Webサイトの高速化と安定性を両立! さらに低コストも実現するCDNとは?
Webサイトの高速化と安定運用を両立する手段の1つとして注目されるCDN(Content Delivery Network:コンテンツデリバリーネットワーク)。JOCDNが提供する国産CDNサービスは、さまざまな動画配信サービスに活用されており、近年はWebコンテンツの配信などにも幅広く活用されるようになってきたという。同社技術部の宮地慧氏が「Web担当者Forum ミーティング 2023 春」に登壇し、CDNのメリットなどを紹介した。
多くの動画配信サービスで導入されている“国産”CDNサービス
JOCDNは日本での高品質なコンテンツ配信サービスの提供を目指し、2016年12月に IIJと日本テレビの合弁会社として設立されたCDN事業会社だ。現在は、東京、大阪、名古屋の民放局とWOWOW、NHKの出資により運営され、NHKプラスやHulu、TVerなど多くのコンテンツ配信サービスを裏側で支えている。テレビ業界の厳しい配信基準のもと、技術をブラッシュアップさせながら共に成長を遂げてきた。
現在は、放送業界だけでなく、国内向けのゲーム配信やWebサイト配信、eラーニングなどにもCDNサービスを提供している。
2017年のサービス開始から扱った転送量は、2017年と比べて現在は約20倍に増加しており、日常的に1Tbps超の配信を実施し、同時接続数100万超という規模に成長しており、ライブ配信では最大配信帯域830Gbps/同時接続数70万以上という規模の実績を持つ。
JOCDNは、CDNを支える配信サーバーからインターネットの接続ポイントの運用監視に至るまで、自社による一元的なサービス基盤を敷いており、品質の高さや迅速な障害対応を実現させている。配信サーバーを含めてすべて国内単一の自社設備にて管理しているため、海外からの指示を待つことなくスピーディな判断・対応が可能だ。
運用と開発のエンジニアが同拠点内におり、迅速で的確な意思疎通ができるのも強みです。なにかトラブルが生じても早期に連携し、スムーズに解決できます(宮地氏)
また、CDNの重要ポイントである「設備のスケール」についても、国内での迅速な判断のもと、パートナーであるIIJとも密に連携し、柔軟な対応を実現している。宮地氏は「グローバルな企業と比べるとスケールは及びませんが、その中でも選んでいただけるよう、国内の事業者として国内の顧客企業に対し、よりきめ細やかなサービス提供を実施しています」と胸を張った。
高速で落ちないWebサービスにも活用される「CDN」とは
そもそもCDNはContent Delivery Network(コンテンツデリバリーネットワーク)の略称で、インターネット上でコンテンツ配信を高速かつ効率よく行う技術・サービスのことを指す。
通常、Webサイトにアクセスする場合、ユーザーはブラウザ上でリクエストをサーバーに向けて送信して、サーバーから応答を受け取ってコンテンツを表示する……という流れになる。しかし、多数のユーザーが同時にアクセスする場合、通信の遅延やサーバーへのアクセス集中が避けられない。それを解決するのが、CDN技術でありサービスとなる。
具体的には、動画や画像、Webページなどのコンテンツを、分散配置されたサーバーにキャッシュ(コピー)として格納。ユーザーのリクエストに対して、近いところから配信することで、オリジンサーバーの負荷を低減しながら、高速かつ効率よくコンテンツを届けることができる。つまり、オリジン:ユーザーが1:Nだったのが、N:Nになるというわけだ。
安定的な配信とコスト抑制を両立するJOCDNのCDN
ますます利用用途が広がるCDNだが、これを快適なものとするためには、広帯域でハイスペックなキャッシュサーバーとストレージの配備が必要となる。
JOCDNでは、CPUやメモリ、ストレージの性能など、高性能かつ100Gbps以上のネットワークインタフェースを持つサーバーを配備し、潤沢なリソースを活用してサービスを構成している。そのため、多数のユーザーへ広帯域・高速にコンテンツを提供できるだけでなく、CDNを使わずにコンテンツを配信する場合と比べて耐障害性を大幅に向上させることが可能だ。
そして、「落ちにくく安定したコンテンツ配信」を実現するとともに、もう1つ大きなメリットとして、「コスト」を抑えられることが挙げられる。大量のアクセスをCDNが受け持つため、オリジンサーバーへのデータ転送量を減らすことができる。
突発的な大量アクセスに備えて余剰リソースを抱える必要もなく、使った分だけ支払う従量課金制でコストメリットが大きい。また、サーバーリソースの構築・運用・監視などに費やされる人的リソースについても大幅に抑えることが可能だ。
このようにCDNを活用するメリットは、「大量アクセスによるオリジンサーバーの負荷低減」や「スピーディなコンテンツ配信」、「対障害性の向上」「コストパフォーマンスの向上」など多岐にわたる。高速で広帯域のデータのやり取りが必要な企業にとって魅力的といえるだろう。
CDN活用のメリットを引き出すコンテンツの特性に合わせた適切なオリジンサーバー設定
ただし、コンテンツのコピー(キャッシュ)が想定しない使い方をされないよう、有効期限を設定し、管理するなど注意点もいくつかある。CDNを利用しない場合、管理者がサーバー側のコンテンツの変更や削除を行うと、ユーザーは即座に変更されたコンテンツを見ることができ、削除されたコンテンツはアクセスできないようになる。
CDNを利用している場合、コンテンツの特性に合わせた適切なオリジンサーバーの設定を行わないと、不必要なサーバー負荷やキャッシュヒット率の低下によるアクセススピードの劣化を招く可能性がある。
たとえば、オリジンサーバーが返すCache-Controlヘッダーを変えることで、1つのWebサイト内だとしても、異なるコンテンツの特性に応じてキャッシュの振る舞いをコントロールすることが可能だ。
以下はコンテンツ特性とその設定方法の例だ。
設定例①CDNでオリジンサーバへのアクセスを集約化しつつ、コンテンツの変更はある程度即時反映したい
「Cache-Control: max-age=30」を設定し、約30秒後には更新後のコンテンツがユーザからアクセスできるようにする。
設定例②コンテンツの変更が全くないので、CDNのキャッシュを最大限有効に使いたい
「Cache-Control: max-age=94608000」などの長い時間を設定し、オリジンサーバへの更新確認頻度も低減させる。
設定例③認証情報を表示するページを保護したい
「Cache-Control: no-cache」を設定し、必ずオリジンサーバから最新のコンテンツを取得し、キャッシュさせない。
こういったCDNの挙動をコントロールするものはEtagやVaryヘッダーなど他にもある。またHTTPメソッドやステータスコードによってもCDNの挙動が異なる場合があるため、CDNを効率的に利用するには事前の検証が重要となるだろう。
宮地氏は「CDNはそれゆえ差別化の仕組みが難しく、付加価値の比較に寄ってしまう傾向があります。しかし、そうした土俵でも負けないよう、コスト面でも努力しています」と語り、「その上で、国産ゆえにさまざまな意見や要望をいただくことはありがたく、真摯に受け取っています。今後も期待に添えるよう頑張っていきたいと思います」と意欲を語り、セッションのまとめとした。
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