[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

ポイントは「新体験」と「共創」。今だから Web3の現状を調査してみた。

マーケターコラム、今回は明坂真太郎氏。少し前の注目ワードだったWeb3の価値の本質について、UNCHAINのCOO 鶴岡さんへのインタビューを通して考えます。
明坂真太郎氏

こんにちは、明坂です。

ChatGPTが登場し、さまざまな企業がAIを業務に活かす取り組みに励んでいる今日このごろ。私も日々、なにか面白い使い方や問いかけができないかとChatGPTと対話する日々です。

さて、少し前の注目ワードだったWeb3という概念について、皆さんはどの程度ピンときてますでしょうか。NFTやメタバースといった複数のワードとともに語られることが多く、どこが価値の本質なのか、わかりづらいです。

Web3の概念は、例えばGAFAM(Google、Apple、Meta、Amazon、Microsoft)をはじめとする大手プラットフォーマーによる中央集権的なサービス提供がされてきた今までのWebに対し、ブロックチェーンの技術を用いて分散化されたサービス、経済、組織等を実現するWebであるということです。

一時期ほどバズワード感はなくなった雰囲気ですが、だからこそ今企業として、マーケターとして何に取り組むべきなのか、Web3の前線を知りたいと思い、ブロックチェーンゲームの立ち上げと運営を経て、現在はブロックチェーンゲーム、トークン、コミュニティ運営の支援を行っている友人、UNCHAIN COOの鶴岡くんに取材をしました。

今回は、そこから見えてきた「企業としてどのようなスキル・アセットをもち、なにに取り組むべきなのか」を紐解いていこうと思います。

インタビューに応じてくれた株式会社UNCHAINのCOO 鶴岡くん

Web3ブームは何を生み出してきたか?

―― 少し前ほどWeb3という言葉を聞くことが少なくなってきましたが、それをどう見ていますか?

「以前より落ち着いたかな」っていうのは、僕も思っています。当時、ワードとして流行っていたのって、NFT(ノンファンジブル・トークン)アートとかPlay to Earn GAMEとか、投機性が高いものが引っ張っていた感じで、一時的にマーケットがグーッと伸びているのを見て、日系の企業も「我も続け」って入り始めたという状況だったと思います。

 

―― なるほど。当時と比べて今はどのように変わったのでしょうか?

主に僕はエンタメの人間なんでエンタメ系の話をしますと、ゲーム企業においては、やっぱり世界で売り上げが急増したNFTやブロックチェーンゲームのタイトルを見て参入を決めているわけです。

ですが、それらの海外のプロジェクトが隆盛期を迎え、その後崩壊していく様子をいくつも見て、「これはやっぱりちょっと考え方を変えねばならんのか」と業界全体が思い始めました。で、どこに帰着するかというと、「やっぱりコンテンツ イズ キングだね」っていうところに戻ってきていますね。

 

―― 「GameFi(ゲーミファイ)」や「Play To Earn:ゲームを通じてお金を稼ぐ」という言葉がよく語られていましたが、単に稼げるというだけではダメだと。

「稼げるゲーム」だから流行るというよりは、「しっかり面白くて、そこに今までにない体験があるから」。さらにもしかすると、「自分がこのゲームの市場を広げるきっかけ」や、「新たな文化を作るきっかけ」にもなるかもしれない。そんな目的意識でチャレンジをしているっていう潮流ですね。

Move to Earnを掲げるブロックチェーンゲームSTEPN(ステップン)のキャプチャ画面。最初にNFTスニーカーを購入し、スニーカーを装備して報酬を得たり、スニーカーのレベルをあげて売却することで報酬を得ることができる。なお、STEPNはFindSatoshi LAB Limitedによってローンチされたアプリである

―― ブロックチェーン技術を活用して、暗号資産やNFTなど、データにも資産価値がつくようになるのはわかるのですが、実際にユーザーはなにが面白くてそれにお金を払うわけですか?

たとえばゲームの場合、企業が提供するサービスであれば、その企業がサービスを終了したらデータも消滅しますが、ブロックチェーンを活用したNFTの形になれば、データ自体を永続的なコンテンツとして自分が手にできる。より思い入れや手触り感のような”エモみ”につながる部分があります。

あと、自分たちが自由に表現し自由に取引できるので、みんなで共創していく文化が生まれています。誰かがコンテンツをバキッと作るっていうよりも、みんなで集まって一緒に2次創作したり、1つのサービスを運営者、ユーザー、クリエイターが、同じ場所で共同生活して作っていったりみたいな。ユーザーの楽しさ、入り込める要素が大きくなって、広がっていく部分も新たに生まれた面白さだと思います。

分散型のデメリットは?

―― 分散化という概念が重要なのはわかりましたが、たとえば、企業に属さず独立、起業することは、誰でもできます。しかし、大半の人は企業のなかにいる安全性などのメリットを感じて属している。同じように分散化にもデメリットがあるのではないでしょうか?

おっしゃる通り、自由というメリットもあればデメリットもあって、自分で自由に参加してデータも誰かに預けるわけではなく自己管理になるので、「すべてが自己責任」というデメリットはあります。企業の提供するゲームには、サービスを終了すればデータがなくなってしまうデメリットがある一方で、サービス中はちゃんと保証されるというメリットがあります。

 

―― ソシャゲ(ソーシャルゲーム)だって、トラブルでサーバーが止まったらその後、詫び石(運営者から補填の意味での課金アイテムなどが配られること)とかありますもんね。

「自分で起業するより、誰かの下でやった方がいい」みたいなところは間違いなくあります。良いところも悪いところもあるから、どちらを選ぶかは、そのサービスレベルに落とし込んだときにどう響いてくるかっていう。まぁ、最終的にはWeb2とWeb3、うまく融合させようみたいな話で帰着するんですけど。

インタビューはZoomで行いました。左が鶴岡くんで、右が明坂です

企業として、マーケティングになにか変化をさせる必要があるか?

―― Web3で生まれた技術や文化を、企業はどのようにマーケティングに活かす余地がありそうですか?

これまで、投機とかマネーに対するメリットが多く語られてきましたが、ユーザーに対して提供すべきは、やっぱり「体験」なんです。

たとえば、「デジタル資産として世界に1つのアバターが手に入る」「現実世界でも星を見つけた人が星を命名するような体験をデジタル世界でもできる」といったようなエモい体験については、界隈のみんなが大喜利の回答みたいに考えているところです。

 

―― 逆に「もともと、そこ(体験の面白さ)からじゃなかったんかい⁉」ってちょっと思いますけどね。

ただ、根本原理的にいうと、Web2でしっかりとユーザー獲得できて成功するサービスじゃないと、Web3では成功しないと思っていて。「Web2領域でも十分な価値が担保できるサービスがWeb3の要素をのせてさらにドライブする」っていう考え方が、もう今は正しいんだと僕は思っています。

 

―― 確かに。たとえばIDOL3.0 PROJECTなんてわかりやすく、今まで現実世界で握手会やツーショットチェキとして作られていたアイドルとの体験を、グローバルとメタバース(仮想空間)にも拡張しようとしていますもんね。

「投機性が高いからゲームは盛り上がるんですよ」みたいな話はもう終わっていて、体験のエモさを加えることで、よりユーザーが没頭できる部分を多くの人が作っている最中です。

秋元康さんが総合プロデュースをするIDOL3.0 PROJECTのTwitter画面。IDOL3.0 PROJECTでは、リアルとデジタルをまたいで活動するアイドルグループをオーディションから作り上げている

ユーザーと共創をするための重要なポイントは?

―― たとえば、Discord(ディスコード)を用いたコミュニティ運営なんかが流行っていると思うのですが、今後、スキルとして企業が必要性を意識するものはありますか?

コミュニティ活用という点では、Discordは実現のツールでしかないので、その前に、ユーザーとどういった密着度、関係性でコミュニケーションするか、ユーザーがどうモチベーションを高くもって参加してくれるか、どうやったら嬉しいのかを設計するスキルがまずは必要ですね。

 

―― なるほど。コミュニティマネージャーのニーズも高まっていますよね。

たとえば「あるNFTをもっている人しか入れないチャンネル」があったり、ある貢献活動をしてくれたらポイントが溜まり、ランクみたいなロール(役職)が上がったりする。ロールが上がっていくと、アンバサダーに就任できる、特別なNFTがもらえるとか、まぁ、一種のゲーミフィケーションとしてコミュニティを運営していく。そのツールとしてDiscordが使われがちっていう、こういう順序ですね。

*DiscordはSlackのようにサーバーとチャンネルの概念で分かれたチャットツールだが、システム開発を入れることで、よりコミュニティ運営に適した形に機能を拡張することができるという特徴がある。

―― Web3的な文化のもとでのコミュニティ運営は、以前のものと違いがありますか?

ユーザーとの距離が近くなりましたね。それまでのTwitterやFacebookとかって、運営側が一方的に発信をすることが基本で、たまに、ユーザーのコメントに対してリプライしたり、問い合わせに回答したりする程度がほとんどでした。

だけどWeb3的な文化でいうと、つまりユーザーとの共創空間を作るみたいな感覚でいうと、結構のう密なコミュニケーションが求められるんですよね。ざっくりいうと、1日中喋っているみたいな。なので、今までのTwitter、Facebookの運用よりも、物理的に時間は使います。

筆者がDiscordで参加している某ゲームの非公式ユーザーコミュニティのキャプチャ画面(わざとぼかしています)。一緒にプレイするチームメイトを募集し、そのままグループボイスチャットを開始できる。礼儀とコミュ力は必要

―― なぜ、密なコミュニケーションが求められるのでしょう?

「会話」だからじゃないですかね。運営からの発信、それに対するレスじゃなくて、永遠にそこで会話されているものっていう感覚の方が近い。運営とユーザーっていう形から、どんどんコミュニティマネージャーをユーザーからピックアップして、「あなたがこのチャンネルの管理者ね」みたいな形で、どんどん運営をDAO(分散組織)化してく、みたいにやっていくことが多いですね。

 

―― ただ、それも新しい概念というよりは、「そうできたらいいよね、でも難しいよね」って、企業的には今まであんまりやってこなかったことだという感じがするんですが。

はい。ただこれ、すでに実現しているコミュニティがあるんですよ。完全に非中央集権にしているところがあって。

たとえば、とあるゲームのコミュニティでは、運営メンバーが最初は立ち上げたんですけど、今は完全にほぼDAO化しています。コミュニティのなかに評議会みたいな組織を作って、ゲームの仕様とかを議論して、この議論を通過したらゲームに実装するというように運営しているんですが、評議会メンバーのなかの1人、2人は最初の運営メンバーで、他はユーザーからの代表者です。

 

―― なるほど。ファンとの共創を掲げてファンコミュニティを運営している企業もいくつか知っていますが、そこまで踏み込んでいるのはチャレンジですね。よく運営できるなと思います。

どんなサービスもWeb3云々関係なく、「ユーザーからしっかり声を吸い上げて、反映して共に作っていく」っていうのが非常に大事なことです。だから、あまりWeb3に限ったことではないですが、さっきの事例のようにコミュニティが盛り上がって、そしてプロジェクトが盛り上がり、資産価値が上がってくみたいな例は多いですね。

―― 今日は貴重なお話をありがとうございました。

◇◇◇

これまで投機的な話が多くて価値の実体はなんなのかが掴めていなかったWeb3ですが、データやコンテンツの一意性を担保することで生まれる体験やエモみ、より分散化したコミュニティ運営のスタイルなど、今まであったものの“正当進化”だなと感じる要素もありました。今はその性質上ゲームなどとの親和性が高いようですが、前述したタレント・アイドルやメタバースと掛け合わさってどのような発展をしていくのか、今後はより注目していこうと思いました。

本テーマやそれ以外についてもくわしく聞きたいこと、などあればぜひお気軽に私のTwitterアカウントへリプライ(https://twitter.com/dr_akesaka)をいただければ幸いです。

それでは。

鶴岡 洋志(ツルオカ ヒロシ)

株式会社UNCHAIN COO

テレビ東京コミュニケーションズにて、地上波番組×Web連動プロジェクトや、ライブ配信番組の企画・制作など、テレビ内に留まらない立体的なプロジェクトの企画プロデュースを行う。
その後2018年、ヤフー株式会社 PR・マーケティングセクションにて、自社サービスのPR企画を手掛け、2019年 株式会社つくりば にジョイン、幅広いエンターテインメント事業・コンテンツの、企画・プロデュースを担当。
2020年よりDigital Entertainment Assetにジョイン、GameFiプラットフォームPlayMiningの事業統括として、ブロックチェーンゲーム・NFTマーケットプレイス等、全サービスの事業戦略を担う。
2022年に株式会社UNCHAINのCOOに就任。

株式会社UNCHAIN(https://www.ooo-unchain-ooo.xyz/
企業のWeb3進出支援を通し、一般ユーザーでも安心して楽しめるエンターテイメントサービスの開発を目指す。
Web3領域にチャレンジする企業様に対して、企画・開発・マーケティング支援等の総合的なサービスを提供し、あらゆる方向から事業をサポートし、必要な要素をワンストップで提供する。

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