CDNって何? 訪問者のストレスを軽減しよう! ―Web担当者が知っておくべきITインフラ基礎知識
コロナ禍でオンライン上の情報の重要性が急速に高まり、Webコンテンツがビジネスの成功を左右する時代となっている。その一方で、小規模サイトなどでは、「慢性的にサイトの表示が遅い」「ニュースで紹介されたのに、サーバーがダウンしてサイトが表示されない」などの事態が起きても、管理者の知見やリソースが足りず、なかなか解決に至らないケースもある。
そうした状況を簡単に解決できるのがCDN(Content Delivery Network)である。本記事では、CDNとは何か、仕組みやメリット、導入する際にどんなポイントに気を付けて選べばいいのかを専門家にわかりやすく説明してもらった。
アクセス増でサイトダウンを防ぐ!
小規模サイトも無関係ではないCDNの価値
コンテンツ配信を最適化する「CDN(Content Delivery Network)」という名前を、Web担当者なら一度は耳にしたことがあるだろう。一方で、「大規模なコンテンツ配信サービスが使うもの」「小規模サイトには関係ない」というイメージも根強い。
しかし、Webサイトの重要性が従来以上に高まっている昨今においては、大規模サイトだけでなく、小規模なWebサイトやコーポレートサイトなどにとっても、CDNがもたらすメリットは大きい。
例えば、下記のような事態に困ったことはないだろうか。
- 自社商品がSNSでバズり、ECサイトにアクセスが集中! サーバーがダウンして、機会損失につながってしまった
- 新商品のリリースを出したところ、商品サイトへのアクセスが一気に増加。しかし、サイトが重くてなかなか表示されない
- サイトのコンテンツの質を向上させても、検索順位があと一歩上がらない。サイトの表示速度が遅いせいだろうか
- 自社サイトへのアクセスは通常通りなのに、なぜか表示が遅い。共用サーバーを使用している他社にアクセスが集中しているようだ
しかし、こうした事態が生じたとしても、小規模サイトの管理者では知見やリソースが足りず、なかなか解決に至らないことも珍しくない。そんな悩みが、CDNを導入することで簡単に解決可能だとしたらどうだろうか?
今回話を聞いたIDCフロンティア(IDCF)の赤星智子氏は「以前はCDNと言えば大規模なメディアやECサイトに導入するものというイメージが強かったでしょう。しかし昨今は、SMBの小さなお客様でもCDNを導入する企業が増えています。小規模サイトでもCDNを使うリスクはほぼありません。一方で、導入するバリュー(価値)は大きいと思います」という。
CDNの仕組みとメリット
それではCDNとは何か、簡単に仕組みを説明しよう。
CDNとは、企業のWebサイトの内容をコピーして一時的に保持し、ユーザーがそのサイトにアクセスしようとした時に、アクセスを肩代わりして受けてくれるキャッシュサーバー群のことだ。キャッシュサーバーは世界中に配置されており、ユーザーは近くのサーバーにデータを取りに行くことになる。
つまり、CDNを利用すれば、大元の企業Webサーバー(オリジンサーバー)の負荷は大幅に下がり、サイトへのアクセス集中によりサーバーが落ちることを回避することが可能になる。さらに、サイト表示速度も速くなるというわけだ。
メリット① とてつもなくアクセスが増えてもコンテンツを表示し続ける
キャッシュサーバーは、コンテンツ配信向けにチューンナップされたシステムであり、通常の企業が使うWebサーバーとは異なる。企業の商品がテレビで紹介されたり、ネットでバズったりなどしてアクセスが急増してもコンテンツを表示し続け、機会損失を回避できる。
メリット② サイト表示速度が速くなる
前述した通り、CDNのキャッシュサーバーは高性能のため、アクセスするユーザーにとっては単純に「サイトがサクサク表示される」という状態ができあがる。
また、アクセスが増えてきたからサーバーを増強したのに、あまり速くならないと悩んだことはないだろうか。これは、サーバーの処理能力を増やしても、インターネットに出て行く回線の帯域が不足しているためだ。つまり、オフィスを増築して受付窓口を増やしたが、エレベーターが1機しかないままなので、訪問客をうまくさばけないという状態である。
かといって回線とサーバーを調達して拡張すると固定費は増えるばかり。それならば、CDNを使って外でさばいてもらう方が企業にとってメリットが大きい。専門サービスのCDNなら、もちろん回線は爆速だ。
メリット③ 画像を自動で最適化
「無駄に大きいサイズの画像は、表示が遅くなるからダメ」というのは、Web担当者には周知のことだ。しかし、さまざまな部署や外注先から、統一されていないサイズの画像が集まってくるため、Web担当者がそれをいちいちリサイズ・軽量化しなければならないということもあるだろう。
最近のCDNは、そんなWeb担当者の手間を肩代わりして、キャッシュサーバー内で画像のリサイズや軽量化などの最適化をしてくれるものもある。
CDNを使うとSEOにも有効な対策がとれる
Webサイトの表示速度は、SEOにも無関係ではない。Googleは「ユーザーにとって価値のあるサイトを上位に表示する」というポリシーを貫いており、内容やデザインが優れていても、表示が極端に重ければ閲覧者にとって快適ではないため評価が下げられてしまう。
現状では、「あまりにひどい場合には評価が下がる」程度の優先度だが、2021年5月からランキング要素に組み込まれる予定の「Core Web Vitals」では、ユーザー体験について以下の3つの指標を評価対象にすることが発表されている。
- LCP(メインコンテンツが表示されるまでの時間)
- FID(クリックやテキスト入力などを行った時の反応速度)
- CLS(視覚の安定性)
このうち、LCPやFIDについては、CDNを導入して読み込み速度を改善する対策が有効だ。
表示や応答が遅い理由はさまざまだ。「画像が大きすぎる」「1ページのコンテンツ量が多いのに遅延読み込みを実装していない」など、自分たちで改善できるケースもあるが、共用型レンタルサーバーを利用している時に、別のユーザーの負荷が上がっているなど、自社でコントロールしようがない原因もある。
一方でCDNは、どのような理由であっても配信スピードを上げることができる、シンプルな解決策なのだ。
CDNを選ぶポイント
それでは、SMB企業がCDNを導入する際には、特にどういったポイントに気を付けて選ぶべきだろうか。大きく分けて下記の2点があげられる。
- スモールスタートが可能で導入しやすい
- Web担当者の知識がなくても使いやすい
1. スモールスタートが可能で導入しやすい
特にSMBでは、スモールスタートが可能かどうかは大きいポイントになる。下記のようなポイントに注意してCDNを選ぼう。
- 初期費用がかからない
- 安価で、転送量や利用料金のコミットがない
- 契約期間のしばりがない
- 日本円で請求が来る
金銭面において、CDNの利用料金は、基本的にCDN経由で配信したデータ転送量に対して課金される。「最大○○TBまでいくら、超えた分は従量課金」という定額料金(コミットプラン)になっていることが多いが、これは大規模なコンテンツ配信を前提としたプランであり、それほどの転送量がないSMBの場合は重荷となってしまう。転送量や最低金額のコミットがないプランを選んだほうがいいだろう。
また、「一度導入したら必ず1年は契約しなければならない」「途中解約したら違約金が発生する」などの期間しばりがあるCDNも多いが、そうなると気軽なお試し導入がしづらくなってしまう。
地味だけど無視できないポイントが「日本円で請求が来るか」だ。CDNは海外の企業がサービスであることが多く、ドルで請求が来ることが多い。経理的には日本円で請求が来て欲しいところだろう。
2. Web担当者の知識がなくても使いやすい
技術的な知識がなくてもわかりやすいUIや操作性の良さも大きなポイントだ。
- UIが日本語で、日本人向けにローカライズされている
- カスタマイズが簡単にできる
- 自動で画像のリサイズや軽量化などの最適化を行ってくれる
外国産のCDNの場合、一般的にUIは英語である。英語に抵抗がある担当者にとっては、まずこれが一つ大きなハードルとなってしまう。また、仮に言葉だけが日本語化されていても、画面のレイアウトなど日本人にとってはわかりづらいこともある。日本人向けにローカライズされたものを選びたい。
また、キャッシュ管理などもろもろの設定は管理画面から行えるとしても、ちょっとしたカスタマイズを行いたい時もある。そんな時にいちいちコードを書かなければならないとしたら、技術的な知識のない担当者には荷が重い。コードを書くスキルがなくてもカスタマイズが行えるようなサンプルが用意されているCDNを選びたいところだ。
前述した通り、多くの画像を扱うサイトにおいては、一つ一つの画像をチェックし、用途に合わせてリサイズし、軽量化して最適化する作業には膨大な時間がかかってしまう。画像を多く扱うサイトであればあるほど、画像を自動で最適化できる機能は必須だろう。
これらの条件をすべて満たしているのが、IDCフロンティアの提供する「IDCFクラウド CDN」である。
世界で躍進する新興のCDNを日本語UIで
IDCフロンティアのIDCFクラウド CDNは、機能性の高さから世界でシェアを急拡大させている「Fastlyのエッジクラウドプラットフォーム」をベースとしている。Fastlyの大きな特長は下記だ。
① キャッシュ削除が速い
CDNを利用する際には、コンテンツのキャッシュ削除スピードが非常に重要である。なぜなら、オリジンサーバーでコンテンツを更新しても、キャッシュサーバーにコンテンツ更新が反映されるまでは、サイト訪問者には更新前の古いコンテンツが表示されてしまうからだ。つまり、配信するコンテンツを更新したい場合、オリジンサーバーのコンテンツを更新した後に、キャッシュサーバー上の古いコンテンツのキャッシュを速やかに削除する必要があるのだ。
Fastlyは、オリジンサーバーのコンテンツを更新してからキャッシュが削除されるまでのタイムラグがほとんどない。他のCDNの場合、数十秒ほどのタイムラグが発生することもあるが、Fastlyの場合おおよそ150ミリ秒と“爆速”だ。
② ログ収集先の選択肢が豊富
Fastlyは、ログの置き場所を「Amazon S3」「Google BigQuery」をはじめとした豊富な選択肢から選ぶことができる。
CDNを使うと、キャッシュサーバー側で多くのWebアクセスをさばくため、オリジナルのWebサーバーへのアクセスは減る。そのため、アクセスログを収集して解析する際にはCDNのキャッシュサーバーのログを取りに行かなければならない。このログを、CDN事業者のストレージに取りに行かなければならないとしたら、そのために解析のフローを変更する必要が生じてしまうだろう。
しかし、Fastlyの場合はログの置き場所の選択肢が豊富なため、今まで使っていたストレージサービスがそのまま使える可能性が高く、社内のsyslogサーバーに取り込むことも可能。つまり、ログ解析の運用を変更しなくていいというわけだ。
③ 柔軟な設定が可能
Fastlyでは、キャッシュの保管ポリシー、削除ポリシーなどを柔軟に設定できる。管理画面で生のコードを表示して書き換えたり、GitHubなどの使い慣れたツールに書き出して編集したりできるため、エンジニアの評価が高い。
Fastlyを日本語UIおよびスモールスタートが可能な形で提供するIDCフロンティア
IDCフロンティアは、このFastlyのUIを日本語化し、かつ使いやすいカスタマイズを施して「IDCFクラウド CDN」として日本市場向けに提供している。
日本語UI
国内でFastlyを提供している事業者はいくつかあるが、UIを日本語化して提供しているのはIDCフロンティアだけだ。
SMBの方や現場のWeb担当者さまにとっては、英語UIのハードルは高いと考え、日本語にローカライズした日本版CDNとして、IDCFクラウドのサービスとして提供することにしました。単純に日本語に翻訳しただけではなく、日本の利用者がより使いやすいように画面レイアウトや導線、言葉の表現なども工夫しています(赤星氏)
導入しやすいオンデマンド型
IDCFクラウド CDNは、IDCFクラウドのアカウントさえあれば、Webコンソールから設定していくだけですぐに使えるようになるオンデマンドのCDNだ。インテグレーションを業者に頼む必要もなく、時間的、コスト的にもお手軽である。また、設定画面も、レンタルサーバーを触れる程度のスキルがあればとっつきやすい。オリジンのWebサーバーがIDCフロンティアのサービスでなくても、利用中のレンタルサーバーなどと組み合わせてCDNを利用することも可能だ。
初期費用不要、完全従量課金でスモールスタートが可能
IDCFクラウド CDNは、初期費用不要、完全従量課金という課金形態で、“使った分だけ”利用できるクラウドのメリットをそのまま享受できる。
価格設定も、アジアや欧米の場合、転送量が100TBまでは1GB当たり9円、100TBを超えると1GB当たり6円という安価さだ。毎月の料金が決まっていないと予算を取りにくいという企業のために定額プランも用意しているが、いずれも他社と比べて優位性のある価格を設定している。
IDCフロンティアはレンタルサーバー「Zenlogic」のような“価格に敏感”な小規模事業者向けサービスを提供している。IDCFクラウド CDNは、そのようなユーザーにとっても使いやすいCDNに仕上がっているというわけだ。
コードの知識がなくても簡単カスタマイズ
一方で、柔軟な設定やカスタマイズができるというFastly本来の良さも受け継いでいる。基本的な設定はコーディングの知識がなくても管理画面から設定できるが、さらにちょっとしたカスタマイズがしたい時もあるだろう。
IDCフロンティアでは、たとえコードを書く知識やスキルがなくてもカスタマイズができるよう、よく使うカスタマイズ内容を「サンプルスニペット」として設定しており、プルダウンメニューから選ぶことで、指定した場所にコードが挿入されるようになっている。
Fastlyは、キャッシュ制御のカスタマイズの柔軟性から、エンジニアの評価が高いことで有名なCDNです。カスタマイズしたいけど自分でコードを書くにはハードルが高い、といったWebサイト管理者の方でも、サンプルスニペットを使えば、細かなキャッシュ制御も簡単にカスタマイズ設定することが可能です。サンプルスニペットは、サポート部門によくお問い合わせいただく内容を分析し、随時追加しています(赤星氏)
「イメージオプティマイザー」により自動で画像を最適化
オプションサービスとして提供する「イメージオプティマイザー(Image Optimizer)」は、画像のリサイズや軽量化などの最適化を自動で行うことで、作業工数を大幅に削減してくれる。
注目したいのは、WebP(ウェッピー)と呼ばれる次世代フォーマットへの変換も自動化できることだ。WebPは、JPEGに代わるWeb向けの次世代画像フォーマットと言われており、ファイルサイズが小さくても画質が落ちない。GoogleはWebPを使っているサイトの評価を上げるようになると言われているため、画像はWebPに変換しておきたいところだ。
IDCFクラウド CDNの活用事例
実際にIDCFクラウド CDNを利用し、Webサイトの困りごとを解決した事例をIDCフロンティアの矢谷氏に聞いてみた。
事例① インフラエンジニアがいなくても安心
とある大手スポーツ新聞のWeb版では、記事がニュースサイトのトップなどで取り上げられると一気にアクセスが集中し、サイトの表示速度が遅くなることがしばしばあったという。
同社はIDCフロンティアのレンタルサーバーを利用していたため、IDCフロンティア側からも負荷状況に合わせたスケールアップの提案などを行っていたが、「その会社はインフラエンジニアがまったくいないので、大変お困りでした」(矢谷氏)という。
そこにIDCFクラウド CDNを導入したところ、急激なアクセス増加があってもサーバーダウンは起きなくなり、サイトの表示速度もグンと速くなった。そもそもインフラの状況を気にする必要がなくなったため、同社には非常に喜ばれているという。このサイトでは、今後イメージオプティマイザーの導入も検討している。
SMBにおいて、インフラエンジニアがいない状況というのは、よくあることだろう。そうした状況でもクラウドCDNならば手軽に導入・運用できる。
事例② アクセス集中が予想される時期のみ稼働
次は、とある企業のコーポレートサイトの事例だ。同サイトは通常はあまりアクセスがないが、決算発表時期に限っては株主等がIR情報に一斉にアクセスしてくる。そうした時にサイトがダウンしてしまうと悪印象を与えてしまうが、かといってピーク時期に合わせてサーバーを用意しておくのも、通常時は無駄なコストになってしまう。
そこで同サイトは、決算発表時期のアクセスを想定してIDCFクラウド CDNを導入するという解決策に至った。
同社は、CDNを申し込んだり止めたりするのも面倒なので、年間を通してCDNを常時設定されておられます。アクセスが集中する時だけお金を払ってWebサイトを安定稼働させ、通常時はほとんど利用料がかからない。これが完全従量課金のいいところです(矢谷氏)
事例③ アクセス集中が予想される場合の準備として
とあるホビー用品の製造販売企業では、新製品をリリースするタイミングでCDNを導入し、アクセスが落ち着いてきたらCDNの導入をやめるという運用をしている。
このほかにも、「メディアの取材を受けてニュースに出る」、「バズりそうなキャンペーンを始める直前」というタイミングで導入する企業もある。
申し込みや解約がWeb上で気軽に行えて、初期費用や契約期間のしばりがないからこそ可能な運用法だと言えるだろう。
IDCFクラウド CDNは、「コストをかけて導入してもどのくらい使われるのかわからない」「元がとれるのかわからない」といったリスクがとても低い。保険のようなつもりで入れていただくだけで、いろいろなメリットがあるんです(赤星氏)
世界でシェアを伸ばす「Fastly」は、優れた機能性とカスタマイズ性を備えたCDNだ。
そんなFastlyの優れた機能面はそのままに、日本企業向けにUIや操作性などカスタマイズを加え、スモールスタートしやすい価格形態で提供しているのがIDCフロンティアの「IDCFクラウド CDN」だ。レンサバやクラウドの延長で使えて、SMBでも導入のハードルが低い。
- Webサイトの表示を早くしたい
- アクセス集中でWebサイトが落ちてしまい、機会損失につながったことがある
- 画像のリサイズや軽量化を簡単に行いたい
- あまり予算がないのでとにかく安価にCDNを導入したい
こうした企業は、一度、IDCフロンティアの「IDCFクラウド CDN」を検討してみてはいかがだろうか。
- IDCフロンティア「IDCFクラウド CDN」
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