編集部ブログ―池田真也

インターネットで薬が買えなくなる日が来る? 2009年の改正薬事法でネット販売の定義明確に

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今月はじめの8月6日、インターネットを活用して医薬品を販売する薬局・店舗で構成されるNPO法人、日本オンラインドラッグ協会が『対面の原則を担保し、安全・安心な医薬品インターネット販売を実現する自主ガイドライン』発表の記者会見に行ってきました。Web担読者の方にも、少なからず関係する方がいると思いますので紹介したいと思います。

このガイドラインは、その名称のとおり、インターネットでの医薬品販売を安全・安心に行うための必要項目をまとめた、医薬品販売を行う薬局・店舗に向けたガイドラインです。今回のガイドライン発表には、2006年6月14日に公布され、2009年春に施行予定されている改正薬事法が関係しています。

ポイントは、来春の改正薬事法の施行により、インターネット、通信販売での医薬品販売のありかたが大きく変わる点があげられます。端的に言うと、“今までインターネットで購入できた薬の多くが買えなくなる(売れなくなる)かもしれない”ということです。

改正薬事法では、取り扱う医薬品はリスク区分に応じて「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」の3種類に分類されます。そして、第1類と第2類に関しては、専門家による情報提供と対面による情報提供が必要とされています。第1類では、適正使用のために必要な情報を、書面で用いて提供することも必要とされています。

つまり、書面による情報提供、専門家の対面による情報提供が原則であることから、“第1類と第2類のインターネット販売が不可能になる”というのです。

厚生省発表の『医薬品の販売等に係る体制及び 環境整備に関する検討会報告書』では以下の記述があります。

  • 第一類医薬品については、書面を用いた販売時の情報提供が求められていることなどから、情報通信技術を活用した情報提供による販売は適当ではない。

  • 取り扱う品目については、情報通信技術を活用する場合は、販売時に情報提供を対面で行うことが困難であることから、販売時の情報提供に関する規定がない第三類医薬品を販売することを認めることが適当である。販売時の情報提供を行うことが努力義務となっている第二類医薬品については、販売時の情報提供の方法について対面の原則が担保できない限り、販売することを認めることは適当ではない。

私自身、記者発表会に行くまで知らなかったのですが、医薬品のインターネット販売には法令がなく、1988年に制定されたカタログ販売に関する通達がもととなっていて、改正薬事法で医薬品の通信販売が初めて定義されることになるそうです。一方で肝心の“対面の原則の内容について言及されていない”といった問題もあるそうです。

インターネットの普及に対応するべく、こうして法令が生まれたとも言えますが、もし、医薬品のネット販売が認められないと法令が出てしまうと、今後さらに発展していくインターネット社会において得られるであろう消費者の恩恵を奪ってしまいます。薬店が近所にない、病気で買いに行けないといった方もいるでしょう。

そこで、日本オンラインドラッグ協会では、柔軟性の乏しい法令で取り締まるよりは、自主的にきちんとしたガイドラインを作っていくことで、安全・安心を保証する。対面の原則は技術発展したインターネットであれば、店舗と同等、もしくはより安心なものを実現できるだろうと考え、対面の原則のガイドラインを事業社側から提供していき、インターネット上でどのように医薬品販売が行われていくべきかを決めています。検討会を開催してガイドライン策定を行い、自主ガイドラインをもとに、少しでも規制緩和を進めてほしいと活動をしているのです。

日本オンラインドラッグ協会の会員は、発表時点で39名。私自身、この発表があるまでこういったガイドライン策定の活動がされていることを知りませんでした。Web担の読者の方には、インターネットで医薬品の販売を行っている人がいるかもしれません。ガイドラインは、事業者がクリアするべき項目を明記したものですが、事業者だけでなく、アクセシビリティ、ユーザビリティなど、サイトを作る制作会社にも重要なポイントになっていくでしょう。実際に法令の内容がどうなるかはまだわかりませんが、今後の発表にも注目してみたいと思います。

日本オンラインドラッグ協会
http://www.online-drug.jp/

『対面の原則を担保し、安全・安心な医薬品インターネット販売を実現する自主ガイドライン』
http://www.online-drug.jp/img/JODA-080806.pdf

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