[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

マーケティングで大事なことは、新卒入社したパン屋の現場で身につけた

マーケターコラム、連載新メンバーの村石怜菜氏。パン屋の販売員として働きながら、店頭で学んだマーケティングの大事な基本について。

はじめまして、村石怜菜と申します。

ありがたいことに、島袋さんから本コラムのタスキを引き継ぐことになりました。島袋さんの「次世代」というにはギリギリな、ミレニアルな中堅世代ですが、皆さんの行動や思考の何かのいとぐちになるような記事を発信していけたらと思います。

現在は、スマートフォン決済を提供する企業に勤め、サービス企画を担当しています。外国人の同僚も多く、ゆくゆくは日本国内だけでなく、グローバルに活躍できる人材になりたいと思っていますが、じつは新卒で入社したのは大手製パン企業。

デパ地下のパン屋で販売員として働いた原体験が、私の職業人生のミッションを形成する礎となりました。

今回は、私がパン屋の店頭で学んだことと、私の職業人生におけるキャリアとミッションについて、お話ししたいと思います。

ITとは関係のないパン屋の販売員からはじまった私のキャリア

「人々のライフスタイルに直結する、衣食住の仕事に携わりたい」。そのような想いから、大学新卒でマーケティング職や企画職を志望して、製パン企業へ入社しました。

しかし、最初に配属されたのは、デパ地下のパン屋の店舗。お店の奥の厨房でパンを焼き、焼きたてを販売するお店です。私は正社員として、接客・販売を中心に、商品の陳列や販促、売上管理を担当していました。

配属されてから知ったのですが、マーケティング職や企画職といった、いわゆるオフィスワーカーな部署に配属されるためには、現場で10年くらいの経験が必要とのこと。

自分の若さと経験不足をまったく考慮せずに安易に思い浮かんだのは「え、この時代に10年も現場で修行するの」という疑問。大学の同期と自分の現状を比較しては、焦燥感が拭えない日々を過ごしていました。

しかし、今振り返ってみれば、新卒1社目で、商品を製造・販売する現場を体験できたことは、その後マーケターとしてキャリアを積んでいく上で、大変貴重な経験でした。

小売の現場はバリューチェーンとマーケティングを学ぶには最適な場

パン屋の販売員というと「優しそう」「いつもニコニコしている」などと言われることもありますが、実は頭の中は超フル回転だったりします。

食品でもっとも重要視されるのが鮮度です。たった1日のなかでも気候や近隣施設や館内でのイベントといった外的要因で、刻一刻と来店客数・売上動向が変化するため、製造管理は最重要。それと同じぐらい、店頭でのマーチャンダイジング(価格・陳列・販促)も重要です。

バリューチェーンの「製造過程」を学べる

パンは、製造から販売までのサイクルが短い商材なので、極端に言えば材料・設備・人がいれば商品は作れます。パン屋の実店舗という現場は、バリューチェーンとマーケティングを学ぶには最適な場ではないでしょうか。

製造される商品量を把握し、売るべき時間帯に売るべきものを売る。言うのは簡単ですが、パンには発酵時間が必要なので、欠品したからといって、5分後に作れるものでもありません。1時間単位で売上を見ながら、製造と連携して、製造量の増減や予約受注の交渉などをしていました。

今考えてみると、エンジニアに開発スケジュールを交渉し、PMF(プロダクトマーケットフィット)させるプロダクトマネージャーのようですね。

マーケティングの4Pを意識する習慣が身につく

正社員は単にレジを打てれば良いわけではなく、日々の売上を最大限まで引き上げることが求められます。売上目標に達することの大切さを叩き込まれました。この経験は、その後の仕事でEC運用やWebサイト運用に携わった際にも、多大なる影響を与えました。

さらに現場では、マーケティングの基礎となる4P(プロダクト/プライス/プレイス/プロモーション)の考え方を無意識に習得することもできました。

実際にプロダクト(製品)開発に携わることは本部にいかないとできませんでしたが、配属された店舗は旗艦店だったため、商品の展開が通常の店舗と少し異なっており、「なぜこのような商品を開発したのか」といった経緯や背景、ターゲットを理解・考察する癖がつきました。

また、(出店済みのためプレイスを変更することはできませんでしたが)デパ地下入り口付近の人流が多い位置に出店していたため、時間帯や商品の売れ行きに合わせて、パンの陳列やディスプレイ、試食する商品を変えたり、常にPDCAを回したりしながら店舗を運営することで、プロモーションのノウハウを身につけました。

私のミッションは「新しい消費行動を作ること」

販売側としても、消費者側としても小売が大好きな私ですが、働いていく過程で「レガシーな業界にITで新しい価値提供をもたらしたい」という想いが強くなり、製パン企業を退社。その後、数回の転職を経て、現在の企業に至ります。

私は転職回数が多いのでキャリアの変遷を図にまとめてみました。

私の職業人生においてのミッションは「新しい消費行動を作り、消費行動自体を豊かにすること」。

そのミッションはぶらさずに、必要だなと思うスキルや知見が得られそうな企業を選んで転職を重ねてきたつもりです。

私のキャリアでもっとも長く在籍した企業は、商業施設「PARCO」のグループ会社である「パルコデジタルマーケティング」です。在籍期間は約7年半。私のキャリアのターニングポイントと断言できるほど、様々な経験をさせていただきました。

幸運にも在籍時の後半から、日本の小売業界内でオムニチャネルへの機運が高まり活況期に突入した時期でした。そこにPARCOの新しいICT事例の取り組みも相まって、事例紹介の登壇活動や執筆活動も多く経験しました。

また、自分のなかで一刻も早くマネジメントを体験したいという目標もあり、最年少で次長というポジションまでたどり着くことができました。

取材をいただく際に、このような話をすると「華やかですね」「刺激が多そうですね」といった言葉をよくいただくのですが、実際はまったくの正反対。コンプレックスと理想と現実の間で、もがいている、よく考えると本当に面倒な20代でした(笑)。

どの環境でも自分の軸をぶらさなければ学ぶべきことだらけ

今回は、自分の初期のキャリアとマーケティングを掛け合わせてお話ししました。

働く環境がどのようなものであっても、自分の軸さえぶらさなければ、学ぶことはたくさん見つかるはずです。

今後は自分が得意とするプロダクト開発×マーケティングをテーマにした話や、20〜30代の方なら悩むことはないであろうキャリアについてのお悩み(「どうやってキャリアチェンジすれば良い?」「他にやりたいことがあるけど、転職はしたくない」)などについても触れていこうと思っています。

もしご要望等があれば、TwitterやInstagramのDM等でお気軽にご連絡ください!

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