グローバルSEO展開をうまく進める15の手順(中編:ドメインの選択とコンテンツの適応)
サイトのグローバル展開をうまく進めるSEOの15の手順を学ぶこの記事は、前中後編の3回に分けてお届けしている。中編となる今回は、「ドメイン名のベストプラクティスを探る」と「コンテンツのトランスクリエーション」について見ていこう。
- グローバル展開の決定と事前調査(前編記事)
- キーワード調査
- 競合分析
- ドメイン名のベストプラクティスを探る(この記事)
- ウェブサイトの構成を適合させる
- ドメイン名はブランド名を使うかローカライズするか
- 優先順位を決めてURL構造を選択する
- Google Search Consoleのインターナショナルターゲティングを利用する
- コンテンツのトランスクリエーション(この記事)
- コンテンツの翻訳はalt属性やURLも忘れずに
- 文化、カレンダー、特殊文字、規制などへの適応
- 外部リンクの追加
- 技術的な検討事項(後編記事)
- hreflang属性の実装でどこの国の言語か示す
- html要素のlang属性と、metaタグのcontent-languageで言語と国を指定
- IPベースのリダイレクトはデメリットも
- サーバーの場所はサイト訪問者に近い方が良い
- オフページのベストプラクティス(後編記事)
- 国ごとに戦略を立ててリンクビルディングする
- ローカルサイテーションとNAPの一貫性を保つ
- さまざまな検索エンジン(後編記事)
③ ドメイン名のベストプラクティスを探る
自国の市場と同様に、新たなグローバル市場でもドメイン名と構造の選択は、現地での検索順位に加えてブランドの認知度に影響する可能性がある。
グローバルSEO成功の手順3
ウェブサイトの構成を適合させる
グローバル展開するには、異なる国や言語、あるいはその両方に適合させる必要がある。
多地域サイトとは、複数の国をターゲットにしたウェブサイトのこと(airbnb.comなど)。
多言語サイトとは、複数の言語をターゲットにしたウェブサイトのこと(tiqets.comなど)。
グローバルサイトとは、世界のオーディエンスをターゲットにしたウェブサイトのこと(theculturetrip.comなど)。
ウェブサイトに必要なバージョンの数は、ターゲットにしたいオーディエンスによって異なる。
国ターゲティング ―― 1つまたは複数の特定の国をターゲットにすること。この場合、国ごとに1つのバージョンのウェブサイトが必要になる。
言語ターゲティング ―― 同じ言語を話すオーディエンスをターゲットにすること。この場合、その特定の言語で1つのバージョンのウェブサイトが必要になる。
グローバルサイトというアプローチは、オーディエンスがすでに世界中にいて、カスタマイズの必要がない場合には効果的だろう(例:Moz Blogのようなマーケティングブログ)。とはいえ、ほとんどの人は自分の言語で閲覧したいと思うし(「CSAリサーチ」が発表した調査結果)、ローカライズされていないドメイン名では検索結果の上位に表示されにくい市場もある。
グローバルSEO成功の手順4
競合分析ドメイン名でブランド名をローカライズするか否か
ドメイン名には、ブランドや企業に関連する名前と、現地の市場に合わせてローカライズした名前のどちらかを使用できる。
ターゲット市場に関連するキーワードを組み込めるという理由で、ドメイン名をローカライズしている企業もある。たとえば、オンラインの中古自動車ディーラーであるドイツのアウトアインス・グループ(AUTO1 Group)は、ターゲット市場ごとにドメイン名を変えている。
一般的には、ドメイン名としてブランド名または企業名を使用することを推奨する。市場をまたいでブランドのオーソリティや認知度を高められるからだ。ただし、ブランド名の意味があいまいな場合や、特定の言語で発音しにくい場合は、ドメイン名を現地の市場に合わせた方がいい。
グローバルSEO成功の手順5
優先順位を決めてURL構造を選択する
ジオターゲティングとは、ユーザーがいる場所に応じて適切なバージョンのウェブサイトを表示することだ。この場合、URL構造は検索エンジンとユーザーの双方にとって目安になるため、その選択は非常に重要な意味を持つ。
グローバル市場をターゲットにするには、URLは以下の3通りの方法で構造化できる。
- ccTLD ―― 国別コードトップレベルドメイン(.fr、.de、.nlなど)
- 例:example.fr、example.de、example.nl など
- gTLD ―― 汎用トップレベルドメイン(.com、.org、.netなど)+ローカルサブディレクトリ(/fr、/de、/nlなど)
- 例:example.com/fr、example.com/de、example.com/nl など
- サブドメイン ―― ルートドメインに付加されたローカルサブドメイン
- 例:fr.example.com、de.example.com、nl.example.com など
ただし、注意してほしい。一部のウェブサイトでは、ユーザーの現在位置に応じたコンテンツを表示するためにパラメータを使用している。たとえば次のような形だ:
https://www.example.com?loc=fr
この手法はジオターゲティングには推奨されていない。検索上位に表示される可能性を最適化するには、バージョンごとに固有のURLを設定する必要がある。
これらのURL構造にはそれぞれにメリットとデメリットがあるため、設定に正解はない。参入を決めた市場、事業を展開している業界、利用可能なリソースを考慮して、構造を選択する必要がある。
また、次の要素も考慮しなければならない:
利用しているCMSによっては、URL構造の選択が制限される場合がある。
国によっては、ドメイン名に特定の規制がある。※一部のccTLDについては、その国の居住者かその国に本社を置く企業しか登録できない(ノルウェーなど)。
グローバルSEO成功の手順6
Google Search Consoleのインターナショナルターゲティングを利用する(記事掲載時点ではサポート終了)
gTLDを使用したURL構造の場合は、Google Search Consoleの※インターナショナルターゲティングレポートを利用して、ウェブサイトが特定の国からの訪問者をターゲットにしていることをグーグルに知らせることができたが、2022年の9月にサポートが終了した。レポートも現在は見られなくなっている。
③ コンテンツのトランスクリエーション
「トランスクリエーション」とは、
- トランスレーション(翻訳)
- クリエーション(制作)
を組み合わせた造語で、文章を異なる言語や文化に合わせる考え方のことだ。新しい市場に参入する場合は、ウェブサイトを現地のユーザーに合わせて、深い関連性をもたせることが不可欠となる。
グローバルSEO成功の手順7
コンテンツの翻訳はalt属性やURLも忘れずに
まったく新しいコンテンツを作成するのは時間がかかる。そのため、新市場に進出する場合、ほとんどの企業は元からあるウェブサイトのコンテンツを翻訳することを選択する。
自国の市場と同様、コンテンツの質はウェブサイトの検索順位に影響する。新しい言語で適切なキーワード調査をせず、新しいユーザーの検索意図に関する知識もないままにコンテンツを翻訳すると、現地のユーザーに合わない低品質で関連性の低いコンテンツになってしまいかねない。一定の時間をかけてコンテンツ開発プロセスを拡張し、潜在的な違いを明らかにしよう。
また、コンテンツ本体だけでなく、ページ上のすべてを翻訳する必要があることを覚えておいてほしい。つまり、次のような要素も翻訳し、見出しもローカライズする必要があるということだ:
- HTMLのtitle要素
- img要素のalt属性
- URL内のパス名などで使っているキーワード
- meta descriptionなどのmetaタグ
- OGPやTwitter Card用のmetaタグ
- などなど
1ページ内で複数の言語が検索エンジンに検出されると、低品質とのシグナルが送信され、検索順位に影響を及ぼす可能性がある。
グローバルSEO成功の手順8
文化、カレンダー、特殊文字、規制などへの適応
ある国の言語を話しても、その国の人と話すことにはならない。どの国にも独自の話し言葉があるし、味覚やユーモア、物の見方などの点で文化の違いがある。
これらの特徴は、国によってまったく違うこともある。そのため、コンテンツの制作は、対象の国や文化をルーツとするネイティブが管理する必要がある(少なくともその国や文化に詳しい人物)。
たとえば、以下の5つの違いには気をつけたい:
- 国別のコンテンツカレンダー
- 通貨
- 決済手段
- 特殊文字の使用
- 現地の規制
それぞれについて説明する。
国別のコンテンツカレンダー
市場ごとに異なる国家や宗教の行事や季節などを把握することが重要だ。国によって独自の特徴があり、コンテンツやプロモーションはそれに合わせる必要がある。
通貨
ウェブサイトで使用する通貨は、理想を言えばターゲットとする国の通貨にしたい。グローバルサイトでは、通貨の選択機能でユーザーが通貨を切り替えられるようにすることが不可欠だ。ほとんどのCMSでは、この機能を効率的に管理するためのプラグインをインストールできる。
決済手段
可能な限り、ユーザーの希望に応じて各種の決済手段を提示するのが望ましい。オランダのiDEALやスウェーデンのKlarnaのように、一部の国でのみ普及している決済手段もある。
特殊文字の使用
地域によって、以下のような文字が使われている。
- 非ラテン語系言語(キリル文字、中国語、日本語など)
- 特殊文字(ß、ü、å、œ、ç、ø、ñなど)
URLは、ASCII(情報交換用米国標準コード)文字セットのみを使用して記述し、提示する必要がある。そのため、特殊文字を含むURLを適切に処理するには、ブラウザで有効なASCII形式にエンコードしなければならない。
ほとんどのブラウザは非ASCII文字をサポートしており、ユーザーにはエンコードされない状態で表示される。ただし、ブラウザのURLをコピー&ペーストすると、以下の画像のようにエンコードされた状態で表示される。
そのため、URLに特殊文字が使われていると、「共有しやすさ」が低下する。それだけでなく、検索エンジンの中には、特殊文字が含まれるURLを効果的に解析して認識することが難しいものもある。
この問題を回避するには、※音声表記を使えばいい。たとえば、中国市場をターゲットにしている場合は、URLに漢字ではなく※ピンイン(標準中国語のローマ字表記)を使用できる。
URLを音声表記にするか、特殊文字を残すかは、君の自由だ。この場合に限らないが、最善の方法はユーザーの視点に立ち、どのような表示のURLが求められるかを考えることだ。
現地の規制
法的問題になるのを避けるには、現地の規制を真剣に受け止めて、尊重しなければならない。たとえば、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)は、EU圏外の企業でも、EU圏内への訪問者のデータを追跡して分析する場合には必ず適用される。
他の地域でも、類似の規制が適用される。日本では「個人情報保護法(APPI)」、カリフォルニア州では「カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)」を定めている。
米国では、アクセシビリティが重要なテーマだ(「障害を持つアメリカ人法」(ADA)を参照)。
これを順守して法的な苦情を避けるために、企業は国際的に認められているウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)を守らなければならない。
よくわからない場合は、地域ごとの規制について情報を集めよう。
グローバルSEO成功の手順9
外部リンクの追加
いつものように、コンテンツを強化するには、関連性が高いコンテンツに向けて外部リンクを追加することを推奨する ―― もちろんリンク先は対象地域・言語のウェブサイトだ。
外部リンクは、オーディエンスにさらなる知見をもたらし、自分がカバーしているトピックについて検索エンジンに背景情報を提供するうえで、自然かつ優れた手段となる。
検索エンジンは、コンテンツに含まれている外部リンクの品質に注意を払う。そのため、コンテンツに含めるのは、信頼性の高い現地の情報源に誘導する外部リンクだけにすることが重要だ。
信頼性の高い現地の情報源とは、品質(訪問者にとって価値のあるリソースや、トピックと関連性が高く信頼できる著者など)だけでなく、定量的な指標(オーガニックトラフィックやドメインオーソリティなど)の観点から見ても関連性の高いページへのリンクのことだ。
外部リンクは、コンテンツの本文に自然に組み込み、最新のリソースを参照する必要があり、できれば現地の言語を使うことが望ましい。
この記事は、前中後編の3回にわけてお届けする。後編となる次回は、「技術的な検討事項」と「オフページのベストプラクティス」「さまざまな検索エンジン」について説明する。
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