算数が苦手なマーケター向け「算数基礎講座」

【計算できる?】キャンペーン平均購入額5100円。内訳は「通常時+1200円」が3割、「通常時-200円」が7割。通常時の平均額は?

キャンペーン結果を正しく分析するために必要な「平均」の考え方。数字に強いマーケターになるために、計算方法を対話形式で解説。

モリマミコ(マミオン)[執筆], 995[イラスト], 井上薫[編集]

7:00

AIの分析結果、どう検算する?

アユム

アユム

先輩、突然ですが、先日打ったキャンペーンの結果がでましたー!

先輩

先輩

どういうキャンペーンだったの?

アユム

アユム

過去に商品をご購入いただいたお客様に対して、期間限定のクーポンを配布しました。

先輩

先輩

結果はどうだった?

アユム

アユム

野球に例えるなら、二塁打ってとこですかね。

先輩

先輩

よくわからないけど、当たったってことかな。もう少し詳しく情報を頂戴。

アユム

アユム

いつもより売れたかな、と思ったので、キャンペーン結果を生成AIに分析してもらったところ、クーポンを配布した対象者のうち、有効期限内に購入した方について、こんな分析が出たんです。 

【生成AIによる分析結果】
・クーポンを使用して購入した人は購入者の30%
・クーポン使用者の平均購入金額は通常時の平均より1200円高い
・クーポンを使わずに購入した人(70%)の平均購入金額は通常時の平均より200円低い
・今回のキャンペーン期間中の購入者の平均購入金額は5100円

先輩

先輩

なんか算数の問題みたいな分析結果だね。ふむ、計算すると、通常時の平均購入金額は4880円、今回のキャンペーンで平均購入金額は220円上がったね。

アユム

アユム

え、通常時の平均購入金額を言ってないのに、なんでわかったんですか? 先輩ナニモノ?

先輩

先輩

アユムさんのヒントからわかるよー。生成AIの出してきた内容を自分でも確かめられるようにしようね。では、計算方法を考えてみて!

アユム

アユム

はーい……。

昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。

そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学苦手な社会人に対して指導をしているアジアゾウをこよなく愛するモリさん。

この記事を読むべき人:平均の計算が苦手な方 
この記事を読む必要がない人:平均の考え方を活用した問題が既に解ける人
この記事でわかること:グループごとの平均から全体の平均を逆算する解き方

「キャンペーン時の平均」から「通常時の平均」を逆算しよう

アユム

アユム

キャンペーンを打って、通常時より売れたかなと思ったので、結果を生成AIに入れてみたら 

クーポンを配布した対象者のうち、有効期間内に購入した方について分析したところ、クーポンを使用して購入した方は購入者の30%、クーポン使用者の平均購入金額は通常時の平均より1200円高く、クーポンを使わずに購入した方は通常時の平均より200円低く、今回のキャンペーン期間中の購入者の平均購入金額は5100円。 

って出てきたんです。それを先輩に伝えたら、通常時の平均購入金額は4880円だねと言われたのですが、これがどうやって計算できたのかがわからないです。

モリ

モリ

なるほど。生成AIにキャンペーンの結果分析を出力させたんですね。そして、生成AIが出力した結果を裏取りすることは大切ですね。では、早速考えていきましょう。

アユム

アユム

よろしくお願いいたします。

モリ

モリ

さて、キャンペーン期間内に購入した人の人数を1としましょうか。

アユム

アユム

出た、全体を1。今までも何度か出ていますが、何回聞いても1と仲良くなれないです。全体を1とするのは苦手です。

モリ

モリ

それでは、購入者数を𝒳人とおきましょう。人数と平均購入金額について表にまとめましょう。単位を入れるのを忘れずに。

アユム

アユム

うーん、どうすればいいんでしょう。こんな感じですか?

 

購入者全体 𝒳(人)
クーポン使用者 0.3𝒳(人)
クーポン未使用者 𝒳-0.3𝒳=0.7𝒳(人)
全体の平均購入金額 5100(円)
モリ

モリ

情報は整理できていますが、表の作り方を工夫するともっと見やすくなりますよ。

アユム

アユム

どうやって表にまとめればいいのか、いつも悩むんですよね。通常時の平均金額もわからないし。

モリ

モリ

表を作るコツは、比較したい項目を縦に並べることです。今回はクーポンの「使用者」と「未使用者」を比較したいので、この2つを縦に並べます。そして、それぞれについて知りたい情報「人数」「平均購入金額」を横の列にすると見やすくなりますよ。

アユム

アユム

こんな感じですか?

 

  人数(人) 平均購入金額(円)
購入者全体 𝒳 5100
クーポン使用者 0.3𝒳  
クーポン未使用者 𝒳-0.3𝒳=0.7𝒳  
モリ

モリ

いいですね。これでぐっと見やすくなりました。さて、通常時の平均購入金額を使って、クーポン使用者と未使用者それぞれの平均購入金額を表したいですね。

アユム

アユム

通常時の平均金額がわからないんです。

モリ

モリ

では、通常時の平均購入金額を𝒴(円)とおきましょうか。

アユム

アユム

となると、生成AIの分析結果から下のように表せます。

 

  人数(人) 平均購入金額(円)
購入者全体 𝒳 5100
使用者 0.3𝒳 𝒴+1200
未使用者 𝒳-0.3𝒳=0.7𝒳 𝒴-200
モリ

モリ

とてもいいですね。ところで、平均購入金額ってどうやって求めるんでしたっけ。

アユム

アユム

平均購入金額は、合計金額÷人数ですね。なるほど。列を1つ足して、合計金額の欄を設けます。

 

  人数(人) 平均購入金額(円) 合計金額(円)
購入者全体 𝒳 5100 5100𝒳
使用者 0.3𝒳 𝒴+1200 0.3𝒳(𝒴+1200)
未使用者 𝒳-0.3𝒳=0.7𝒳 𝒴-200 0.7𝒳(𝒴-200)
モリ

モリ

すばらしいです。今回のクーポン使用者と、未使用者の合計金額を足すと購入した方たちの合計金額になりますよね。

アユム

アユム

そっか、ということは
0.3𝒳(𝒴+1200)+0.7𝒳(𝒴-200)=5100𝒳
という式になるんですね。でも、𝒳𝒴とかがあると解けそうもないです。どうしましょう。

モリ

モリ

最初、全体の人数を1とおきましょうという話をしました。つまり、𝒳は、1とおけるんです。

アユム

アユム

𝒳に1を代入すれば𝒳が消えますね! となると
0.3(𝒴+1200)+0.7(𝒴-200)=5100
0.3𝒴+360+0.7𝒴-140=5100
𝒴+220=5100
𝒴=4880
あ、出た!

モリ

モリ

その通りです。とにかく情報を整理することがとても重要です。

アユム

アユム

最近、色々な分析を生成AI任せにしてますが、きちんと数字を確認することは重要ですねー。

モリ

モリ

生成AI使うと楽ですからね。でも、その結果が「なぜそうなるのか」を理解していると、もっとAIを使いこなせるようになりますよ。
ところで、私も最近ギャグを生成AIに作らせてるんですが、まだ私の方が勝っている気がしますね。自分比ですが。

アユム

アユム

勝ち負けの評価基準がわからない…。

モリ

モリ

この間、机の上のものを1つ取ったら、立てていたものが倒れて、順番に全部落ちていったんです。これを家庭版ピタゴラスイッチと命名しました。ちょっと面白かったですが、どうでしょう。

アユム

アユム

面白いかどうかは、微妙です。生成AIに聞いてみましたが、正直なところ、微妙ですと言われました。

モリ

モリ

うーん。勝負は五分五分といったところでしょうか。ではまた来月。

ポイント

  • 情報を整理する
  • わからない値は文字でおく
  • 合計金額の関係式を立てる
  • 生成AIの結果を検証する

今日の問題をおさらい

Q1. 既存のお客様にクーポンを配布した。クーポンを配布した対象者のうち、有効期間内に購入した方について分析したところ、クーポンを使用して購入した方は購入者の30%、クーポン使用者の平均購入金額は通常時の平均より1200円高く、クーポンを使わずに購入した方は通常時の平均より200円低く、今回のキャンペーン期間中の購入者の平均購入金額は5100円だった。通常時の平均購入金額はいくらか。

全体の人数を1、通常時の平均購入金額を𝒴円とすると、
0.3(𝒴 + 1200) + 0.7(𝒴 - 200) = 5100
0.3𝒴 + 360 + 0.7𝒴 - 140 = 5100
𝒴 + 220 = 5100
𝒴 = 4880

答え:4880円

モリ

モリ

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