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上級SEO:コミュニティマーケティングをSEOで強化する「加速システム」5つの段階(前編)

コミュニケーションマーケティングにおいて、コミュニティの構築は重要だ。その戦略となるコミュニティ促進システムの考え方と、SEOを活用する方法を紹介する。
この記事の内容はすべて筆者自身の見解であり(ありそうもないことだが、筆者が催眠状態にある場合を除く)、Mozの見解を反映しているとは限らない。

SNS・口コミ・インフルエンサーによる意見やオススメが自分の購入意思決定に大きな影響を及ぼした、そんな経験は誰しもあるだろう。今回は、そんなコミュニティマーケティング時代に役立つSEO施策を、前後編の2回にわけてお届けする。

前編となるこの記事では、「コミュニティ促進システム」の概要と、詳しい5つの段階のうち「コミュニティの理解」「主力製品の活用」の2段階について説明する。

そして後編では、コミュニティ促進システムの残る3つの段階「ブランドストーリー」「コミュニティの活性化」「トランザクションの容易化」について紹介する。

コミュニティマーケティングは購入意思決定に大きく影響する

普段興味がないものでも、友人など身近な人から薦められたものを購入した経験はあるだろうか? たとえば、僕はこんな経験をした:

僕は普段ジュエリーを身に着けない。しかし、友人の1人がAutomic Goldで購入した指輪とネックレスに夢中になっていると聞いて、興味を持った。

サイトをスクロールしていくと、親しみやすいコンテンツ、楽しげなスタイル、性別にとらわれないライフスタイルの写真に、とても興味を引かれた。

そして、何度かサイトを訪れた後で、購入に至った。

この経験は、購入の意思決定に企業がコミュニティマーケティングを通じて及ぼす影響を示す典型的な例だ。僕の場合、どこかのサイトで広告が表示されたわけでも、その広告をクリックしたわけでもない。それなのに、僕は顧客になっただけでなく、このブランドのファンになった。ただ、友人に薦められただけなのだ。

僕たちはコミュニティマーケティングの時代に生きており、コミュニティマーケティングはブランドのストーリーを通じて構築される。ユーザーが広告をクリックしたときに広告料金が発生するようなパフォーマンスマーケティングは依然としてマーケティングを構成する基本的な要素だが、友人から個人的な推薦があれば、効果ははるかに高まる。結局のところ、ソーシャルプルーフ(社会的証明)は最も強力なマーケティングエンジンの1つなのだ。

※Web担編注 社会証明とは(クリックで説明が開きます)

自分の判断ではなく、他者の判断や周囲の判断に基づいて自分の行動を決定する心理傾向のこと。たとえば、

  • 「口コミサイトの〇〇部門 No.1」というシールが貼ってある化粧品
  • そうした表示が何もない化粧品

があった場合、前者は「皆が購入し、推薦している」ため手に取られやすいとされている。書籍の帯でよく見かける「累計発行部数〇〇万部突破!」なども当てはまる。

実際、調査会社ニールセン傘下のハリス・ポールの調査によると、米国人の82%は「購入を検討する際に友人や家族におすすめを聞く」と答えている。たとえば、次のブランドを見てほしい:

このように、成功しているブランドは、「リピーターの顧客」を獲得するだけでなく、「製品やサービスを忠実に宣伝してくれるフォロワー」を獲得している。

他にも、Airbnbは、2019年にパフォーマンスマーケティングからブランドマーケティングに重点を移したことで、マーケティング費用を大幅に削減しながらも収益を高め目覚ましい成果を上げた

「コミュニティ促進システム」とは

ここでいう「コミュニティ促進システム」は、ブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングの取り組みを簡単に結合し、相乗効果を生みながら効果を増していくアプローチだ。

※Web担編注 原文では「コミュニティフライホイール」という表現を使っていた。「フライホイール」は「弾み車」の意味で、ビジネスをフライホイールと捉えてコミュニティマーケティングをまわしていく仕組みを指している。

マッキンゼー・アンド・カンパニーはコミュニティコミュニティ促進システム(コミュニティフライホイール)について、次のように簡潔に説明している:

企業がより良いコミュニティを構築することで、それがより良いブランドの構築につながること。

コミュニティ促進システムには、次に示す5つの段階がある:

コミュニティ促進システム5つの段階
  1. コミュニティの理解
  2. 主要製品を活用する
  3. ブランドストーリー
  4. コミュニティの活性化
  5. トランザクションの容易化

そして、これら5つの段階の柱となるのが、次のものだ:

  • スケールアップを可能にするテクノロジー
  • 一環した改善をもたらすテストと学習のアプローチ

5つの段階については後ほど詳しく説明するが、この戦略の利点は有名ブランドでなくても結果を出せることだ。どれほどニッチなオーディエンスでも、デジタル資産を活用することで、魅力的なコミュニティ空間を形成できる。成功の鍵は、自身のコミュニティを構築することにある。

一般的に、企業が「コミュニティが集まる場所」だと考えるのは、InstagramやTwitterなどのソーシャルプラットフォームであることが多い。確かにこれらのプラットフォームは増幅やソーシャルプルーフという点で重要な役割を果たしている。しかし、ブランドにとってコミュニティが集まる場所はそのブランドのウェブサイトであるべきだ。

ウェブサイトは、オーディエンスに情報を伝え、エンゲージメントを促し、楽しませる場所にできるし、そうなるべきだ。さらに、ファーストパーティデータとエンゲージメントを生み出すプラットフォームがあれば、長期的に見てはるかに価値が高まり、手に負えないリスクをなくせる。

SEOはウェブサイトの成功に極めて重要な役割を果たすため、コミュニティ促進システムの成功にも重要な役割を果たす。

この記事では、コミュニティ促進システムについて説明するとともに、その各段階にSEOをどう組み込めるかについて概要を示す。

コミュニティ促進システムにSEOをどう適用する?

SEOもコミュニティ促進システムの成功のために重要な役割を果たすと述べた。ではどうやってSEOをコミュニティ促進システムに組み込めば良いのだろうか。下図は、SEOの取り組みをコミュニティ促進システムの5つの段階に当てはめたもので、各段階にどう適用できるかを示している:


コミュニティを獲得、増幅、維持するためのSEO戦術
コミュニティの理解
・包括的検索(検索エンジン、サードパーティ
 サイト、YouTubeを横断)
・地域戦略
・コンテンツのローカライズ
・YouTube戦略
・新製品のブランド調査と市場調査
主力製品を活用する
・SERPマッピング
 ・サイト内検索の傾向
 ・SERPの傾向
・サイト階層
 ・CTA、製品の優先順位付けなど
・サイト内リンク
・コンテンツ戦略
・デジタル広告投資とテレビCM
ブランドストーリー
・リスティング分析
・新規コンテンツのレコメンデーション
・レビューと評価
・ブランドプロミス
・ブランドに重点を置いた要素を活用した啓発、インスパイア、アップセル
・PRやインフルエンサーとのパートナーシップ
コミュニティの活性化
・サブドメインおよびサブブランド戦略
・コンテンツ戦略
・コンテンツのテスト
・キーワードリスニング
・YouTube戦略
・地域のトレンド
・リンク獲得
・PRやインフルエンサーとのパートナーシップ
トランザクションの容易化
・テクニカルSEOとオンサイトSEO
・サイトナビゲーション/エクスペリエンス分析
・カテゴリページと製品詳細ページの優先度
・YouTubeのCTA最適化
・CRO
テクノロジーおよび、テストと学習のアプローチによる促進と加速
コミュニティ構築に役立つSEO戦術

ここからは、コミュニティ促進システムを段階ごとにひもとき、各段階について次のことを説明していく:

  • その段階の内容
  • 実施方法
  • SEOをどう適用するか

前出の図で、これらの各段階で役立つSEOの一般的な成果物を示したが、このリストはすべてを網羅したものではない。君のビジネスにより適したSEOをコミュニティマーケティング活動に取り入れるきっかけになることを願っている。

SEO×コミュニティ促進システム 第1段階
コミュニティの理解: 適切なオーディエンスを見つける

内容

共通の関心を持つコミュニティを特定し、マーケティング活動において、これらのオーディエンスが属するコミュニティに共感し、感情に訴える反応を示せるような方法を見出す。オーディエンスがどのように交流しているかを知る鍵は、属性を超えてコアターゲットのオーディエンスを理解することにある。

マッキンゼーは次のように指摘している:

これは、

  • 「属性」や「個々のニーズ」に軸をおいた消費者セグメントをターゲットとする戦略

から、

  • 似たような関心や価値観を共有する人々のコミュニティ、つまり「関連性を共有」するコミュニティをターゲットとする戦略

への進化だ。

実践するには

ターゲットとするコミュニティを把握したら、個人ではなくグループに向けて訴求するキャンペーンを展開しよう。コミュニティマーケティングとは、結び付いているグループとエモーショナルマーケティングをつなげるものだ。

SEOの適用

サイトに来て行動しているユーザーを理解する鍵は、オーディエンスの調査にある。SparkToroなどのツールを使えば、オーディエンスが特定のトピックにどのように接しているかを知ることができる。

オーディエンスの調査が完了したら、コミュニティのエンゲージメントを強化するSEOの取り組みに着手し、各コミュニティの検索ジャーニーをターゲットにした戦略を構築できる。具体的には次のようなことを試してみてほしい:

  1. 包括的な検索分析: 非常に重要なのは、SERPや自社サイトでのユーザー分析に留めず、Amazonなどのサードパーティサイトを含めた購入までの過程でオーディエンスがどのような行動をしているか理解することだ。SEOの取り組みで優先すべき場所を知るには、包括的な検索分析を実施して、Google、Amazon、YouTubeなどの他のサイトのどこで検索が行われているかを把握することが重要だ。

  2. 地域戦略: 複数の地域を対象とするサイトの場合、地域密着のために、トランスクリエーションしたコンテンツ(オーディエンスが話すような言葉でオーディエンスに話しかけるコンテンツ)を作成する必要がある。

  3. YouTube戦略: YouTubeを積極的に活用しているブランドなら、SERPで動画がたくさん表示されるキーワードや、YouTube内で最も検索されているキーワードを調査し、SEO戦略に組み込み、YouTubeのSEOを実施するといい。

SEO×コミュニティ促進システム 第2段階
主力製品を活用する: ブランドをシンプルにし、平均注文額(AOV)を高める

内容

オンラインショッピングは、実店舗での買い物よりはるかに考えるべきことが多くなる場合がある。手数料や必要な日数の計算などを含め、はるかに多くの選択肢に直面する。ユーザーからすると、面倒だ。

そこで、君のブランドで最も優れた主力製品を活用してブランドを定義することで、コミュニティに対するブランドメッセージを簡素なものにできる。

実践するには

これは、主力製品を後回しにして忘れさせてしまうという意味ではなく、「新しく興味深いキャンペーンに再投資して、再び光を当てる」ということだ。

コラボレーションキャンペーンや、活性化したマーケティングキャンペーンに加えて、新しいコミュニティへの取り組みなどを通じて実践できる。

SEOの適用

UXとサイトの階層は確かに主力製品の進化に重要な役割を果たすが、SEO担当者は、このような分析をさらに一歩進めて主力製品の進化を支援できる。サイト外、SERP、そしてサイト上で人々が主力製品とどのように関わり合っているかを調査しよう。

  1. SERPマッピング: 主力製品がSERP内で思い通りに表示されるようにする優れた方法は、競合他社、リセラー、SERPの機能などを引き出す主力製品のキーワードを明らかにすることだ。

  2. サイトジャーニー分析: ユーザーがサイト内をどのように移動しているかを把握すれば、主力製品を強調して平均注文額を押し上げたり、主力製品のトラフィックを活用してあまり知られていない製品をアピールしたりできる。

  3. サイト内リンク: 主力製品を利用して被リンクを獲得し、リンクの少ないページにサイト内リンクを張ることで、他のページや製品に関するキーワードの検索順位を押し上げられる。

  4. コンテンツ戦略: ユーザーガイドなどの認知段階向け戦術から、返品ポリシーやヘルプセンターコンテンツといったコンバージョン後段階向け戦術まで、主力製品をコンテンツファネル全体に組み込む方法を理解することで、コンバージョン率や顧客の「欲しい」という感情を高められる。

この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。この前編では、「コミュニティ促進システム」の概要と、コミュニティ促進システムの5つの段階のうち2つを説明した。

後編となる次回は、残る3つの段階「ブランドストーリー」「コミュニティの活性化」「トランザクションの容易化」について解説する。

→後編を読む

用語集
Instagram / SEO / SERP / SNS / UX / キャンペーン / クロール / コンバージョン / コンバージョン率 / リンク / 被リンク
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