有料リンクによるペナルティの悪用について
有料リンクで生じる恐れのあるペナルティを取り上げた先日のホワイトボード・フライデーの後、こんな質問が何件かあった。
他人の検索順位を落とす武器として、有料リンクやスパム的なリンクが利用される可能性はあるのか?
この記事では、それがなぜめったに起きないか、想定されるシナリオからどうやって自衛したらいいか、なぜ競争相手に対して使用する戦術として良くないかを、順を追ってみていこう。
有料リンクは検索順位を下げる武器として使えるのか?
結論から言うと、まず短いほうの答えは「まず使えない」というものだ。しかしSEOの世界ではよくあることだが、長い方の答えはもっとずっと詳細なものだ。
一般論として、ライバルがもっているホワイトハットのサイトやページの検索順位を大きく下げるのは、非常に困難だ。スパムの捕捉については完璧でないグーグルだが(たとえば、最近のホワイトボード・フライデーでは、よく知られたネットワークであからさまな有料リンクが成功している例を取り上げている)、リンクの意図の看破については驚くほどうまくやっている(予知能力があるんじゃないかと思いたくなるほどだ)。
僕が推測するに、自らの掲載順位を上げるためにリンクを購入しているサイトは、競争相手によって有料リンクを張られてしまったサイトと比較すると、非常に異なるパターンを持っているのだろう。こうしたパターンは、そのサイト自体、同じ所有者が登録している他のサイト、リンクの履歴、利用/検索行動の中に存在する。
多くのSEO関係者がしばしば有料リンクのせいだとする「ペナルティ」とは、もしかしたら実は、リンクの意図を判断するにあたりサイトの実体を多角的に見ているグーグルによる、はるかに洗練された分析の結果なのかもしれない。僕が10年近くSEOをやってきて、「グーグル・ボウリング」(質の悪いリンクを競合するサイトやページに対して張リ、順位を下げる手法)の実例として合理的に検証できたものは2例しか耳にしていない。つまり、グーグルのウェブスパムチームは、この分野で非常にすばらしい手法を開発してきているのではないだろうか。
また、これも多くのSEO関係者が示唆してきたことだが、グーグルにはある種の「信頼の基準」があり、それをクリアしたサイトはネガティブなリンクの影響が小さくなり、ペナルティや順位の低下が起きにくくなるという。これは僕にとって大いに納得のいく話だ(証明は不可能に近いが)。というのも、グーグル・ボウリングは大部分が否定されており、ブラックハットやグレーハットのリンクビルディングに迷い込んでしまった善良なサイトでさえ、検索結果から排除されることなく(もしそうなったら、数多くある有名なブランド/サイトで検索したユーザーにとって、検索結果における関連性が失われる結果を招くかもしれない)、有料リンクなんかにかけた費用は無駄だったと自覚するだけで済んでいるからだ。
したがって、競合相手の掲載順位を下げるための武器として有料リンクを使おうとしているのなら、ホワイトハット的手法を使って上位にあるサイトよりも、競合するキーワードで65位くらいにいる(比較的)新しいサイトに対しての方が、うまくいく可能性ははるかに高い。
リンク攻撃に備えて自衛するには
最近、ブラックハット的リンクブローカーを痛い目にあわせたことはある? リンクファームを運営している人間の足を引っ張ったことは? SEOカンファレンスで間近にいる本人に気づかず、性悪パネリストを批判したことは? この場合、「攻撃は最良の防御」ではなく、適切な自衛こそが必要だ(相手に対して有料リンクを張るような真似はやめよう。スパム業者を喜ばせるだけだ)。
自分たちのサイトやページに対して張られているスパム的リンクについて、非常に多くのSEO担当者やウェブマスターがひどく気にしている。とはいえ、全般的にみて、これは心配するほどのことではなく、ウェブ上のどんなサイトにも起こることなのだ。われわれSEOmozに向けられているスパム的リンクを見てほしい(Yahoo!のクエリはこちら)
Googleアラートや自サイトの評判を24時間モニタリングするクエリ(たとえば、「http://www.google.com/search?as_q=seomoz&as_qdr=d&num=100」は、過去24時間以内に「seomoz」に言及したすべてのページをグーグルで検索できる)で、大量のスクレーパーサイトがヒットすることもある。そういうサイトは、驚くほど巧みに最適化されたアンカーテキストを用いた薬品、金融、法律、不動産などの疑わしいリンクで埋めつくされているが、そんなものを目にしてもあわてることはない。ウェブ上でサイトを運営している以上は、この種のリンクを引き寄せてしまうものだし、たとえサイトが比較的新しくまだ信頼がない場合でも、これを理由に検索エンジンからペナルティを科されるようなことはない。
しかし、どう見ても何らかの意図を持った有料リンクのネットワークの一部としか思えないリンク(よくできたアンカーテキストを持ち、そのリンク以外は自分のところとは関連の薄いアンカーテキストだらけのリンクしかないフッターやサイドバーから、サイト内部のページに対して張られている)が集まりはじめたら、それは心配の種になるかもしれない。この場合の最善の対処は、認証された自分のウェブマスターツールのアカウントから、グーグルにスパムの報告を行うことだ。その際、これらのリンクは自分と無関係であることを伝え、自分が作成したり承諾したり費用を払ったりしたなどとグーグルに思われないようにしなければならない。
こういう対策が必要になったり重要になったりすることはめったにないが、競合相手の行為を大いに懸念するなら、実行する価値はある。もちろん、報告するならその前に、自らの潔白を再確認しておきたいところだ。ブラックハットやグレーハット的な活動には一切関わっていないことをしっかりと確認しておこう。そうでないと、報告が「やぶ蛇」になり、ウェブスパムチームのメンバーから誤った評価を受ける可能性がある。
競合相手の検索順位を下げるためにリンクを買うべきか?
支持する慈善団体よりもリンクブローカーのほうが価値があると思うのでなければ、リンクを買うべきではない。
まじめな話、リンク攻撃がマイナスの影響を及ぼす可能性は、プラスの影響を受ける可能性に比べたら非常に低い(いま一度、有料リンクに関するホワイトボード・フライデーの実験に言及しておこう。そこでは明白なリンクネットワークが、真新しいサイトに対してもプラスの効果を示した)。
資金に余裕があるなら、そのお金を有料リンクに使うよりも、「編集コンテンツ」「PR」「ソーシャルメディアキャンペーン」など、自分のサイトのホワイトハットなSEOの取り組みに使う方がずっといい。
他人の足を引っ張ることは、一時的に感情的な満足をもたらすかもしれないが、SEOのアプローチとして(また、あえて言うなら人生一般においても)間違ったやり方だ。
コメント
>「まず使えない」と
>「まず使えない」というの短いほうの答えだ。
「というの短い」が変です
修正しました!
編集部の安田です。ご指摘ありがとうございます。
日本語がおかしかったですね。修正いたしました。
おかげさまで、他の方にも良い状態の記事をご覧いただけるようになりました。
ご指摘、感謝いたします!