[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

コロナ状況下で存在感を発揮するために B2Bマーケターと企業はどのように変化すべきか?

マーケターのリレーコラム、今回はヤプリの島袋氏。コロナでB2Bマーケティングが変化を迫られる中、個人と組織で行ってきたこと・発想方法を紹介する。
株式会社ヤプリ コミュニケーション室 マーケティングスペシャリスト 島袋孝一

コロナ禍を経て(と、いいますか、本原稿執筆時点2020年7月中旬でも収束の兆しさえ見えておりませんが)、B2Bマーケティング界隈には、大きな変化がありました。「リアル」で行われていた「展示会やセミナー」が軒並み中止となり、多くのB2Bマーケティングの生命線とも言える「見込み顧客」との出会いの場が、皆無となったのです。

「リアル展示会/セミナーからウェビナー(オンラインセミナー)へのシフト」や、「ウェビナーで成果を出すためのノウハウ」は、Web担当者Forumをはじめとしたメディアで事例が数多く公開されています。

本記事では、B2Bマーケターである私・島袋が、個人と組織で行ってきたこと・発想方法をご紹介しようと思います。すでにいくつかは過去の話ともなってしまっていますが、昨今、そして、今後も続くVUCA時代を乗り越えていくためのエッセンスとして、なんらかのヒントになれば幸いです。

1. どこよりも早いウェビナーシフトにより業界内での存在感を出す

弊社では、これまでほとんど「ウェビナー」を行っておりませんでしたが、3月上旬より新規にトライをするのと同時に、仕組み化を行ってきました。特に当初から、業界でも珍しい型破りな長時間ウェビナー(4日間朝から夕方まで14セッション)を実施したことで、実際の数値上の成果に加え、マーケティング手法をシフトしたということで「業界内での存在感」を示しました。

この企画をきっかけに、マーケティング専門媒体から取材を複数いただき、パブリシティ獲得にも寄与しています。B2C商材と異なり、弊社のようなプロダクト・サービスは、(現時点では)広く世の中一般に知っていただく必要がないので、局所的に話題になるだけで、一定の成果へと結びつきます。

これは、B2C企業の企画作りの経験が生きているとも個人的に思っています。私がキリンに在職していた終盤(2018年10月)の仕事で、「note」とコラボした企画展開を行っています。

午後の紅茶とnoteがコラボして「#紅茶のある風景 投稿コンテスト」を開催

こちらは、当時急成長していたメディア・プラットフォームであるnoteと組むことにより、「広く世の中一般」に情報を伝えつつ、企業・ブランド・チームとしてのスピード感や情報感度を業界界隈へ流布するのに、効果的な手段として機能したと思っています。

自社を取り囲む環境を俯瞰するスキルは、B2Bでも、B2Cでも変わらず役立つスキルです。マーケティングというより、PR的発想とも言えます。

2. ウェビナー乱立時代へ突入。情報の整理を始める

3月中旬になると弊社に限らず、多くの企業でウェビナーが増えてきました。もし私がB2Cマーケターだったら、たどり着きたい・たどり着くべき情報に出会えないな、と思いました。そんな課題感がありました。

結果、4月に、こんなカレンダーを作りました。

ウェビナー乱立してきたので、番組表β作りました。 #マーケウェビナーカレンダー

こちらは、Web担当者Forumの「他社セミナー情報まとめ」に掲載している情報を中心に、私が個人的にSNSなどで仕入れている情報をまとめ、週次で人力更新しています。特定の媒体だけの情報だと、競合メディアの主催するセミナー情報が抜け落ちたりするので、ある意味、中立的な個人として、こちらのカレンダーを更新することとなりました。あくまでも「個人」として更新しているので、自社との競合する企業の情報も掲載しています。

残念ながら、Googleカレンダーの仕様で、登録者数や登録者名などの情報を参照することはできないのですが、界隈ではかなり多くの方々が重宝している、と人づてに伺っています。ウェビナーを主催している他社の担当さんから直接メッセンジャーやTwitter経由で、本カレンダーへの掲載依頼をいただくこともあまたあります。

また、B2Bウェビナーを開催する際に、競合企業とかぶらない「ホワイトスペース」を探す用途でも活用されているようです。

ただし、この数週間で、視聴者側の環境も大きく変容しています。弊社主催のウェビナー視聴者アンケートによると、当初は「自宅」がほとんどだった視聴が、現在では「オフィス」からの視聴が過半数を占めてきました。視聴者の環境が変わってきた、ということは、配信方法・時間帯・放映時間など、これまでゴールデンタイムだと思った時間帯は、通勤退勤時間になっている可能性もある、など再考が必要だということです。

3. Zoomでの「オープン朝会」の効能

4月16日から連日「オープン朝会」というものを実施しています。ZoomをFacebook Liveと連携させて配信できる機能を使い、Facebookの友だちであれば誰でも入ってこられる、参加自由なミーティングです。じつは私はそれまでほとんどZoomを使ったことがなかったのですが、これによって「なんとなくZoomに詳しそう」という印象を醸成することに成功しました。

実際、この取り組みは、前述の1、2の点とあわせて、弊社・チームが、そして私が、「ウェビナー」というジャンルでのプレゼンスを高めることに寄与しました。

この取り組みを始めてから、B2Bのマーケターはもとより、B2Cマーケターからもウェビナーの運営や配信について、数多くの相談を受けることになり、個人的に、配信運営の後援をさせていただきました。このこと自体は、弊社本業事業との関与はありませんが、「界隈のマーケターが困ったときの相談相手」として純粋想起される存在になっていると感じています。

今回は「ウェビナー」という手段の話ですが、「SNSマーケティング」や「アプリマーケティング」においても、同じことが言えると思っています。見込み顧客や取り引き先企業の担当者が困ったとき、ググる前に想起される存在になれるかどうか。これは、知名度のないスタートアップ企業にとっては、貴重なポイントになると思っています。

上記の3点の事例は、この2〜3ヵ月の、数ある取り組みのうちの数個ですが、組織としても個人としても、定量・定性的にパフォーマンス発揮した事例となります。

B2Bマーケティング、変化のヒントは顧客にあり

今回のコロナ禍により、ビジネスを取り巻く環境は前例のない状況になっています。「前例のない環境」なのであれば、それに対応した「前例のない施策」への変化が必要です。従来までの勝ちパターンスキームに固執している場合ではない、と私は思っています。

マーケティングの教科書的に言うと「PEST(Politics、Economy、Society、Technology)分析」や「ファイブフォース分析」に立ち返る必要があるのです。

今年の2月まで、自社のプロダクト・サービスがPMF(Product Market Fit)していたとしても、その時点と現在では、環境が異なっていることもあります。さらに強みを発揮している場合もあれば、逆にバリューを発揮しづらくなっている可能性もあります。

情報の受け取り手のことをイメージしていますか? コロナ禍以前の展示会やセミナーで伝えていた訴求メッセージやタグラインを、現状に即したものに変えていますか?

そういった従来は「当たり前」だったことをも疑わなくてはならないのが、まさに今なのです。

このあたりは、自社内だけのディスカッションでは、見つけにくいこともあります。そんなときはどうするか? シンプルな解法があります。「お客様の声を聞く」のです。「答えは顧客にある」というコピーでマーケティング活動をしている企業があります。まさに、その思考回路です。

自社のプロダクトやサービスを利用し、愛してくれている顧客と適切なコミュニケーションをとり、自社のマーケティングに還流する仕組みは、最近では「カスタマーサクセス」「カスタマーマーケティング」と呼ばれています。マーケティングの再構築にあたり、迷ったことがあれば、ぜひ「顧客」に会いにいって、話を聞きにいってみてください。

マーケターとして変化にチャレンジできる機会

もっとも強い者が生き残るのではなく、もっとも賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることができるのは、変化できる者である。

著名な生物学者ダーウィンの名言としてよく引用される一説です。実際にはダーウィンの発言ではないそうですが、それはいったん置いておいて、私自身としては、大きく共感できる言葉です。

変化することは、怖いです。しかし、マーケターとして、自身をマーケティングし、社内外での市場価値を高めていくという視点から、思い切った変化にチャレンジするための絶好の機会として、この状況を捉えてみてはいかがでしょうか。

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