いCVRを示し、アフィリエイトが最も高い成果を上げた。
直帰は少ないが閲覧傾向は良くない ―― oLLMは直帰率で比較的良好な値を示した(オーガニック検索より約13%低い)ものの、ページ閲覧数とセッション時間では劣っていた。
改善傾向はあるが平均注文額は悪化 ―― oLLMのCVRとRPS(セッションあたり収益)は期間中一貫して上昇したが、AOV(平均注文額)は低下。今後もCVR改善は続くものの、AOV格差は拡大する見込みである。
近い将来に検索と同等にはならない ―― 線形・ゴンペルツ・シグモイドなどのモデル比較では、oLLMが来年(2026年)中にオーガニック検索と同等の成果を達成する可能性は低い。
偶然ではないことをデータで確認 ―― 集計単位・閾値・サンプルを変えた10種類の堅牢性検証でも結果は一貫しており、oLLMの低パフォーマンスはデータ設計上の偶然ではないと確認された。
調査結果を踏まえて論文は次のように結論づけている。
過去に報告された「LLM優位」論は、外れ値的なサイトや方法論上の偏りによるものである。oLLMは進化過程にあるが、現時点で「グーグルキラー」となる可能性は低い。
- AI SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
“購入決定”はAIチャットの中で起きている、AIが築く新たなカスタマージャーニー
グーグル検索しない買いもの (Josh Blyskal on LinkedIn) 海外情報
ChatGPTなどのAIチャットがオンライン購買に与える影響の調査データをもう1つ。AIトラッキングツールを提供するProfound(プロファウンド)が1,600人の消費者を対象に調査したものだ(2,739人の対象からスクリーニング)。
この調査から得た重要な発見を、プロファウンドのジョシュ・ブリスカル氏がリンクトインに投稿している。要点は次のとおりだ:
AI利用率は高い ―― Instant Checkout(※後述)の導入前にもかかわらず、回答者の58%が過去1週間以内にAIツールを買いものに利用していた。
チャット内での意思決定 ―― AIユーザーの46.4%は、他のサイトを訪問せずにAIとの会話中に購入判断を完了している。これにより、追跡不能なコンバージョンが発生している。
AIの意思決定への関与 ―― 購入者のうち79.7%が、購買判断プロセスの少なくとも半分をAIが担ったと回答している。
影響度とコンバージョンの相関 ―― 購入プロセスへのAIの影響が80%以上あった場合、85.9%が購入を完了した。一方、影響が20%にとどまった場合の購入率は32.6%に低下した。
従来型検索からの移行 ―― AIとのやり取り後、グーグルを訪れたのはわずか24.2%であり、大多数は購入チャネルへ直接進んでいる。
購入経路 ―― 20.3%がアマゾンへ、18.6%がブランド公式サイトへ、15.1%が実店舗へ進み、AIが意思決定から購入までをつなぐ役割を果たしていることが示された。
購入意欲者の障壁 ―― 14.5%は購入準備ができていたがチェックアウトできず、14.2%は価格や在庫のリアルタイム情報を必要としていた。これらの制約はChatGPTのInstant Checkout機能により緩和されつつある。
見えないアトリビューション ―― 実際の購入は直接流入やプラットフォーム広告に起因すると誤認されがちだが、決定的な購買判断は分析ツールの見えないAIチャット内で起きている。
顧客行動の再定義 ―― データは、AIが検討から購入までを導く新しい購買経路を構築しており、消費者行動とマーケティング評価の在り方を根本から変えつつあることを示唆している。
1つ前のピックアップで、「LLMからのトラフィックはコンバージョン率が低い」ことを示す調査データを紹介した。一方、ここで紹介した調査では「オンラインでの購買にLLMが大きな影響を与える」ことが判明した。
相反する結果に思えるが、筆者は次のように考える:
- LLMからの直接のトラフィック(ハンブルグ大学のカイザー氏らの調査でいうoLLMトラフィック)がそのまま購入に至るパターンは少ない
- LLM(AIチャット)で情報収集したうえでユーザーは購入決定し、その後アマゾンやそのブランドの公式サイトにあらためて訪問し、そこで購入を完了する
つまり、AIチャットからのトラフィックはダイレクトには購入には結び付かないのだが、購入決定を強く後押ししている可能性が高い。間接的なコンバージョン、いわゆるアトリビューションに寄与していそうだ。だが、そのアトリビューションを追跡することは現状では容易ではないという問題がつきまとう。
なお、ChatGPTを提供するOpenAIはInstant Checkout(インスタント チェックアウト)という機能の提供を開始した。これは、ChatGPTを離れることなくChatGPTとの会話の中で商品の購入まで完了できるという機能だ。ShopifyやPayPal、Walmartなどがサポートを始めている。インスタント チェックアウトが本格的に導入されればChatGPTのコンバージョンが増加する未来もありえる。
なお、プロファウンドの調査結果の詳細はこちらから入手できる。
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グーグル検索SEO情報①
Search Consoleに「クエリグループ」レポートが登場、クエリ単位ではなく検索意図単位での分析が可能に
今後数週間にわたって段階的にリリース (グーグル 検索セントラル ブログ) 国内情報
Search Consoleに「クエリグループ」というレポート機能が追加された。さまざまなクエリのなかから、検索意図が同じクエリをひとまとめにして表示回数やクリック数などのデータをレポートしてくれる。
たとえば、次のクエリはどれも「ワカモレ ディップの作り方」を知りたいという意図を含む:
- ワカモレ ディップの作り方
- ワカモレ ディップのレシピ
- ワカモレ ディップ レシピ
- グアック ディップのレシピ
- 簡単なワカモレ ディップのレシピ
- シンプルなワカモレ ディップのレシピ
- 簡単にできるワカモレ ディップのレシピ
- 簡単なワカモレ ディップの作り方
これらのクエリをグループ化してレポートするのだ。
たとえば、筆者のブログのクエリグループは次のように表示された。
クエリグループは分析情報(①、旧Search Console Insights)のなかに「お客様のサイトにつながる検索語句」として表示されている(②)。
「もっと見る」をクリックすると(③)、さらに多くのクエリグループを確認できる。
各クエリグループをクリックすると(④)、含まれるクエリで絞り込んだ検索パフォーマンスレポートに移動する。
実際には、検索パフォーマンスのレポートはグループ内のクエリをすべて含む正規表現が適用されているのだが、自動的に作成してくれているのがミソだ。なおグループに含めるクエリはAIが判断しているそうだ。正規表現がわかるなら(あるいは見よう見まねで)修正してもいいだろう。

クエリ単位ではなく、検索意図単位で分析できるのがクエリグループの最大の利点である。今後数週間にわたって段階的にリリースされるので、分析情報にまだ現れていないかもしれない。こまめにチェックするといい。
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テクニカルSEO、ないがしろにすると後悔するサイトと、気にしなくていいサイト
大規模サイトでは最重要事項 (Mark Williams-Cook on LinkedIn) 海外情報
SEO専門家のマーク・ウィリアムス=クック氏のリンクトインでの投稿を紹介する。テクニカルSEOの必要性を説いたものだ。
おせっかいなSEOアドバイス:
「テクニカルSEO」とは、「今すぐの問題」を直すことではなく、「将来起こりうる問題」を未然に防ぐことが目的になる場合もある。「転ばぬ先の杖」というわけだ。
その一例を示そう。
🤓 テクニカルSEO担当:「新しいサイトでは、パーソナライズのためのクエリ文字列がページに付与されることがあり、そうしたURLがインデックス対象になっています」
👨💼 上司:「そのページはいくつインデックスされてる? どんな問題が起きてるの?」
🤓 テクニカルSEO担当:「今のところ10〜15ページ程度です。サイトを公開してまだ数週間ですからね」
👨💼 上司:「これを直すことで、この四半期にどんな成果(トラフィックの上昇など)が見込める?」
🤓 テクニカルSEO担当:「ほぼないですね」
👨💼 上司:「じゃあ却下」
〜2年後〜
🔥 1,000ページだったサイトが、今では6万ページもインデックスされており、重複コンテンツだらけでカノニカル地獄。重複ページによってトラフィックが低下し、ユーザーが「間違った」ページへリンクしてしまったり、クロール・インデックス・ランキングに悪影響が出たりしている。
🤦 この段階になると、根本的な技術的問題(短時間で直せる部分)を修正するだけでなく、発生した症状にも対処して、サイト全体を立て直す必要がある。
経験豊富なテクニカルSEO担当者なら、このような問題が表面化する前に気づき、対策を講じることができるだろう。
クック氏によるリンクトインでの投稿を前回のコラムでも紹介した。このときは「テクニカルSEOは不要」という内容だった。
「前に言ったことと矛盾してるのでは?」と思ったかもしれないが、以前のも投稿は小規模サイトにはテクニカルSEOは不要という主張だった(完全に不要ではないとしても最重要事項ではない)。しかし今回クック氏が伝えているのは、大規模サイトにはテクニカルSEOが非常に重要ということをだ。
サイトの規模やタイプに応じて優先すべきSEOが変わってくるのは当然のことである。
- 大規模サイトのすべてのWeb担当者 必見!
日本最大のSEOカンファレンス「FOUND Conference Tokyo 2025」のセッションレポート
海外の重鎮SEOがスピーカー参加 (ミエルカマーケティングジャーナル) 国内情報
大規模なSEOカンファレンス「FOUND Conference Tokyo 2025」が、2025年10月28日〜29日、東京・大手町で開催された。SEOツールを提供するDemandSphere(デマンドスフィア)が主催したものだ。
このコラムでもたびたび登場している、リリー・レイ氏やランド・フィッシュキン氏、マイク・キング氏といった海外の著名なSEOプロフェッショナルがスピーカーとして招かれた(フィッシュキン氏は、厳密には現在はSEO専門家ではなくウェブマーケティング全般を専門にしているのだが)。
海外のSEOプロだけではなく、DMM.comの渡辺隆広氏やJADEの長山一石氏といった日本のトップSEOも登壇している。日本では珍しい大規模なSEOイベントで、杉原剛氏も非常に高く評価したイベントとなった。
さて、2日間にわたって催されたFOUND Conferenceのハイライトを、ファベルカンパニーの高田愛氏がまとめている。
東京での開催だったり予算的な問題だったりして、参加できなかった人もいることだろう。よくまとまっているレポート記事なので、良い情報源になるはずだ。
- SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
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