SEOを巡る神話 - 『検索エンジン最適化の初心者ガイド』改訂版#9-1
この記事は、『検索エンジン最適化の初心者ガイド』をセクションごとに書き直していく過程のエントリだ。この構想については、概要を見てもらえば、もっとよくわかるだろう。
検索エンジンに関してよくある神話と誤解
残念ながら、検索エンジンがどのような仕組みで動いているのか、良い結果を出すには何が必要かについて、過去12年の間に数多くの誤解が登場した。このセクションでは、そういったものの中でもよく知られたものを取り上げて、神話の裏にある「本当の話」を解説しよう。
検索エンジンへの登録申請
SEOの古典時代(1990年代後半)には、検索エンジンには最適化プロセスの一部として「登録申請」フォームがあった。ウェブマスターやサイトオーナーが自分のサイトとページに関する情報を入力し(情報にはランクインさせたいキーワードなどを入れることもあった)、検索エンジンに「申請」するというものだ。申請すると、その後、検索エンジンのロボットがそのページをクロールしてインデックスに入れる、という流れだった。
当然のことながら、不正操作、申請者の信頼度などの理由により、この方法は広まらず、次第にクロールだけの検索エンジンに道を譲った。
2001~2002年頃から、検索エンジンの登録申請は必要とされなくなっただけでなく、実質的にほぼ無用の長物と化した。検索エンジン各社は、「登録」URLリストを使用することなどめったにないと明言しており、ベストプラクティスとして、他のサイトからリンクを獲得することを挙げている。そうすれば、検索エンジンが自然にそのコンテンツを巡回するからだ。
今でも登録申請ページは存在する(ヤフー、グーグル、MSN/Live)。しかし、これらはもはや過去の遺物であり、現在のSEO業務にはほとんど無意味だ。SEO業者から「検索エンジン登録申請」サービスなんて話を聞いたら、絶対に相手にしないように。検索エンジンが申請サービスを実際に使ってサイトをクロールしたとしても、インデックス化に必要な「リンクジュース」が稼げるとか、検索クエリで高い順位を獲得できるとかいうことはまずない。
metaタグ
かつては、検索エンジン登録申請と同じく、metaタグ(特にmeta keywordsタグ)もSEO業務の重要な一要素だった。あるキーワードで検索上位を狙う場合、そのキーワードをkeyword属性値にしておけば、ユーザーがその語句で検索した際に自分のページが表示される可能性があったからだ。
だが、このやり方はすぐにSEOスパムの餌食となり、使われなくなった。今のところ、大手検索エンジンの中ではヤフーだけがまだmeta keywordsタグのcontent属性値もインデックスに取り込んでいるが、それでも検索順位の決定には使わず、コンテンツの発見のためだけに使うと説明している。この件についてはSearch Engine Landのダニー・サリバン氏が詳細に解説している。
確かにtitle要素や他のmetaタグ、つまりmeta descriptionタグ(過去の初心者ガイドシリーズでも取り上げた)はSEOベストプラクティスにとって非常に大切だし、meta robotsタグもスパイダーを制御するツールとして重要だ。だが、SEOは「metaタグがすべて」ではないし、少なくとも今はもう違う。
キーワードの詰め込みとキーワード密度
驚くほどのことではないが、しつこく生き伸び続けている神話がある。検索エンジンはキーワード密度(=1ページ中の単語数÷キーワードの出現回数)を使ってページの関連性と順位を算出しているから、SEOの仕事もそこに集中させろという考え方に基づくものだ。
このばかげた理論は、何度も何度も正しくないことが証明されているにもかかわらず、長く信じられていて、キーワード密度が重要な評価基準だという設計概念に基づくSEOツールも多く存在する。これは間違いだ。
キーワード密度なんて無視して、キーワードを賢く使い、ユーザビリティに留意すること。ページにキーワードを余計に10個詰め込むより、「君のサイトは検索スパマーでない」と認めてくれたソースから人の手による自然なリンクを1つ獲得する方がよっぽど価値がある。
有料検索はオーガニックな検索結果を改善するのに役立つ
SEOにまつわる陰謀論もいろいろあるが、中でもよく耳にするのは、
クリック課金広告への支出を増やせば、SEOによるオーガニックな検索順位も上がる(逆に、出費を減らせば順位も下がる)
というものだ。僕が見聞きした経験の中では、このことが証明されたことなど1度もないし、オーガニックな検索結果に表れる効果の説明と用いられたこともない。
Chinese Wall。本来は、証券会社の引受部門と営業部門との間の情報障壁を示す(参考)。
グーグル、ヤフー、MSN/Liveはすべて、そういった情報の共有をきちんとふせぐ非常に強力な「チャイニーズウォール」(情報障壁)を社内に設けている。グーグルにおいては特に、月に数千万ドルもつぎ込んでいる広告主ですら、検索品質チームからもウェブスパムチームからも、特別な配慮など図って貰えなかったと指摘している。
こういった情報障壁が存在する限り、また検索エンジンが広告部門と検索部門を分離するという方針を堅持している限り、これはずっと神話のままであり続けるだろう。
この記事は3回に分けてお届けする。次回は検索エンジンスパムについてお伝えする。→続きを読む
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