ウェブサイトの検索エンジン最適化(SEO)作業は、恐ろしく困難で複雑な仕事だ。大量の知識、世界で最も変化の早いこの分野で遅れをとらないための途方もない献身、そして検査や解析に非情なまでに没頭することが求められる、そんな作業だ。
なぜ検索エンジン最適化や検索エンジンマーケティング(SEOやSEM)が、これほど困難な業務なのか(もちろん、それが嫌だってわけじゃない)、その理由を並べてみた。
検索エンジンのガイドラインとそのサービス内容
検索エンジンは、インデックスに登録するもの、許容し得る手法、そして表示特性までも、絶えずパラメータに磨きをかけている。この2年間、僕たちはnofollow属性、Google Webmaster Centralの導入、広告リンクの新しいガイドライン、Googleの補足検索結果に関する決まりごと、Yahoo! Site Explorerの開始、Google Sitemapsプログラムなどなど、多数の大きな出来事に出会ってきた。そしてつい先日のことだけど、Yahoo!は、検索結果表示の際に、Yahoo!ディレクトリのデータを使わないようにする新しいパラメータを発表した。サイト巡回とアクセシビリティ
動的なパラメータ、フレーム、非HTMLコンテンツ(PDFファイルやWord文書はインデックス化可能だが、Flashはどっちつかずの状態で、JavaやAjaxはまったくダメだ)、巡回の深度を決定する要素(被リンク数、サブフォルダ、新着コンテンツ、複製メタデータ)、これらはすべて定期的に変化するので、常に注意を怠っちゃいけない。重複コンテンツ
罰則にページ排除に補足検索結果。これらはすべて、コンテンツを注意深く監視しないサイトを待ち受けているものだ。自分のサイトの重複コンテンツに注意を払うだけでなく、誰かが自分のサイトを再発行するかもしれないことや、ライセンスシステム、コンテンツ交換、ウェブスクレーピング屋、そして自分の制作物の引用やコピーを他人に許可することの重要性(いかに適切な帰属情報を設け、巡回プログラムを制御するコードを配するか)に対して、気を配らなければならない。キーワードリサーチ
検索キーワードのデータを提供するツールは数多くあるが、それらは信頼できるだろうか? 予測精度はどの程度? テストキャンペーンの出来はどうだった? 適切な意図、目的、関連性を示すキーワードはどれだろう? ロングテールのキーワードを捉えるキャンペーンを築くには、どのくらい緻密なキーワードリサーチを行うべきなんだろう? キーワードという基本的な問題についてさえ、疑問は次々と出てくる。変化するアルゴリズム
サンドボックスやトラストボックスをはじめ、キーワードの用法やリンクの効果まで、アルゴリズム検索のランキング評価方法は絶えず変化し進歩している。5年前は、こうした変化の1歩先を行くことがすべてだった。現在、僕らSEO担当者の多くにとっては、2年後から4年後に検索エンジンがどのように進歩しているか予測し、そこにピタリとはまるサイト作りを行うことがすべてだ。検索エンジンからやってくるウェブ巡回ロボットの制御
301/302リダイレクトのルールとその解釈、ロボット用のメタタグ、robots.txt、「正当な」クローキング(検索エンジンに見せるコンテンツと人間に見せるコンテンツを分ける手法)の実現方法、こういったことに関して、細心の注意と相応の慎重さが求められる。トラフィックを生み出す新興勢力
ブログや動画サイト、そして(ペイドレビューなどの)新しい形態の広告のように、今やDiggにredditにStumbleUponが、莫大な量のトラフィックを生み出している。こうしたトラフィック源を無視すれば、将来ライバルが1歩先んじることになる。コンバージョン率の最適化
サイトにトラフィックを誘導することは、戦いの半分に過ぎない。SEO担当者としては、サイトをユーザー向けに最適化するプロセスを通じ、クライアントを導く必要が多々ある。宣伝文句や情報の流れ、ユーザー体験、デザイン、そして製品品質にさえ、責務は広範囲に及ぶこともある。ウェブデザイン
これは主観的なことだと捉える人もいるが、プロフェッショナルなデザインに関する問題は非常に重要だ。SEM担当者は、サイトのレイアウト、ページ内の要素構成、視覚的な訴求力に対し鑑識眼を駆使しなければならない。それを怠れば、訪問者、リンク、信頼性を失いかねない。国際化と多言語の問題
検索エンジンは現在、多くの国際的な問題に上手く対処していない。特に1つのサイトで多数の言語を対象としている場合や、ある言語によるコンテンツを、異なる国々で複数のサイトを使って提供している場合(上述した重複コンテンツも参考に)などだ。こうした難関を切り抜けることは、控えめに言っても骨が折れる。そして何より困るのは、異なる国にウェブサイトを配する場合、たいていはSEOの対象とする検索エンジンやトラフィック源を、該当の地域で人気があるものに変えざるをえないことだ。ローカライズ化とジオターゲティング
たとえ1つの国で最適化を行っている場合でも、地域情報検索、地域の検索エンジン、イエローページ形式のディレクトリ、広告やコンテンツのジオターゲティングなどは骨の折れる作業になりかねない。これらの分野のエキスパートは、地元の顧客を求める企業に最大の結果をもたらすため、それぞれの専門知識を駆使する。ユーザビリティ(使いやすさ)
ウェブデザインと同じように、ユーザビリティはサイトのトラフィックを増やす上で重要なすべての要素に影響する。SEOmozで僕たちが行うサイトレビューでも、ユーザビリティが大きな位置を占めている。ユーザビリティとは、検索エンジンのアクセシビリティにおいて、より人間に注目した視点といえる。リンクを張る人たちに対する訴求力
SEOを必要とするあらゆるウェブサイトは、2種類のユーザーに訴求しなくちゃならない。1つは、購入する/読む/やり取りするユーザー層で、もう1つはリンクを張る(そして噂を広める)能力と行動力を持つユーザー層だ。デトロイトの中古車販売代理店に、Ajaxを使った埋め込み地図は必要ないかもしれないが、その地域のブログ界から自然発生的なリンクを集めようとするなら、必ず役に立つ。コンテンツの作成
文章力や、魅力あるウェブコンテンツの作成経験と同様に、創造性が必要だ。自分が相手にするユーザーと、自分の得意分野を理解し、適切なコンテンツの持っていきどころを決めなければならない。僕はすばらしいブレーンストーミングから始めて、言葉や画像、動画、音声、そしてインタラクティブなコンテンツを効果的に駆使して仕上げている。ウェブ解析
みんなは、どんな行動を追跡しているだろうか? 成果の判定方法は? キャンペーンの効果を最大化するには、A/Bテストや多変量解析が必要だろうか? サイトの改善点について、何百にもおよぶ動向やデータポイントからわかることは何か? 潜在的なコンバージョンの追跡や、オフラインキャンペーンとの連携、時間帯区分などはどうだろう?PPC広告
GoogleやYahoo!やMSNなどで、キーワード連動広告を購入するのは容易だろうか? よく考えてみよう。バナー広告
自分のサイトにバナー広告はふさわしいんだろうか? 短期的なトラフィックから売り上をげ得るためには良い方法なのか? 優れた見込み客をもたらし、適切な消費者層が今後自分のサイトから購入するためのブランド化に役立っているだろうか?コンテンツ連動広告
AdSenseは利益をもたらすか? Yahoo! Publisher Network(YPN)と比べてどちらが有利なのか? コンテンツ連動広告を導入することで関連性が薄れ、被リンク獲得の機会に悪影響が出ないだろうか?検索結果表示ページ
地域検索の地図やら、飛行機の発着情報やら、料理のレシピやら、お天気情報などの埋め込みコンテンツをはじめ、クエリ調整にキーワード候補などなど、こまごましたところはひっきりなしに変わる。もし、あらゆる点で先々を早めに見通せれば、ランキングで上位になるために修正をうまく利用できる。しかし、チャンスを見逃してしまったら、たとえ検索結果でトップに表示されても、トラフィックを稼ぐのに苦労することになる。金銭的利益を獲得するための戦略
お金を得る手段はどうするか。掲載料を得られる広告? それとも無料サービスと有料サービスを組み合わせたFreemiumビジネスモデル? 有料コンテンツ? Eコマース? コンサルティング? ペイドレビュー? SEM担当者には、ウェブサイトで利益を上げる方法の経験だけじゃなくて、最善の選択肢を見つけ、短期的および長期的な目標を見据え、特定の戦略の有用性を評価できる能力も必要だ。ブログ
現在、アルゴリズム検索で上位ランクを得るためには、多くの場合ブログ界に関して、かなりの専門知識が必要になる。時には、自分のサイトのためにブログを最適化するのではなく、むしろ特定分野でブランドを確立するため、ブログが得るトラフィック、リンク、評判の力を活用する方法を把握しよう。オフラインのマーケティング
専門家になる必要はないかもしれないが、オフライン広告代理店の戦略や広報活動、ゲリラマーケティングなど、こうしたキャンペーン手法とオンラインでの取り組みを適切に組み合わせるため、確かな基盤ぐらいは持っておきたい。コピーライティング
コピーライティングだけを扱ったブログもあるし、コピーライティング作業をきちんと実践しようと努力している人たちも大勢いる。ジャーナリズムの学位はいらないかもしれないが、それに関連した経歴は、決して邪魔にならない(すばらしい僕らのリーダーのように)。キーワードの使用法
かつては、コンテンツの中に適切な数のキーワードを織り込むだけで、SEO作業を成功に導くことができた。しかし現在、当時よりも進歩した検索エンジンでは、こうした特定用語のくり返しやキーワードの羅列みたいな手法が通用しない。そしてキーワードの使用法については、サイトの大小を問わず、今だ課題となっている。キーワードは適切なところで使うこと。タイトル、見出し、URL、アンカーテキストはまだ大きな効果があるが、相殺効果を避け、検索エンジンがSEO手法をスパムと解釈するのを防ぐための配慮が必要だ。レンタルサーバー
レンタルサーバーのように基本的なことですら、多少なりともSEOの知識が必要だ。この辺については、Russell Jones氏が解説している。リンクビルディング
リンクの依頼や自然発生的なリンク獲得戦略から、パートナーシップネットワーク、広告リンクまで、熟練したSEM担当者には、リンク構築キャンペーンを常に成功させるためのあらゆる手段が要求される。バイラル(口コミ)マーケティング
これは今注目の手法で、真剣な取り組みが必要だ。リンクベイティングは、楽しいばかりじゃ済まない。試行錯誤や適切なターゲット化のほかにも、さまざまな社会的立場の人々の存在を認識することや、強力なコンテンツの独創性とそれを実行する力も必要になる。ソーシャルメディア
MySpace、Flickr、LinkedIn、Squidoo、そしてYahoo! Answersなどなど、ソーシャルメディアは無視できない。トラフィック、見込み客、ネットワーキングの機会、リンクなどは、すべてソーシャルメディアマーケティングの魅惑的な世界のものだ。
これらすべてに熟練している人がいる訳じゃない。
これまでにも明らかにしたように、SEOmoz自身にも、PPC広告、バナー広告、コンテンツ連動広告の面で深刻な弱点があって、未だに利益獲得戦略や検索結果ランクの不安定ぶり(特に厄介なOneBoxの検索結果)に苦労しているんだ。
SEMの仕事が易しいだなんて、誰にも言わせるもんか。クライアントや自分の会社、あるいは自分のプロジェクトに対し、大きな成果をもたらすのに必要な専門知識の量はビックリするくらい膨大だ。
みんなにとって、SEOやSEMの仕事で最も難しいと思うのはどんなところだろう。ぜひ聞かせてほしい。
追伸。数週間前、Danny Sullivan氏がSEOの擁護論を展開した際、同じような話をしていたと思う。
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