【計算できる?】平均売上5000万円、佐藤さんの売上5000万円、彼の営業成績の偏差値は?|意外と理解していない偏差値
アユムさん、何の記事を読んでるの?
偏差値70の人が紹介している、英語ができるようになるための記事です。これで自分も偏差値70に近づけますかね。
英語の勉強を始めたんだね。ところで、その偏差値70の人は、どこで偏差値が70?
どこでってどういう意味ですか? 偏差値70は偏差値70ですよ。この人がどこかに行くと偏差値60になるってことがあるんですか?
それはそうだよ。偏差値は、母集団の平均で変わるんだから。
では問題。第1営業部の平均売上が5000万円、佐藤さんの売上が5000万円のとき、佐藤さんの営業偏差値はいくら?
えー、どうやって計算するんだろう……。
計算をしなくても、佐藤さんの営業偏差値は50だね。
はて? では山田さんは、ご自身の売上目標金額を超えて4800万円なんですが、偏差値52とかになります?
偏差値は頑張りとか、目標達成とか関係ないので、山田さんの偏差値は50以下だね。
あれ? そもそも偏差値ってなんだっけ? 偏差値って言葉、雰囲気で使っていたかも……。
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。
そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学が苦手な社会人に対して指導をしているアジアゾウをこよなく愛するモリさん。
この記事を読むべき人: 偏差値という言葉をあいまいなまま使っている方
この記事を読む必要がない人:統計を学習している方、
この記事でわかること:偏差値の意味、求め方
偏差値とは
モリさーん、偏差値ってなんですか?
お、今日は少し、高度な内容ですね。偏差値は、その集団(=母集団)の中である人(数値)がどの位置にいるかを、平均を使って相対的にあらわし、比較できるようにした指標です。
募集団?
募っていない、とはいえませんが、違います。母集団とは、対象の人や物の集まりを指す言葉です。
なんか言葉が難しい~。母集団によって平均って異なりますよね? ということは、母集団によって営業偏差値が60の人の売上金額は異なる、ということですか? 偏差値60だからといって、いつでもどこでも手放しに喜べるってわけではないんですね……。
そうですね。もし、みんなが素晴らしい売上を上げていて、その母集団の平均売上額が高ければ、ある人が営業成績を伸ばしても、相対的にその人の偏差値は低くなります。
えー、なんかショック。つまり、同じ売上金額でも、第1営業部と第2営業部では、部内での営業成績の偏差値が変わるということですか?
はい、おっしゃる通り。母集団の平均によって偏差値が変わります。
えー。じゃ、自分を高く見せるためには、平均が低い母集団にいたほうがカッコよく見えて、オトクってことですね!
まあ、そこはいわゆる鶏口牛後、悩みどころですね。母集団の中で平均点より低かったら、偏差値は50以下になります。偏差値だけで考えたら、平均点が自分の点より低い集団に行けば、偏差値は高くはなりますね。
なんか、偏差値ってもっと高尚なものだと思っていたのですが、母集団の中でどれだけかをあらわす順位表、みたいなものなんですね。偏差値が高いだけですごい、と思うのではなく、どういう母集団での偏差値なのかを知ることも重要なんですね。
あるいは、隣のクラスとの期末テストの結果など、ほぼ同じ条件で測る偏差値で考えたら、ここまで見てきたように、平均点が自分の点より下の集団にいたほうが、偏差値は高くはなります。
平均点の高いA組から低いB組にいったら偏差値がグーっとあがってうれしいですよね?
うーん、それはどうでしょう。繰り返しますが、それはあくまで同じ集団における評価です。A組が特進クラスで、B組が普通クラスだったとして、偏差値が上がったとしても、アユムさんの本来の実力は変わっていないですね。
なるほど、偏差値って高ければすごい、優秀! と受け取ってしまうことが多かったのですが、そんなことないんですね。
その通り。もちろん、状況によってはB組で優秀な結果を残したほうが、のちのち伸びる可能性もあるので、この例でも何が正しいかは判断できません。
ちなみに、私の姉妹の平均身長は150cmで、私も身長が150cmなので姉妹内では平均的、偏差値も50です。しかーし、全国的にみると同じ年代での身長偏差値は32.5と言われてちょっと驚いています。
モリさんは、態度の大きさで低身長をカバーしていると、モリさんの友達が言ってましたが、現実ではまぎれもない低身長ですね。
(そんなことを言ったのは誰だ…。)ここまでで、偏差値は母集団の中での相対的な位置を表すものだと理解していただけたかと。
標準偏差はデータのばらつき
では、その偏差値ってどうやって求めるのですか?
計算式は次の通りです。
偏差値=(個人の得点 - 平均点)/標準偏差×10+50
ヒョージュンヘンサ? なんか変さ?
テーマも難しいので、無理にギャグを挟まなくていいですよ。標準偏差とは、データのばらつきのことです。偏差値を求めるには、その母集団の中でデータがどれだけバラついているのかを知る必要があります。
バラつき?
たとえば、数学と英語のテストの結果があるとします。数学は100点満点、英語は200点満点です。数学の点数の平均は73.3点、英語の平均点は139.0点です。Aさんは数学が86点、英語が169点でした。Aさんは数学と英語、どちらのほうが偏差値が高いといえますか?
先ほどの話だと「標準偏差」がわからないと、偏差値を求められないんですよね?
その通り。データのばらつき、つまり標準偏差がわからないと相対的な位置はわかりません。だから、この段階では、偏差値は求められません。
標準偏差の求め方
では、標準偏差の求め方を教えてください。
標準偏差を求めるには、分散という値を求めます。分散は、各データから平均を引いた結果を2乗し、それらをすべて足してデータ数で割った値です。
ぶんさん……新しい言葉が多くて、ついていけなくなりそうです!
大丈夫です、一つずつ説明しますね。まずは、散らばりを求めます。散らばりは、それぞれのデータが平均からどれくらい離れているかで測ります。そこで、それぞれのデータから平均を引き、距離を求めます。
でも、データが平均より小さい場合、距離はマイナスの値になりますよね?
いい視点ですね。そのために2乗するのです。
なるほど。無理やり「正の数」にするんですね。
この計算で得られた値をすべて足して、データの数で割ります。
データ数で割らないと、距離の平均にならないですものね。
これが分散です。ただし、これは2乗した値の平均です。
ぶんさん、すけさん!
ひかえぃ~。ようやく標準偏差の登場です。標準偏差は、分散の正の平方根をとります。
へーほーこん。2乗するとそれになるみたいなやつですね。標準偏差の求め方、15秒くらいで忘れそうですが、理屈は納得できました。
Excelを使えば、STDEV.P関数で簡単に標準偏差を計算できますよ。
データを標準化しよう
それでは、ようやく、偏差値を求めましょう。たとえば、数学と英語のテストで満点が異なる場合(100点と200点)、そのままでは比較できません。そこで、比較するために平均点を0点にし、標準偏差を1にします。
標準偏差を1にする? そんなことできるんですか?
「1にする」「1とおく」という考え方は、この連載でも扱ってきましたね。
はい。ここでも標準偏差を1として、対象となる数値がどれだけ離れているかを出します。これを「標準化」と言います。そして、得点を標準化したものを「標準得点」と言います。
標準化された値は(データ - 平均値)/ 標準偏差 で求められます。
データから平均値を引いたものを、標準偏差で割るんですか?
はい、標準偏差のいくつ分離れているかを計算するので距離の「もとになる量」は標準偏差ですね。平均から標準偏差がいくつ分離れているかということです。
なるほど、その考えだと、標準偏差の値が違っても、「標準偏差あたり」なので「標準偏差を1とする」とできるのか。なんか言い回しが面倒〜。
偏差値を計算する
先ほどの計算の値は、マイナスが出る人がいます。Aさんの数学の値は0.79って出ました。なんか変です。これは変さ値?
その変さ値が「標準得点」です。そして、これから、変さ値を偏差値に変えましょう。なんか私、今、うまく拾いましたね(自画自賛)。
標準得点は値が小さいので10をかけ、大きくして、どれだけ離れているかの差をわかりやすくします。また、アユムさんの言うように、マイナスになってしまうこともあるので、真ん中(平均値:もともと0点)が50になるように+50をします。
なるほど、だから(データ - 平均値) /標準偏差× 10 + 50という式なんですね。ということは、0.79×10+50でAさんの数学の偏差値は、57.9ですね!
偏差値60ってどのくらい?
ところで、偏差値60って、その母集団の中でどれくらいの位置なんですか?
母集団のデータ分布を「正規分布」といって、平均値を頂点とした山型となり、あとはなだらかに左右対称であるとき、偏差値60は、上位約16%です。
また、偏差値40~60の間に、全体の約70%が含まれます。
ってことは、偏差値60以上であれば、100人のクラスで16位以内に入っているということですね。
正解です! そして、平均から標準偏差2つ分離れた範囲(上図の太い赤線とグラフの部分)は、全体の約95.4%であることが分かっています。つまり、95%あまりの人が、平均点から標準偏差2個分の範囲に収まっています。
へえ、偏差値について、ちょっとだけ理解できました。
え、ちょっとだけ?
偏差値を扱うときの注意
なんでもかんでも偏差値という言葉を使うのって、ナンセンスですよね。
でも、常になんちゃら偏差値って言われるじゃないですか。気にならざるを得ません。どういう偏差値だったら気にしなくていいのですか。
まず、適当に言っている偏差値は気にしない。数字がないものは論外です。
顔面偏差値とか…。
そして、母集団にある程度の人数がいないと、相対的な位置に意味がありません。だから、母集団の性質や人数をきちんと確認する。
学内偏差値と全国偏差値とかはどうなんですかね?
全国偏差値のようにデータが多い場合、正規分布に近くなり、偏差値はより正確になります。学内偏差値は、状況次第ですね。データが十分な人数だけあるのか、きちんと正規分布をとるデータなのか、そもそも試験の内容が適切なのかも関係してきますね。
なるほど。
左右対称の分布でない場合は、偏差値を感覚的に使えないのでお薦めしないですね。
たとえば、15人のクラスで、1人だけ100点で、残り14人が0点のテスト結果があったとしましょう。偏差値を求めると100点の人が偏差値87.4で、残りの人は47.3です。この偏差値に何か意味がありますか?
確かに、こういう場合は、役立てるのは難しい…。母集団とデータの散らばり方(正規分布)にも、注目する必要があるんですね。これからは、偏差値をむやみに使わず、惑わされず、少しでも使いこなせるように生きていきます!
ポイント
- 偏差値とは、その集団の中で該当する人(数値)がどの位置にいるかを平均を使って相対的にあらわし、比較できるようにした指標
- 「偏差値=(個人の得点 - 平均値)/標準偏差 ×10+50」で求められる
- 分散は、各データから平均を引いたものを2乗したものをすべて足してデータ数で割ったもの
- 標準偏差は、分散の正の平方根をとる
今日の問題をおさらい
Q1. 営業部の平均売上は5000万円、佐藤さんが5000万円売り上げたとき、佐藤さんの営業成績偏差値は?
答え:偏差値50
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