検索順位が、ある日突然下落する――それでも成功を維持できるSEO戦略の6つのポイント(後編)
過去に経験したことのないような要因で検索順位が下がる脅威について前後編の2回に分けて解説しているこの記事、後編となる今回は、たとえ検索順位が下がっても成功を維持するSEO戦略を策定するにはどうすればいいかについて、6つのポイントで解説していく。→まず前編をよむ
防弾チョッキを装備したら、いざ戦場へ
これまでの話は単なる準備段階だ。
グーグルのペナルティなど、だれにも受けてほしくない。だから、できるかぎりその回避方法を伝えようと努めてきたが、これは、大半のSEO戦略に潜む根本的な欠陥を改めるものではない。
明日やってくるかもしれない突然の検索順位の降下をしのげないのなら、君のSEO戦略は破綻している。
では、順位降下の対処法を検討しよう。次の6つだ。
オーディエンスと同じ場所に立とう
ターゲットとするオーディエンスが出入りしているスペースで評判がよければ、対象のオーディエンスの間での君の人気は高まる。単純なロジックだが、SEO関係者の大半はこの点を驚くほど疎かにしている。
オンラインで何らかの絆を結ぼうというマーケティング戦略では、まずなによりも、ねらっているオーディエンスのいる場所で存在感を出すべきだ。そうすれば、グーグルの検索順位がどうであろうと、広告の価格がどんなに変動しようと、あるいはソーシャルメディアの状況がいかに変わろうと、肝心な人たちには認識してもらえる。
ところで、僕はこれを論ずるときはたいてい、「ゲスト投稿を始めるべきだ」という話をしている。それさえやっていればいいわけではないことは後ですぐに説明するが、まずは、ゲスト投稿について見落とされているかもしれないポイントを取り上げたい。
ゲスト投稿で見落とされがちな12のポイント
質の高いリンクを構築すべきだということはすでに述べた。ゲスト投稿をする先は、「参照トラフィック」「ブランド露出」「評判の高さ」という点で価値のあるサイトに絞ろう。
目指すはオピニオンリーダーになることだ。このためには、ユニークな価値を提案する必要がある。君にはどんな切り口があるだろうか。サイトのほかの投稿者との違いはなんだろうか。
完全にオリジナルなものが、少なくとも投稿内容のどこかになくてはならない。独自の調査を行ったり、自分だけが持つデータを使ったり、異なる分野の考え方を組み合わせたり、インサイダー情報を掘り起こしたりすべきだ。
さらに、これをそれなりに首尾一貫した基盤に立って進められるよう工夫する必要がある。たとえば、Search Engine Landには、グーグル従業員による内部からの発言がある。MozとSearch Metricsには、共同で実施している「検索エンジンの順位決定要素」の研究がある。
適切な問いかけができるようになろう。何を論ずるにしても、興味を引く問いかけがあるはずだ。好奇心を働かせよう。それが何よりの資産なのだ。説得力のある独創的な答えに到達するには、独自の魅力的な問いかけが不可欠だ。これについては、CopyBloggerで詳細に論じている。
感情を込めよう。感情に訴えるコンテンツでなければ、共有されてコミュニティに広がっていくのは難しい。
怒り、恐れ、驚き、笑い、畏敬といった強い感情が、コンテンツを仲間と共有する際の切っ掛けになることは研究で実証されている。一方、悲しみなどの人を拒むような感情は、ソーシャルメディアにおける共有の妨げになる。
畏敬の要素がとりわけ重要であり、このことが、(適切な種類の)科学記事はほかのどんな記事より共有されやすいという驚きの事実につながる(「I fucking love science」のすばらしい人気がその証拠だ)。畏敬の念を抱かせるコンテンツは、オーディエンスが世界の見方を変える切っ掛けとなる。
言うまでもなく、肝要なのはまったく新しいものを提示することだ。
使えるコンテンツを提供しよう。畏敬の念を抱かせる強力な記事は、行動につながるコンテンツがなくても広がるかもしれない。しかし、使えるコンテンツが加われば、広がりは止めようがない。
自分の生活の中で利用できるものは誰でも共有したくなる。そのうえ共有した人の印象をよくするのだから、共有は加速する。CNNの「最もメールされた記事」を見てほしい。「最も読まれた記事」と比べると、実用的なコンテンツがずっと多いことがわかる。
主流にもニッチにもアピールできるものにしよう。最もコアな支持者にアピールするコンテンツと同時に、核となるトピックを、だれもが共感できるもっと一般的な話題に結びつけるコンテンツを作るのだ。ハードコアなオーディエンスを遠ざけるのは最悪だが、メインストリームを引きつけることなしに、大きくはなれない。
適切な言葉を使おう。ハードコアなオーディエンスを引きつけ続けるには、内輪のジョーク、文化的な感受性、要望とニーズ、共有されている関心事などを知っておく必要がある。
ただし、自分の得意な部分に集中するべきだ。自分が苦手な分野で文化的アイデンティティを構築しようとしてはいけない。
大事なのは、ハードコアなオーディエンスから「仲間の人間」だと思われるのに十分な発言をしつつ、メインストリームへのアピールも同じように続けることだ。
とはいえ、偽りは駄目だ。インターネットは、はるか遠くからもごまかしを嗅ぎつけるし、火のないところに煙を立てることさえよくある。
なによりも自分を偽らないことだ。その上で、特定のサブカルチャーの文脈に沿った形で自分らしく振る舞おう。
仲間うちで共通するホットな関心事を押さえよう。君が関わっているニッチ分野でのトレンド、そして世界的トレンドは何だろう? ニュースで報じられていることを単に繰り返すのは最もやってはならないことだが、まったく触れないとコンテンツから今日的な意義が失われる。
共有行動には、ソーシャルな「トリガー」(引き金)が大きな役割を果たす。今起きていることだけがこうしたトリガーになるとは限らない。心の奥底に根を張った文化的なノスタルジーが引き金を引くこともある。
大切なのは、何らかのトピックや画像や象徴が、特定のものを想起させるという点だ。すでにあるトリガーを使ってほかの人の注目を集めるのもいいし、コンテンツにトリガーを組み込んでアイデアの共有をねらうのもいい(トリガー現象のよい例に、レベッカ・ブラックの「Friday」というものすごい曲がある。金曜になるときまって検索されるのだ)。
実例を示しながら語ろう。抽象的な議論はしてかまわないし、その必要もある。新しいアイデアや大まかなコンセプトはそこから生まれるものだからだ。しかし、それを具体的なものに結びつけないことには、人々は信じないし、耳を貸さない。
実際のところ、君が戦略のうち1つだけ変更するとしたら、ここから始めるのがいちばんよいだろう。まず書きたいと思う投稿を書き、それから現実にある例を加えて書き直す。これは驚くほど効果がある。
視覚的にしよう。人間は視覚の生き物であり、視覚的な形式で共有したものは、情報を記憶したりほかの人に伝えたりしやすくなる。このBuzzFeedの記事に画像がなかったらどうだろうか?
口コミを「試みる」のはやめよう。ここまで述べてきたことの大部分は、ソーシャルにおける共有行動を促進するものだ。しかし、1つ避けなければならないのは、意図的に口コミを試みることだ。
口コミだけのコンテンツがブランドを強固にすることはほとんどない。口コミによる流行はインターネットの「一発屋」だ。事実、口コミで広がるものの多くは、ただ出来がひどいとか覚えやすいとかいう理由だけで広がっている(Windows 7の発売パーティの大失敗を覚えているだろうか?)。
もっと重要な目標は、人々に繰り返し訪れてもらうことだ。人は笑わせてくれる人についていくわけではない。生活を変えてくれる人についていくのだ。両方ともできれば無敵だが、片方しかできないのなら、後者を選ぼう。つまり、人々の生活を変えるのだ。
ゲスト投稿に関するもっと突っ込んだ話は、Mozに投稿したゲストブログ究極ガイドを見てほしい。こうやるべきだと僕が考えるゲスト投稿の手引きであり、実例でもある。
はっきりさせておこう。この項ではずっとゲスト投稿に関する話をしてきたが、ゲスト投稿に力を入れれば終わりというわけでは決してない。ゲスト投稿は強力な戦略だが、これだけをやっていればよいわけではないのだ。
そう、このセクションのタイトルは「オーディエンスと同じ場所に立とう」だ。
そこでもう一度問う。君のオーディエンスはどこにいるのだろうか? ブログは、オーディエンスが出入りする場所のほんの一部にすぎない。
関連のあるフォーラムを見つける
フォーラム(掲示板)の多くは、今この瞬間にそのサイトに何人いるのかがすぐにわかるようになっている。それに、どんなフォーラムでもオーディエンスの活発さは投稿数を見れば明らかだ。こうしたフォーラムを繰り返し訪れよう。しばらくは表立った行動はとらずそこの文化を学ぶ。質問されている内容や関心について知り、フォーラムの個性をつかもう。
こうしたフォーラムを、君のブログに取り込もう。フォーラムには君のコアなオーディエンスがいるのだから、そこに居つき、そこの空気を吸い、そこの雰囲気を味わおう。質問に答えたり質問したりして参加する。フォーラムでのやり取りを引用して、フォーラム内の話題に呼応するしっかりしたブログ投稿を書く。フォーラムでよく投稿している人にゲスト投稿の執筆を依頼するのもいいかもしれない。
目指すべきは、君のブログをコミュニティの延長線上に位置させることであり、これに加えて成長を維持するためにぎりぎり必要な程度にメインストリームへのアピールを上乗せすることだ。
この点についてもっと知りたい人は、パトリック・オキーフ氏がすばらしいガイドを書いている。このガイドから得られる重要な教訓は「銀行に関するオンラインの議論の90%がフォーラムで行われている」ということだ。話題が限定される議論の大半はそうではないかと思う。
信じられないという人は、物理学フォーラムのスクリーンショットを見てほしい。アイドルやゴシップではない。物理学のフォーラムなのに、こんなにアクティブな参加者がいるんだ。
このようなフォーラムで注目を集めれば、絶大な露出効果がある。
ソーシャルネットワークのグループ
僕が真っ先にフォーラムに言及したのは、ある話題に関する活発な議論の大半がフォーラムで行われているからだ。ソーシャルメディア上にもたくさんの議論がある。しかし、その多くは1つの話題に集約されるものではない。
とは言え、ソーシャルメディアを無視する理由はない。君が扱っている話題に関連するコミュニティをGoogle+で探してみるといい。
Facebookのグループとページも場合によっては役に立つ。LinkedInのグループもB2Bのプロは重宝するかもしれない。Twitterは、インフルエンサー探しにしか使えないことが多いのだが、Twitterで質問に答えると有効な場合もある。ソーシャルネットワークの活用法はもう1つあるが、それについては次のセクションで触れることにしよう。
Quora
Quoraは、存在を知らせるにはすばらしい場所だ。僕の場合、Quoraへの投稿で、ほかの大半のソーシャルネットワークよりも長期間にわたりトラフィックが送られてきた。
君が扱っているトピックについて、それなりの規模のオーディエンスの前で質問に答えることができる場所があるのなら、どこへでも顔を出すべきだ。これについては、クリスティ・ハインズ氏がKISSmetricsですばらしい記事を書いている。
ブログコメント
ブログのコメント欄も忘れてはならない。支持者が多く、コメント欄への「常連」投稿者がいるブログもある。そのようなブログのコメント欄に参加するといい。
一般論として:
オンラインで行われている議論が有用かどうかのよいリトマス試験紙となるのが、「常連」の数だ。議論に人が戻ってくるようなところに投稿すべきだ。一度投稿するだけで人が去ってしまうところに、取り組む価値はない。
顔を出して自分のコンテンツへのリンクを張るだけでは意味がない。コミュニティに入って価値ある一員になろう。そのためには、自分のブログ投稿やゲスト投稿とまったく同じように、コミュニティへの投稿にもせいいっぱいの価値と労力を注ぎ込む必要がある。
情報の形は必ずしも同じではないにしても、取り組み方は同じだ。
いいかげんな取り組みしかできないのならば、やろうとしないことだ。時間の無駄になる。
ソーシャルの本当の働きを知る ~ソーシャルは思うように動くとは限らない
ここまで読んで、僕がフォーラムをソーシャルネットワークより重要だと考えているような印象を受けたかもしれないが、とんでもない。
前のセクションでは、「コアなオーディエンスがいる場所に行って、可能な限り多くの価値を広める必要がある」と述べた。ほとんどの場合、ソーシャルネットワーク上に対象オーディエンスはいない。
いや、実際にはいるのだが、少なくともソーシャルネットワーク上で活動しているときは、君が扱っているトピックについて特に気にかけているとは限らない。彼らは友人や家族と話したり、ちょっとしたコンテンツを共有したりするためにそこにいるのだ。通常、Facebookなどの主要なソーシャルネットワークでハードコアなオーディエンスが見つかることはない(このルールの例外についてはすでに述べた)。
ではなぜ、それでもソーシャルネットワークが重要なのだろうか?
「コアなオーディエンス」と「メインストリームのオーディエンス」の両方が必要なことは、すでに何度か述べた。
ソーシャルネットワークは、メインストリームのオーディエンスにリーチしてつなぎ止めておくための場所だ。
Facebookで「いいね!」をクリックしてもらうより、メールアドレスを教えてもらう方がいいに決まっているのだが、ユーザーにしてみれば、メールアドレスを渡すよりFacebookページの「いいね!」をクリックする方がはるかに抵抗がない。ソーシャルネットワークでフォローするのは当たり障りがなくて「安全」だ。
同じ意味合いから、ソーシャルネットワークで受け入れられやすいのは、メインストリーム層にアピールできるシンプルで機知に富んだビジュアルコンテンツになる。ソーシャルネットワークはエンターテインメントのための場所なのだ。
ソーシャルネットワークは、ブログとは違う場所だ(特にオーディエンスの意識やモードにおいて)――そう考えるのが、ソーシャルメディアに対する最も効果的なとらえ方だろう。上述したように、フォーラムやQ&Aセクション、ときにソーシャルネットワークに隠れているハードコアオーディエンス層は、ブログの延長線上にあるものとして考えるべきだが、ソーシャルネットワーク自体は二次会のようなものだ。
つまりこういうことになる。
君の個人的なFacebookのフィード内容を見てみよう。そのうち、長々とした文章になっているのはどのくらいだろうか? どのくらいがブログ投稿へのリンクだろうか? 面白い文章が添えられた画像はどのくらいだろうか? ほとんどすべてが最後の分類に当てはまるはずだ。君も、人々のフィードに表示されるような内容のものを投稿することだ。
ブログ投稿へのリンクを投稿してはいけない。Someecardsやimgurのミームのような感覚で画像を投稿することだ。ブログ投稿の要点を、キャプション付きの1枚の画像にまとめよう。
理想を言えば、おもしろくて共感を得やすく、実用的で畏敬の念を引き起こすようなキャプションと画像を組み合わせる必要がある。それで、画像のテキストフィールドにリンクを貼り付けよう。これで、他にどんなことをするよりも、Facebookでの共有や紹介が増え、ページに「いいね!」してくれる人も増える。このトピックについては、Quick Sproutにすばらしい記事がある。
どんな種類のコンテンツがソーシャルメディアに適しているのかよくわからない? そういう場合は、Redditのトップページを見に行って、そこからマニアックな話題や政治的なトピック(のほとんど)を除外すれば、それが探しているコンテンツだ。Reddit的な視点をトピックに取り入れよう。そうすれば、ほとんどの競合相手を大きく引き離すことになる(ちなみにRedditに投稿するのはやめよう。悪いことは言わないから、とにかくやめた方がいい)。
画像SNSのPinterestほど参照トラフィックを送り込んでくれるサイトはまずない。Pinterest上で支配的な地位に立つための最善の戦略は、コルビー・アーモンド氏が「インストラクトグラフィック(instructographics)」と呼ぶものを投稿することだ。インストラクトグラフィックは、いわばガイド記事をビジュアルな画像にしたものだ。インフォグラフィックに似ているが、データに重点を置くのではなく、「ハウツー」ガイドに重点を置く。
ちなみに、Pinterestの感性を吸収してこれをRedditの感性と融合させれば、ほぼ間違いなく興味を持ってもらえる。
ソーシャルメディアへの投稿は共感を呼ぶものにするべきだが、ブランドの魅力を損なうものであってはならない。
投稿する題材は幅広くしたい。大量に共有されるコンテンツは、「素人っぽいくだけた内容のもの」から「質が高く洗練されたもの」まで、多岐にわたる。両方の種類のコンテンツを投稿しよう。そうすることで共感を得られ、同時に競争で優位に立つこともできる。
だれもが解放されたありのままの自分をさらけ出していいのだ。わくわくするようなものを提供できる人はなかなかいない。
投稿は頻繁に行うようにして、何かを「販売」しようとしてはいけない。ねらいは、人々のソーシャルフィードに登場することであり、もっと大事なのは、その投稿によって気に入ってもらうことだ。
すでに述べたように、ソーシャルメディアの本質はエンターテインメントだ。これこそが人々がソーシャルメディアに集まる主な理由であることは、いくつかの調査で明らかになっている。オーディエンスを楽しませよう。何度も何度もだ。
これはブランドの印象に関わる仕掛けであり、コンバージョンを意図するものではない。画像のテキストフィールドに君のサイトへのリンクをちゃんと記しておこう。もっと知りたいと思った人がクリックしてくれる。
まず友人や家族をオーディエンスにすることから始めよう。こういった人々が参加してくれなかったり、やっていることに興味を示してくれなかったりするなら、たぶん何かが間違っている。
ソーシャルネットワークで成功を収めたいなら、第一級の人気ページのまねをしてはいけない。こうしたページのほとんどは、有名人やすでに確立されたブランドと関連しているから人気があるだけだ。Facebook上で実際にプレゼンスを構築しているブランドの例が知りたければ、カナダの小売チェーンLondon Drugsを見てみるといい。78店舗からなる中規模チェーンだ。ここの投稿を見てほしい。
London Drugsはこういった投稿で7万5000件の「いいね!」を獲得しており、「話題にしている人」が、毎週数千人いる。London Drugsが掲載するのはほとんどがFacebookに最適な大きさの画像で、ごくたまに自社の商品やお買い得情報へのリンクを載せる。画像は実用的で、愉快なものもときどきある。こういったページはブランドを構築できる。
さてこれで、フォーラムなどでコアなオーディエンスを見つけること、ソーシャルメディアを通じてメインストリームのオーディエンスを引きつけることについては話した。オンラインコミュニティを構築する方法は他にもあるだろうか? もちろんある。
輪の中に入る
ハードコアなオーディエンスが出入りするフォーラムの常連になり、メインストリームオーディエンスのいるソーシャルネットワークに参加することから始めて、オーディエンスをゼロから構築していくことは、可能だ。しかし、影響力のある人々と友達になれば話はずっと早い。
インフルエンサーは、オンラインで信用を得たり顔を売ったりするためのきわめて効果的な近道になってくれる。彼らの協力が得られれば、すべてがやりやすくなる。
ではどうすればいいのだろうか。
ゲスト投稿についてはあちこちで話題にされているし、適切に実施されるゲスト投稿を僕たちが強く推奨していることはすでにわかってもらえたと思う。ただし、方法はこれだけではない。自分のサイト用のコンテンツを彼らに作ってもらうのも、1つの方法だ。
要するに、インフルエンサーのために投資するのを恐れないことだ。リンクを購入するという意味ではない。著名なブロガー、グラフィックデザイナー、写真家、専門家に報酬を提示してブログのコンテンツを作ってもらうのだ。彼らの持つネットワークやオーディエンスを活用しよう。こういった人々が君のブログにきてコンテンツを閲覧するように誘い込む。そうすることで価値をつかもう。
ゲスト投稿に関する発想の転換について僕が取り上げたのはこれが初めてではないが、重要なトピックなのでこれからも折に触れて言及していくと思う。
報酬を提示するかどうかとは別に、インフルエンサーに協力してもらうためには何らかの価値を提供する必要がある。インフルエンサーは多忙な人たちであり、なんの見返りもなく協力してくれることはない。お金がなければ、何でもいいから持っているスキルや提供できるサービスを活用して、インフルエンサーが断る気になれないような提案をしよう。人として節度を守って交渉し、しつこく売り込んだりしてはいけないが、頼むから、提供できる価値を何か用意すること。
インフルエンサーの中には、とにかくオーディエンスとの交流を楽しむ人がいる。そういう人たちは金鉱だ。彼らと交流し、メールをやり取りし、可能な限り長期間にわたって彼らと会話し続けよう。そして、その会話を君のブログ投稿に掲載するのだ。できるだけいろいろなところで彼らのよさに言及するのだ。とにかく続けてみよう。これには一石二鳥の効果がある。コンテンツの質が劇的に向上するとともに、影響力を持つ関係を維持していけるのだ。
インフルエンサーはごく普通の人であることを忘れないでほしい。通常出会うような一般の人よりは活動的と言えるかもしれないが、彼らは当たり前に人と触れ合いたいと思っているのであって、利用されたり崇拝されたりしたいわけではない。これを頭に入れておくと、こういう人たちとの関係が驚くほど築きやすくなる。
信用は広がる。信頼を育むほど物事はやりやすくなる。1人のインフルエンサーと協力関係ができれば、これを足掛かりに他のインフルエンサーからも真剣に付き合ってもらえる。君が多くの熱心なオーディエンスを擁していれば、インフルエンサーにとっても君と協力することで得るものがある。つまり、弾み車の原理だ。信頼を得れば得るほど、信頼は増していく。
最後に挙げたポイントの延長線上で、インフルエンサーが真剣に君と付き合ってくれるようになり、君のサイトで扱っている話題に価値を見いだせば、自分のオーディエンスに伝えてくれる可能性が高くなる。
価値のあるリンク資産を作る ~リンクに値する資産はあるか
ここまでずっとコンテンツ戦略を論じてきた。デザインの重要性に言及し、オンラインのツールとソフトウェアの威力に触れ、独自の価値の必要性を強調し、タイトル単独でもコンテンツを支えるだけの強さがなければならないことも語った。
しかし、だれかがそこにリンクするに値する資産についてはまだ話していない。
「リンクしてもらえる資産」とはどんなものか。これについてはSearch Engine Journalに記事を書いた。公開するコンテンツはすべて、ある程度はリンクに値する資産であるべきだし、インフルエンサーが喜んでリンクする気になってくれるものであるべきだ。
しかし、僕がここで言いたいのはそれではない。ウェブで成功している大半のサイトを支えている力について言いたいのだ。次のようなサイトだ。
- YouTube
- WordPress
- Adobe
- Blogger
- Wikipedia
ウェブで人気上位のサイトはすべてツールが中心にあるということはすでに述べた。それどころか、提供しているツールがなければ、サイトそのものが存在しないだろう。これらのツールを中心に、ハードコアなユーザーによる熱心なコミュニティができる。そんなハードコアユーザーを中心に、メインストリームのオーディエンスが集まってくる。これらがひとつになって、メディアの注目に値するものができあがる。
僕が伝えたいのがこれだ。メディアの注目に値することをしよう。
すぐれたアウトリーチ(外部に向けて働きかける行動)の価値を軽視するつもりはない。アウトリーチがなければ、サイト上に最高の資産があっても何もならない。しかし、ブレーンストーミングの最中にそいう考え方をしてはいけない。制作する価値があるのは、必要最小限のアウトリーチでもリンクしてもらえるだけの価値を持つ資産のみだと心得よう。それこそが目指すべき品質だ。
もちろん、すべては相対的だ。ニュースに取り上げてもらうために「次のFacebook」になる必要はないし、大金も必要ではない。人々がどうにかしたいと思っている問題を突き止めて、その問題を解決する無料の資産をサイトに作りさえすればよい。ポイントは、問題を明確にして、本当に完全に解決することと、それを無料で行うことだ。それと引き替えに、ウェブで注目を獲得できる。
- ツール
- 動画
- 究極ガイド
- 電子書籍
- プレゼンテーション
- インフォグラフィック
- 独自調査(研究、調査、実験など)
- ケーススタディ(名ばかりのものではなく、有用なものにする)
ブログを長年ずっと続けているよりも、リンクする価値のある資産を1つ持っている方がましなくらいだ。そして、この2つを同時に持っていれば、侮りがたい勢力になれる。
アウトバウンドを使いこなす ~インバウンド全盛でもその価値は死なない
ここまでは「インバウンド」マーケティング戦略について話をしてきた。オーディエンスを獲得して維持できなければビジネスは長続きしないと、僕は固く信じている。君が次に何を言うのかを知りたいと思ってくれるオーディエンスがいれば、そうそう潰れないものだ。
しかし同時に、広告だけに頼って製品を販売し、それで儲からないとすれば、そもそもビジネスが成り立っていないおそれがある。
十分な投資利益率(ROI)が得られる限り、トラフィックにお金を出すことができるし、そうするべきだ。インバウンドマーケティングの王者であるHubspotでさえAdWordsを使っている。有料の戦略を軽視するのはよくない。広告を出してまで販売する価値がある製品がないなら、そういった製品を開発することを強くお勧めする。
ここでは、有料広告について、知っておくべきことをいくつか挙げる。
コンバージョン率最適化(CRO)は極めて重要だが、適切に行わなければならない。統計的に有意な差が見られなければ、何もしていないに等しい。中心となるランディングページのコンセプトをテストもしないで、ボタンの色やレイアウトをテストするのでは、本末転倒だ。
CROは、欠陥と障害を見つけ出して除去するためのものだ。CROの重要な枠組みについては、以前にUnbounceで論じた。また、この電子書籍はかなりおすすめだ。
ターゲティングは重要だ。回避できるものならば、ピント外れなインプレッションのために予算を無駄にしたくはない。Google AdWordsを使っている人は、キーワード選びは慎重に行い、本気で販売を目指しているなら「安い」「無料」といった言葉は避けよう。
ちゃんとした関連性のあるユーザーにリーチするのなら、リターゲティング(リマーケティング)というやり方もある。WP Curveにはリターゲティングに関するじつに役立つ入門ガイドがある。また、MDGにも、Facebookにおけるリターゲティングのすばらしいガイドがある。
怖がらずに、ブロガーやサイトのオーナーに直接あたって、広告枠をじかに購入しよう。適切なサイトを選べば、びっくりするほどの参照トラフィックを得られるかもしれない。うまくいけば1回だけの購入で十分な効果を得られることもある。この場合気をつけるべきは、リンクをnofollowにすることだ。これを怠ると、先方がグーグルからペナルティを受けかねない。
目的が販売でなくても、トラフィック獲得に費用を投じる価値がある場合もある。インバウンド戦略とアウトバウンド戦略の融合だ。これを行おうとするなら、目的を明確に定義して、顧客生涯価値に連動させる。たとえば、平均的なメール登録者の顧客生涯価値を見積もり、コストに見合うだけの電子メール登録者を獲得するキャンペーンを目指すようにする。
一般に、トラフィックに費用を出す場合は、少なくともメールアドレスの獲得は目指すべきだ。通常、ソーシャルメディアへの登録だけでは、トラフィック獲得の費用に見合うだけの価値はない。ブランドのインプレッション(表示回数)だけでは足りないのはいうまでもない。
例外として考慮に値するのは、「インプレッション単価」によるキャンペーンだ。従来のテレビ広告のやりかたにかなり近いが、参照トラフィックではなく、ブランドのインプレッションに応じて料金を支払うものだ。
ブランドのインプレッションは販売と正の相関関係にある場合が多く、その相関関係を自分のデータで示せるのなら、やってみる価値はある。ただし、測定できるという事実を忘れないように。無駄な出費を正当化するために、測定できないという思い込みを隠れ蓑にしてはいけない。
心しておいてほしいのだが、有料トラフィックからどれほどの価値を引き出したとしても、オーディエンスを離れさせず、これらの人々がまず第一に思い浮かべるブランドになれなければ、ビジネスを長続きさせることはできない。
オーディエンスを活用する
ここまでは、リピーターとなるハードコアなオーディエンスをつかみ、メインストリーム層に対する存在感を着実に拡大していけば、販売はおのずから伴ってくるということを当然のように述べてきた。
これはある意味真実なのだが、物事はいつもそううまくいくわけではない。
ブランドを目にする機会が増えれば、特にそれが自然に増えてきた場合、オーディエンスが競合相手ではなく君を選ぶ可能性が劇的に増加することは否定できない。しかし、残念ながら、コンテンツが気に入ってもらえたからといって必ずしも販売につながるわけではない。漫然と「販売」を後回しにしていると、オーディエンスの価値を最大限に活用することはできない。
では、どうすればオーディエンスを利益につなげられるのか。
今、「データドリブンマーケティング」や「ビッグデータ」という言葉が派手に飛び交っているが、これにはそれなりの理由がある。関連性ほど販売を大きく伸ばすものはなく、その関連性を最大化する方法がデータマイニングなのだ。
重要なのは、顧客データの中にある相関性を見つけ、その価値を最大にする最もいい方法について仮説を立て、その仮説を科学的に検証していくことだ。最終的な目標は、オーディエンスの中から、君のマーケティングメッセージを適切に受け取ってくれる人たちに狙いを絞ることだ。DMN Newsにデータドリブンマーケティングについてのすばらしいガイド(PDF)がある。
ただし、プライバシーが保護されているというユーザーの信頼を裏切らないように、プライバシーは適切に配慮しなければならない。
データドリブン型戦略の有無とは関係なく、1人のオーディエンスが目にするコンテンツ全体に占める販促材料の割合は、比較的小さく押さえるべきだ。
人によって許容程度はさまざまだとはいえ、誰にも限界がある。その限界を超えれば、サイトから去っていってしまう。そうなれば、その顧客から得られるはずだったすべての将来的な価値と、その顧客の友人たちから得られたかもしれない価値の一部を失うことになる。慎重に行うに越したことはない。
節度を守って行うのなら、すでにいるオーディエンスから知り合いを紹介してもらうことは可能だし、そうするべきだ。無料の製品やコンテストで奨励するのもよいだろう。
ただし、「無料でiPadを獲得するチャンス」だけのために友達を「売り渡そう」という人はいないことを忘れないように。特典を用意してオーディエンスに友人の紹介を促すのは、オーディエンスが友人もきっと登録したがるに違いないと確信するようになって、さらに十分に時を見てからのことだ。
適切に行えば、オーディエンス拡大のすばらしい方法になる。
ソーシャルもやってます!