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TVCM×デジタル広告の最適化配信で学んだ“社外とのチームビルディング”

マーケターによるリレーコラム、今回は花王の辻本光貴氏。チームビルディングで大切なポイントについて。
(左から)博報堂 上山修一氏、花王 辻本光貴氏、インテージ 塩見健吾氏

花王株式会社の辻本です。

みなさんは社外の方と、どのようにチームビルディングをしていますか。

複数の会社の人が携わる取り組みでは、上手にチームビルディングできるかどうかがその成否に大きく影響します。そのため、自分1人だけではなく、関係者全員が同じ意識を持って、共通の目標に向かって行動する必要があります。

今回の記事では、TVCMとデジタル広告の最適化配信を事例に、チームビルディングを進めるためのポイントをご紹介します。広告代理店、調査会社の読者の皆様も、ぜひ最後までご覧ください。

TVCMとデジタル広告の最適化配信の挑戦

2年前、入浴剤ブランドの高付加価値品「バブ メディキュア」のデジタルマーケティング担当だった私は、TV×デジタルの広告配信を最適化することで、広告のリーチを最大化し、商品の購入増加に結びつけられるのではないかと思い、新たなチャレンジを行いたいと考えていました。

ただ当時の私は、方針は示せるものの、技術的な深い知見までは持ち合わせておらず、明確な解決策の検討ができませんでした。

そこで広告代理店・博報堂担当者の上山修一様と、調査会社・インテージの塩見健吾様に相談したところ、「地域ごとにTVCMのリーチ状況を明らかにして、リーチが不足している地域を特定したうえで、その地域にデジタル広告を配信する最適化スキームはどうか」という提案をいただきました。スキームの詳細な内容は下図の通りです。

効果を明らかにするために、最適化配信の対応グループAと非対応グループBに分けて検証したところ、対応グループAの広告認知は3.5%高く、金額シェアも伸びていました。この取り組みは事業部からも高い評価をもらい、関係者一同満足の行く結果になりました。

私にとって、この取り組みは社外とのチームビルディングの大切さを学ぶ貴重な機会になりました。なぜなら、広告主・広告代理店・調査会社の三者がパートナーとして、それぞれの知識、経験、知見を持ち寄り、議論を重ねながら、新しい取り組みにチャレンジできたからです。

目的実現のために工夫した点・留意したこと

今回の記事執筆にあたり、上山様と塩見様に話をうかがい、この取り組みのチームビルディングについてどのように考えていたか、当時を振り返ってもらいました。

上山様は、チャレンジングなことにも積極的に取り組んでいこうという思いを共有できたことを成功の要因として挙げてくださいました。

TV×デジタルでのリーチ最大化のための運用体制と、配信数や視聴数等のシンプルな広告配信結果だけではない検証が必要という今回のご与件の中で、様々なデータや手法をお持ちのインテージ様の協力は必要不可欠であると同時に、初めてのことやチャレンジングな部分も一緒になって取り組んでくれて、同じ目標を持った一体感のあるプロジェクトチームにしなくてはならないと感じておりました。

塩見様を中心にインテージ様がこのあたりの思いを汲んでくれて、非常にポジティブに本件にあたっていただいたこと、辻本様が花王様の社内をとりまとめて、方向性を示していただいたことが、今回の成功につながったと感じております。(博報堂 上山修一様)

塩見様は、目的に照らして実行方法を調整できたこと、できることだけでなくできないことについても忌憚なく話し合えたことが良かったのではないかと語ってくださいました。

今回は弊社にとっても新しい手法でしたが、それの実現に腐心するのではなく、あくまでも全員で目的を強く共有しながら、進められたのが良かった点と感じています。もちろん、弊社だけの努力によるものではなく、おふたりのディレクションの賜物ですが、弊社としてもオペレーション遂行のみに捉われず、そもそも目的に適しているか、常に問いながら進められたと考えています。

また、新しいチャレンジであるがゆえに、弊社だけでは難しい点や理解が浅い部分については、隠さずに議論のテーブルに上げることで、現実的に実行可能で、かつより良いスキームに落とし込むことができたように思います。(インテージ 塩見健吾様)

気軽に意見を交換し合えるチームにするために必要なこと

続いて、三者が率直に意見を交換し合えるチームを作るために必要だと感じることは何かを尋ねました。

上山様は、全員が目的を共有し、自分の役割を果たそうという思いを持っていたことが大事だったのではないかという見方を示されました。

難しいことではあるかと思いますが……、同じ目標に向かってプロジェクト的に取り組み、全員が成功のために同じ方向を向いて、自分の役割をまっとうしようという思いで取り組めたことが要因だったのではないかと感じております。

また、3人での打ち合わせを重ねていく中で、ざっくばらんにいろいろなお話をさせていただきましたが、それによってお互いをリスペクトし合える関係性を築けたことも良かった点かなと思いました。ただ一番は、辻本さん、塩見さんが、私のくだらない話すらも耳を傾けて聴いてくれたことかもしれません(笑)。(上山様)

塩見様は、課題や目的の共有、心理的安全性、各社のメリットへの配慮という3つのポイントに言及されました。

1点目は課題・目的の理解を、できる限り齟齬がないようにすり合わせることです。各社の視点で専門性があるがゆえに、課題や目的も各視点から解釈してしまい、最終的に目的達成につながらない結果となってしまうケースがあるように思います。

2点目は、遠慮せずにリスク共有などができる空気づくりです。新しい取り組みであればあるほど、不確実な要素が強まり、迅速なリスク共有・対策検討が欠かせないと思います。

3点目は、各社それぞれのメリットを理解することです。目的を達成することは大前提ですが、やはり各社なりのメリットもあり、それを理解するとプロジェクトの進行がスムーズになると感じています。(塩見様)

スクラム型リーダーシップとは

私はおふたりの回答をうけて、自分のリーダーシップのとり方がどうだったかを考えました。

“リーダー”という言葉には、人々の先頭に立つ印象がありますが、リーダーシップのとり方は人それぞれです。今回の取り組みは、3人全員が“スクラム型リーダーシップ”をとったからこそ、新しいチャレンジを成功に導けたと思います。

“スクラム型リーダーシップ”とは、各自の知見を互いに共有しながら、自分の専門領域では道筋を示し、専門外領域では不明点を率直に伝えて、チームでより良い案に仕上げる動き方です。誰かが意見を言うことを躊躇したり、フォロワー意識を抱えたりしているようでは機能しません。

専門家ではない広告主がチームビルディングで心がけるポイント

広告主の立場として、新しいチャレンジをどうディレクションすべきか。特に20代の若手の方は、悩むと思われます。

「自分が率先してがんばらねば」「専門知識がそこまでない」と焦っている方は、1人で無理してがんばる必要も、自信をなくす必要もありません。

何から始めるべきか不安がある場合は、

  • 目的
  • 実現したいゴール
  • 社内のリソース
  • 制約条件

を、社外関係者に伝えられるように、整理してみてください。それらがわからないと、広告代理店や調査会社は動けません。

そして、議論中に出る不明点は、素直に質問を投げかけましょう。質問を投げかけることで、目的からズレていないかを確認し合いながら、より良い戦略・戦術が生み出せます。

ちなみに質問するときは、相手を論破するような攻撃的な姿勢ではいけません。互いにリスペクトし合える関係を築くために、論破ではなく対話をしましょう。

世の中には、広告主、広告代理店、調査会社だけではなく、制作会社やシステム開発会社など、様々な専門家がいます。ぜひ今回の記事が、皆様と各業界の密な連携の一助となりましたら幸いです。

私個人としては、今後も良い結果を生み出せるように、”スクラム型リーダーシップ”を意識して、様々な企業の方と、新たな取り組みに挑戦するような仕事に打ち込みたいと思っています。

最後に、今回紹介した取り組みで、各社のメリットや施策のリスクを率直に伝えながら、目的を最後までぶらさずに新しいチャレンジを実施できたのは、博報堂の上山様、インテージの塩見様、おふたりのおかげです。改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

次回もお楽しみに。

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